共和国の光は多くの人々の希望となった。
だが、光ある所に闇もまた在る―
232BBY ヘッツァルプライム軌道上
「よし、着陸許可の準備を」
YG-2500型輸送船"ステファン・ランナー"号の艦長である俺は命令を出す。
まもなく到着するヘッツァルプライムはアウターリム開発の中心地の一つだ。
ここ百年あまり続く"未知世界"への探求はコアの連中を引き付けてならないらしい。
それがアトリビス・セクター出身の俺から見るとどうにも可笑しく思える。
まぁ、そんなコア・マンどもの金で生かしてもらってんだから文句は言わんがよ…
「艦長…?」
乗員の一人のスチームが俺を見て声を掛ける。
スチームというのは本名では無く、何十年も前に同僚が付けたあだ名だと本人から聞いた。
それがホントかどうかなんて誰も知らない。俺たちの会社はハイリパブリック・バブルを受けて設立した新興企業で、賃金も真っ当な所と比べて遥かに安い。
要するに、ここの社員は皆が脛に傷を持ってる奴らだ。
「…ああ、スチーム。どうしてだろうな、時たまコアの連中を見てると無性に腹が立ってくる」
後ろのキャビンでバカ騒ぎをしている連中を見て、思わず口に出す。
後ろの連中は…コルサントとかコレリア出身と言ったか? まあそんなの関係ないが。
「まぁまぁ、船長。俺だって一応コアの近くの出身だし、それ聞かれたら終わりですよ」
苦笑いしながらスチームの隣に立つマックが答えた。彼は自称31の天才操縦士だ。
マックは…"脛に傷を持ってる様には見えない"というのがクルー全員の意見だ。
実際、俺の船の中でマックほど出自が分かってる奴もいない。天才かどうかはともかくナブー出身でシード大学の飛行過程を完了し、その後は王立保安軍に入って宙を飛んでいたらしい。
マックも他の船員同様に、過去については"色々あったのさ"の一点張りだが、海賊と撃ち合って海賊を殺した罪悪感から保安軍を退職したというのが専らの噂だ。
「ふん。コアのバカどものごっこ遊びには付き合ってられないな」
スチームも俺に同調するようにコア出身の連中を罵る。
別にコアの奴らが特別嫌いなわけではない。いや、嫌いではあるが…
むしろ、いけ好かないのは連中の一部が一端の探検家気取りで俺たちの故郷を汚すことだ。
「だろう、スチーム? 連中は議会で女遊びでもしているのがお似合いだぜ」
「おっ、船長言いますね~」
マックも笑って俺の意見を肯定する。
「へっへっへっ。連中ナイヒル見たら卒倒するぜ?」
ナイヒル…あいつ等もいけ好かない連中だ。
そもそもコアの連中を狙うなら兎も角、同じアウターリムの仲間を狙うのは許せない。
あれじゃ、ちょっと大義名分のある強盗だ。
「…ナイヒルと言えば最近もテロを起こしたそうだな」
スチームが深刻そうな顔で言う。
テロ、というと政府施設への攻撃と思われがちだがナイヒルは民間人だろうが見境なく撃ってくる。
まさに、コアの連中が思い描くアウターリムの"野蛮人"の姿だ。
「アウターリムでは連中が活動してるのに共和国は何もしない…正に"文明国"らしい態度だな」
「…全く同感だ」
スチームも共和国に怒りをぶつける。
「共和国の言う光ってやつは俺達には届きませんってか」
共和国はナイヒルが攻撃を仕掛けたらひとたまりもない、というのが俺の意見だった。
「艦長。そろそろ…」
真空の宙を眺めるとちょうどステーションを視界に収めるところだった。
「通信を開け」
さっさと五月蠅い"お荷物"を降ろして家に帰りたいものだねぇ。
まぁあの社長の事だから帰りも仕事だろうが…
「ステファン・ランナー号…? 聞こえているかね?」
小ばかにしたような声が操縦室に響く。
全く、どいつもこいつもコアかぶれになりやがって…
「ああ、問題ない」
「では、まず禁制品や事前に届けたもの以外での危険物は無いか?」
いつも通りの質問を終え、すぐに地上への着陸が許可される。
今日の仕事ももう終わりだ。そう、そう思っていた。
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いつだったか、ある賢人は語った。
"平和などまやかしだ"と。
ある男は言った。
"死んだら何ももらえない"と。
結局俺はその意味を全く理解していなかったのだ、という事実にようやく気が付いた。
そう。突然ハイパースペースから船が
ー否、船だったものが現れてヘッツァルプライムを襲うまで。
「アレをよけろ!当たったら死ぬぞ!」
船員全員がその危険を分かっていた。
だが、俺たちにはどうしようもなかったのだ。
「うわッ!?」
操縦室で必死にスチームとマックが格闘していたが、それにも限界があった。
死角から現れた残骸が左の補助エンジンをしたたかに打ったのだ。
「くそッ」
確かにエンジンが一基やられたが、まだヘッツァルプライムに着陸できる。まだ俺はそう思っていた。
「ハイパードライブが…?なんで?!」
お前の予想は大事な時にいつも外れる。俺は親にそう言われた。ギャンブルで金を失った時もダチから言われた。
だが、その度に俺は"運命を変える時は当たるさ"と笑って過ごしていた。
今思えば結局、それは自分の都合の良い思い込みだったのだ。
「マズい。ジャンプするぞ!」
さっきの衝突でポンコツのハイパードライブが誤作動を起こしたらしい。
計算も無しにジャンプすればどんなに良くても行方不明になるしかない。
「艦長!」
「どうする?!」
マックとスチームが俺を頼ってくる。
(俺だって…俺に何しろと?)
ただ祈るだけ。そう、それしかできないんだ…!
ゆっくりと宙が、視界が、青に染まっていくのを感じながら俺は意識が飛んでいた。
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「…長!船長!」
マックの声が聞こえて、俺はゆっくりと目を開ける。
「あ、ああ。俺は…」
辺り一面が飛び散ったデュラスチールと誰かの血で染まったコックピット。
こんな状況で、俺が五体満足で呼吸出来ていることに驚いていた。
そばを見れば、頭から血を流しているスチームが居た。
「全く。…ここは…どこだ?」
スチームの言葉にハッとして外の景色を覗く。
「外は…タトゥイーンにも見えるが…」
見渡す限りの砂模様。
少なくとも近くに人里が無いことは確かだ。
「あっ、ああ。とにかく、そうだ、俺たち以外で生き残ってるのは…?」
マックがゆっくりと首を振る。
「後ろは全員何かにやられたみたいです。…気絶してる乗客を除けば」
何かに…? つまり殺されていたのか…?
突然、スチームが怒りを露わにしてコアの連中に暴言を吐く。
「連中…!あいつ等が船員を殺したんじゃないのか!?」
スチームの怒りも分かるが…流石に言いすぎだ。
「落ち着け。お前が言いたいことは分かるが、ここで揉めても何もならん」
そうだ、揉めるのは後でもできる。今は協力してここから脱出しなければ…
「救難信号は…?」
「自動発信されていますが…計算機と自動航路計がやられているので届くかどうか…」
船の計算機がやられているのは想定していたが、航路計がやられているとは。
航路計が無ければここが何処か分からない。
「フン…共和国もわざわざ怪しげな輸送船を捜しにはこないだろよ」
スチームの諦めたような声が聞こえる。
それもそうだ。だいたい、被害は至る所で発生してる筈だ。
共和国が捜しに来る頃には…骨となってるだろう。
「…ヨシ、船の中を探して使える物を見つけよう」
大丈夫、大丈夫だ。俺だって死線を潜り抜けてきたんだ。
今回だってきっと…何とかなる。
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「落ち着けスチーム!お前…正気か?!」
遭難して3日が経った。
人の精神など極限の環境に居ればどうなるか…知らなかった訳ではない。
だが、俺は船員たちがその困難に立ち向かえると信頼していた。
「正気か、だって?ああ、ああ、俺は正気だよ!」
しかし、結局それも俺の"予想"に過ぎなかった。
突然、スチームがコアの連中を殺そうと言い出したのだ。
「連中を殺しても、何も変わらない! 分かってるだろ!」
「2人とも、落ち着いてください!」
マックが話に割り込む。
「マック、お前だって分かってるだろ!」
「何がですか!?」
「あいつ等、まだ自分達が乗客だと思い込んでる。俺達を奴隷だとでも思ってるのさ!」
スチームによれば、コアの奴らのせいで和が乱れているらしい。
だが、俺からすれば今この状況で和を乱してるのはスチームの方だった。
「…すまないな。スチーム」
ここは船長として、威厳を示して規律を取り戻さねば。
「これ以上、その話をするなら…船を降りてもらう」
「…! ああ、センチョウ。…結局あんたもそっち側だったのかよ」
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「船長は最後まで分からなかったんですね…」
なんだ、何が…?
スチームが船を降りて砂漠の果てに消えて行って…それから…
「何故、俺が保安軍を辞めたのか?何故、俺が今こんな事をしてるのか?」
ああ、マック。お前もか…
「スチームが言ってた事、正しかったですよ」
俺の傍にSKZスポーティングブラスターがある…
これを取れ…あいつを撃て…
「センチョウ。俺、あなたの事をスチームを追放するまでは尊敬してましたよ」
…あいつも"反逆者"だ。
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誰か…誰か来てくれ。
俺はあの後…何をしたんだっけか?
「宙に浮かぶ星たちよ…!俺を見てくれ!」
まるでローディアン劇場の主演の様な俺を見てコアの連中が後ずさるのを感じる。
そうだ…俺はこの船の船長だぞ…!
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遭難して1ヶ月が経とうとしている。
共和国の助けなど来ない。もう俺は諦めている。
「…サー、もし宜しければ航路計の修理を…」
コアの奴らが助けを求めてくる。
ふん、馬鹿どもが。
「自分たちでやるんだな!」
最早諦めきっている俺は砂漠の中で星を眺めるという一人の時間を楽しんでいた。
だが、誰からの助けが得られなくても最後まで戦い続ける。そんなあいつ等を見て、俺は少し羨ましく感じていたのも事実だった。
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「こちら、ジェダイマスターのタルロー。救援信号を受信して助けに来た!」
これは砂漠が見せてくる幻影か?
1隻のジェダイ・ベクターと共和国の船が俺の船の前に降りてくるのを見て真っ先にそう思った。
「…君がこの船の?」
「ああ、そうだ」
ジェダイが俺に話しかけてくる。
「乗客は彼等だね? 船員は?」
…俺にとってジェダイの光は明るすぎた。
「…俺以外はみんな…」
ジェダイも気の毒に思ったのかそれ以上聞くことは無かった。
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ゆっくりと上昇していく船の窓から砂漠を眺める。
まさかここから抜け出せるとはな…
「センチョウ…」
スチームの声?
「あなたを尊敬していたのに!」
マック…!
やめてくれ…俺は…
「船長どの?気分が優れないのですか?」
隣の兵士がこっちを向いて心配してくる。
だが兵士の声は俺には届かなかった。
俺は船長なんて柄じゃなかったんだ…!
助けてくれ…誰か…助けてくれ…!
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「ジェダイのあんたに、聞いてほしい。俺の…罪を」
ヴレモス・プラネットの共和国臨時指令所に降り立った俺は、ジェダイに罪を告白した。
周りにいた兵士たちも何事かとこちらを見ているが気にする事ではない。
一度話を始めると、自然と俺は一気にまくし立てた。
やがて全てを話終えると、俺はジェダイの顔をゆっくりと見た。
どうか、どうか俺を…いっその事殺してくれ。
「…船長、君の罪は誰も咎めることが出来ない」
違う、違う…
俺は誰かに許してほしくてこんな事を言ったわけじゃない。
誰か、俺を罰してくれ…
「時にこんな言葉がある。苦しいから逃げるのではなく、逃げるから苦しくなるのだ、と」
俺はハッとして目の前の男を見た。
「明日には新しい朝が来る。その光は…きっと君を救うはずだ」
俺は…
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210BBY コルサント・工業エリア
ああ、あんたの言う通りさ。
今思えば、スターライトビーコンやハイリパブリックは思いの集大成だったんだ。
スターライトは船を導くだけじゃなかった、人々を、思いを導く一筋の光を放っていたんだ。
そして俺にとっての、スターライトは…結局ジェダイの光だったんだよ。
SW好きのガノタと申します(唐突)
この話から連載が始まる「名もなき兵士は誰が為」は暗め(救われない・胸糞)系の作品が多くなります。
念のためご了承ください。
次回作はそんな"光"であるジェダイの闇を描く話です。
評価・感想くれると嬉しいです。