【完結】祓魔師《エクソシスト》は休みたい   作:オタリオン

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109:天空神殿に封じられし剣

「……此処は……声が?」

 

 俺は周りに視線を向ける。

 誰の姿も無く、真っ暗闇が広がっていた。

 自然と声を発する事が出来た事に戸惑っていれば、遠くで小さな明かりがついた。

 

 それはゆっくりと此方向かってくる。

 やがて、目の前で止まったかと思えば。

 それは人の形を成し――ヘリオウトゥスとなった。

 

「此処は夢の世界。貴方様の意識のみが存在する世界であり、此処ではあらゆる時間の流れから解き放たれます。力ある言の葉も、此処では無害なものでしょう」

「……で、こんな場所に連れてきて、俺に何を見せようってんだ?」

 

 俺が質問すれば、奴はゆっくりと手を振るう。

 すると、暗闇の中で変化が起きた。

 ゆっくりと地面だと思っていた場所が消える。

 体が無重力の中のように浮いていて、周囲に光の玉のようなものが出現し始めた。

 それらは円を描くように存在し。

 輝きの色や大きさ、それぞれに違ったものが全部で……108存在していた。

 

「……今、貴方様が見ているものは“大世界”と呼ばれるものです。宇宙が世界の全てではなく、それを包むものが“小世界”であり。大世界は無数に存在する小世界を包む器です。大世界は本来であれば“108存在していました”」

「……? 何で過去形なんだ。俺の目には確かに、108存在して――!?」

 

 俺が視線を大世界なるものに向ければ。

 ゆっくりと大世界を浸蝕するように黒い靄が広がり始めた。

 それらは一つ二つと光を飲み込んでいく。

 そんな光景を見ていれば、砂粒ほどの光が無数に出現し。

 靄から出た何かと衝突し始めた。

 

「……戦っているのか?」

「……七界の灰戦争(セブレウス・アッサラゥム)、我々はそう呼んでいます……闇の王とその眷属たちと神々と天使たちによる全面戦争です……互いの生存を懸けた戦いであり、この戦争によって七つの大世界が消し飛びました……そして、“我らが王”もこの戦争によって深い傷を負ってしまったのです」

「……その闇の王ってのが、例の魔王か?」

「えぇそうです。奴の力は強大であり、その存在を完全に抹消する事は叶わず。一時的に封印をする事しか出来ませんでした。もしも、王の傷が完全に癒えたのであれば次こそは必ず……ですが、それよりも前に、我らの神は――殺されました」

 

 ヘリオトゥスが指を振るう。

 すると、大世界は消え去り。

 代わりに人型の何かが出現した。

 白い空間にて存在するのは恐らく神や天使だろう。

 神と思わしき存在は姿を見るだけでも弱弱しく感じるほどにやせ細っていた。

 

「呪いです。封印された魔王は、数名の天使の精神を汚染し、自らの封印に綻びを生じさせました。その結果、奴の体から漏れ出す瘴気は天界を浸蝕し、神すらも呪いによって冒されました。神は最期に我々天使に命を与えて、天使長である私はその命をすぐに実行しました。四大天使たちの存在そのものを使った大規模な封印術に加えて、王への連絡を指示し、少しでも時間を稼ぐために悪魔たちと戦い……生き残った私は現世にて身を隠しながら、貴方様が来てくれる日を待ち続けました」

「……四大天使たちの封印だと? 一体何を封印して……いや、まさか」

 

 俺は一つの考えに行きつく。

 それはニンドゥでの遺跡やデイヴィ・ジョーンズとの戦いでの記憶だ。

 奴らの目的が何だったのかは不明だったが。

 今になって思えば、奴らが行ってきた事は面倒な儀式などを行う事による――“術式の解除”だ。

 

「……魔王の復活に必要なもの。人間にとっての魂であり、我ら天使や悪魔にとっての刻印……王より託されし、魔王の分体であり、奴が力を取り戻すために必要なもの。それこそが四大天使たちが封じた、魔王の力の欠片です。それら全てが揃う事が無い限り、魔王は完全に復活する事は出来ません。ただし、封印を施すにはそれ相応の力が必要であった……そう、四大天使の存在そのものを代償に捧げるほどの力が……死王の影となりし、セレヌディアルス。人海の護符になりし、レーヴァンテ。聖なる刃となりし、メレスティア。光の核となりし、バルハザーク。彼らの犠牲があったからこそ、この世界は辛うじて生き延びる事が出来ました……ですが、それも後僅かでしょう。封印は既に二つも解かれて、残るのはあと二つ……全てが揃う時、全ての世界は闇に染まるでしょう」

「……お前らの王は、何故、来ないんだ? こんな状況なら、傷が癒えてなくても来ないのはおかしいだろう」

 

 俺は当然の疑問を投げかける。

 どんなに弱っていようとも、魔王の復活は阻止しなければならない。

 例え完全に殺す事が出来なくとも、封印の強度を更に上げる事くらいは出来る筈だ。

 そう言った意味で質問すれば、ヘリオトゥスは静かに首を左右に振る。

 

「……来ないのではありません。来れないのですよ……これを見てください」

 

 ヘリオトゥスは指を鳴らす。

 すると、場面は変わり……これは、世界か?

 

「……黒い靄で覆われている……まさか、これが?」

「……そうです。魔王の瘴気によってこの世界は覆われてしまっているのです。ただ、人類はそれに気づく事はありません。魔王はこの世界そのものを人質とし、王や神々の侵入を阻止したのです……もしも、無理矢理に入ろうとすれば神であろうとも無事では済まないでしょう。天使であればそもそもが生きてはいられません。これは私の予想ですが、恐らく他の神々はこの世界を消す事を考えていたと思います。が、それをすれば恐らくは他の小世界。いえ、大世界そのものにも影響が出るでしょう。それほどまでに、魔王の瘴気は世界に広く深く広がってしまった……そうなるまでに気づけなかった我々の失態です」

 

 ヘリオトゥスは悲し気に微笑む。

 俺は奴を責める訳でもなく。

 ただ静かに見つめていた。

 

「……その王とやらが来れないのは分かった……で、俺を待っていたって言うが。正直なところを聞かせろ……俺は魔王に勝てるか?」

「……難しい質問ですね。半端な状態の魔王であれば……いえ、それでもダメですね。アレは次元が違い過ぎる。そして、何度も言いますがアレは完全に殺す事が出来ない存在です。本当の意味での不滅に近い存在です」

 

 ヘリオトゥスの言葉に頷く。

 倒す事が困難で、殺すこと自体が不可能か……厄介だな。

 

 俺たちにとっては魔王を殺す事が出来れば。

 恐らくは、他の悪魔に関しても何かしらの影響が及ぶと考えている。

 全てを殺す事が出来ずとも、弱体化でもしてくれらるのなら。

 俺が死んだ後であろうとも、悪魔に人間たちが脅かせされる事はない。

 待ち望んだ未来であり、それを手に入れる為には魔王の死が不可欠だ。

 

 今の俺が殺せずとも、未来の俺なら殺せるだろう。

 それは希望的観測なんかじゃない。

 俺自身が自分の成長……いや、進化に気づいている。

 

 確実に俺は人間という枠組みから逸脱していっている。

 現時点でも人間とは呼べないだろうが、それ以上の――化け物になろうとしていた。

 

 俺は薄く笑みを浮かべる。

 そうして、ヘリオトゥスに言ってやる。

 

「化け物を殺すのなら同じ化け物だ……どんなに死が遠くとも、俺は必ず魔王を殺す。何千何万回。いや、数え切れないほどの死を経験しても俺は必ずこの手で奴の息の根を止める……その為には、デウス・エクス・マキナに辿り着く必要がある」

「…………そうですね。魔王を殺せるとするのなら、現在の状況からして貴方様以外に適役はいません……ならば、教えましょう。デウス・エクス・マキナの事を。そして、それを作り出したものの事を」

 

 奴はそう言って再び指を鳴らす。

 すると、周りに浮かんでいた光が急速に動き始める。

 それらは無数の線となり、俺たちは吸い込まれるように先に開いた穴へと――――…………

 

 

 

 …………――――目を開く。

 

「……これは?」

 

 そこは暗闇でも無ければ、不思議な空間でもない。

 何処にでもある昔の病院の一室であり。

 ベッドの上には黒髪の女性がいて、傍には白衣を着た男が立っている。

 女性の腕には赤子が抱えられており、二人は嬉しそうに赤子と触れ合っていた。

 

「……彼こそがデウス・エクス・マキナを作りし存在……名をゲンブ・カブラギといいます」

「カブラギ……そうか、この男が」

 

 タクミから聞いていた男の名だ。

 アイツの曾祖父であり、人工天使を作り上げた男だと聞いていた。

 既にこの世には存在せず。

 本人から話を聞く事は出来なかったが。

 やはり、人工天使だけではなく、デウス・エクス・マキナの製造にも関わっていたのか。

 

 病室での光景を見ていれば、場面は流れていく。

 ゲンブは成長し、優秀な成績を収めていたのだろう。

 あっという間に少年の若さで白衣に袖を通し。

 大人たちに混ざって様々な実験に参加していた。

 彼が成人に至る頃に、ゲンブの功績が認められて天使の遺体の研究が許可された。

 

「ゲンブ・カブラギは天使の遺体の研究に憑りつかれた。天使という存在とは何か、そして、その血肉に宿る力とは何か……彼は決して人類の勝利を願うだけの人間ではありませんでした。そこにある謎を明かし、自らの限界を何処まで伸ばせるのかに必死でした。その結果、彼は自らの“計画の第一歩”として人工天使を生み出しました」

「……第一歩なら、やっぱり最終的な目的は……」

「そうです。天使を従える存在――神を生み出す事です」

 

 ヘリオトゥスの言葉を聞きながら、流れていく光景を眺める。

 ゲンブは歳を重ねながら、あらゆる時間を研究に捧げて。

 人工天使を生み出す事だけに心血を注いでいた。

 最初は机上の空論だったのだろう。

 誰もが奴を笑い、それでもゲンブだけは真剣に研究に臨んでいた。

 十年の月日を重ねるごとにその研究は形を成していき。

 彼に共感し協力する者が増えていき、遂には対魔局の重鎮たちすらも突き動かしていた。

 研究は飛躍的に進み、デウス・エクス・マキナは形となった……が、それは完全に見えてこない。

 

 靄が掛かったような光景だ。

 これはどういう事かとヘリオトゥスに聞けば、彼女は「これが限界なのですよ」と言う。

 

「これは時の流れからくみ上げた記憶の一部。その鮮明度は、その場にいる存在によって変わるのです。デウス・エクス・マキナは正しく神に等しい存在となりました。故に、時の流れの中でその形を正しく記憶させる事は出来なかったのです。その場に私自身もいなかった事もありますがね……さて、これで誰がデウス・エクス・マキナを作ったのかはお分かりいただけましたね? それでは」

「――待てよ」

 

 俺は話を進めようとした奴に待ったをかけた。

 すると、奴は微笑みながら首を傾げる。

 俺はそんな奴に対して、明らかな矛盾を指摘した。

 

「お前は俺がデウス・エクス・マキナを作った人間を知っているのかと聞けば、確かにこう言った――YES……と言いたいですが、これは微妙ですね、ってな? 何故、お前はゲンブ・カブラギであると断言できる筈なのに、そんな曖昧な言い方をした?」

「…………流石に、言い逃れは出来ませんね。ふふ」

 

 奴は微笑む。

 追及してやろうとすれば、バトラーが言葉を掛けて来た。

 

『言い方がよろしくありませんでしたね。含みのある言い方であれば、もう少し別の言い方でも』

「――逸らすなよ。俺は今、アイツと喋ってるんだぜ?」

 

 俺は殺気を出しながら、バトラーをけん制する。

 すると、奴は静かにため息を吐き謝罪を口にして黙り込んだ。

 ヘリオトゥスを見れば何かを考え込んでいた。

 俺は奴に脅しをするでもなく、ただジッと奴を見つめた。

 

「……確かに、言い方が悪かったですね。訂正します……微妙なのではなく、表現がし辛いと言い換えます」

「……どういう意味だ? アレを作ったのはゲンブだけじゃないって事か?」

「……いえ、アレは確かにゲンブ・カブラギが主軸となり創り上げた者です……が、きっかけを与えた存在がいるのですよ」

「……そいつは誰だ」

 

 俺は奴に聞く。

 すると、奴は静かに首を左右に振り――俺は殺気を放つ。

 

「――!!!」

「……お前は確かに言ったよな。知っている事を全て話すと……嘘をついたのか?」

 

 俺は奴を見つめる。

 すると、奴は笑みを浮かべていた。

 

 笑っている。

 が、確実に恐怖していると分かった。

 ポーカーフェイスで平静を装っているだけだ。

 だからこそ、俺は殺気を強めて――心臓に小さな手が添えられた。

 

『主様。それについては私が御話しします。ですので、殺気を抑えていただけないでしょうか』

「……てめぇの事は信用していねぇ……話すなら、さっさと話せや」

 

 俺は殺気を抑える。

 そうして、内ポケットから顔を出す奴を睨んだ。

 

『それでは先ず最初に一言――彼女は何も知らされてはいませんよ』

「……は? 何言ってんだ?」

『ですから、彼女は誰がきっかけを与えたのかを知りません。ただ、時の流れの違和を感じたに過ぎないのです』

「時の流れの、違和…………つまり、本来の時間の流れに無い事が起きたって言いたいのか」

『ふふ、流石ですね……恐らくは、時に干渉する事が出来る存在が、ゲンブ・カブラギに接触したのでしょう。そうして、貴方様のような特異点を生み出し、人類の存続に一躍買った。そういう事です』

「……」

 

 バトラーの言葉。

 一見すれば、限られた情報から話しているように見える。

 が、こいつは最初に会った時から俺に何かを隠していた。

 それを俺に話す気はなく、今も確実に腹に何かを抱えていやがった。

 

 強制的に吐かせる術ならあるにはあるが。

 こいつは人間でも悪魔でもない。

 ましてや、天使長とやらが一目置くような存在だ。

 そんな奴が黙ったまま、素直に自白してくれるとは到底思えない。

 

 ……腹立たしい。隠している事がじゃない。隠していると明言した上で、俺を揺さぶるような言動が一番な。

 

 何を企んでいる。何を考えている。

 分からない、何も理解できない。

 

 どうすれば、こいつから真実を語らせる事が出来る。

 どうすれば、こいつの真の狙いに気づける。

 

 どうすれば――俺はこいつを信用してやる事が出来るってんだ?

 

「……もういい。十分だ……なら、デウス・エクス・マキナを探し出す……事は、現状では無理だったな……なら、魔王の力の欠片その内の一つのありかを教えろ……まさか、それすらも知らないとは言わねぇよな?」

「……いえ、それならばお答えできます……聖なる刃となりし、メレスティア。その所在地は――あそこです」

 

 奴が俺に指を向ける。

 瞬間、光の線が放たれて俺の眉間を撃ち抜く。

 俺は頭をのけ反らせて――記憶と情報が流れ込んできた。

 

「……!」

 

 

 “神殿”――“命無き島”――“天空”――“穢れ無き光の剣”――理解した。

 

 

「……場所は示しました。後は、貴方方にお任せします。我が役目は、此処を守り、貴方方を迎える事だけです……さぁ行きましょう」

「――――っ!!」

 

 奴の体から光が発せられる。

 眩いばかりの光であり、それが俺の視界を潰し――――…………

 

 

 

 …………――――目を、開ける。

 

 すると、ホテルの一室らしき場所にいた。

 ベッドで横になっていて、俺はゆっくりと起き上がる。

 周りを見れば誰もおらず。

 俺は警戒しながら、外へと出る為に扉の方に近寄る。

 

 ノブを握り回せば簡単に開き。

 外へと出れば…………は?

 

 そこには廊下も無ければ、壁も無い。

 広がるのは生い茂った草花であり。

 森の中のような光景が広がっていた。

 

「……?」

 

 外に出れば、扉は勝手に閉じられた。

 振り返れば、そこには何も無く。

 だだ広い森林地帯が広がっているだけだった。

 

 此処は何処か、考えようとして――気配を感じた。

 

 見れば、草花の上に誰かが倒れていた。

 近くによれば、それはサムたちであり……寝てるな。

 

 俺は軽く足でつついた。

 すると、奴らはすぐに目を開けて起き上がる。

 俺と同じように周囲の状況を確認し。

 何事も無かったかのように持っていた装備を確認し始めた。

 

 俺もいつの間にか電源が切られていたチョーカーを起動する。

 そうして、サムたちに言葉を掛けた。

 

《此処は恐らく、魔王の力の欠片が封印された場所でしょう》

「……魔王……例の悪魔の王ですか……また、厄介な地に来てしまったようですな」

《そのようですね……状況を確認します。少し待っていて下さい》

 

 俺はサムにそう伝えて、地面を強く――蹴りつける。

 

 一気に上空へと飛び上がり。

 空から周りの状況を確認し……あぁ、やっぱりだ。

 

 遥か上空から見えるもの。

 それは巨大な島の全貌であり。

 大きな川から流れる水が、島の端っこ下へと向かって流れ落ちて言っている。

 雲は空の下であり……いや、違う。

 

 空の下というよりは、俺たちのいる場所そのものが空。

 この巨大な島は空に浮かんでいるもので。

 周りを魔力で強化した目で見れば、高度な隠ぺいの術式が張り巡らされていると分かる。

 

「……」

 

 結界。いや、異界化に近いのか。

 許可なき者の侵入を拒む為のもので……なるほど。

 

 二つを何とか見つけた悪魔共も。

 隠されたこの島だけは見つけられなかった。

 いや、そもそも、俺自身も今の今まで全く感知できなかった。

 世界中を飛び回っていたというのに、だ……すげぇじゃねか。

 

 俺はそのまま地面へと降下し。

 待っていたサムたちに報告する。

 

「……天空の島……中々に大胆な……ですが、先生でも気づけなかったのなら効果は十分でしょうな」

《恐らくは、天使長の力が鍵だったのでしょう。島の中央の神殿、そこを今から目指します。ついてきてください》

「了解です……お前たち、周りを警戒しろ」

「「了解」」

 

 後ろはサムたちに任せる。

 俺は先頭を歩いて、術式によって邪魔な草を押しのける。

 

 天使長との出会いから。

 急に重要な地に飛ばされたが……これはチャンスだ。

 

 此処で、魔王の封印された力を回収できれば。

 奴の復活を確実に阻止する事が出来る……が、解せない事が一つある。

 

 それは奴が何故、封印された場所を知りながら。

 自分自身でこの問題を解決する為に動かなかったのかだ。

 いや、もっというのであれば特異点だと言った俺に全てをゆだねるような行動をとったのか。

 全てが謎であり、ちぐはぐな気がする。

 

 嵌めらている、そう考える事も出来るだろう。

 が、もしも、俺たちの事を殺す気だったのなら機会は幾らでもあった。

 それをせずに、封印の地に送り届けたのであれば……いや、今はまだ何も言えねぇな。

 

「……」

 

 兎に角、今は封印されたものを確認する必要がある。

 奴がそこへと俺を導いて何をさせたいのかは不明だが……きっと、こいつが指示を出して来るんだろう。

 

 内ポケットにいるであろうバトラーは何も言わない。

 黙ったままの奴は不気味だが。

 今だけは何もせずにいてやろう……そう、敵意が無い“今は”、な。

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