【完結】祓魔師《エクソシスト》は休みたい   作:オタリオン

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122:絶望が進化を促す

【――――Breite dich aus und erfülle(広がり満たせ)――――】

「ほぉ!!」

 

 力を行使し、空間を更に広げた。

 俺の力が辺り一帯に広がり。

 奴の体は一気に燃えて行く。

 そんな奴を見ながら、剣を動かし――“無数の敵”を斬る。

 

「「「――はぁ!」」」

 

 姿の見えないベルクゥリ。

 が、奴は確かに存在している。

 それらを感知し、全てを切り伏せた。

 

 十や百ではない。千を超えるベルクゥリの気配。

 影に潜む気を伺っていたそれらを斬る。

 炎で燃やし尽くし、灰の中を俺は翔ける。

 そうして、影から現れて襲い来るジョーンズとアルメリアの攻撃を――防ぐ。

 

「「――!!」」

 

 一瞬だ。

 意識の外からの強襲。

 精確に急所を狙った一太刀――“見えている”。

 

 剣から火花が散る。

 凄まじい力が加わっていて、大気が激しく振動していた。

 それぞれの魔力が溢れ出し、俺を殺そうと叫んでいるようだった。

 つばぜり合い。が、一瞬で均衡を破り魔力の放出と共に奴らを弾く。

 

「「……っ!?」」

 

 奴らが宙を舞う。

 体勢をすぐに立て直そうとしていた。

 ベルクゥリの気配も感じる。

 更に数を増やして、四方八方から攻撃を放とうとしていた。

 

 時が止まった。

 そう感じる静寂の中で、俺は静かに息を吐く。

 そうして、空を足で蹴る。

 

 瞬き。否、音も無い間に奴らの周囲を駆け抜けて――剣を炎の鞘に納める。

 

「「「……ッ!!」」」

 

 瞬間、敵の体はバラバラになる。

 鮮血が飛び散り、驚愕の表情のまま首が落下する。

 俺はそれらを一瞥し静かに息を吐き――己の体から血が噴き出した。

 

「……!!」

「くくく、残念でしたねぇ……さぁさぁ!」

 

 膝を屈する。

 片手で体に触れれば、肩から斜めに斬られていた。

 何時、どのように――不明だ。

 

 細切れにした筈のベルクゥリは五体満足で地に降り立つ。

 奴は俺のすぐ目の前へと近づき両手を広げた。

 斬ってこいと言わんばかりの態度で。

 俺は舌を鳴らしながら、更に力を行使し――奴の体を圧縮させた。

 

 上から巨人の手で押しつぶしたかのように奴の肉体が潰れる。

 汚い血が床のクレーターに染みついて。

 俺は上へと飛び上がりながら、死角から襲い来るジョーンズとアルメリアに対応をした。

 

「――シィ!!」

「オラァァ――ッ!!!」

 

 手にした剣による斬撃戦。

 その太刀筋はそれぞれで全く異なる。

 流れるように放たれる美しい斬撃と荒れ狂う波のように襲い来る斬撃。

 それらが不規則に放たれて、俺の呼吸を乱そうとする。

 眼前が魔力の線で覆われて、その場から転移をしてもすぐ眼前に二人が現れる。

 

 超スピード。

 驚異的なまでの反応速度であり。

 アルメリアに至っては、体中から血管を浮き出させながら限界を超えていた。

 

「……」

 

 スローに感じる中で、剣を静かに振るう。

 放たれる鋭き斬撃の軌道を逸らし。

 砲弾のように勢いのある剛剣を絡め取りながら相手に返す。

 

 逸らした斬撃が結界や壁に深い傷跡を残し。

 ジョーンズへと返した斬撃は、更に力が加わった状態で放たれる。

 秒の間に、万を超える斬撃が放たれた。

 剣の柄を握る手は激しく振動。

 死の緊張と殺気による心の高ぶり。

 それらが合わさり、互いの集中力を極限まで高める。

 

 空を蹴り移動。

 追いつく敵の斬撃を受け流し。

 此方の攻撃を敵は回避。

 そのまま流れるように連携を取っての攻撃を仕掛けて来る。

 

 右に左、前からと思えば後ろ。

 斬撃の線が無数に現れ消えて行く。

 眩いばかりの光が無数に存在し。

 それらを視界に収めながら、俺は口角を上げて舞う。

 

 呼吸をするごとに体が熱を持つ。

 剣を振るうごとに、刃に感情が伝わる。

 静かな水面に雫が落ち続けて波紋を生み出し。

 

 俺という存在の魂を――変質させていく。

 

 心の高ぶり、感情の発露。

 それを感じながら、俺は剣を回し。

 敵の攻撃を一気に弾き飛ばす。

 

 

「「――っ!」」

 

 敵の胴ががら空きになる。

 敵は僅かに目を見開いていた。

 ガードの動きを感じる。

 が、それよりも速く、俺は敵の腹へと連続で蹴りを放つ。

 

「かはぁ!」

「へへ、やるねぇ!!」

 

 奴らは後ろへと後退。

 アルメリアはガードが出来ておらず吐血。

 ジョーンズは咄嗟に魔力にてガードを固めて軽傷だ。

 

 俺はすぐに距離を取る。

 後退しながら、指を向けて黄金の混じった炎を放つ。

 炎はうねりを帯びて奴らの体に巻き付いた。

 そうして、最高火力にて奴らを骨まで焼き尽くす……が、違和感だ。

 

 攻撃を確実に受けている。

 奴らにはダメージが入っている筈だ。

 攻撃による手応えがあり、この目に映る情報では。

 確実に奴らが死んでいると見えていた。

 

 

 が、俺が瞬きをすれば――“奴らは五体満足で立っていた”。

 

 

「……」

 

 

 俺はゆっくりと床に足をつける。

 ベルクゥリは腰に手を回しくつくつと笑い。

 アルメリアは無言でたらりと汗を流していた。

 ジョーンズは居心地の悪そうな顔をしていて……何だ?

 

 この違和感の正体は何だ。

 そして、あのベルクゥリの余裕の表情は何だ。

 疑問が次々と湧いてきて、俺は少しではあるが――恐怖を感じた。

 

 

「――今、恐れましたね?」

「……だったら?」

「ふふふ、当然の事ですよ。得体の知れないもの、原理が分からない奇跡……人も神も、等しく理解できないものを恐れるものです。故にこそ――もっと恐怖してください」

 

 

 奴が腰に回した手を解く。

 そうして、ゆっくりとその手に――“指揮棒(タクト)”を握る。

 

 

 何の変哲もない銀のタクトだ。

 俺は一瞬の判断にてアレはまずいと判断した。

 だからこそ、力を行使し奴の背後に一瞬で移動して――奴がタクトを上げた。

 

「――“奏でろ”」

「――!」

 

 奴の言葉と同時に、俺の体が――勝手に動く。

 

 瞬間、謎のオーケストラの音楽が鳴り響き。

 ベルクゥリの体から出た影を追いかけるように俺は空を舞った。

 互いに武器を持ち、激しい攻防を繰り広げて。

 音楽が鳴り続ける中で、俺はまるで戦場で命を懸けて戦う兵士のように――必死の形相になる。

 

「――――ッ!!!!」

 

 自然と叫び声をあげた。

 そうして、目の前の影と戦い――心臓を貫く。

 

 だらだらと黒い血のようなものが流れて。

 それを全身に浴びて――背後から剣で刺される。

 

 ごほりと血反吐を吐き振り返れば。

 そこにはアルメリアが大きく目を見開いて立っていた。

 俺はそのまま意識を失い――覚醒する。

 

「「「――――!!!」」」

「……は?」

 

 またしても戦場。

 場所は変わっていない筈だ。

 しかし、俺の目の前には鬱蒼と生い茂るジャングルが広がっていた。

 

 獣たちが鳴き声を上げる中で。

 段々と熱を感じて来た。

 見れば、赤い炎が森を焼いている。

 炎の海と化したジャングルの中で。

 草を掻き分けて現れたのは――デイヴィ・ジョーンズだった。

 

 奴は無言のままサーベルを構える。

 俺も勝手に体が剣を構えて――互いに決闘が始まる。

 

 ガチガチと剣を打ち鳴らしながら。

 俺たちはただの人間同士のようにゆっくりとした戦いを繰り広げた。

 その間にも炎の勢いは増していき。

 体が激しく焼かれて息苦しさを感じる。

 そんな中で、俺はジョーンズのサーベルを弾いた。

 くるくると奴のサーベルが宙を舞い。

 俺は腰を抜かしている奴の心臓目掛けて剣を突き――飛び出してきたアルメリアの心臓を貫く。

 

「かはぁ!」

「……!」

 

 俺はジッと奴を見つめる。

 奴は激しく困惑していた。

 が、不気味な笑みを作りずぶずぶと心臓に剣が刺さったまま俺の前に立ち。

 そっと頬を両手で包んで――口づけをしてきた。

 

「――!!」

 

 瞬間、俺の口の中に血の味が広がり。

 それは俺の胃を満たし、それでも尚、逆流するまで注がれて行き。

 穴という穴から血が噴き出して、俺はそのまま意識をくらくらとさせて――――また、覚醒した。

 

 次々と場面が入れ替わる。

 まるで、映画でも見ているかのようだが。

 その体験も、俺が味わう痛みや苦しみも――現実だった。

 

 ある時は、船の中で爆発に巻き込まれて。

 ある時は、裸の状態で縛られて無数の鼠に体を食いちぎられて。

 ある時は、生きたまま体を錆びたナイフでゆっくりと削がれて行く。

 

 

 ある時は、ある時は、ある時は、ある時は――終わりはない。

 

 

 永遠に感じる時の中で。

 ただ壮大で悲しいオーケストラの音楽が聞こえる。

 微かに見える光の下では、ベルクゥリが指揮棒を振っていた。

 奴は満足そうな顔をしている。

 が、それでも尚、タクトを振り続ける様は、まるで――――

 

 

 ◇

 

 

【先生、貴方は……最低だ。間違いでしたよ、貴方なんかに、弟子入りを申し込んだのは】

「……」

 

 

 エゴンは嫌悪の表情で俺を見る……やめろ。

 

 

【本当に、先生ってぇ……気持ち悪いですよねぇ? 何で生きてるんですかぁ? ふふふ】

「……」

 

 

 アデリナが俺を嘲笑する……違う。

 

【ダーリン? は? お前じゃねぇよ。キモイから死んでくれない? 本当に迷惑だからぁ】

「……っ」

 

 

 クラーラが今まで見た事のない冷たい目で俺を見る……違うって言ってんだろ。

 

 

【チッ、うっぜぇなぁ。金があるから、付き合ってやってただけだろ? 金のねぇ先輩何ていらねぇんだよ】

 

 

 ボブが失望したような目で俺を睨む……やめろよ!!!

 

 

【お前は必要ない。死ね】

「……っ!!」

 

 

 ゾーヤが虫のように俺を蔑む……やめろ!!!!!

 

 

【【【消えろ、消えろ、消えろ、消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ――死ね】】】

 「あああぁぁぁ――ッ!!!!!!」

 

 

 友人の声、生徒の声、世話になった人間の声。

 声、声、声、声声声声声声声声声――――

 

 

 

 

【お前と出会わなければ――俺は幸せだったのによ】

「――やめろッ!!!!!!」

 

 

 

 

 親友の顔で声で、聴きたくなかった言葉が――――…………

 

 

 

 

 …………――――冷たい。

 

「……」

「ふぅ……素晴らしい。素晴らしいじゃないか。流石は我が最愛の男……それでこそ、楽しみがあるというものだ」

 

 俺は地面に倒れ伏す。

 あれからどれほどの時が流れたのか。

 おおよその計算では……一万年以上は経過していた。

 

 それ以上は数えていない。

 数えていられるほどの余裕はなかったからだ。

 膨大な時間の中で、俺は残酷な死や苦しみを経験し続けた。

 

 

 焼かれ、溺れ、刻まれ、埋められ――

 

 轢かれ、破裂し、病に侵され、悪意に沈み――

 

 世界の敵となり、全ての元凶となり――

 

 恨まれ、憎まれ、友から殺され、激しく罵られて――

 

 蔑まれて、そんな友や生徒を自らの手で殺めて――

 

 

 殺し、殺され。また殺されて、殺し………………あぁ、ひどいな。

 

 

 想像を絶する苦しみ。

 精神の崩壊を引き起こすほどの苦痛だった。

 如何に無限に等しい時を生きられたとしても。

 これほどの苦痛や絶望は――心を殺すほどだ。

 

「……」

 

 俺は口から涎を垂らす。

 虚ろな瞳でベルクゥリを見つめながら。

 俺は自らの体に力が入らない事に気づく……いや、違う。

 

 力が入らないんじゃない。

 俺自身が立ち上がる事を――拒絶している。

 

 立ち上がれば、またあの苦しみが待っている。

 目の前の底の知れない悪魔による一方的な悪夢の劇場が始まるのだ。

 心が擦り切れていき、終わりを懇願しようとも。

 悪夢が終われば、次の悪夢が始まり……あぁ、そうだ。

 

 

 永遠だ。

 永遠を生きて、死という概念が最も遠いからこそ――終わりが無い事に怯える。

 

 

 終わりが見えているのであれば。

 誰であろうとも全力を尽くす。

 最初がどうであろうとも、終わりだけでも華々しく。

 だからこそ、人は一生を後悔なく生きようとする……が、俺は違う。

 

 俺は人ではない。

 そして、悪魔のように底なしの欲望も無い。

 ただ与えられた使命を果たそうとするだけの機械であり……そうか。

 

 痛みや苦しみに怯えているんじゃない。

 悪夢を恐れて、立ち上がらないんじゃない。

 俺が最も恐怖を感じているのは――“己自身”だ。

 

「……化け物、か」

「くくく、化け物ですかぁ……ならば、化け物らしく……己が体を血に染めましょうか」

 

 俺がぼそりと呟けば。

 奴はゆっくりとタクトを上げる。

 すると、またしてもオーケストラの音楽が始まり――俺の体は無数の鎖で縛られていた。

 

「……」

 

 椅子に座らされていた。

 体は動かない。

 空は夜であり、真っ赤な月が出ていた。

 

 犬の鳴き声が聞こえている。

 目の間には巨大な木で出来た何かと。

 その下にはぎらぎらとした目で上を見栄がる犬たちがいる。

 

 俺は目の前に見えるそれを――処刑台だと認識した。

 

「「「……!?」」」

「……」

 

 そこには“男が四人”縛られていた。

 四肢を縄で縛られて、訳が分からないといいたげな顔で周囲を見て。

 俺の方を見て何かを叫んでいた。

 

 

 何を言っているのかは分からない。

 が、その顔は知っていて……“サム”?

 

 

「――――!!!」

「何で……どう、して……?」

「さぁご覧あれ!! 我らが王にあだ名す愚か者共。大罪人たちの最期の慟哭をッ!」

 

 奴がタクトを振るえば。

 歯車が回転する音が響き。

 ゆっくりと、サムたちの四肢に繋がれた縄が動き始める。

 俺はその光景を見て、ようやく意識を完全に取り戻した。

 

 俺は必死に動いて拘束を解こうとする。

 が、何故か鎖一つも破壊できない――だったら!

 

「……!?」

 

 力を行使しようとした。

 が、何故か声が出ない。

 俺は激しく困惑しながらも、サムたちの叫び声を聞いてハッとした。

 

 ギチギチと音が鳴り。

 サムたちの手足が赤くなっていくのが見える。

 俺は必死に声を出そうとするが、意味はない。

 

 やめろ……やめろ……やめろッ!!!!

 

 俺は必死に暴れる。

 鎖ががちゃがちゃと鳴り。

 擦れた部分がじんじんと痛みを発する。

 が、鎖は罅すらも入らない。

 

 そんな中で、ベルクゥリが俺の隣に立つ。

 見れば、奴が握っていたタクトは宙に浮いて勝手に動いていて。

 奴はワイングラスに入った何かの液体を飲みながら……涙を流していた。

 

「あぁ、あぁ……何と、美しい光景でしょうか」

「……!」

 

 俺は歯を噛み締める。

 そうして、奴の喉を食いちぎろうとした。

 が、奴には届かない。

 

 奴は俺の頭に手を置き。

 乱暴に動かしてから、髪を掴んで自らの顔を近づけて来た。

 

「そう、その目ですよ。それが見たかったんです……恨め、憎め、怒れ……そして、無力な自分を呪いながら絶望し……我が糧となれ。お前の絶望が、お前自身の価値を高める……“デザート”は決まっていたんだよ」

「…………ッ!!」

 

 奴は俺の髪を掴みながら正面を向かせた。

 すると、サムたちの手足の皮が千切れそうになっていた。

 四人は意識を朦朧とさせている。

 が、情けない俺の表情を見て――微笑む。

 

 

 

「――――」

「……!」

 

 

 

 四人が何かを発した。

 が、その言葉ですらも聞き取れない。

 

 ……伝わった。伝わったよ……分かった。

 

 四人は自分たちの死を理解していた。

 助からない事を認識して、最後に俺に言葉を送った。

 

 

 

 ――“信じている”、と。

 

 

 

 瞬間、ぶちぶちと肉が千切れる音が響き。

 サムたちは微笑んだまま手足を裂かれた。

 そうして、拘束を解かれた肉体は地面に落下し。

 下にいた犬たちに群がれて、貪り食われて行く。

 

「――!!!」

 

 隣では、ベルクゥリが腹を抱えて笑っていた。

 俺は目の前の光景を見ながら、静かに頬を濡らす。

 すると、ベルクゥリが俺の髪から手を離し。

 ゆっくりと俺の正面に立った。

 

 奴は満面の笑みで俺を見つめている。

 きっと今の俺はひどい顔をしているのだろう。

 奴の喜びからしてそうだと分かる。

 奴はそっと俺の頬を両手で包み。

 静かに言葉を発した。

 

 

「ショーは終わりです。それでは――いただきます」

「……」

 

 

 奴が大きく口を開ける。

 俺はそんな奴の間抜け面を見つめて――小さく笑う。

 

 声を出そうとすれば、激しく体が痛みを発した。

 喉から血が噴き出し、口の端から血が流れ落ちる。

 掠れた声。意味も無い言葉。

 それを見ている奴は俺の恐怖を煽るようにゆっくりと近づいて来る。

 

 

 

 ゆっくり、ゆっくりと近づき――“かちりと俺の中の何かが嵌まった”。

 

 

 

 

【――――Zeit zurückdrehen(時よ戻れ)

「あぁ?」

 

 

 

 

 奴が何かを言った。

 が、その瞬間に俺の視界は血に染まる。

 そうして、痛みを感じれば。

 

 光が完全に消えて、闇の世界となる。

 音も聞こえない、何も見えない。

 そんな中で、俺はゆっくりと歩き出す。

 静かに後ろに向かって歩き出す。

 

 

 歩いて、歩いて、歩いて――走る。

 

 

「……!!」

 

 

 全力で走る。

 走って、走って、走って――光を超える。

 

 

 瞬間、何も見えなかった暗闇の中に。

 無数の光が出現し、それが後ろへと流れて行く。

 光が線となり、それが無数となって。

 人の声も聞こえてきて、俺はそれでも走り続けて――眩い光が目の前に現れる。

 

 俺はそれに手を伸ばす。

 伸ばして、伸ばして。

 必死に掴もうとする。

 

 

 

「――届けッ!!!!」

 

 

 

 俺は叫ぶ。

 そうして、光を掴み――――…………

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