【完結】祓魔師《エクソシスト》は休みたい   作:オタリオン

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131:世界の終わり(side:クラーラ)

「……ダーリン」

 

 私たちの戦いが終わった。

 悪魔共は消えてなくなり。

 私たちは拠点にて治療を受けて……でも、ダーリンの戦いはこれからだ。

 

 空に浮かぶ巨大な黒い星。

 突如現れたアレこそが、ダーリンの宿敵だとすぐに分かった。

 アレが悪魔たちを生み出す元凶であり。

 この世界を混沌に陥れようとする存在で……強い、よね。

 

 図り切れない。

 遠く離れていても、その力は嫌でも分かる。

 私なんかじゃ底が見えないほどに強いのだ。

 ダーリンも強いけど、もしかしたら――違う。

 

 ダーリンは負けない。

 絶対に勝つ。

 ダーリンの負ける姿なんて想像できないし。

 そもそも、妻である私がそんな姿を想像する筈がない。

 

 私は両頬を叩く。

 ひりひりと痛みを発するが……うん、大丈夫。

 

 痛みによって思考がクリアになる。

 弱音を吐いても仕方がない。

 私たちが出来る事は、此処でダーリンが帰って来る事を待つだけだ。

 

「信じてる……信じなきゃ」

「……そうです。信じましょう」

 

 足音が聞こえた。

 視線を向ければ、雌犬と……ダーリンの教え子たちだった。

 

 どいつもこいつも私以上にボロボロで。

 包帯で体中をぐるぐる巻きにされていた。

 が、どいつの目も死んではいない。

 確かな希望の光がそこにあり。

 私の愛するダーリンを心から信じていた……良いじゃん。

 

 私は笑う。

 そうして、こうしてはいられないと慌ただしい基地内で仮設キッチンを探そうとした。

 すると、雌犬は何を探しているのかと聞いて来る……はぁ。

 

「料理作るの! ダーリンが帰って来た時に、元気が出るように! たく、そんな事も分かんない訳ぇ? はぁ、つっかえねぇなぁ」

「……ふふ、それならば貴方ではなく私が作るべきでは?」

「あぁ? 何で?」

「それは当然……貴方様が妙なものを仕込むからですよ? “自称”奥様」

「……かっちーん。あったま来たぁ! ダーリンの為に生かしてたけど、悪魔にやられた事にしてぶっ殺してやるよぉ!!」

「ふふ、上等です。例え、貴方であろうとも力を消耗している今なら――ッ!!」

「「「――何ッ!?」」」

 

 

 星が――揺れた。

 

 

 全員が足を踏ん張り耐える。

 机に置いていた機材などが地面に倒れる音が響き。

 女や子供の悲鳴も聞こえて来た。

 私は空を見て――大きく目を見開く。

 

 

「あれ、は……な、に?」

「「「……!!」」」

 

 

 空に――否、宇宙に浮かぶ人。

 

 

 四本の腕に、恐ろしく整った容姿。

 純白の衣を纏い、胸に渦を巻く風穴が開いていた。

 規格外の何かが、そこにいて。

 私たちを見つめていた。

 

 誰しもが固まり、空を見上げていた……アレだ。

 

「……ダーリンが殺すべき存在……全ての元凶……アイツだ!」

「……つまり、あそこにマスターも……マスター」

「先生……頑張って!」

「先生、負けないで!」

「「「先生!!」」」

 

 状況を理解していく人間たち。

 彼らはあそこにダーリンがいると自然と理解していた。

 何も知らない人間だっている筈なのに。

 ランベルト・ヘルダーならきっといると信じて……やっぱり、ダーリンは凄い。

 

 絶望的な状況。

 あんなにも巨大な敵だ。

 普通なら勝てる筈なんて無く。

 誰しもが絶望して、諦める状況なのに。

 誰もダーリンが負けるなんて思っていない。

 

 人類の希望の火は――皆の心に火を灯していた。

 

「「「頑張れ!!! 頑張れ!!! 頑張れ!!!」」」

「……頑張って、ダーリン!!」

 

 人類が一丸となり、ダーリンを――ランベルト・ヘルダーを鼓舞する。

 

 必死になって声を張り。

 拳を天高く掲げて。

 私たちを虫けらのように見つめるそいつを倒してくれと叫ぶ。

 

 

 叫んで、叫んで、叫んで…………ふと、気配を感じた。

 

 

「……?」

「――!」

 

 

 ゆっくりと視線を下げる。

 すると、テントの近くにて……子供がいた。

 

 幼稚園にいるくらいの年齢。

 幼子であり、周りには母親も父親もいない。

 男の子であり、その子は“玩具の剣”を振って遊んでいた。

 

 

 ――違和感を抱く。

 

 

 此処は拠点だ。

 それも防衛の要となる拠点で。

 前線から近い場所であり。

 子供であっても、アレほどに小さな子は此処にいる筈がない。

 

 小さな違和――が、心がざわつく。

 

 ドク、ドクと心臓が鼓動し。

 私は気づけば、声を上げる民衆から離れて。

 その子供へと近づいて行っていた。

 

 分からない。

 何も分からないけど……あの玩具から目が逸らせない。

 

 私はどんどんと歩くスピードを上げる。

 そうして、男の子も此方に気づいて私を見つめて来た。

 

「……」

「……んー?」

 

 男の子は指を咥えながら首を傾げる……人だ。

 

 何処からどう見ても人だった。

 悪魔ではなく、純粋な人だ。

 彼の目には悪意も殺意も無い。

 ただ私を見上げているだけで……気のせい、なのか?

 

 私は子供を無言で見つめる。

 すると、男の子は私から興味を失くして駆けだす。

 私は手を伸ばして、此処は危ないと伝えた。

 が、男の子は私の声など聞いていなかった。

 

 笑いながら走って。

 玩具の剣を振り回していた。

 私は小さくため息を吐く……たく。

 

「ほら、危ないって言ってるだろ! 早く、シェルターに――」

 

 

 私は子供に視線を向ける。

 

 すると、子どもは剣を高く掲げる。

 

 その目は天を見ていて――“キラキラと輝いていた”。

 

 

 ゆっくりと、両手で柄を持つ。

 それを見て、私の全身に――“悪寒が走った”。

 

 

 私は走る。

 

 

 走って、走って。

 

 

 

 全力で手を伸ばす。

 

 

 

 

 が、男の子は剣の切っ先を地面へと向けて――

 

 

 

 

 

「おい!!! それから手を――――――………………

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