【完結】祓魔師《エクソシスト》は休みたい   作:オタリオン

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015:祓魔師と悪魔はほくそ笑む(side:???→ランベルト)

 眼下に広がる色とりどりの光たち。

 空の上から下界を見下ろす神のように、私は“現世”を見つめていた。

 

 欲望が渦を巻くように。

 蛆のようにこの世界で増え続ける下等な人間たちが。

 今宵も自らの欲望のままに生きている。

 

 殺し、殺され。

 愛し、愛され。

 食欲を見たし、愛欲を見たし。

 他者を差別し、命に価値をつけて……あぁ素晴らしい。

 

 何と愚かで、何と滑稽な種族であろうか。

 醜く、欲深く。

 打算に塗れて、ただただ生きるという行為でさえも浅ましさで満ちていた。

 低俗で同じ地に立つ事すらも恥ずかしく思える……だが、我々は人間を疎ましくは思わない。

 

 彼らは我々の為に生きてくれているのだ。

 我々の餌になる為に、己が欲望を満たしてくれている。

 

 欲深く罪深い人間の肉の味とは、苦みがありつつも深みがある味わいで。

 逆に、清廉で美しい心を持った人間は、あっさりとしていながら洗練された味を持つ。

 

 無垢なる者も、汚れ切った者も。

 我々にとっては等しく――“食料”でしかない。

 

 我らは人間を心から愛している。

 彼らの事が私は大好きであり。

 何時も何時も、彼らの顔を見ながら食事をするのが好きなのだ。

 

 最愛のパートナーを、愛する我が子を目の前で丁寧に食す。

 その時の人間の表情からは……何とも言えない喜びが感じられる。

 

「……ふぅん……中々の味だ」

 

 ライツにある三ツ星ホテルのスィートで、私は優雅にワインを飲んでいた。

 ただのワインではない。人間のメスの赤子の血を混ぜ合わせたビンテージものだ。

 香りはさわやかでありながら、味わいはとても豊かであった。

 草原の下で駆けまわる白馬の姿を見ているような気持ちであり……あぁ。

 

 私はワインを静かにテーブルに置く。

 そうして、傍に置いていた“凍ったそれ”を手に取る。

 

「……ふふ」

 

 それは、ゆっくりと時間を掛けて凍らせた――人の目玉だ。

 

 赤や青、緑などもある。

 まるで、宝石のように美しく。

 見ているだけでその者が最期に味わった苦痛と絶望が手に取るように分かる。

 生かした状態で捉えて、時間を掛けて丁寧に一つずつを掬い取った。

 

「あぁぁ……うーん」

 

 長い舌で巻き取るように包み、口の中へと入れて転がすように味わう。

 ゆっくりゆっくりと転がし。

 歯で噛み徐々に力を入れていく。

 シャーベット状のそれからあふれ出る汁と柔らかな肉が溶けていく食感を堪能する。

 上等なワインには“若い祓魔師”の目玉がとても良く合う。

 

 窓から見える絶景を眺めながら、私はそんな事を思っていた。

 人間が暮らしている現世はとてもとても華やかで美しい。

 地獄も素晴らしい世界ではあるが、この世界には醜く汚れ切った欲望が溢れている。

 

 憎悪も、愛欲も――全てが我々悪魔にとっては香ばしい匂いであった。

 

 人間の穢れた魂も味わい深いが。

 こんな世界でも存在している清い存在たち。

 それらから得られる栄養と、心を満たしてくれる清廉さも私にとっては好ましい。

 

 “万人喰らい”として私は覚醒した。

 多くの人間を喰らい、強き祓魔師をも狩って。

 力をつけた私の事を魔王様も一目置いてくださっている。

 その証拠に、“十手”の一人であるあの方は直接私とお話ししてくださり……あぁ、あぁ!

 

 あの時の感動と高揚感は忘れられない。

 魔王様の手として存在する彼らの中の一人。

 そんな尊きお方から、私は信頼されているのだ。

 

 かつての悪魔たちの威厳を取り戻す為。

 かつての人間たちが悪魔に対して抱いていた恐怖を呼び起こす為。

 私はあの方に選ばれて、軍を率いてライツへとやって来た。

 

 私の能力があれば街一つを滅ぼす事は容易い。

 手駒の中には最上級も多くいるのだ。

 奴らを私の手腕で動かす事によって、私の能力も活かしやすくなる。

 

 

 ……ただ、問題も存在する……あの忌々しい奴らの存在だ。

 

 

 ケーニヒは我々にとっては厄介極まりない相手である。

 が、それ以上に我々が危険視する存在がいる。

 

 永遠の時を生き、決して朽ちる事の無い肉体を持つ強き存在。

 たった一度の敗北。それ以外で、奴が我々に膝を屈した事は無い。

 数多の名のある悪魔が奴と戦い。

 悉くが奴の理不尽なまでの力に消されて行った。

 

 

 

 我々は奴を――“死”と呼んでいる。

 

 

 

 人間どもは血濡れの天使だと言っているが。

 奴は天使などという生易しい存在ではない。

 アレは我々を殺す為だけに生まれた死そのものだ。

 多くの同胞は奴によって殺されて、中には生きたまま捕らえられて刻印を奪われた者もいる。

 例え、万人喰らいになったとしても……認めたくは無いが、私では奴には到底敵わない。

 

 正攻法で挑むのは無能で低俗な悪魔くらいであり、力と知恵がある存在は奴を最も警戒する。

 もしも、あれと真面にやり合えるとすれば“黒翼”……いや、やはり十手の方々しかいないか。

 

 間違っても、奴と正面で戦う選択は取りたくはない。

 奴の間合いに入った瞬間に、私であれば逃走を選ぶ……が、そうも言ってはられない。

 

 街一つを滅ぼす事が我々の目的ではあり。

 人間どもの恐怖を呼び起こす事こそが最大の狙いだ。

 

 だが、それをするのであれば、確実にケーニヒはやって来る。

 最近は死の行動はあまり確認されていないようではあるが。

 事が大きくなれば、奴がやって来る可能性は高い。

 

「……だが、今はそれが好都合ではある」

 

 人類の英雄、世界の希望。

 つまりだ、奴が死ねばそれだけで……人類は深い絶望を味わう事になる。

 

 危険はある。

 死ぬリスクは高いだろう。

 だが、もしも私がその偉業を成せば……間違いなく黒翼になれる可能性がある。

 

 いや、それどころか十手の誰かと入れ替わる事も……く、くく。

 

 素晴らしい、素晴らしいじゃないか。

 この私、“死軍のドォルマンダァ”の華々しい出世の第一歩だ。

 不可能を可能にしてこそであり、それを可能にする方法も既に分かっている。

 

 奴は人間としてはとても素晴らしい存在だ。

 人々の為に多くの悪魔と戦い。

 寝る間も惜しんで弱者を救い。

 剰え、人間が最も欲する金でさえも持たざる者たちへと与えている。

 

 あぁ良い。素晴らしいほどに……貴様の“弱点”は明確だぁ!

 

 それほどの事をしておきながら。

 貴様に対して何故、誰も利用すべき存在を用意してこなかったのか。

 いや、分かるとも。低級の無能であれば、人質を取ったところで簡単に制圧されてしまう。

 最上級であれば、少しは知恵が回るだろうが。

 それでも奴の化け物染みた動きについてはいけずに力でねじ伏せられてしまうだろう。

 他の万人喰らいであれば……いや、何も言うまい。

 

「く、くく……あぁ、良かった。本当に」

 

 私のような事を考えられる存在がいなくて安心した。

 私のように綿密な計画を立てられる者がいなくて心の底から安堵した。

 

 机に置かれた木箱。

 強い封印が施された代物であり。

 私が奴を攻略する為に部下を使って探させていた逸品だ。

 奴の弱点を突く事は重要であるものの。

 最後はこれを使う事によって奴にとどめを刺す。

 

 奴の持つ“加護”の事は既に周知の事実だ。

 奴が不死の存在である事は悪魔たちはすべからく認知していた。

 だからこそ、今までは誰もが奴を殺せないと思っていた……そう、これを私が見つけるまではな。

 

 “英雄殺し”……これを守っていた一族はそう言っていた。

 

 不死身と言われた大英雄を殺したとされるもの。

 この箱には元々その武器の残骸が収められていた。

 壊れてはいるが、その効力は失われていない。

 悪魔であれば再生する事も出来ずに殺される。

 

 地獄でも名うての職人により復元された刃。

 既にこれを部下の体で試したが……ふふふ。

 

 勝てる。

 確実に奴を殺せるだろう。

 ケーニヒが来ようとも問題は無い。

 奴らの為に特別な素体も用意してある。

 他にも万全を喫する為の策を幾つも用意していた。

 それらを使って時間を稼ぎ、私は最終目標である――“死を討ち取る”。

 

「は、はは……くふ」

 

 ゆっくりて天を仰ぎ見る。

 そうして、片手で顔を覆いながら私は自らの完璧さに笑みを深めた。

 

 私には野心がある。

 万人喰らいになっても、それで終わりではない。

 私の伝説は此処から始まるのだ。

 その記念すべき第一歩は、人類の希望を奪い去る事で……あぁ楽しみだ。

 

 この私の前で奴は絶望の表情を浮かべるだろう。

 守るべき存在たちに裏切られて、愛していた存在たちに――殺されるのだから。

 

 私は目玉を手に取り一気に噛み砕く。

 ぶちゅりと中身が潰れて、汁が口元から滴り落ちる。

 私はそれを舌で舐めとり、くつくつと笑う。

 

 嵐の前の夜であり、宴の前の余暇だ。

 精々、今この瞬間を心行くまで堪能するといい。

 

 私はワイングラスを手に取り、外に向けて掲げる。

 

 

「偉大なる魔王様に。そして……大英雄の死に」

 

 

 私はにたりと笑う。

 そうして、一気にワインを飲んだ。

 

 あぁ美味い。

 今宵の酒は何時にも増して――格別の味だ。

 

 〇

 

「……っ!」

 

 俺は思い切りくしゃみをする……誰か噂したかぁ?

 

 俺の事を話す奴は五万といるが。

 くしゃみをする時は決まって禄でもない事を話している奴がいる時だ。

 特に陰で俺を眺めているあのサイコ女とかな……いねぇよな?

 

 修道院には来ていない。

 が、家には毎朝来ている。

 それも気配を消して家に侵入し、俺のベッドに入ろうとする。

 その度に、俺は奴を殺して燃やしてから出勤する事が日課になっていた。

 お陰で灯油の定期配達までしてしまう始末であり……くそが。

 

 イライラが積もるばかりであり、自然とガキ共への授業にも熱が入っちまう。

 今現在は、それぞれの適正を見極める為に各々気に入った武器を持たせて戦わせている。

 それも手加減は無しであり、全力での殺し合いをさせていた。

 まぁ刃は潰している上に、銃弾はゴム弾だ。

 俺は優しいからそこだけは勘弁してやったんだがなぁ。

 

 未だに反抗的な態度を取る不良共。

 奴らがデカい声で反抗すれば、他のクズ共もつられるように声を上げやがる。

 それでも、見せしめに不良三人の相手をして半殺しにしてやれば。

 奴らは反抗する事が如何に無駄であるかを理解して命令に従っていた。

 それでも、嫌がったり手を抜く奴がいれば俺が直々に相手をしてやっている。

 

 アイツらが最初に言ったんだ。

 友達を傷つけたくないってなぁ……だったら、友達じゃねぇ俺なら文句はねぇよなぁ?

 

 殺す気でやるように言えば。

 奴らはガチガチとを歯を鳴らしながらも攻撃を仕掛けて来る。

 俺はそんな奴らの腕を爪楊枝を折るようにへし折り。

 泣き叫ぶ暇も与える事無く、内臓シェイクパンチを見舞ってやった。

 ゲロをぶちまけながら痙攣する奴の顔を蹴り飛ばし。

 電撃により意識を強制的に戻して、治癒の魔術によって体力を全快に戻し……ま、そんなもんだな。

 

 馬鹿な奴でも理解する。

 俺を相手にするよりも、ずっと弱い“お友達”とやり合った方がマシだと。

 奴らはそれからは心を入れ替えて全力で授業に取り組んでくれた。

 そうして、死屍累々の奴らを纏めて治療してやってから全ての授業は終わった。

  

 ぶっ殺して蘇生して……まぁ一回やれば理解はする。

 

 授業が終われば互いに気まずそうにはするが。

 二日三日経てば、日常の一コマとなりまた普通に友達として会話をしていた。

 中々に適性のある奴らだとは思う……が、まだまだだ。

 

 武器の適正が分かれば、その武器にあった訓練を施す。

 その後はいよいよ悪魔との戦闘ではあるが……今はそれよりもこれだな。

 

 俺は孤児院へと未だに足を運んでいる。

 校長にはまだ聞きたい事があるからと適当に理由をつけてある。

 残業代は流石に出ないが、別にそんな事はどうでもいい。

 

 俺がやってくれば、ハゲの院長は俺が餓鬼共と触れ合いたいのだと勘違いして。

 俺をあの餓鬼共の中へと放り込み、一人で優雅なティータイムに行ってしまう。

 中年ババア共は適当に子供に声を掛けるだけで何もしない。マジで何もしていない。

 奴らは憎たらしい顔で手加減なしの急所攻撃をしてくる。

 そして、クリーニングしたばかりの俺のスーツに泥や鼻くそをつけるのだ。

 中には小便を引っかける奴もいたが、それでもババア共はへらへらとしてやがった……後で絶対に皆殺しにするからな。

 

 子供が好きとか嫌いの話じゃない。

 俺は奴らを人間としてカウントしていない。

 何方かと言えば、悪魔のように見ていた。

 

 ちょっとしたイタズラ? まだ子供だから? ――関係ねぇよ。

 

 子供であろうとも礼儀を知らなければ殺される。

 過去の歴史を見れば分かる事だ。

 王族の奴らに無礼をした者で、子供であったから許されたなんて話はねぇ。

 だからこそ、子供であるからこそ、親となる存在が目を光らせて教育をする。

 立場のある人間の子供を見れば分かる筈だ。

 奴らは世間の目を気にするからこそ、子供に対しては徹底してきびしい教育を施す。

 

 調教と言ってもいい。

 犬が人を噛まないようにする事と同じだ。

 俺も教師として働いているからこそ分かる。

 奴らは必要な教育を放棄し、奴らを人間として育てていない。

 だからこそ、あんな半端な悪魔もどきになり果てる。

 

 哀れであり、惨めであり――どうでもいい。

 

 奴らが何処で死んでも俺は関係ない。

 この先でどれだけ惨めな思いをしても俺は悲しまない。

 寧ろ、上等な酒を飲みながらほくそ笑むだろう。

 この手で今すぐにでもあの世へ連れてやってもいいが……まぁいいさ。

 

 奴らに強い憎しみを抱いてはいるのは確かだ。

 マジで、あいつらを悪魔という事にして始末しようとも思った……だが、俺は思いとどまった。

 

 もしも、此処でアイツらを皆殺しにすれば。

 確実にケビンの奴は保護されて別の場所に移されるだろう。

 用もなく奴を尋ねる事は出来ない上に、子供を皆殺しにした俺を保護した職員共は絶対にケビンに会わせようとはしないだろう。

 アイツがいなければ俺はこれから先、残りの百ポイントを一人で集めていく事になる。

 二百ポイントを達成するまで、どれだけの年数を要するかは分からないのだ。

 だからこそ、大海の如き殺意を無理矢理に抑え込む他ない……我慢だぁ、我慢だぁ。

 

「……」

 

 俺はカタカタとパソコンを操作する。

 ケビンとの話し合いを纏めた計画書のようなものを作成している。

 奴の話によれば、どうやらアイツのセンサーが反応する場所には明確な違いがあるらしい。

 人があまりいないような店ではセンサーは鈍いようで。

 逆に人が多い大型ショッピングセンターなどではセンサーがびんびん反応するらしい。

 恐らくだが、ハッピーライフ社は意図的に人の多い場所に当たりが入っている商品を届けているのかもしれない。

 そうする事によって、商品を買ってくれた人間たちが当たりが入っていると認識するからで。

 逆に売れ行きがよくないところでは当たりの数も減らしているのか……まぁ予想だがな。

 

 ケビンは過去を振り返っていた。

 そうして、奴は顎に手をあてながら決め顔でこう言っていた。

 

 

『でも、一番当たりが出やすかった場所は――“ミズギー・ランド”だったんだ』

 

 

 ミズギー・ランドとは、子供から老人まで幅広い年代層が集まる大型テーパマークだ。

 マスコットキャラたちは何かの動物をモチーフにした者ばかりであるが。

 そのどれもが季節に関係なく、年中水着を着用している。

 子供にとってはどうでもいい事であるが。

 大人たちにとってはキャラクターよりも、一緒にいるスタッフの男や女の方が嬉しいらしく。

 美男美女が水着姿で出迎えてくれるからこそ、子供よりも大人の方が多いんじゃないかと言われていた。

 何とも怪しげなパークではあるが、人気は人気であり。

 ライツの中でも指折りの場所だ……本当に当たりが多いのかぁ?

 

 ミズギー・ランドには確かにハッピーライフ社も一枚かんでいる。

 スポンサーの一つであり、ランド内にあるお土産コーナーにはミズギー・ランド専用のシビレマメの商品が置いてあるようだった。

 値段は夢のように高いが、ケビン曰く、三十個に一つは入っていると言っていた……本当かなぁ。

 

 夢価格の菓子を三十個も買ったのかと聞いてみれば。

 孤児院の友達の分も選んでやったそうで。

 その時にシールと自分が持っていた私物を交換したと言っていた。

 そこまでして奴もプラチナムが食べたかったのかと思いつつ。

 そこまで言うのならと一応は信用してやった……さて。

 

 生徒と孤児院の餓鬼共との触れ合いの計画は。

 本来であれば学校側の教職員たちが話あって決めるものだ。

 過去にどのような事をしていたのかを見れば、修道院に招いたり。

 各々のクラスごとに、それぞれの孤児院にてしてやる事を発表するのだ。

 中には二クラス合同で行う年もあったと記録を見た時に知った。

 

 公園で一緒に遊んだり、動物園に連れて行っている年もあった。

 が、流石にテーマパークに連れて行けるだけの経費はねぇようだ。

 それもそうであり、ミズギー・ランドの入場料はそこそこの値段がする。

 孤児院のガキ共だけでも相当な金が必要であり、そこに生徒の分も合わせれば……だが、俺には策がある。

 

 スマホを取り出す。

 そうして、ルインを起動すれば、先ほどまでの鬼畜眼鏡とのやりとりが残っていた。

 俺から奴に頼みごとをするのは稀であり。

 俺自身も奴に借りを作るのはすこぶる嫌だったが。

 今回ばかりは奴の力を使う他ないと判断した。

 

 内容はこうであり、孤児院の奴らをミズギー・ランドに招待したいというものだ。

 俺の目的は隠しつつも、孤児院の餓鬼共も大人になる前にそういった所で遊びたいのではないか。

 そんなもっともらしい事を言ってやれば、奴は勝手に勘違いして俺の提案をあっさりと承諾した。

 

『君が僕に頼み事をするなんてと思ったけど……本当に君は子供が好きなんだね』

『全然違う』

『ふふ、そういう事にしておくよ……それじゃ、上には僕から言っておくから。子供たちと一緒に楽しんでね』

『サンキュー』

 

 完璧だぁ……これでミズギー・ランドに入る手段は確立した。

 

 後はこっそりとケビンを動かし。

 シビレマメを品定めするだけだ。

 お土産用のシビレマメはフレーバーの違いはあれど。

 その価格設定は基本的に同じであり……一つが大体が五ユーロくらいだ。

 

 五十ポイント分を確保するのであれば、最低でも300……いや、万全を期して600は必要か?

 

 それだけは俺のポケットマネーで支払うしかない。

 土産の菓子で三千ユーロも使うのは正気の沙汰ではない。

 が、ケビンの能力が本物であるのなら三千ユーロでは決して手に入らない至高の一品が俺のものになる。

 

 五十年だ……この俺様を待たせたんだ……もう十分だろう。

 

 地獄の労働、ガキどもの御守り。

 俺は十分に頑張った筈であり。

 神とやらもこの俺に対して正当な報酬を与える義務がある。

 人間が神の子であるのならば、俺は子として親から頑張りの報酬を貰う権利がある。

 

「……っ」

 

 俺は震える。

 そうして、片手で顔を覆い隠しながら……歓喜する。

 

 俺は報われるんだ。

 このクソみたいな呪いで狂った俺の長い人生。

 その中でようやく手にする事が出来る幸せだ。

 他人にとっては小さな喜びでも、俺はその小さな幸せを手にする為に頑張ったんだ。

 

 

 だからな、ケビン……俺の信頼を……無にするな。

 

 もしも、お前が、俺の信頼に泥を塗るのであれば……俺はお前を……“殺さなくてはならなくなる”からよ。

 

 

「……」

 

 

 俺は片手を顔から離す。

 そうして、表情を無にして計画を更に綿密に練り上げていった。

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