あれから暫く探索し、ゴミ共を蹴散らし……ようやく見つけた。
悪魔を討伐する依頼を受けたという情報を聞きつけて戦場に行けば。
アイツが今まさに依頼を終わらせたところで。
キャラの上の方にはプレイヤーネームであるロクマルイチが表示されていた。
だからこそ、俺はにこやかな表情で片手を上げて近づき――攻撃された。
『やぁご機嫌――よぉ!』
『失せろ』
問答無用の攻撃であり、その攻撃の速さは尋常では無かった。
その滑らかな動きからしてVRを使っていると判断。
俺はすぐにショートソードを振るって奴の攻撃を弾いた。
動きに制限があり、相手はこのゲームに慣れている。
中々に厳しい戦いになると思ったが、結果から言えば俺は生きていた。
そもそも、ロクマルイチを殺す事が目的じゃない。
アイツと話をして、アイツの悩みらしきものを聞き出すのが目的だ。
俺は作業のように奴の斬撃を弾き、にこやかに会話を続けた。
すると、アイツは舌を鳴らしてあろうことか手榴弾をばらまきやがった。
流石にやべぇだろうと判断し、距離を取って……奴は消えていた。
そこからも大変であり。
街へと戻り探そうとすれば。
あのクランの奴らが俺に報復をしてきて。
俺がそれを返り討ちにして、ようやくロクマルイチを見つけたかと思えば逃げられて……三日経ったが、まだ話すら出来ない。
教室ではアイツは完全に孤立している。
授業には形だけは参加しているが。
それでも、クラスでは腫れ物のような扱いだ。
奴自身も苛立ちを表すように殺気を放っているのがよろしくはない。
それとなく話しかけても無視であり……はぁぁ。
防犯教育の準備も進めながら。
カブラギの野郎のケアもしなければならない。
両方しなくてはならないのが教師の辛いところだ。
俺はそんな事を考えながら、今日も今日とてロクマルイチを探し……いたいた。
三日も経てば、それなりにゲームの世界にもなれた。
俺の装備も一新し、初期武器のショートソードを二本携行し。
デザートイーグルも二つ装備してあった。
実用性は皆無なでかぶつには慣れており、ゲームでも逆にこういうのが安心する。
防具はロングコート風のカソックにフード付きで。
眼鏡に慣れた生活を送っていたので、顔に何かつけたいなぁと考えて。
日之国のアニメとコラボアイテムである“ヌンジャハッタリ君”のお面をつけておいた。
西洋西部劇風の店の扉を押して入る。
そうして、片手を上げながら仏頂面のいかつい男に話しかけた。
「やぁやぁやぁロクマルイチ君。今日もいい天気だねぇ。絶好のぶっ殺し日和だ。ははは!」
「……チッ」
「ははは! 舌打ちは良くないよぉ。おじさん傷ついちゃうなぁ」
さびれた酒場でバーガーを喰うロクマルイチ。
プレイヤーやらNPCやらが疎らにいやがるな。
近寄って来たウェイトレスにビールを注文しておいた。
食事中だったロクマルイチの前に座る。
そうして、奴を見ながらショートソードを――抜き放つ。
「――え!?」
上に構えて振るえば、甲高い音が鳴り響き。
暗殺者風の兵士が驚いていたような声をあげた。
気配を殺して待ち伏せていたようだが、明らかな装いの上にチラチラと見ていたのでバレバレだ。
俺はそのままデザートイーグルを抜き、後方に銃口を向けてその間抜け眉間に向かって弾丸を放った。
硬直状態の敵は呆気なくヘッドショットを決められて、そのまま床に転がった。
絹を裂くようなウェイトレスの悲鳴。
それを無視して俺は会話を続けた。
「最近はどう? 上手くやれてる? なんか悩みとか無い? おじさんこう見えても人生経験が豊富だからさ、何でも答えちゃうよ? ん?」
「……目障りな奴がいる」
「ほぉ!! そいつは誰だい? 是非、聞かせて欲しいねぇ」
「……ん」
ロクマルイチが指を前に向ける。
俺はゆっくりと振り返ったそこには誰もいない。
いるとすれば、髭面の大男で口にソースをべたべたとつけながらビックサイズのバーガーを頬張っていた。
肩には何故か見覚えのある猫のようなタトゥーを入れていた。
「あぁ、分かる分かる。アレはいただけねぇなぁ。あのタトゥーは何処からどう見てもキ〇ィちゃんだ。版権的によろしくない。訴えられたら、百パーセント負ける。サ〇リオは手強い。夢の国の住人特有の夢のような金額をせびられちまうだろうさぁ。関係ねぇけど、自販機のジュースの値段が倍以上するってのはどうなのよ? 夢を見る粉でも」
「――やめろ。よく分からないけど……その話はするな」
ロクマルイチは俺の話を止めさせる。
俺はカラカラと笑いながら、冗談だと言ってやる。
すると、奴は盛大に舌を鳴らした。
俺はそのままショートソードを――横に構える。
「オラァァ!!! 死ねやぁぁぁゴミ野郎ォォォ!!!」
酒場の扉を蹴り破って現れた巨漢のモヒカン頭。
その手にはミニガンを持っていて――乱射する。
無数に放たれる弾丸。
俺は剣を無駄なく振りながら、弾丸を全て切り払う。
ロクマルイチも気づけば、剣で敵の弾丸を切り払っていた。
弾丸が空になれば、モヒカンを押しのけて雑魚共がなだれ込んできた。
そうして、あっという間に俺たちの周りを取り囲む。
観念しろだのなんだの言っているが無視。
「なぁ、あるんだろぉ? 滲み出してるぜぇ悩んでいて夜も眠れませんって感じだ? 聞かせてくれよぉ」
「……黙れ」
「行けェェ!!」
「「「オオォォォ!!!」」」
襲い来る雑魚共。
俺は椅子を態と倒して、後ろに倒れる。
すると、ナタのようなものが眼前を通り過ぎていく。
そのまま俺は床を蹴りつけて後ろに転がり。
デザートをぶっ放して一気に三人の頭をぶちぬいた。
他の奴らが背後から攻撃してきて、俺はショートソードで弾丸を斬る。
そのまま、流れるように横に飛んで回避したつもりの間抜け共の頭を撃ち抜いた。
一瞬にして端末を取り出し、床の上で転がり血を噴き出すチンピラと写真を取る。
すぐぬカメラを仕舞って、敵の攻撃を避けながら弾丸を放つ。
すると、飯を食いながらロクマルイチが何をしているのかと尋ねた。
「実績解除」
「何の?」
「友達とのツーショット――達成。よし」
目の前で実績が解除されたと表示されて、課金装備を買う上で必要なものを少し手に入れた。
小さくガッツポーズし、そのまま頭を横にずらして弾丸を避ける。
そうして、流れるように間抜け面の男にヘッドショットを決めた。
大柄のデブがハンマーを振って攻撃してくる。
NPCが吹き飛ばされて、ビールを持っていた姉ちゃんもハンマーに当たってバラバラになる。
俺はデザートを二丁持ってからくるりと回し。
奴の頑丈な防具の隙間に向かって弾丸を撃ち込む。
「イチ、ニィ、サンヨンゴ――はい、おまけ」
「……ッ!! ……ッ…………」
ガンガンとリコイルを感じながら大口径の弾丸をぶっぱなし。
奴は足を撃たれれてくぐもった声を上げて。
そのまま手の関節も撃ち抜かれた上に、喉元を撃たれて転がる。
何故か防具のない股間にも一発お見舞いすれば、奴は泡を吹いていた。
ぴゅーぴゅーと笛の音が鳴り、奴はそのまま血だまりに沈んで絶命した。
俺はそうして、デザートを仕舞い。
飛んでくる弾丸を転がりながら避けて、頑丈そうな分厚い机を盾にした。
そうして、偶々転がっていた樽を叩き壊して手でビールを掬う……あぁぁ。
「元気の素チャージ完了――ゴゥ!」
俺はデザートを両手にマガジンを排莢。
腰のマガジンを装填し――飛び出す。
「こ――ん――ち――わぁ――」
「「「――ッ!!!」」」
スローモーションに感じる中で。
流れるように弾丸を放つ。
ガンガンとリコイルを感じ、マズルフラッシュで視界が弾けるような感覚を味わった。
そのまま弾丸は吸い込まれるようにチンピラ共の頭を撃ち抜く。
死体の穴から噴水のように血を噴き出し、そのまま床に転がっていく。
俺は床を転がっていき、そのまま流れるように立つ。
またしても、一瞬にして武装を二刀流に変える。
残りのチンピラ共はすぐに俺を取り囲んだ。
四方八方からマシンガンで攻撃してくるアホ共。
流れ弾が生き残りのNPCやプレイヤーたちにあたり肉片が飛ぶ。
ロクマルイチを見れば華麗に避けながらバーガーを食べていた。
チンピラ共はフレンドリーファイヤだけは警戒しており。
俺は流れるように剣を振るって全ての弾丸を弾いていき――意図的に流れ弾を敵の頭に当てさせた。
チンピラ共は悲鳴も無く絶命する。
そうして、無数の死体が床に転がり。
リアルな血と硝煙のくせぇ臭いを感じて――巨漢が叫ぶ。
「爆ぜろやァァァァ!!!!」
巨大なバズを構える馬鹿。
「安全装置ッ!!!」
「――え!!?」
俺は叫ぶ。
すると、奴は一瞬バズを確認した。
俺はそんな奴に向かって間髪入れずに剣を投げる。
くるくると剣が回転し、吸い込まれるように巨漢の頭に刺さる。
そのまま奴はよろよろと後ろに下がり――仰向けに倒れる。
バズの弾が発射されて、道の向こうで爆ぜた音が聞こえた。
悲鳴やら叫びが聞こえた。
そうして、カラカラと車輪と乳母車がが前を通っていく……見なかった事にしよう。
俺はそのまま無事である椅子を手に持つ。
服についた返り血は取れないから、軽く埃を払う。
そうして、再びロクマルイチの前に座る。
「で、何処まで話したっけか……あぁそうそう。悩みだ、悩み……本当にねぇの? 人生バラ色って奴か? お前、バスケ選手かサッカー選手か? 抱いた女は星の数。スキャンダルはクソ拭いた紙とと共に洗い流すってか?」
「……お前には関係ないだろう……何で、僕に構う? お前は僕の何だ?」
「何ってそりゃ……そう、ファンだよ! お前のファン、めっちゃ好きなんだよ。サインも欲しいねぇ。出来たらキスもつけてくれ、メ〇カリでそっち系の人たちに高値で売れるから――あぁ嘘嘘! ほら、アレだアレ……アレだよ!」
「……ファンって言うんだったら、何処が好きか言えるのか」
「おぉ? 言える言える。えっとだなぁ。先ずはイカれているところが好きだ。問答無用で襲い掛かって来て、ゲームとはいえこんな惨状でも食事が出来るところがいいねぇ。そのアバターの見た目といい、映画で見たアレみたいだ……ほら、黒いコートにムキムキサングラスで日本刀を振るう。ヴァンパイアハンターのさぁ。後はすげぇ生意気なところもいいな。人生イージーって感じで擦れてるところはガキっぽくて好きだねぇ。時折、浮かべる笑顔はチ〇ッキーみたいにキュートだぜ。ははは」
「……お前、死にたいのか?」
奴は殺気を放ちながら怒りを滲ませる。
俺はそんなつもりは無いと言いながら。
それならばと答えを改める。
「……ま、でも……律儀だとは思うぜ? 最初こそ殺伐としたもんだたけどよ……結局は、俺みたいな奴の相手もして、略奪はしていない……そこそこ善良なんじゃね?」
「……あ、そ……お前、祓魔師だろ。それもかなり上位の」
「お? 分かるか?」
「……あんな動きが出来る理由は、それくらいしか考えられないだろう……はぁ、たく」
ロクマルイチはため息を零す。
そうして、飯代を律儀に置いて出て行った。
俺もゲーム通貨を出して、無事な机の上に置いておいた。
奴の後を追い掛けて出て行く。
扉に触れれば、ガラガラと崩れ落ちて。
「はぁ、現実でもそうそう……いや、よくあるな。うん」
「……」
改めて店内を見れば死屍累々だった。
本当にイカれたゲームだと思うが、現実でも俺はよく見ていた気がする。
死体から剣を抜いて鞘に戻し、俺たちは炎を上げる街を歩いていった。
◇
時は流れて……一週間くらいしか経ってねぇけどな。
あれからしつこく付き纏っていれば、ようやく会話らしい会話も増えて来た。
一緒に依頼を熟して、レアアイテムを探しに行き。
ランカーのようにボスのような悪魔たちと戦って。
ゲーマーらしくゲームを楽しんでいた……ま、現実は散々だけどな。
もうほとんど空気になっている。
いや、そもそもアイツは学校を休んでいやがった。
そもそも、来ていないのであればどうする事も出来ない。
ゲームばっかりしているようで、俺が来るのを待っているようにも感じた。
非常にまずい状況であり、唯一エルナやアデリナだけが救いだ。
後はエゴンもそうだろうが……そろそろ、何とかしねぇとな。
そんな事を考えながら、今日もゲームをプレイする。
街から大きく離れた場所。
霧が薄っすらと立ち込める湖。
敵も存在せず、他のプレイヤーの姿も見えない。
そこで二人で並んで腰を下ろし、竿を持っていた。
ぽつぽつと何気ない会話をする。
平和な日常の一コマって感じだろう。
会話のキャッチボールを繰り返していけば。
急にロクマルイチは黙り込む。
俺は不必要に喋る事無く、奴が話してくれるのを待った。
待って、待って、待って……奴がゆっくりと言葉を発した。
「……僕は……普通の人生を送ってみたかった」
「……分かるぜ。すげぇ分かるよ。青春時代の普通ってのは難しいもんだよな……歯の矯正に、エロ本コーナーでの立ち読み、夜のスポーツに、えぇビデオの鑑賞会……普通ってのは難儀なもんだ」
「……お前の普通を僕のものと一緒にして欲しくないんだけど? 盛りのついた猿なのか?」
「エネルギッシュな若者ってのは猿と一緒なんだろ? ウキウキして黒いバナナをむきむき……あぁ悪い。青少年にはよろしくなかったな。どうも話せるってなると心の声が漏れて仕方がねぇ。お口にチャックってやつだな、俺のチャックはぶっ壊れているけど」
「……はぁぁぁ、何でこんな下品な奴なんかと」
ロクマルイチは大きくため息を零す。
そんな時に奴の持つ竿が震える。
ロクマルイチはすぐに竿を引き上げて……小魚だな。
「チッ、外れだ……本当にレアアイテムが釣れるのかよ」
「ははは、釣りってのは忍耐が大事なんだよ。ナンパと同じで、獲物がくいつくのをジッと……来た!」
俺は竿に反応を感じた。
だからこそ、すぐに竿を引っ張って……デカいな!
中々の反応であり、これはレアアイテムだと感じた。
俺は渾身の力を込めて竿を持ち上げて……あぁ?
釣る事が出来たのは――タライだった。
「……忍耐が、何だって? おっさん」
「……ま、こういう事もある。上物が化け物だったなんてしょっちゅうよ……ふぅ」
俺はタライをアイテムボックスに入れる。
そうして、どかりと座って糸を垂らす。
「……で? 普通ってのは何だ? 今に満足していないって意味か?」
「……あぁ、そうかもしれない……僕はこう見えて学生なんだ。修道院のね……でも、本当は違う」
「……えぇ? 学生じゃないって……どういう意味だよ?」
「……お前に説明しても分からないよ……いや、分かったらきっと……兎に角、僕は普通ってものに憧れたんだ。だからこそ、父さんに無理を言って修道院に入学させて貰った……けど、僕の想ってた普通は……想像と違っていた」
奴は語る。
周りの奴らは馬鹿ばっかりで。
低レベル過ぎて話にならないと。
群れなければ何も出来ない奴らで、邪魔でしか無いと……擦れてんなぁ。
「……あんな奴らしかいないんだったら……来るんじゃなかったよ」
「……ま、ありがちな悩みだな。想像と違っていたなんて話はざらだ。出会い系が正にそれだよ。はじめましてぇ、あれ? 写真と違いません? おほほ、ちょっと盛ってしまいましたわぁ。シュークリームの中身がハンバーグだったらがっかりするだろうよ、いやマジで」
「…………まぁ、何となく分かる」
奴は俺に気を遣った。
互いに無言で竿を掴む。
俺は難しいと思いながらも、何とか言葉を選んで話した。
「まぁ、何だ……確かに、想像と違ったらがっかりするし、すげぇムカつくだろうよ……けど、それすらも実際は違ってたらどうだ?」
「……? どういう意味だよ?」
「あぁ、その、アレだ……例えばだ! クレープは甘いもので、日之国の肉まんってのは肉が入っている! 違うか?」
「……まぁ、そうじゃないの?」
「そうだ、それが普通って奴なんだろうよ……けど、俺は最近になって知ったが。クレープにツナマヨをトッピングしたもんもあるし、肉まんに肉じゃなくてあんこをぶち込んだあんまんなるもんがあるってな……想像できるかぁ? 甘いもんをおかずみたいにして、肉入れるやつに甘ぇもんをぶち込むんだ。正直、そそられないって思った……けどさ、実際に喰って見れば……中々にいけるんだぜ?」
「……えっとさ、だから……何?」
奴は微妙そうな顔をして首を傾げる。
俺は頭を掻きながらため息を吐く。
そうして、膝を叩いて奴を見つめる。
「俺が言いてぇのは、食わず嫌いで見ただけの事で全てを判断するのは良くねぇって事だ。全知全能の神じゃあるまいし、ちょっと見ただけで全部知った気で語るのは相当な間抜けか、ピュアなユニコーン君ちゃんくらいだろ……そのアホ共にだって、実際に話しかけた訳じゃねぇんだろ? 何が好きで何が嫌いかも知らねぇ。見ただけで判断するのは面食いの姉ちゃんと同じだろうよ。先ずは話す! そして、遊ぶ。そっからはぁ……まぁ考えろ!」
「……お前、適当過ぎるだろ……はぁぁ……でも、まぁそうかもしれないな。アイツらの事、僕は何も知らないし……馬鹿だとは思うし、下ネタを言う猿みたいなのもいるけど……でも、今更どうやって……」
奴は浮かない顔をする。
俺は糸口はつかめたと此処でアシストを行う。
「そういえば、俺のダチは修道院で働いているだけどよぉ。ライツでな? クラスを受け持ってるって言ってたなぁ」
「……それ、本当か? どんな奴だ?」
「えっとだなぁ。眼鏡を掛けていて、ぼさぼさの汚ねぇ色の金髪に、無精ひげで、スーツの似合う……ってのは誇張しているが。兎に角、冴えないおっさんだよ」
「…………アイツだよな…………多分」
ロクマルイチはぶつぶつと何かを言う。
俺はそいつから色々と聞いていたと明かす。
「すげぇ心配してる奴がいるらしくてさぁ。クラスで孤立していて、見てられねぇってな」
「…………」
「そいつは別に仲よくしろとは思ってないらしいが……せめて、誰しもが快適に学校生活を送れるようにしてぇって願ってたぜ?」
「……別に、そいつが満足してたら……」
「満足してるんだったら、きっと殺気なんて放たねぇだろうよ」
「それは…………? 待て、殺気って何でお前が……っ! ま、まさか、お前!!」
やべ……俺は立ちあがる。
そうして、腕に時計もつけてないのに時間が無いと叫ぶ。
奴は俺を逃がすまいと襲い掛かって来るが俺はそれをひらりと躱す。
ちらりと奴を見れば、ごつい男のアバターが女子みたいに赤面してやがった……うへぇ。
「殺す!! 殺してやる!!!」
「ははは! 普通になれるように頑張れよー! きっかけくれぇなら作ってやるからさぁ!」
「待て!!! このクソ教師!!」
「ははは! 待たねぇよ!! ちゃぁぁんと休まずに学校に来いよぉぉ! 待ってるからなぁぁ!!」
俺はそれだけ言ってログアウトを押す。
奴は最後まできゃんきゃんと吠えていて――――ふぅ。
現実世界に戻って来た。
俺は声を出そうとして……やっぱ無理か。
「……」
俺は小さくため息を吐く……が、目的は達した。
アイツの悩みを聞いて、アドバイスも出来た。
アイツは馬鹿じゃねぇからすぐに理解を示した。
後は俺がきっかけを与えてやるだけだ。
カーテンを閉めている事もあるが、外はすでに暗いようだ。
手を叩いて電気をつける。
そうして、時計を見れば……もう八時か。
飯はまだで、寝るにも早い。
それに、準備を進める事も忘れちゃいけない。
作業用の机の上には、色々なものが散らばっている。
その横には段ボールに入れられた完成品たちがある。
俺はため息を吐く……もうちょっと頑張るか。
夜なべする覚悟だ。
任された仕事はちゃんとやる。
そう思いながら、俺は肩を鳴らしながら椅子から起き上がり。
そのまま作業机に向かっていった。