【本編完結済】女先生に愛を伝えて結婚するだけの話 作:秋月 ヒカリ
状況はミカルートと同じで、先生に一目惚れせずにサオリと初対面してからになります。
「vanitas vanitatum et omnia vanitas・・・」
「確か、サオリが居たところで教え込まされた言葉だっけ?それ」
「ああ…全ては虚しいもの、と教え込まされた言葉だ」
「なんでそれを今?」
「少し・・・怖くなった。タクミと出会い、夢も叶えて全てが幸せな今が・・・ふとした瞬間に、消えてしまうのではないかとな」
自宅のソファーの上で俺にもたれ掛かりながら、どこか不安げな瞳で、手に持ったマグカップに視線を落とすサオリ。
人は幸せを求めるのに、それを手にしたら、今度は失うことを恐れる・・・。
難儀な生き物だよな・・・。特にサオリの場合は、過去が過去だけに、余計にそう感じるのだろう・・・。
「そんなに心配するな・・・って、言葉を掛けたって不安は拭えないよな・・・。よし!サオリ、明後日に少し出掛けようか」
「かまわないが・・・どこへ?」
「う~ん・・・内緒!」
不思議そうにしているサオリにそう言って、その日は二人で早めに就寝した。
~回想~
「タクミ、この場合はどう処理するのがいいだろうか?」
「ああ、これは・・・」
錠前さんと出会ったあの相談から数ヵ月、俺はシャーレの仕事にもかなり慣れた。今ではこうやって、先生を目指すためにとシャーレの仕事を手伝いに来る錠前さんに、仕事を教えることもできている。
「・・・なーんか、タクミくんとサオリの距離感、近くない?」
「・・・?そんなことはないぞ、ミカ」
「そ、そそそそうだぞ?聖園さん?」
「滅茶苦茶、動揺してるじゃんね☆」
まったく、俺と錠前さんの距離が近いだって?・・・意識しないようにしてんだから、指摘しないでよ聖園さんんんーーー!!
そうなんだよっ!なんでか知らないけど、あの相談の日以降、やたら懐かれて?距離感近いんだよ!!こちとら思春期男子よ?ぶっちゃけ、あの日この人の笑顔に惚れた俺が、冷静でいられるわけないでしょうーーーー!?
「タクミも、ミカの言うように近いと思っているのだろうか?もしそうなら、もっと意識して離れるようにするが・・・」
「いや、そんな事はないんで気にする必要はないんじゃないですかね?いやホントそんな事、全然ないんで!」
「すごい早口じゃんね・・・。むぅー・・・」
「アオハルだねぇ~、若者の特権だよそれは。それはさておき、みんな?ちゃんとお仕事に集中してね~?」
「はーい☆」「む、すまない」「うっす!頑張ります!」
この後、無茶苦茶お仕事を頑張った。
ー 数日後 ー
「今日は先生にお休み貰ったからなー。適当に買い物でもするか、最近まともに買い物に出られなかったし」
今日はあんまり手伝ってもらう事がないから、と急遽休みを貰ったのだが・・・買い物するにもどこに行こうかな?
「・・・動かないで」
「僕は悪い男の子じゃないよっ!!」
「ぷっ!なにそれ?・・・ふふっ!」
「・・・おん?」
いきなり背中に何か固いものを押し付けられ、「動くな」という続く言葉に、命乞い(?)をするとそれを聞いた背後の人物は笑いだす。・・・なぜ?
「ふふふっ!・・・さっちゃんの言う通り、面白い男の子だね、君?あ、こっち向いても大丈夫だよ」
「さっちゃん?・・・で、君は誰?」
「私は
後ろを振り返り、アツコの自己紹介を受けたタクミは、アツコの手に持つ水鉄砲で顔に水をかけられる。
「わぷっ!?・・・おーけー、君がいたずらっ子だって事は良くわかった」
「姫、何やってるの・・・」
「姫ちゃん!?なんで水鉄砲を!?普通に挨拶をするって話だったじゃないですか・・・!?」
「うーん・・・インパクトに欠けるから?」
「初対面の相手にやることじゃないって・・・。で、君らは?」
「・・・
「え、えへへ・・・わ、私は
「え、あ、はい、よろしく・・・?」
「よし、挨拶も終わったし、行こっか」
「マジ自由人だな、君」
歩きながらざっくりとした話をした。
今回俺に接触したのは、錠前さんの話に最近よく出てくる男の子がいる→本人に自覚は無いようだが、妙にその人物の事を語る時だけ、柔らかい表情でにこやかに話す→どんな男に誑かされた?→騙されていないか確かめよう!→俺に水鉄砲←イマココ!
「いや、誑かすて・・・」
「で、ですがサオリ姉さんは、けっこうポンコツなので・・・」
「何となく理解できるから質が悪い・・・!」
そうなのだ、錠前さんは過去の経緯からか、一般常識に欠けているところがある。
その結果、微妙にズレたことを言ったり、行動したりしてしまう。まあ?そこも彼女の魅力として、俺は更に惚れ込んでるけどな!(恋は盲目)
「・・・でもよかった。あなたが、さっちゃんを騙すような悪い人じゃなくて」
「まだ出会って30分くらいだぞ?なんで俺が悪人じゃないってわか・・・・・・」
「だって君、さっちゃんの事、好きでしょ?」
「っ!?」
「・・・姫?」
「え、えぇええー!?サオリ姉さんのことがす、好きぃー!?!?」
「ヒヨリ、煩い」
「うわあーんっ!姫ちゃんが辛辣ですぅー!」
「はぁ・・・なんでバレた?」
「だって君も、サオリと同じでサオリの話題になる度に、すごく優しい顔になるもん。そういうの、女の子は敏感なんだよ?」
(み、ミサキさんは気づいてましたか?)
(そりゃ気づくでしょ?てか、サオリ姉さんもコイツも特別、分りやすいってだけでしょ・・・)
(わ、私はわかりませんでした・・・)
(・・・普段、そういった雑誌とか読んでる割に、鈍いねアンタ)
(うわあーんっ!どうせ私は、鈍感喪女ですぅー!!)
(そこまでは言ってないでしょ・・・)
なんか俺と秤さ「アツコ」・・・アツコさんが話してる横で、漫才してるけど、取り敢えずアツコさんとの話に集中する。
「サオリから私達の過去は聞いてる?」
「ああ。いろいろと、聞かせてもらったよ」
「うん、ならその辺は省くとして・・・まぁ、私達は恋なんてものを知る機会は無かったんだよね。で、何が言いたいかというと・・・サオリも君に恋してると思うの」
「は・・・え?錠前さんが、俺に・・・?」
「言ったでしょ?私達は恋を知らない。家族「愛」や親「愛」は分かっても、異性に対する「恋愛」は分からないの」
「なら、錠前さんが俺を好きかどうかなんて余計に・・・」
「分かるよ」
アツコの真っ直ぐな視線が、タクミを貫く。
「サオリはずっと、私達のお姉さんとして頑張ってくれていた。そんな大好きな、お姉ちゃんのことだもん。分からないわけないよ」
「・・・そっか」
「あ、でもまだ納得いかないようなら、とっておきの根拠を教えてあげるね?」
「お、おう・・・」
「そ・れ・は・・・・・・女の勘♪」
「はぁ・・・。なんで最後の最後でふざけちゃうかな、アツコは・・・・・・」
「でも、アツコちゃんらしいです・・・」
アツコさんが「てへぺろっ♪」と腹立つ顔を俺に向けてる両隣に、戒野さんと槌永さんが並んで俺と向かい合う。
何事?と思っていると、三人とも真剣な表情で俺を見つめ、告げる。
「サオリは少し抜けてて、でも誰よりも家族想いで・・・」
「サオリ姉さんは、家族の為なら平気で無茶して、心配かけて・・・」
「でも、私達にとっては本当に・・・本当に誇らしい大好きな姉なんです・・・」
三人がそれぞれの想いを口にした後、一斉に俺に頭を下げる。
「「「私達の、大切な姉をどうか・・・幸せにしてあげて下さい。姉をどうか、よろしくお願いします」」」
・・・あぁ、そうか。あの日、錠前さんの笑顔が、とても綺麗で、何よりも美しいと思ったのは・・・この人達がいたからなんだ。
彼女達は自分達の宝物を、俺に託すと言ってくれた。なら、俺の答えは決まっている。
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします・・・!」
「ふぅ・・・安心したよ。・・・ところで、私達はこれからタクミの義理の妹になるんだよね?」
「ん?なんか、流れ変わったな?」
「そっか、なら義兄さんって呼ばないとね?」
「戒野さん?」
「え、えへへ・・・義兄さん、私、実は欲しいものがありまして・・・・・・」
「槌永さん!?君は急に厚かましいな!?」
「これから、私達も家族としてよろしくね?・・・義兄さんっ♪」
こうして俺には、新しい家族ができた。その後、三人からは「場のセッティングはしてやるから、さっさと姉を堕とせ」と言われ、三人が隠れて見守っているなかで告白。無事に受け入れてもらえ、交際。
数年の同棲などを経て、結婚。名実ともに、俺たちは本当の家族になった。
~現在~
「タクミ?一体、どこに向かっているんだ?」
「もうすぐだよ・・・っと、サオリ、目を開けてごらん?」
「ああ・・・。っ!!ここは・・・!!」
お出掛けの当日、俺はサオリを伴ってある場所へと来ていた。サプライズのために、途中で目を瞑ってもらって俺が手を引きながらね。
「「「サオリ姉さん、タクミ義兄さん、パーティー会場へようこそ!」」」
「アツコ、ミサキ、ヒヨリ・・・?それにここは、あの時の・・・・・・」
「そう、俺たち5人が家族になった場所だよ」
あの日、サオリに告白してみんなで家族になった思い出の場所。
サオリが幸せになって、過去のしがらみからそれを失うことを恐れて、不安になるのなら、俺たち「家族」で支えればいい。
アツコ達には急で悪いが、事情を話して協力してもらった。
「さっちゃん、今が幸せすぎて不安になっちゃったんだって?」
「まったく・・・心配しすぎ。大丈夫、私達もタクミ義兄さんも、姉さんの前から居なくなんてならないっての・・・」
「そうですよ。・・・それより、早くご飯食べませんか?私、お腹減っちゃって・・・・・・」
「・・・サオリ、俺たちは大人になって、それぞれの道に進んだ。だから、昔みたいに簡単には予定を合わせる事は難しいかもしれない。けど、こうやって家族に何かあれば、直ぐに駆けつけて支えてくれる。・・・それを、教えたかったんだけど、上手く伝えることは出来たかな?」
思い出の場所だと分かってから、俯いて震えていたサオリ。タクミの問いに顔をあげると、その両目からは大粒の涙を流しながらタクミの胸へ飛び込み答える。
「っああ、感情が抑えきれないほどに!みんなへの感謝と、好きが溢れて止まらないほどに!確りと、伝わったよ・・・!!」
「・・・よかった。サオリにはみんな、笑顔でいてほしいからさ」
「あ~あ、さっちゃんったら、泣き虫なんだ~」
「ほら、早く泣き止まないと、ヒヨリが料理全部食べちゃうよ?」
「流石にそこまで卑しくないですよっ!?」
ああ・・・何を不安に思っていたんだろう。自分には、こんなにも素晴らしい家族が居たじゃないか・・・。
どんなに苦しく辛くても、支え合える姉妹が・・・愛してやまない唯一の人が、私にはいるんだ・・・!
そう改めて自覚した時、自分の中にいた幼い日の自分が、今の等身大の私に成長したような気がした。
「アツコ、ミサキ、ヒヨリ、ありがとう。大好きだ!」
「うん!」「知ってる」「えへへ、照れますねぇ~」
「・・・それから、タクミ」
「うん?」
「ずっとずっと・・・愛してます。私は、何度生まれ変わっても、貴方を愛します・・・!」
「俺も、何度だって君を愛するよ。・・・何度だって君に恋をして、みんなで家族になろう」
正直な話し、この世に輪廻転生ってもんが本当にあるのかは分からない。
でも、次の人生で今の記憶が失くなったとしても、俺たちは出会って、また恋をするんだと・・・確信している。
そして、その側にはきっと皆もいるんだと思う。だって俺たちは・・・「家族」なんだから。
~どこかの遠い未来~
一人の男性が人々の行き交う雑踏を、縫うように進んでいく。
するりするりと順調に進んでいると、一人の女性とぶつかってしまう。
「きゃっ!」
「ご、ごめんなさい!俺の不注意で・・・!」
「いえ、こちらこそあまり人混みに慣れていなくて・・・少し、注意力が散漫になっていました・・・・・・」
そうやって頭を下げあい、頭を上げてお互いの顔を見る。
すると、お互いの顔を認識した瞬間、二人は静かに涙を流す。
「あ、あれ?おかしいな、なんで涙が・・・」
「ええ・・・でも、なんでしょうか、この涙は悲しいものではなくて、むしろ・・・・・・」
「はい・・・。旧い、とても旧い知り合いに会えたかの様な、そんな・・・懐かしさがある」
この二人がどの様な道を歩むのかは、分からない。
分からないが、どこか見知った幻影が二人の後ろに浮かび上がり、誰にも気づかれないまま、幻影はお互いにそっと近づく。
二つの幻影は抱き締めあい、言葉を紡ぐ・・・。
ー やっと、出会えたんだね・・・・・・
~FIN~
ちゃんと物語として成立しているかだけが心配です・・・。