【本編完結済】女先生に愛を伝えて結婚するだけの話 作:秋月 ヒカリ
その第1弾が、激重ナギサです。よろしくお願いします。
~ナギサの職場~
「はい、はい・・・。ええ、ではその通りに。よろしくお願いします」
電話先の取引相手と話を終わらせ、受話器を置くと大きく長めの溜め息を吐く。
そして、チラとデスクの上の写真立てに目をやる。
「ようやく、貴方と恋人になれたというのに・・・」
写真の人物・・・城戸タクミを見つめながら思う。
「卒業し、桐藤の家を継いだのは良いのですが・・・こうも毎日、大人の汚い部分と触れ合っていると自分を見失いそうです。最近は私の方が忙しく、貴方との時間が満足に取れていない・・・。こんな調子で、恋人より先に進むことができるのでしょうか・・・?」
彼と会えない・・・。それがこうもストレスになるとは・・・いや、分かっていた。あの日、彼と初めての邂逅を果たした時から、彼は私の全てになったのだ。
少しずつ狂い始めた歯車。それに焦り、不安だけが積み重なっていく・・・まるで、学生時代のあの疑心暗鬼にまみれた時に戻ったようだ・・・・・・。
「・・・いけない、少し根を詰めすぎました。考えが悪い方向に向かっていますね・・・夕食を食べてから、帰るとしましょう」
少しの身支度を整え、今日は何を食べようかと考えながら大通りを歩いていると、ふと宝飾店が目に入った。自分も、今の現状が解決し、彼とこのまま何事もなくいけば、婚約指輪を一緒に選びに来れるかなと。そう考えながら店内を、ウインドウ越しに覗き見た。
・・・それがいけなかった。
「え・・・?な、何で?タクミさんに・・・ミカさん?」
覗いた店内には笑顔の彼と、親友で幼馴染みの・・・笑顔のミカ。
二人で並んで、楽しそうに何かを選んでいる様子は誰がどう見ても、お似合いのカップルで・・・。あれ?じゃあ、私は?確かに最近は電話ばかりで、直接会えてはいなかったが、別れてはいない筈・・・。
「まさか、浮気・・・?」
・・・違うっ!何を考えているんだ、私は!二人ともそんな不誠実な人ではない!それは私が一番良く知っているではないか!
「・・・?何か店員の方と話していますね・・・。店員が出したもの、あれは・・・指輪?」
それを認識し、理解した瞬間に私はその場を走り去っていた。
今はただ・・・何も考えたくない・・・・・・。
~ミカ、タクミside~
「いやぁ~助かったよミカ!今日はありがとう!お陰で、良い物を用意できたよ!」
「いえいえ☆親友と大切な友達のためだもん!これくらい、お任せだよっ!」
宝飾店を出て、タクミは手に持つ小さな箱・・・プロポーズ用の婚約指輪を見て微笑む。
「ナギちゃん、最近忙しくて会えてないんだよね?」
「ああ。だからもっと側で支えたくて、プロポーズをね?」
「あ~あ・・・ナギちゃんが羨ましいなぁ!こーんなに、自分の事を考えてくれる人がいるなんてさー!」
「彼女を・・・いや、彼女と二人で幸せになりたいんだ。だから、これからは一番近くでそれを伝えたいんだよ」
「愛されてるなぁ、ナギちゃん・・・。絶対に私の親友を幸せにしてよ?」
「了解です!」
「もうっ!何その返事~!あははっ!」
待っててくれよ、ナギサ!二人で幸せを掴もうな!
~ナギサ宅~
私はどこをどう通って自宅まで戻ったのか覚えていないが、気がつくとベッドの上でひたすら涙を流していた。
どうしてこうなったんだろうか・・・?
何を間違えた?
・・・仕事を言い訳に、まともに会っていなかったこと?
何を間違えた?
・・・彼の優しさに甘えていたこと?
何を間違えた?
・・・歯車が狂い始めたことを自覚していながら、解決を後回しにしていたから?
何を間違えた?何を間違えた?何を間違えた?何を間違えた?何を間違えた?何を間違えた?何を間違えた?何を間違えた?何を間違えた?何を間違えた?ああ、私は、
ー ピンポーン
私が思考の海に沈んでいると、インターホンが鳴り来訪者を告げる。
正直、今は誰とも会いたくはないのだが、自分の意思とは別に身体はインターホンの前に向かっていた。
インターホンの画面に映し出された人物は、今最も
『あれ?ナギサ居ないのかな・・・。仕方ない、また今度・・・』
「待ってください!!」
『っ!?な、ナギサ?ビックリしたぁ・・・』
「あ・・・どうされたんですか?特に、今日はお約束などはしていなかったと思うのですが?」
『ええっと・・・ちょっと、大事な話があってさ。あ!もし都合が悪いなら、出直すから!』
「・・・今、鍵を開けます」
内心、彼の言う「大事な話」がもしも夕方に見た光景と関係があることならどうすれば・・・。と、嫌に煩い心臓の鼓動に目眩を覚えながら、彼を招き入れる。
「お邪魔します。久しぶり、ナギサ・・・って、どうしたんだよ!?顔色悪いし、泣いてたのか!?何があったんだ!?」
何を白々しいと思いつつも、すぐに自分の異変に気付き、心配して慌てる彼が愛おしくなる。・・・本当に、彼無しではもう、私は・・・・・・。
そうやって立ち尽くしていると、タクミさんは私を強く抱き締めて言葉を紡ぐ。
「ごめん。何があったか分からないけど、そんなになるまで今のナギサは追い詰められてたんだね。・・・側で支えてあげれなくて、本当にごめん!」
「・・・何で、私に優しくするんですか」
「え?何でって、だって俺たちは恋人で、君は俺の大切な人・・・」
「嘘を吐かないでくださいっ!!」
「!?な、ナギサ?」
ドン・・・と彼を突き放し、彼の胸ぐらを掴み上げてそう叫ぶ。
そこからはもう駄目だった。一度、感情が爆発してしまえば、次から次へと負の感情が口を動かす。
「今日、貴方がミカと宝飾店で指輪を楽しそうに選んでいるところを見ました・・・!ただの偶然ではありましたが、その光景を見た私の気持ちが、貴方に分かりますか・・・?大好きな人が、恋人が、自分以外の女とあんな・・・!私では不満ですか?貴方の隣に立つ資格は、ありませんか?もう、私に飽きましたか?教えてください、貴方が望むのなら私は何でもしますっ!だから、だからお願い・・・!わ、私を・・・私を、捨てないで・・・・・・」
・・・どれだけ感情をさらけ出しても、「捨てないで」などと縋る己の女々しさと卑しさに、きっとこういったところが見限られた原因だろうなと、妙に冷静に分析している自分いる。
「えっと・・・ナギサ?何か誤解してないか?」
「誤解・・・?ああ、私を気遣って優しい嘘を吐いてくれようとしているのですね?大丈夫です、先程はああ言いましたが覚悟は出来ていますので、ハッキリと告げてもらって構いません・・・・・・」
(なんか凄い誤解が生まれてしまっている!?こうなったら、ムードも何もないが・・・ええい、ままよっ!)
「ナギサさん!!」
「は、はいっ!?」
思い切り大きな声を出して、場の雰囲気を無理矢理壊してやる。
そしてそのまま、指輪の入った小箱をナギサの目の前に出し、大声に驚いたまま、目を白黒させているナギサへその勢いのまま告げる。
「俺と・・・結婚してくださいっ!!」
「はい!って、へ?え・・・えぇえええええーーー!?!?!?」
ー 閑話休題 ー
お互いに落ち着きを取り戻した頃に、ナギサには事の経緯を話た。
最近のすれ違いにより、気付かないうちに大きな気持ちのズレが出来ていたことに、お互いに反省した。
もっとお互いに気持ちをさらけ出して、素直な気持ちで話し合えばよかったのだ。だって、自分達は愛し合っているのだから・・・。
「すみません・・・。私の早とちりで、タクミさんには酷いことを・・・」
「ううん。これは俺の問題でもある。結局のところ、俺もナギサに甘えていたんだよ。何も言わずとも、理解してくれているって」
「それを言うのなら、私だってそうです。仕事の忙しさを言い訳に、貴方との時間を作る努力を怠っていました。・・・でも、良かった。私は、貴方の隣に居ても良いのですね・・・」
「その事なんだけどさ・・・。おほん!・・・桐藤ナギサさん」
「っ!・・・はい」
俺は先程のやり取りは無かった事にして、ナギサの前に膝をつき、真剣に顔を見つめて名前を呼ぶ。
「今後も君を不安にさせたりする事もあるかもしれない。だけど俺は、君を一番近くで支えていきたい。二人で幸せになりたい。ずっと、君の隣で笑いあっていたい。だから・・・俺と、結婚してください」
「私で良ければ・・・喜んでお受け致します。こちらこそ、宜しくお願い致します・・・!」
彼女の左手薬指に指輪を嵌めると、思い切り抱き付かれ、泣き出されてしまった。
先程までの涙と違い、ナギサは溢れる涙と共にタクミへの愛情が無限に溢れていくのを感じて、この温かな感情の波に浸り続けるのであった。
~2年後~
あの(俺たちにとって)大事件から2年後・・・。
今日は俺とナギサの結婚式だ。
「その格好、似合ってるじゃん?タクミ!新婦さんの準備が出来たらしいから、呼びに来たよ!」
「先生!今日は来てくれてありがとう。今行くよ!」
呼びに来てくれた先生に連れられて、新婦の待つ部屋の前へと着く。
「新郎さん連れてきたよー!じゃ、私は先に会場に行ってるね?」
「はい、また後で。・・・よし!」
先生と別れて気合いを入れ、扉を開き中へ入る。
「どう・・・でしょうか?」
「・・・綺麗だ」
部屋の中には、ウエディングドレスに身を包んだナギサの姿。
控えめな声で聞いてくる彼女の声に、俺はただ短く綺麗だと告げる事しかできなかった。・・・それ程に、純白に包まれた彼女は綺麗だったのだ。
「じゃあ、行こうか?」
「はい」
短いやり取りを交わし、式場へ向かう。
会場では今まで関わってきた大勢の友人、知人が盛大な拍手でもって出迎えられた。
それから、誓いの言葉と指輪の交換、口付けを交わして、ブーケトスを行う。
綺麗な弧を描いて落ちるブーケは、先生の手元へすっぽりと収まり、それを見た何人かの人物が怪しく目を光らせていたが・・・うん、先生の春も近そうだね!
「・・・タクミさん」
「ん?なんだい、ナギサ?」
「私、今とても幸せです!」
「俺も幸せだよ!」
きっとこれから先、色んな困難もあると思う。けれど、彼女と二人なら・・・。
その日の空には、どこまでも青い空が広がっていた。
~おわり~
まあ、ありきたりな流れではあるかもしれないけれど、こういう形に纏まりました。
後何人のキャラが出るかは分かりませんが、この作品の明確な終わりは決めています。もし、気になるキャラクターがいましたら、感想などでリクエストお待ちしております。