【本編完結済】女先生に愛を伝えて結婚するだけの話 作:秋月 ヒカリ
雲一つない晴天の広がるキヴォトス。そんな気持ちの良いキヴォトスのとある一軒家では、ある親子が一騒動していた。
「こらーっ!今、何時だと思ってるの!休日だからって、いつまでも寝てないで早く起きなさい!」
「うーん...。お母さん、うるさい...。てか、まだ11時じゃん...」
「もう11時なの!やることなくて暇なら、少しは家のことを手伝いなさい!」
「えー?学校のない日くらい、ゆっくりしてもいいじゃん...。普段は部活で走り回って、忙しいんだしさー」
「はあ、まったくこの娘は...。我が娘ながら、趣味の一つくらいないわけ?」
「...強いて言うなら、休日に惰眠を貪るのが趣味かな?」
「......とっとと起きろ!この馬鹿娘!!」
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「...て、ことが朝からあってさぁー。別にいいじゃんさ、寝るのが趣味でも。お父さんは、どう思う?」
「うん、まず朝というよりはほぼ昼の話だな。それにお母さんと一緒で、お父さんも「ミナト」には趣味っていうか、”大切なもの”を見つけてもらいたいかな?あ、別に寝ることを否定はしてないぞ?」
「お父さんもお母さんの味方なのー?くっ...!私の味方はいないのか...!」
「こらこら、お父さんもお母さんもいつだってミナトの味方だっての!」
タクミとイチカの愛娘である「城戸ミナト」。彼女はトリニティに通う16歳。普段は母親の所属していた「正義実現委員会」に所属し、治安を守るためにあちらこちらにと走り回り、家での姿とはかけ離れた真面目さを見せている。
というのも、ミナトは学園での姿が本来の姿なのである。シャーレで先生として、多くの生徒達を導いている父を尊敬し、自身の所属する正義実現委員会の大先輩である母には、小さな頃から憧れていた。
ではなぜ、家では怠惰なのか?それは、どんなに立派に学園で活躍していても、まだ中身は子供。まだまだ両親に甘えたいし、安心できる家ではつい気が抜けがちになるのだ。
「二人が私の味方なのは知ってる。...けどさ、お母さんがよく言う趣味ってそんなに大事?」
「そうだなぁ...。お母さんはたぶん、昔の自分を思い出してミナトに重ねてるのかもな」
「昔のお母さん?」
「ああ。ミナトはお母さんに似て、何でもそつなくこなせるだろ?それに家では甘えん坊だけど、学園では真面目に頑張ってるみたいだしな?」
「あうぅ...!なんでバレてるのぉ!?学園での事とか、ほとんど当たり障りない事しか話してないのにぃ...!」
「先生として、トリニティに足を運ぶことも多いしな?その時にミナトの後輩や同期、あとは昔からの知り合いからちょっとね?」
「うう...。学園での事が筒抜けなのは、普通に恥ずかしいよ...」
「筒抜けってほどでもないさ。みんなミナトが好きで、どれだけ頑張ってるのかを俺に知ってほしいってだけで」
「それはそれで、嬉し恥ずかしいよ...!」
真っ赤にした顔で「あうあう」言って恥ずかしがる娘を見て、その頭を優しく撫でながら落ち着かせる。
「ふう...。少しは落ち着いたよ。さあ!さっきの話の続きをしてもらおうか!」
「ミナトの話?」
「お・母・さ・ん・の・は・な・し!」
「おっと、そうだったな。...まあ、早い話が昔のお母さんにはな?夢中になれる、熱中できるものが無かったんだよ。で、そんな自分に悩んでた時期があったから、普段のミナトを見てて少しだけ不安になったのかもな」
「え...?私、お母さんに心配かけてたの...?」
「そんなに深刻な顔するなって。...親になるとな?自分の子供には幸せになってほしいって、願わずにはいられないんだよ。だから、自分の経験からなぞってついつい、心配しすぎなくらい過剰になってしまう時があるんだよ」
「そっか...。お父さん。私、ちゃんとお母さんに自分の思ってること伝えてみる。お母さんにはいつも笑顔でいてほしいから!」
「うん、そうしなさい。...そうだ、お母さんとお話しできたら最後にこう言ってみな?面白いお母さんが見れると思うぞ?あのなーーー」
「ふむふむ...。わかった!それじゃあ、行ってくる!」
「行ってらっしゃい」
父親に元気よく返事を返して、ミナトは母の元に駆けていった。
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「はあ、心配しすぎなのはわかってるけど...。駄目だなぁ、私。あの子は”私”じゃないんだから、信じてあげないといけないのに...」
私はついさっきのミナトとのやり取りを思い出して、自己嫌悪に陥っていた。あの子の活躍は主人や友人、それに家に遊びに来たあの子の友達などからよく聞いている。だから、心配はしなくてもいいのに...。
「はあ、それでも心配しちゃう...。だってあの子は、”私の大切な娘”なんだから...」
学生の頃からは考えられないくらい、私には大切なものや夢中になれるものが増えた。きっかけはスミレ先生との出会いや、主人である。
あの頃は自分の中身が空っぽのようで悩んでいて、今は自分の中から溢れるほどの幸せに包まれていて悩むとは......。なんとも人生とは、ままならないものである。
「ちょっと言い過ぎたし、謝りにーーー」
「お母さんっ!!」
「っ!?なになになに!?何かあったの!?」
少し落ち込んでいたところに、扉を勢いよく開けて飛び込んできたミナト。それに声にならない声をあげる程驚き、何かあったのかと取り乱すイチカ。
「あ、驚かせてごめん、お母さん...。ちょっとだけ、お話しがしたくて...」
「お話し?」
「うん、あのね?私、お母さんのことが大好きなのっ!」
「うんっ!?」
「あ、もちろんお父さんも大好きなんだけどね?さっきのお母さんとのやり取りは、ついつい家だと二人に甘えたくなって気が抜けちゃって...。その、趣味は睡眠とか言っちゃったけど、本当は違くて...!」
「え、ちょっと待って?ミナト、一度落ち着いて......」
「大好きな二人みたいになりたくて!トリニティで「正実」に入ったのも、お母さんに憧れたからだし!趣味だって、本当は編み物にハマっててこっそり、二人用のプレゼント編んでたりしてるし!そのせいで昨日も遅くまで起きてて、寝不足だったってだけで...!それから、それから...!」
「いや本当に待って!?情報の波を一気に流し込まないで...!お母さん処理しきれてないから...!」
お目目ぐるぐる状態で頬を朱く染めながら、自分の気持ちを勢いに任せて口にするミナト。その勢いに圧されて、いきなりな事に頭が混乱して娘と同じように目を回すイチカ。
ある程度お互いに落ち着いた後、仕切り直すように話をふるイチカ。
「それで、急にどうしたの?お母さん、びっくりしたよ?」
「あはは...。あのね、お父さんと話をしてみてお母さんの昔の事とか聞いてさ、思ったんだ。恥ずかしがって、気持ちを隠してたらずっとお母さん達を不安にさせちゃうって」
「ミナト...」
「だからね!今日からは私、自分の気持ちを二人へ言葉にするようにするっ!ふんすっ!!」
「...おや?」
「あのねあのね!私、本当にお父さんとお母さんが大好き!先生として色んな人を助けて、私たち家族を本当に大切にしてくれてるお父さんが大好きだし!私の憧れで、強くて、優しくて、いつも最高の笑顔で見つめてくれるお母さんが、大大大好きっ!なのっ!!」
「ああ~っ!そのお父さんと同じで、自分の気持ちを真っ直ぐにぶつけてくるの、やめて~!嬉し恥ずかしくて、顔から火が出る~~っ!」
「今のお母さん、とっても可愛いねっ♪」
「~~~っ!」
突如として開眼するミナトの「タクミ因子」に、圧倒されるイチカ。ただでさえ大好きな娘にべた褒めされるのだ、イチカの頭はもう沸騰寸前である。
「と、取り敢えず、ミナトの言いたいことは分かりました。お母さんも、昔の自分と重ねて、勝手に心配してあなたに強い言葉を使ってごめんね...?大好きよ、ミナト」
「~~~っ!お母さん!大好き
「...ん?ミナト、今、何て...?」
「え?どうしたっすか、お母さん?私、何か変なこと言っちゃったっすか...?」
「...ミナト、その口調は一体、どうしたのかな?」
「これっすか?これはねー...昔のお母さんの真似っす♪」
「......。タクミかぁーっ!!」
「あ、お母さんが開眼した。お父さん...南無......」
ミナトによる昔のイチカの真似に、下手人を割り出して開眼し、走り去るイチカ。そんな母を見て、父の末路を想像して静かに合唱する。そして今夜は、父と母の部屋には近づかないことに決めた。ミナトはまだまだ、子供のままでいたいのである。
一方、イチカの突撃を受けたタクミはというと......。
「あ、あの~...イチカさん?どうして、私は壁際に追い詰められてるのでしょうか...?」
「それはね?タクミを逃がさないためっすね」(壁にドン)
「イチカさん?なぜ昔の口調に戻り、開眼されているのでしょうか?」
「それはね?タクミがミナトに変な入れ知恵をして、私のスイッチを押しちゃったからっすねー」
「ひうっ!?な、なななな
「そんなの......タクミを美味しく頂くために決まってるじゃないっすか♪」
「んむぅーーーっ!?」
「ぷはっ!...さて、それじゃあ行きましょうか。あ・な・た?」
その後まだ家事が残っていたため、少しのつまみ食いだけに留めて夜までギラついた目でタクミを見つめるイチカ。
その日の食卓には、妙に精のつく物が並んでいたとか。次の日、タクミはシナシナになったし、イチカは艶々になった。ミナトは仲良しな二人にニッコリだし、その後はちょくちょくイチカの口癖を真似するようになった。
今日も今日とて、キヴォトスは平和である。
~イチカafter...終わり~
久しぶりすぎて一度、全部の話を読み返して身悶えていたのは内緒。
「城戸ミナト」
・母親似の容姿と、父親似の真っ直ぐさでよく関わった人を魅了いしている。なお、本人にその気はない。
・両親を心から尊敬しており、二人のようになりたいと努力を惜しまない真面目っ子。でも家では両親にだだ甘えである。
・本作の内容後から、ガチ切れすると「~っす」口調で相手を”GO to HELL.”するようになる。(イチカ因子覚醒)