【本編完結済】女先生に愛を伝えて結婚するだけの話 作:秋月 ヒカリ
~ティーパーティー~
はい、先生に連れられてトリニティまでやって来たタクミです。
先生と一緒に学園内を見て回ってたら、聖園さんと出会って話し込んでたんだよね。そんでもって気がついたら、なんかトリニティのティーパーティー?っていう、聖園さんが所属している組織に連行されていた。
しかもだ、ここまで連れてきた張本人である聖園さんは、お友達の桐藤さんって人にロールケーキを口に詰め込まれて引き摺られていった...。理由?聖園さんが桐藤さんの呼び出しを無視した挙げ句、俺という部外者を関係者以外立ち入り禁止のここへ連れてきたからだってさ。...マジで何やってんだ、あの人。
「ふむ...。君が噂の、シャーレに居候しているという少年か。何というか...平凡だね?」
「初対面で随分な言い草だなオイ...!」
「おっと、怒らせてしまったかい?すまないね、思ったことをつい口に出してしまうのは、私の悪い癖でね?」
「自覚してるなら直せよ...。というか君、誰?ここって、君みたいなチビッ子が入れるところなのか?」
「...かっちーん、ときたよ。こほん!...私は、ティーパーティー所属の「百合園セイア」だ。こう見えても、
「え、年上!?年下とばかり...」
「...ふ、君みたいなお子さまには、私の滲み出るセクシーさがわからないみたいだね?まったく、嘆かわしいことだ...」
はあ、やれやれ...。と、呟きながら肩を竦める目の前のチビッ子...もとい、百合園さんは呆れ顔で俺を見てくる。
いや、しょうがなくない?だって、明らかに幼い容姿で背も低い女の子がいたらさ、普通は子供だって思うじゃん?
「その...失礼な態度は謝罪します。すみませんでした。先輩だとは思わなくて...」
「先入観だけで物事を判断するのは、よろしくないね。今後は気を付けるといい。それと、謝罪は受け取ったよ。それと今からはミカと話すように、フランクにしてもらえると嬉しい」
「えっと、それでいいなら...はい、そうします」
「まだ固いが、そこはおいおいだね。実は君には興味があったんだ、ここで会ったのも何かの縁だ。少し話をしようじゃないか?」
それから百合園さんと俺は色々と話し込んだ。俺のこと、百合園さんのこと、キヴォトスで起こったこと等、多岐にわたる。そんな中で百合園さんと話してみて、わかった事がある。
まずは、頭がいい人ということ。色んな事を知っているし、こちらが1話せば、そこから10を推測して答えを導けてしまう。でもそのせいで、話し手としては感心するよりも、消化不良を感じてしまう。
次に、自分の気持ちを表現することが苦手で、相手に皮肉ったような表現をしてしまうこと。本人も改善しようとは思っているらしいが、この事でよく聖園さんと喧嘩になってしまうらしい。...どうしよう、簡単にその場面が想像できてしまった。
その他にもいくつか気付いたことはあるが、結局のところこの人は......。
(百合園さん...不器用が過ぎる......!!)
そう、彼女の過去の話しも聞いたがそれを含めても、あまりにも対人スキルが乏しすぎる...!そりゃ、聖園さんとじゃなくても険悪な雰囲気になっちゃうよ...!
「ーーーとまあ、色々と話し込んではみたが...どうだろうか?少しは私の事を、知ってもらえたかな?」
「はい、めっちゃくちゃ面倒くさい人だということが理解できました」
「なぜだっ!?」
「いやだって、なんで一々話の中で小難しい言い回しをしたりするんです?あれじゃ、受け取り手は小馬鹿にされてるって思うか、煽られているように感じますって...」
「むう...。私に、そのような意図はないのだが......」
「親しい人の前では良いと思いますよ?百合園さんの事をよく知っている人は、誤解なく会話できますから。だけど、初対面の人や交流の少ない人には、キツい印象を持たれますね」
「ぐっ...!君は随分とはっきりものを言うね...。ふふふ、コミュ力よわよわフォックスですまない......」
タクミの言葉に思うところがあるセイアは、耳と尻尾をへにょりと萎らせる。相棒?のシマエナガ君も、セイアの様子を心配ーーーせずに机の上の菓子類を呑気につついていた。それでいいのか、シマエナガ君...。
「(やっべ、言い過ぎたかな?)あ、あの、百合園さん?」
「...ふ、ふふふ。決めた。決めたよ、タクミ...」
「えっと?な、何をでしょうか...?」
タクミがあまりにも率直に言い過ぎたか?と、思ってセイアに声をかける。すると、しょぼくれていたセイアの纏う雰囲気が怪しくなり、不気味に笑い声を上げるとタクミに何かを決めたと告げる。
タクミは嫌な予感がして少し及び腰になる。
「城戸タクミぃ...。君は私に言ったね?コミュ力よわよわフォックスと......」
「え、いや、言ってなーーー」
「よって!君には私がコミュ力つよつよフォックスになるまで、私が”普通”に他者と仲良くできるように協力することを命ずるっ!!」
「拒否権は...?」
「あるとでも?ああ、いやこれでは強迫と一緒だね。うん、断ってくれていいとも。君はトリニティの生徒でもなければ、私の従者でもないのだからね。...ただ、その場合はせっかく自分を理解し、寄り添ってくれるかもしれない人が現れたと喜んでいた少女が一人...孤独に沈むだけさ」
「...実質その言い方は、こっちの良心につけこんだ強迫だろっ!?そういうとこだぞ、アンタ!?」
「おや?何の事かまったく理解できないが...返事は決まったかい?」
「はあ...。わかりました、協力します。その代わり、ちゃんと俺の言うことを聞いてくださいよ?」
「ふふふ、君ならそう言ってくれると思っていたとも。ああ、タクミの助言にはちゃんと耳を傾けるさ。...これから、よろしく頼むよ?タクミ」
「はい。よろしくお願いします。セイアさん」
そうして二人は握手を交わし、先生とナギサやミカが戻るまで二人と一羽はお茶を楽しんだ。
ーーーそれから、多くの時間をタクミとセイアは過ごした。
今回のようにお茶会で、ティーパーティーに混ざり雑談をしたり。時には
はたまた時には、ミレニアムエキスポにセイアのお目付け役としてナギサとミカに頼まれ、着いて行った。そして何故かスパイの真似事をすることになり、ネルやリオに気に入られるとセイアにコアラの様に引っ付かれ、何故かずっとグリグリと頭を擦り付けてきた。
それを見たリオは頭に「?」を浮かべて眺め、ネルは「へえー?タクミもすみにおけねえなっ!」とバシバシ背中を叩かれた。...解せぬ。
ーーーそんな騒がしくも楽しい毎日を過ごして、現在は夏。ミカの提案により、今はナギサを休ませるという名目で海へ来ていた。
「...ふう。どうしてこう、何かしらの珍事に巻き込まれるのだろうね...」
「ははは、確かにセイアの言う通り何かしらの事件には、よく巻き込まれるよな。けど、俺はセイアがいつも隣に居てくれるからかな?全部が良い思い出として、記憶に残ってるよ」
「~~~っ!君は相変わらず、思ったことを素直に伝えてくるね...!お陰で私は未だに、毎回ドキドキさせられるよ...」
「これでもちゃんと、口に出す言葉は選んでるんだぜ?何でもかんでも、思ったことを口にはしないさ」
「ふーん?その割に、私の前では遠慮なく口にしているように見えるが?」
「そりゃぁ...セイアには、いつも本心を語っていたいからな」
「...そうか(あぁ...だから、私は君にこんなにも......)」
二人で砂浜に座り込み、今は水平線に沈んでいく夕日を眺めている。
いつもの...今ではすっかり、二人の定番となった軽口の叩きあいをしたあとに無言の時間ができる。
そんな沈黙も、セイアからしたら隣にタクミが居るだけで心地好い時間に変わる。そして、ふと思う。タクミが自分を「セイア」と、呼び捨てにしてくれるようになったのは、いつの頃からだったかと。
...そして、呼び捨てで呼ばれる度に胸がトクン...と高鳴ってしまう自分が、タクミに惹かれていると自覚するようになってどれくらい経つのかと。
そんな風に「まるで、”普通”の恋する少女のようだな」と、水平線に沈みきろうとする夕日を眺めて思う。
そうして夕日が沈みきり、そろそろ皆の元に戻ろうか。とタクミに声を掛けようとして、隣へ顔を向けたらこちらを熱の籠った瞳で見つめるタクミと目があった。
「タクミ...?」
「セイア。聞いてほしい事がある」
「...うん」
あまりの真剣な表情に、セイアはそう返すことしか出来なかった。...いや、素直に白状すると自身の想い人の普段見せない表情に、そう返すのがやっとだったのだ。
「俺はずっとセイアの近くでさ、誰よりもセイアと時間を共有してきたっていう自負がある」
「...そうだね。私としても、過去を振り返ってもタクミほど同じ時間を過ごした相手はいないと断言できるよ」
「最初は本当に、手のかかる先輩程度の感覚だったんだ。でも、セイアと一緒に過ごしていると、君の隣にいることが当たり前になって、そこが俺にとって一番居心地の良い居場所になった」
(な、なんだこれは...!タクミの言葉が全部、嬉しくて、声も出せないほど鼓動が早い...!?)
「俺はこれからも、ずっとセイアの隣に居たい。セイアに俺のとなりに居てほしい。だから、セイア......俺と、付き合ってほしい」
(あ......)
タクミに告白されたと理解した瞬間、セイアの中で今までの思い出が鮮明に溢れかえる。
いつも自身の隣に居て、色々な表情と世界を見せてくれたタクミ。そしてその隣で、いつも心から笑っていた自分。
喧嘩することもあったし、彼を慕う少女たちに嫉妬する日もあった。そんな思い出も等しく、愛おしい記憶として溢れて止まらない。
(ああ、どうして...どうして、こんなに嬉しいのに...!こんなに、愛おしくてたまらないのに...!どうして、涙が溢れて止まらないんだ...!)
セイアは今すぐ告白の返事を返したいのに、次から次に溢れる涙のせいで返事が出来ない。これではタクミを不安にさせてしまうと、焦り始めてきたとき、暖かな温もりに包まれた。
(タ、クミ...?)
「大丈夫。焦らなくていいよ。ちゃんと、わかってるから」
(ああ...。そうか、そうなのか。君は、タクミは、ちゃんと私を理解してくれているんだね...。ふふ、こんなに優しくされたら、余計に安心して涙が止まらないじゃないか...。でも、そうだね。声が出ないのなら、行動で示そうじゃないか)
「ん?セイア、どうし...んむっ!?」
胸元でモゾモゾと動き始めたセイアに、どうしたのかと覗き込んだ瞬間にタクミは口を柔らかいもので塞がれた。
セイアにキスをされたのだと理解した途端に、タクミはセイアをより強く抱き締めて今度はタクミからキスを返す。
二人は夕日の沈んだ砂浜で、星の光に照らされながら長く、深く、お互いの気持ちを確かめ合った。
「...わーお。セイアちゃん、大胆じゃない?」
「しー、ですよミカさん。気付かれてしまいます。お二人の邪魔になるでしょう?」
「...そうだね。帰りが遅いから様子を見にきたけど、もう少し二人きりにしてあげようか?」
後日、この時のことをいつものように軽口をセイアと叩いていたミカが勢いで暴露。その瞬間、セイアは顔を真っ赤にして黙り込み、始めてミカはセイアとの口論に勝利した。
なお、しっかりその後すぐにミカは、セイアとナギサにより普段の3倍のロールケーキをぶちこまれた。
~おわり~
セイアエミュができていたか不安。アフターもお楽しみに!