フロンティアスピリットウォーズ〜浪漫と脳筋男がゼロから始める傭兵プレイ〜 作:マスターBT
俺の目の前に降りて来たFSは全部で五機。
一番目立つのは装甲の厚さからして元々が帝国陣営のFSである事が伺える単眼のFSで、一面銀世界のこの環境にはあまり適していない濃い緑色のカラーリングで統一されている。
武装は上から俺を狙って撃って来たボルトアクション式のライフルと、腰に付けてある斧か?何かだな。
他の連中はスキンヘッドのおっさんの部下か何かなのか、カラーリングが茶色で統一され装備している武器もSMGと手斧で俺を騙して不意打ちを狙った印象も強いせいか、ファンタジーの山賊って感じが似合う機体群だな。
『見た事ないパーツばかりだな。お前の機体、売れば良い値が付きそうだ。どうだ?大人しく降参して引き渡すのなら、売値の一割ぐらいお前にやっても良いぞ』
『ちょっとリーダー!それ、俺らの取り分が減るじゃないっすか。今月、家賃厳しいんで困るっすよ』
『課金のし過ぎだ馬鹿。まぁ、取り分が減るのは俺だって嫌だぞボス』
うん?こいつら、《EVOLVER》がレア機体だと気が付いてない?
初めて戦ったあの男はレア機体だとすぐに気が付いていた気がするけど……
『Obishiro!お前の家賃問題なんか俺が知った事じゃない。が、此処で弾薬費を節約出来れば寒い懐もマシだろう?』
『……なるほど!』
うーん、まだ戦ってすらいないのに完全に勝った気になってるな向こう。
そりゃまぁ、五対一だから気が大きくなるのは分かるんだけどさぁ……正直、これ以上なく舐められてるって感じで良い気はしないよな!!
『つう訳で機体を──』
「断る!!EVOLVER READY──」
「『──Go!!』」
容赦なくブースターをフルパワーで蒸し、急加速で単眼FSの顔面をぶん殴る!!
『ぐぉぉ!!』
《パーツブレイク》を起こす程の威力はないが、推進力のある《EVOLVER》から繰り出された加速力の乗った一撃はスキンヘッド──『Shirahige』が乗る機体を大きく揺らすのには十分で、メインカメラがある頭部にダメージを受けた影響で視界内にノイズが走る。
『ボス!!』
『ッッ、やってくれるじゃねぇか。テメェら!!遠慮はいらねぇ!!やれ!!』
傷ついた状態でも十分に売れるとは言え、見た事ないパーツをどうせなら新品で売り捌きたいと欲を出したのが裏目ったとShirahigeは苛立ちながら、仲間達へと指示を出す。
Shirahigeが率いる一派はこのFSWでは比較的ありふれた金銭目的の新人潰しであり、その中でも依頼ボードに毎日張り付き獲物を待つやり方から、『姑息な子蜘』と揶揄されているちょっと残念な一派だ。
『Mutuba!仕掛けるぜ!!』
『Ohae、続くぜ!!』
だが、そんな一派であっても数多くのプレイヤーが遊んでいるFSWでその存在を認知されているだけの力量はあり、指示を出された直後に二機が即座に《EVOLVER》へと詰め寄る。
SMGを使わないのはボスであるShirahigeを気遣っての事ではあるが、挟み込む様に二機のFSが手斧を振り上げながら迫れば新人であるRyuには対処が出来ないだろうと踏んだのだろう。
『んなっ!?』
「へへっ!!」
そんな思いは真っ直ぐとMutubaに向かってくるのを見て驚愕へと変わった。
自分の腕に絶対の自信を持つのなら、避けずに立ち向かう事もあるだろうが新人が真っ向から立ち向かってくるなど全く思わなかったのだ。
「オラァ!!」
『くっ!!』
「──なーんてね!」
虚を突かれて殴られる!!──そう思い、防御体勢を取るMutubaであったが彼が思った衝撃は一向に来ず、単眼であるメインカメラを動かせば自分をすり抜けて逃げて行く《EVOLVER》の姿があり、間抜けな声を漏らす。
『へっ?』
『馬鹿野郎!!殴るフリだよフリ!!まんまと騙されやがって!!』
『マジかよ!?』
あんなノリノリで戦う感じを出していた奴が逃げるとは思っていなかった彼らは驚きながらも、《EVOLVER》を追いかける。
ライフルとSMGを持つ彼らは蛇行移動をしながら逃げる白い背中に向けて、弾幕を展開するが彼ら自身を大きく揺れており搭載している観測機の性能も良いものではない為、オート照準がブレブレで当たらない。
『射撃戦用のカスタマイズはしてないんだよなぁ!』
『数の利があるんだ。それっぽいところに狙いをつけてばら撒け!!ずっと避けられる程、新人の運は良くないだろ』
この中では比較的、遠距離を狙えるカスタムのShirahigeが狙い定めて撃つが当たらない。
コッキングをしている僅かな時間に自身を落ち着かせようと、息を吐き機体性能に身を任せて左右に激しく動く《EVOLVER》に向けて再度、弾丸を放つ。
『ッッ、あの野郎!後ろに目でもついてるのか!?』
偏差を完璧に捉えたという強い自覚のある一撃であったが、着弾の寸前で今までの動きとは違う急カーブをされてしまい銃弾は当たらない。
『そんなに大きくカーブすりゃ折角の速度が落ちるぜ!!』
意気揚々と追いかけていた最後の一人、『Madara』が雪を大きく巻き上げながら曲がった《EVOLVER》へとブースターを一気に点火させた跳躍で襲いかかる。
『へへっ!!もらっぎゃあ!?』
「先ずは一機!!狙い通りってな!!」
が、斧を振り下ろすより早く回し蹴りが胸部に叩き込まれ、元々資金不足で手入れ不足であったMadaraのFSは加速と重力が組み合わさった一撃で《パーツブレイク》寸前まで持っていかれる程の大ダメージを受ける。
「からの、《シン》!!こいつを押し出せるパワーはあるか?」
『可能です開拓者』
「オッケー!!んじゃ、いくぜ!!」
そのまま崩れ落ちるかに見えたMadaraの機体の腰辺りをガッツリと抱え込むと、Shirahige達の方へと盾にしながら突っ込んでいくという荒技を見せるRyu。
『テメっ!汚ねぇぞ!!』
FSWは徹底したリアリティの追求のため、同じチームであろうともフレンドリーファイアが起きる設定となっている為、味方が盾にされてしまうとそう簡単には撃てなくなってしまう。
「罠に嵌めようとしてきたお前らに言われたくないな!」
『ボ、ボスぅ!?』
なんとも情けない声を出しながら踠くMadaraであるが、ガッツリと懐に入られてしまってはSMGも斧も当たらず仲間達に助けを求めることしかできない。
『……すまん。Madara、後で焼肉奢るから此処で落ちてくれ』
『そ、そんなぁ!!』
リアルでも付き合いがあるのであろう事が分かる言葉と共にShirahigeが放った一撃は、《パーツブレイク》寸前であった胸部をしっかりと撃ち抜き、爆発を起こし沈黙するMadara機。
大きく『総合装甲値』が減少したものの、まだ動く分には問題ない筈だがダメージにより、自分が死ぬのを嫌ったのだろう。
そんな重いだけの鉄屑と化したFSを押し続ける様な事をRyuはせず、蹴り飛ばすおまけをつけながら離れる。
「先ずは一機……とは言え、これで向こうに油断は無くなった感じか」
『敵、陣形を構築。リーダー機と思われる機体を先頭に楕円形の一塊となって向かってくる陣形ですね』
先程までとは違い、Ryuがどう動くか見極めてから対応しようというのが伺える『姑息な子蜘』達を見て状況は楽になっていないと気を引き締めるのであった。