フロンティアスピリットウォーズ〜浪漫と脳筋男がゼロから始める傭兵プレイ〜 作:マスターBT
ほぼ反射的に《EVOLVER》を片膝が着く形でしゃがませた事で、放たれた一撃は背後の地面に大きな穴を開けるだけに終わった。
直感に突き動かされただけの偶然、単なる奇跡でしかない。
だからこそ、負けない為には動くしかない。
「ぐっ!!」
『……』
無様だと言われても仕方がない地面への転がりで、第二射を避けブースターの推進力で無理やり《EVOLVER》を直立させる。
同じ依頼を受けた傭兵なのか、それともさっきのアイツらみたいに俺を倒して金稼ぎをしようとしているのか。
本当になんとなくだけど後者ではない気がする。
「《シン》向こうからのコンタクトは何もないんだよな?」
『はい。オープンチャンネルによる呼び掛けや、個別回線、モールス信号などあらゆる意思伝達手段は使われていません』
「だよなぁ」
ビームライフルには連射出来るクールタイムがあるのかこうやって考えている間、撃ってこない純白のFSを文字通り見上げる。
装甲の少なさとスマートさからして、連合国製のFSだと思うけど頭部パーツは中世の騎士みたいな目の部分に一本線があるタイプでそこから二つの青い目が此方を無機質に見ていて少し怖い。
胸部装甲は全体的にバランスが良く、均等が取れているが胸あたりが少しだけ前に出ているせいなのか女性らしさを感じられる気もするスマートなデザインで、そのイメージを引き継ぐ様に手足のパーツも細めな気がした。
「《シン》ってパーツに関して何か分かるか?」
『パーツですか?はい。開拓者が望むであれば解析を「ッッ!!どうやら会話はここまでらしい!!」』
二丁のビームライフルが俺を捉えるのと同時にビームが放たれる。
純白のFSから目を離さない様に、地面を滑る様に避けたが狙いがあまりにも単純な事に思わず首を傾げる。
「……直撃コースしか撃ってない?わざわざ二丁もあるのに」
冷却時間もあるのだから、単純に直撃を狙うだけなら一丁ずつ使った方が効率的な気がする。
地面に風穴を開けるほどの高出力なんだからシールドを装備していなきゃ、回避を優先するだろうし回避後は俺が下手なのもあるだろうけど機体が慣性に揺られるからある程度、隙が出来る。
『開拓者、回避を』
疑問の答えは《シン》の警告と共に放たれた
「クソッ!!冷却時間自体がフェイクか!!」
右に左に《EVOLVER》を揺らしたり、どうしても間に合わないと思った攻撃は大きく回避して避ける。
「そりゃ狙うよな……!!」
操作に不慣れなせいで大きく回避してしまい、隙を晒すという欠点はスキンヘッドのおっさんに突かれたばかり。
明らかにあの人達より格上である純白のFSがこの瞬間を狙わないはずがない。
着地の衝撃で膝はクッションと屈めてしまっているし、ここから《EVOLVER》を左右どちらかに回避させるには、相当の推力が必要になるがそんな時間を与えてくれる相手じゃない。
集中力が高まってるせいか、向けられた銃口にピンク色の光が充填されていく瞬間すら見えている。
自分でも気が狂ったんじゃないかと思うけど、銃口を向けられて敗北がすぐ後ろに迫っているという平和な日本じゃ決して体験する事が出来ない喉の奥が渇いていく感覚を得て俺は──
「ははっ!!」
──楽しくて仕方ないと笑みが溢れた!!
何もしなきゃ直撃を貰って敗北するのなら、そうだ何でもいいから身体を動かせ!!
『……』
「来いよ最強!!」
膝が沈んで動けない?──なら、従え!!
二足歩行であるFSには想定されていない動きかもしれないが、なんとなくこのFSWがそんな生温い設定にしているとは思えなかった。
『……なるほど。確かにこの動きなら回避出来る確率は上がりますね開拓者』
俺が取った選択、それは両腕もしっかりと地面につけた四つん這いとなり駆け抜けること!!
昔、まだ小学生ぐらいだった時に友達の家で元気に走り回る犬の散歩に付き合った事があり、その動きを思い出しながら地面を駆けずり回れば、次々と連射されるビームライフルが予想外の動きだったせいなのか乱れていく。
『……』
「隙あり!!」
純白のFSが何かを我慢する様に、片手を腹部の辺りに寄せたのを見て立ち上がり背を向けて疾走する。
もちろん、《シン》に協力して貰い、背後でアイツが何をやっているかモニターに出して貰う事も忘れずにだ。
『開拓者、機動力では逃げきれませんがどうするおつもりですか?』
「俺が逃げるつもりない事ぐらい分かってるだろ?《シン》」
『はい。ですが、この方角は……』
「おっ、気が付いたか?多分、考えてる事で合ってると思うぜ」
レーダーに表示されたある場所へ向けて《EVLVER》を走らせつつ、純白のFSを見ると何故か先程の位置で飛んだまま、俺の方を見ていて動いていない。
ビームライフルすら下ろして完全に俺など眼中にないって感じ……ふざけんなよ、折角楽しくなってきたのにそっちから水を差すなよ。
「来いよ」
『……!!』
「ははっ!!やっぱりお前も退屈だったんだろ!!」
振り返って指一本でクイっと挑発すれば、優雅に浮いていた態度なんて何処に行ったのかと凄まじい速度で追いかけてくる純白のFSを見て再び口角が上がるのが自覚出来た。
あいつ、多分だけど俺と同類だ。
俺が浮いたままのあいつを見て、落胆を感じた様に側から見れば逃げた様にしか見えない俺を見て落胆していたんだ。
でも、あんな分かりやすい挑発で乗ってきてくれたって事は有り難い事に、俺はあいつの興味関心を惹き続けているって訳だ。
光栄とすら思える。
相手は最強って呼ばれるほどこのFSWをやり込んでいるプレイヤーで、そいつが失望しない何かを俺は見せ続けられているって事実に!!
『開拓者、正面に敵FSです』
「連合製のやつだな!!」
どうにか追い付かれるより早く、連合のNPCFSが居る場所まで来れた様だな。
さてと、先ずは賭けの一つを試すとしようか。
「よっと、横を失礼!!」
アサルトライフルの弾幕を最高速度を維持したまま、突っ切る事で避けて三機の間をすり抜ける。
そのまま俺を追いかけて攻撃してくる様なら、俺の賭けは失敗で純白のFSとNPC三機を相手にしなくちゃいけない訳だが、そう悪い賭けじゃない気がしている。
『……』
『敵機、後方より迫る先程のFSへの弾幕を展開開始しました』
「よしっ!!」
俺がぶん殴って時間をかけている間も増援として来なかったって事は、持ち場を動き回るタイプだと思ったんだよな。
それなら自分達の持ち場から離れようとしている俺よりも後からやってきた侵入者へとヘイトが切り替わる筈と予想した俺は間違っていなかった。
『……』
ただまぁ、相手は最強。
ステゴロの俺でも勝てる相手に数の不利だからと苦戦する訳もなく、キッチリ三発撃つだけでNPCFSを仕留め、黒煙をあげるNPCFSが奴の足元で動かなくなった。
「《シン》!!《EVOLVER》の推進力で届くか!?」
『少々お待ちを……敵FSの高度、地上より30m。腕を全力で伸ばしたとしても足りません』
「アレを使えば届くか!?」
『……エンジン部を踏みつける事で爆発の勢いを得る事が可能』
「了解!!」
答えが得られたのなら、あとは実行するのみ!!
反転し、純白のFSへ向けて最大出力で加速し向かう。
『……』
当然、ビールライフルが放たれるが今まで通り揺さぶりなんてかけていない直撃狙いの連射なら、軸を合わせ続けている限り読みやすい。
ちょくちょく、機体を掠める様な心臓に悪い出来事もあったが最高速度を維持したまま足元──撃墜されたNPCFSの場所まで辿り着いた。
「信じてたぜ。お前はそこから動かないって!!」
俺を試しているのか遊んでいるのか分からないが、ステゴロしか攻撃手段のない俺が真下に急接近したところで避ける必要性はない。
そもそもしっかりとした高度を確保しているのだから向こうが動くとしたら、念のため程度だろう……考えられるか?
「踏み抜け《EVOLVER》!!」
バキッという音共に、ブースターを最大出力しに跳躍──直後に大きく揺れる程の爆発を感じ取り一気に純白のFSへと迫る。
「オラァァァ!!」