フロンティアスピリットウォーズ〜浪漫と脳筋男がゼロから始める傭兵プレイ〜 作:マスターBT
「……ゲームの中とは言え、先が見えない落下は怖かったなぁ」
ボロボロのFSとは言え、ブラスターの火力で爆発してくれるか分からなかったけど案外、ぶっ壊れるもんだな。
まぁ、狙い通りにぶっ壊れた代わりに体感で三十秒間ぐらいの自由落下を味わう羽目になった訳なんだけどね……多分、ゲームの中じゃなきゃ落下してるよこれ。
「HPのバーは八割ぐらい消し飛んだか。いやよく残ったなおい」
落ちて来た穴は無理だな、見上げる程に高いしパックリと開いた大穴がまるでバケモノの口みたいになってて足場もない。
「じゃあこの地下空間を進むしかないか。なんか機械チックな造りになってるし、上が廃工場だったから此処は地下施設みたいなもんならどっかしら上に繋がってる場所もあるだろ」
体力回復の手段がないから一先ず、慎重に行くとして……よしよし、ブラスターも壊れてないから最悪戦闘しつつ逃げるのも視野に入れる事は出来る。
折角、プレイヤーから逃げ延びたんだしNPCのモブに殺されるのはつまらなすぎる。
「よっと!」
俺と一緒に落ちて来たであろう瓦礫の山から飛び降り、着地をすれば予想通りの金属音が響き渡る。
辺り一帯は割と暗いが、俺が開けた大穴のお陰で光が差し込んでいるから探索しようと思えば出来るくらいの薄暗さは確保されている……まぁ、気休め程度だから進んだ先に光源がないと詰むんだけど。
「んー、俺に知識があればこの壁に書かれてるよく分からん文字を解読出来たりするんだろうか?」
平仮名の上に漢字を書きましたみたいな文字が壁にびっしりと書かれてるんだけど、全然読めない!!
見慣れた文字っぽいんだけど、こうも綺麗に重なると分からないもんだな……ガコンッ!!
「……ん?ガコンッ?……って、手を付いた場所が沈んでらぁ」
壁際に灯りのスイッチとかないかなとペタペタしてたけど、これ罠とかじゃないよな?ピカーっと思いっきり手をスキャンされたけど大丈夫だよね?
『ジジッ……』
「うん?」
『……ようこそ開拓者……此処は……ラテ……です。貴方の……待っていました……』
「ノイズが凄いが……歓迎されてる感じか?」
待っていましたとか言われたしって、これもしかしてゲーム的なイベント起こしちゃったか?
「うーん……俺、今一人だし下手なイベント踏んで戦闘系のものだったらクリアは無理だぞ?」
機体持ってないし、体力無いし、なんならゲーム的な知識もないとかいう三連ないない尽くしだし。
なんて事を考えていると、ゴゴゴって効果音が似合う感じに揺れ始め目の前の壁が上にスライドしていくと、白色系の灯りで見事な金属光沢が眩しい一本道が現れる。
「進めって事だろうな」
良いね、ワクワクして来たじゃん!
クリアは無理かもとか考えてたけど、こういう如何にもな演出をされると心が躍るってのが男ってもんでしょ!!
「うしっ!鬼が出るか蛇が出るか……まっ、こういうのは楽しんだ勝ちだよな!!」
ウキウキで足を踏み入れた瞬間、後ろでガゴンッ!!っと凄い音が聞こえて嫌な予感と共に振り返って見れば、そこには予想通り入り口が無くなっていた……おおう、引き返す道は無しと……へへっ、やってやろうじゃねぇか。
「……なんて覚悟を決めていた訳だがなんだ。何も起きずに反対側に辿り着いたぞ」
辿り着いた大部屋は、やっぱりと言うべきか金属光沢が眩しい空間で窓も階段もない事からして出口に繋がってない事は確かだろう。
だが、そんな事よりも気になるものが部屋の中央にあった。
「医療ドラマとかで見るCTスキャンだっけ?アレをめっちゃデカくしたみたいなものがある……」
なんなのだろうかコイツは……見上げてみても天辺が見えない位にはデカいから人間に使う用じゃないんだろうけど何処からどう見てもCTスキャンのアレにしか見えねぇ……
「スイッチみたいなのとかないのか?っと、なんだまだ奥に続いてるのか」
クソデカCTスキャンの後ろにまだ人が通れる道が続いていて、その先も明るく照らされている。
先に何があるのかは見えないが、まぁ、此処までの感じ何かのトラップがあるとかはないだろうから進んでみよう。
「しかし、こんな事になるならトラの奴にもっとゲーム内イベントとか聞いとくべきだったな」
あくまで俺が知ってるのはFSWの基本的な事で、このゲーム内でどんなイベントが開催されているのかとかMAPがどういう構造になっているのかみたいな知識面は全然知らないんだよな。
壁の文字もそうだけど、さっきのクソデカCTスキャンとか無意味なものを態々ゲームに用意するとは思えないし何か意図があるんだろうな。
「……対人ゲームとは言え、なんかNPCのフラグ潰してたりとかないよな?」
ストーリーはじっくりと味わいたい系の俺としては、可能な限りNPCイベントは拾いたいんだよなぁ……結構、NPCイベントって複雑だし特定のエリアに足を踏み入れただけで会話もなんなら存在すら認知していなかったNPCのイベントフラグが折れたとかあるからなぁ。
「このゲームにNPCイベント持ちのNPCが居るとか知らないんだけど」
もう少しゲームの事を調べてからログインするべきだったか……後悔先に立たず、という訳で切り替えよう。
「っと、今回は思ったよりも長かったが到着した……か……ってうぉぉぉ!?」
退屈凌ぎに色々と思考を巡らせていた俺だけど、辿り着いた部屋で飛び込んできた光景に今までの思考は全て吹き飛んだ。
「なんだこのクソ格好いいFSは!!」
そう、辿り着いた先には一機のFSが置かれているデッキだったのだから。
全体的に白いカラーリングに、関節部や頭にあるV字のアンテナが赤いというおめでたい感じのヒロイックなデザインでスマートさを感じさせるFSに俺の心臓が高鳴る──コイツに乗りたいと、直感的にそう思った。
「どうやったら乗れるんだ?」
デッキの端は落下防止の為なのだろう柵が設けられているのだが、その何処を見ても切れ目はなくどうやって目の前のFSに乗り込めば良いのかが分からない。
こういうのって搭乗口になる部分には柵がないのが普通じゃないのか?クソッ、目の前にあるのに乗れないのってイライラするな。
「んー?何処だ!!お前に乗るにはどうすれば良いんだ!?」
カンカンっと甲高い音を立てながら、走り回ってみたが胸にも首の後ろや背中、頭頂部やアンテナの接合部、腰といった乗れそうな部分を見て回ったがやっぱり何処も柵が邪魔をしていて乗れそうにない。
「うぐぐ……」
──そんな風に悩んでいると、凄まじい揺れが突如として俺を襲いフワッと身体が宙に放り出される。
『こんなところに居るとはなぁ!!ニュービー!!』
「しつこいな……!!」
赤黒いカラーリングの悪役さ半端ない『Tategami』の奴が乗ってるモノアイが光るFSが俺のすぐ後ろ、天井をFSで破壊しながら降りて来たみたいで奴が着地した衝撃で吹き飛ばされたんだろう。
『ああん?見たこともないFS……はっ、もしかしてレア機体か!?』
レア機体?なんだそれって、と言いたいところだが床が近い!!クソッ、折角格好いいFSを見つけたってのに俺は死ぬのか!?
『──救護対象を確認』
「うおっ!?」
激突寸前に黒い手が割り込んで俺を優しく掴んでくれる……視線を上に持ち上げればさっきまで、点灯していなかったFSのツインアイが緑色に光っておりジッと俺を見つめていた。
「──俺を乗せてくれ」
その緑色の瞳に何故か、俺は声をかけなければならないと思った。
FSが俺の言葉を認識してくれたのか俺を乗せた手が同じく緑色に輝く、コアの様な場所に近づくとそこが開きコクピットが顕になった。
『FSが命令もなく動いた?いや、そんな事よりもニュービー!!テメェ、そのレア機体は俺のもんだ!!』
何かTategamiの奴が騒がしい気がするが、俺は全て無視してコクピットに乗り込むと自動で閉じて一瞬で、目の前にTategamiのFSが映し出される。
『EVOLVER READY──』
「おっ、良いなそれ合わせるか」
機体アナウンスか、少し低めの女性ボイスが流れなんとなくその先が予想出来た俺は左右にある操縦桿を握り締めながら笑みを浮かべる。
『ニュービー!!』
『「GO!!」』