フロンティアスピリットウォーズ〜浪漫と脳筋男がゼロから始める傭兵プレイ〜 作:マスターBT
惑星クトニオスの北部の多くは雪や氷に覆われた寒冷地方となっており、俺の初仕事の場となるNE-19もその例に洩れず一面が銀世界となっていた。
生えていたであろう木々の多くは戦いの最中に燃え尽きたり、へし折られたせいか兵器の残骸に降り積もった雪がなければ何処までも平らな景色が広がるという日本では中々、見られない景色を《EVOLVER》と共に上から見下ろす俺のテンションは控えめに言っても高い。
「おぉ!!凄いな!!デカい建物とか何もない一面雪景色とか初めて見たぞ!」
『北部地方の多くはこの様な景色となっていますよ開拓者。それとそろそろブースター限界ですので着陸を』
「了解!」
標準的なブースターを搭載している《EVOLVER》は連合国陣営のFS設計に近く、機体重量が軽い為に高度をある程度保ちながらの滑空を可能としているがあくまで滑空である為、ブースターが焼け付くより早く着地をする必要がある。
雪を散らしながらゆっくりと着陸した後、冷却も兼ねて歩きによる移動を選ぶ俺ははマップに表示された反乱軍の位置を確認しながら、折角のVRMMOという事で景色を楽しむ。
『連合国や帝国が攻め込む以前は高級魚などの漁も行われていたそうですが今は見る影もありませんね』
「まぁ、戦いが始まってしまえば一般人が仕事を続けるのは難しいよなぁ」
『はい。しかし、戦いがなければ私と開拓者の出会いはありませんでした。不思議なものですね』
「途絶えるものがあればまた生まれるものもある……哲学みたいになってきたな。この話終わり!」
『開拓者は論理的な思考が苦手なご様子』
「遠回しに馬鹿って言ってない?」
人から見た善悪の話とかそういうややこしい話は苦手なんだって。
正直、あれもこれも考えたらキリがないし色んな人の立場になってものを考えるってのが大切なのは分かるけど、最終的には自分がどうしたいかじゃん?だったら最初からややこしい事を考えずに自分がやりたい事を貫いた方が得だと思うんだよね。
『開拓者』
《シン》の声とともに視界に表示されたのは今回の依頼目標である連合国製のFSで、知識がない俺でも分かる初めの時に見せられた細身の機体が三機、周囲を警戒しながら動いていた。
「景色を眺めたり哲学に考えを耽る時間は終わりって訳だな」
『活き活きしていますね。開拓者の得意分野だからでしょうか?』
「揶揄ってるだろ!!良いからいくぞ!!」
『はい』
《シン》のレーダーが優秀なのか向こうは俺を認識している様な素振りがないから、《EVOLVER》を走らせスピードが乗った状態で崖から勢いよく飛び出し、十分に冷え切ったブースターを点火させる。
『システム戦闘モードへ移行』
フルダイブVRMMOの魅力の一つと言うべき、数々のデータから再現されたのであろう仮想のGが俺を襲い、一気に《EVOLVER》が加速する。
もちろん、これはゲームだから気絶する事はないけど思わず食いしばってしまうGってのはこのゲームの没入感を高めてくれるから良いよな!
『敵機、こちらを確認。アサルトライフルによる射撃にご注意を』
「了解!!」
こう言う時に俺も遠距離武装が欲しくなるけど、無い物ねだりを戦場でするのは格好良くねぇ!!
だからこのまま連中のロックオンを振り切る程に加速して突っ込めば問題ないよなぁ!!っとアクセルをベタ踏みし、高速で通り過ぎていく弾幕を潜り抜け、大量の雪を巻き上げながら着地する。
「先ずはお前から!!」
NPCだからなのか明らかに反応が遅れ、まだ振り向く事すら出来ていない一番近い敵機に向かってブースターを吹かしながら跳躍して接近、昔に見た特撮の要領でメインカメラを蹴り飛ばし倒れるそいつのメインカメラを完全に踏み砕く。
『一機、無力化。敵機の反撃に注意を』
《シン》の警告とロックオンされたアラートが鳴り響き、大きく後方へと跳躍すれば俺が無力化した敵機にトドメを刺す様に敵の弾幕が着弾する……えぇ、NPCとは言え容赦ねぇな。
「っと、足を止めれば的だな」
左側から大きく回り込む様に《EVOLVER》を走らせながら、不規則に立ち止まったり上昇する事で敵機の弾丸を避けつつ接近し、今度は右ストレートを放つがさっきとは違って真正面からのせいか、敵機は避けると腰に装備していた棒を引き抜くとそこからビームが剣のように伸びる。
「うおっ、マジか!!」
『連合国製の機体は軽量な為、ビーム兵器が好んで搭載される傾向にありますね』
「ビームサーベルって訳ね!!」
俺が舞い散らした雪がビームサーベルに当たって溶けてるし、間違いなくアレは超高温による切断だよな。
って事は装甲が決して厚い訳じゃない《EVOLVER》が直撃を貰うと不味いって訳だな。
「ははっ!!」
誰がどう考えても一度、後方に回避してもう一機からのアサルトライフルを避けつつ体勢を整えるのが正しいってのは分かっている。
けど、それはまともな武装を積んで遠距離からでも戦えるからこそ、状況改善に繋がる一手でもあると思うんだよな俺は!!どうせ、俺が攻撃をするには再び距離を詰めて接近戦に持ち込む必要がある……そうなれば、必然、ビームサーベルの間合いにも入る。
「どうせリスクを負うなら今!!」
ビームサーベルが振り下ろされる刹那、一歩前に踏み込みもう一機からの射線を完全に切る。
そしてこのまま俺を溶断しようと迫るビームサーベルだが、肘の辺りに掌底を叩き込みながら敵機の勢いを利用する形でグルリと避け、ビームサーベルを掴み奪い、放り投げならもう一機の方へと蹴り飛ばす。
「しゃあ!!狙い通り!!」
『無茶をしますね開拓者……一歩間違えれば直撃でしたよ』
「してないからセーフ!!」
縺れ込んで倒れた敵機のメインカメラを纏めて踏み砕き、撃墜判定となるまで適当にタコ殴りにし、ギリギリを成功させた事でちょっと興奮している頭を冷やす為に深呼吸を挟む。
……あー、楽しい!!やっぱ、一か八かの賭けに競り勝つって最高だな!!
「しかしアレだな。ステゴロは時間かかるな」
『何処の馬の骨かも分からない人の装備なんて嫌ですよ』
「そこをなんとか出来ない?ほら、今も奪った奴ちゃんと放り投げたからご褒美みたいな」
『嫌です』
「ちくせう」
ステゴロ縛りはそれはそれで楽しいから良いんだけど、時間かかるのは事実だし絵面が終わってるのよね……メインカメラを失ってジタバタしてる奴をボコボコに殴り続ける絵面がさ。
悪い事してないのに悪い事してる気分だよ……
「まだ連合国のFS反応はあるんだよな?」
『はい。先程と同じ様に三機一チームで行動している様です』
「隣接してる奴らの距離感にもよるけど、少しずつ釣り出して戦うのが正解か。ステゴロだし」
なんとなくNPCFSの強さってのも分かったし、次からはもう少し安定度を選んで戦うとしよう。
さっきの戦い方をしておいてと我ながら突っ込みたくなるが、ゲームを始めたばかりの新米傭兵で資金的余裕はないから《EVOLVER》がダメージ負いすぎて、修理費が!!とかになりたくないし……
──首筋にゾワリと嫌な感覚が走る。
「ッッ!!!!」
『へぇ、よく避けたじゃねぇかルーキー。何も分かりませんって面しておいて俺らがつけてるのに勘付いてたのか?』
この声は……依頼ボードのところで俺に順番を譲ってくれたスキンヘッドのおっさんか!!
くそぅ、Canariaさんみたいに良い人だと思ったのに俺を騙していたのか。
『まっ、なんであれその貧相な機体でこの数には勝てないだろう!!』
スキンヘッドのおっさんの機体含めて、総勢で5機かよ……へへっ、不安もあるがこの状況を巻き返したら格好良くね?って興奮の方が勝ってるわ。