関わる人全てを曇らせるホシノの同級生   作:フタバ ハクシ

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立ちこめる暗雲

「全員その場に伏せなさい!持っている武器は捨てて!」

 

銀行内にシロコ、もといブルーの声が響き渡る。

 

「言うことを聞かないと、痛い目に遭いますよ☆」

 

銀行にいた人々は僕たちの持つ銃に怯えて、ある人は震え、ある人はパニックになっている。マーケットガードが武器を取ろうとしているのをセリカが制し、シロコが威嚇射撃を行っている。

僕たちは今「銀行強盗」をしている。

...あれほど口酸っぱく「銀行強盗はダメ」と言っていた僕たちがこのような行動に出たのか。

事の発端は数時間前にさかのぼる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕たちは先日ヘルメット団から手に入れた戦車の部品の出所を掴むため、ブラックマーケットに赴いていた。そこで僕たちは今朝学校の借金を回収した現金輸送車が闇銀行に入っていくのを目撃した。

 

「ブラックマーケットでも最も強固なセキュリティを誇る銀行の中となると....それにあの数のマーケットガードが目を光らせてますし.....」

 

薄茶色の髪にキャラクターを模したリュックを背負い、トリニティの制服に身を包む彼女はヒフミというらしい。

ブラックマーケットでチンピラに絡まれていたところを僕たちが助け出し、お礼に道案内をしてもらっている。

 

 

「それ以外に輸送車の集金ルートを確認する方法は....ええっと....うーん...」

 

ヒフミが顎に手をついてうんうんと唸っている。

 

「うん、他に方法はないよ」

 

シロコが決意をあらわにし、ホシノに近寄る。

 

「えっ?」

 

「ホシノ先輩、ここは例の方法しか」

 

「なるほど、あれかー。あれなのかあー」

 

「....ええっ?」

 

僕は頭を抱えた。

シロコとホシノが話しているのはおそらく"あの方法"だ。

 

「まさか...本当にやることになるとは....」

 

ため息をつきながら僕は銃を取り出す。

 

「あ.....!!そうですね、あの方法なら!」

 

「何?どういうこと?....まさか、あれ?まさか、私が思ってるあの方法じゃないよね?」

 

動揺を露わにしながら、セリカはシロコに問いかける。

 

「.....」

 

シロコは無言でセリカの目を見つめていた。

 

「う、嘘っ!?本気で!?」

 

「....あ、あのう。全然話が見えないんですけど.....「あの方法」ってなんですか?」

 

ヒフミが困り顔でシロコに聞く。

 

「残された方法はたった一つ」

 

シロコは被り物を被り、高らかに宣言した。

 

「銀行を襲う」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今に至る。

 

「緊急事態発生!緊急事態発生!」

 

銀行捜査官が騒がしく駆け回っている。

 

「うるさい。外部への通報システムは切断してるからおとなしくして」

 

僕は叫ぶ銀行員の足元に銃を撃つ。

 

「ひ、ひいっ!」

 

「ほら、そこ!!伏せてってば!下手に動くとあの世行きだよ!?」

 

セリカが声を荒げて相手を威圧する。あんなに乗り気じゃなかったのに一番役にはまっている気がする。

 

「みなさん、お願いだからジッとしてください.....あうう....」

 

「うへ~ここまでは計画通り!次のステップに進もうー!」

 

「リーダーのファウストさん!指示を願う!」

 

ホシノはヒフミの方を向く。

 

「えっ!?えっ!?ファウストって、わ、私ですか?リーダーですか?私が!?」

 

ヒフミは自分に指を指しながら慌てふためいている。

 

「リーダーです!ボスです!ちなみに私は.....」

 

「覆面水着団のクリスティーナだお♧」

 

....一番ノリノリなのはノノミかもしれない。

 

「うわ、何それ!いつから覆面水着団なんて名前になったの!?それにダサすぎだし!」

 

「レッドの言う通りだよ、クリスティーナ。流石にその名前は嫌」

 

「レイ......ホワイト先輩もノリノリじゃない!!」

 

「うへ、ファウストさんは怒ると怖いんだよー?言うこと聞かないと怒られるぞー?」

 

「あう....リーダーになっちゃいました....これじゃあ、ティーパーティーの名に泥を塗る羽目に....」

 

「監視カメラの死角、警備員の動線、銀行内の構造、すべて頭に入ってる。無駄な抵抗はしないこと」

 

シロコが窓口にいる銀行員に向かって話しかける。

 

「さあ、このバッグに入れて。少し前に到着した現金輸送車の....」

 

「わっ、わかりました!なんでも差し上げます!現金でも、債券でも、金塊でも、いくらでも持っていってください!!」

 

「そ、そうじゃなくて、集金記録を....」

 

「どっ、どうぞ!これでもかと詰め込みました!どうか命だけは!!」

 

「あ.....う、うーん....」

 

予想以上に怯える銀行員に、シロコは少し困惑していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「封鎖地点を突破。この先は安全です」

 

無線越しに聞こえるアヤネの声を皮切りに、みんなが被り物を脱ぎ始める。

 

「やった!大成功!」

 

「本当にブラックマーケットの闇銀行を襲っちゃうなんて...ふう....」

 

「ナビありがとう、アヤネ。お陰で動きやすかったよ」

 

「さて、シロコちゃん、集金記録の書類はちゃんと持ってるよね?」

 

「う、うん。バッグの中に」

 

シロコは何かが大量に詰まったバッグのチャックを開ける。

 

「.....へ?なんじゃこりゃ!?カバンの中に.....札束が....!?」

 

そこに入っていたのは軽く1億はあるだろうという札束の山だった。

 

「うえええええっ!?シロコ先輩、現金を盗んじゃったの!?」

 

これはマズい。民間人に被害を出さないこと、書類のみを奪うことを約束として銀行強盗という強行策に踏み入ったのに、これじゃあ僕たちはただの犯罪者だ。

 

「ち、違う....目当ての書類はちゃんとある」

 

「このお金は、銀行の人が勝手に勘違いして入れただけで....」

 

シロコが珍しく焦っている。どうやらわざとではないようだ。シロコはクールに見えるが、意外とわかりやすい。

 

「どれどれ.....うへ、軽く1億はあるね。本当に5分で1億稼いじゃったよー」

 

「やったあ!!何ぼーっとしてるの!運ぶわよ!」

 

セリカが嬉々としてバッグを手に取ろうとする。僕はそれを右手で止めた。

 

「セリカ、いいの?このお金を持っていったら、もう戻れなくなるよ」

 

この現金を持ち去るということは、すなわち何を意味するのか。

 

「犯罪に手を染めるってことだよ。セリカはそれがアビドスのためになると思う?」

 

「は、犯罪だから何!?このお金はそもそも、私たちが汗水流して稼いだお金なんだよ!それがあの闇銀行に流れてったんだよ!」

 

「それに、そのままにしておいたら、犯罪者の武器や兵器に変えられてたかもしれない!悪人の金を盗んで、何が悪いの!?」

 

セリカの声が閑静な住宅街に響き渡る。セリカらしい言葉だ。アビドスのためを思っていっているのも理解できる。

 

「....ノノミは、どう思う」

 

僕は何かを言いたげにしていたノノミに会話の主導権を渡す。

 

「私はセリカちゃんの意見に賛成です。犯罪者の資金ですし、私たちが正しい使い方をした方がいいと思います」

 

「ほらね!これさえあれば、学校の借金をかなり減らせるんだよ!?」

 

「んむ....それはそうなんだけど、シロコちゃんはどう思う?」

 

ホシノがシロコに意見を募る。

 

「自分の意見を述べるまでもない、ホシノ先輩が反対するだろうから」

 

即答だった。シロコは使う、使わない以前に"使えない"ということを知っていた。

 

「さすがはシロコちゃん。私のこと、わかってるねー」

 

「私たちに必要なのは書類だけ。お金じゃない」

 

ホシノが重い口を開け、自分の意見を述べ始める。

 

「今回は犯罪者の資金だからいいとして、次はどうする?その次は?」

 

「.....」

 

セリカは苦虫を噛み潰すような顔でホシノの方を見ていた。

 

「こんな方法に慣れちゃうと.....ゆくゆくは、きっと平気で同じことをするようになるよ」

 

「そしたら、この先またピンチになった時....「仕方ないよね」とか言いながら、やっちゃいけないことに手を出すと思う」

 

「うへ〜、このおじさんとしては、カワイイ後輩がそうなっちゃうのはイヤだなー」

 

「そうやって学校を守ったって、何の意味があるのさ」

 

「こんな方法を使うくらいなら、最初からノノミちゃんが持ってる燦然と輝くゴールドカードに頼ってたはずー」

 

「....私もそう提案しましたが、ホシノ先輩が反対されて....」

 

「先輩の気持ち、わかります。いくら頑張ったって、きちんとした方法で返済しない限り、アビドスはアビドスじゃなくなってしまう....」

 

ノノミの言う通り、そのやり方で本来のアビドスは守れない。きっと、ユメ先輩はこんな方法でアビドスを守ることを望まない。

 

「そういうこと、それに....」

 

ホシノは少し笑いながら僕の方を見つめる。

 

「もし私が賛成したとしても、レイヤがそれを許さないと思うなー」

 

流石はホシノだ。僕のことをよく知っている。

 

「...うん。僕はアビドスのみんなにそんなことしてほしくない。もし使うつもりだったら、全力で僕は止める」

 

「先生だって、そうでしょ」

 

僕は傍観していた先生に尋ねる。

 

「そうだね。私は生徒を犯罪者にはしたくない。先生は生徒が進むべき道をしっかりと示してあげるものだと思うから」

 

...実に先生らしい意見だな、と僕は思った。

生徒を第一に考え、それのためなら自分の命さえ投げ捨てるつもりでいるだろう。

酔狂な人だ。

 

「だから、このバッグは置いていくよ。いただくのは書類だけね。これは委員長としての命令だよー」

 

「うわああっ!!もどかしい!意味わかんない!こんな大金を捨ててく!?変なところで真面目なんだから!」

 

セリカが両手で頭を抱えながら叫ぶ。

 

「うん、委員長としての命令なら」

 

シロコは満足げに笑みを浮かべている。

 

「私はアビドスさんの事情をよく知りませんが....このお金を持っていると、何か他のトラブルに巻き込まれるかもしれません」

 

「災いの種、みたいなものでしょうから....」

 

ヒフミはそう言ってバッグに目をやる。確かに、これが原因でさっきのマーケットガードに追いかけ回されるなんてごめんだ。

 

「あは.....仕方ないですよね。このバッグは、私が適当に処分します」

 

「ほい、頼んだよー」

 

ノノミは少し惜しそうな顔でバッグを持ち上げる。

 

「.....!!待ってください!!何者かがそちらに接近しています!」

 

「....!!追っ手のマーケットガード!?」

 

シロコが銃を構えて戦闘体制に入る。

 

「シロコ、待って。マーケットガードじゃない」

 

眼を使って迫り来る追跡者の詳細を調べる。

特徴的なヘイローに、大きなジャケットを羽織ったその姿。

どこかで見たことがある。

 

「あれは.....便利屋の社長?」

 

便利屋68の社長、陸八魔りくはちまアル。

先日色々あってアビドスを襲撃されたが、勤務時間がどうとかで結局帰っていった。

 

「はあ、ふう.......ま、待って!!」

 

みんな急いで被り物を被り直す。

 

「あ、落ち着いて。私は敵じゃないから.....」

 

「....何」

 

「あ、あの....た、大したことじゃないんだけど....」

 

「銀行の襲撃、見せてもらったわ.....」

 

「ブラックマーケットの銀行をものの5分で攻略して見事に撤収.....あなたたち、稀に見るアウトローっぷりだったわ」

 

「正直、すごく衝撃的だったというか、この時世にあんな大胆なことができるなんて...感動的というか」

 

「わ、私も頑張るわ!法律や規律に縛られない、本当の意味での自由な魂!そんなアウトローになりたいから!」

 

....まずい、全く話が見えてこない。何の話をしているんだ?

 

「そ、そういうことだから.....な、名前を教えて!!」

 

「名前.....!?」

 

「その、組織っていうか、チーム名とかあるでしょ?正式な名称じゃなくてもいいから....私が今日の勇姿を心に深く刻んで置けるように!!」

 

「....なんか、めんどくさいことになってる....」

 

「こら〜ホワイト、まだ仕事は終わってないよ〜」

 

「もういいでしょピンク。あとは勝手にして」

 

僕はこの茶番劇に嫌気がさして匙を投げた。

 

「....はいっ!おっしゃることは、よーくわかりましたっ!」

 

クリスティーナが眼を輝かせてアルの手を取る。

 

「私たちは、人呼んで......覆面水着団!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ゛ぁ゛......疲れた.....」

 

対策委員会の教室に戻ってきて、僕は机に突っ伏している。

とにかく疲れた。気疲れがすごい。

 

「こらレイヤ、真面目な話してるんだから、ちゃんと聞きなさい!」

 

珍しくホシノに釘を刺される。

別に聞いていないわけじゃない。ちゃんと内容は理解している。

 

「ヘルメット団の後ろに、カイザーが関わってるって話でしょ」

 

僕たちがアビドスの借金返済に充てていた現金が、カイザーを通じてヘルメット団に流れている。つまり、僕たちが稼いだお金でヘルメット団はアビドスを襲っていた。

 

「この件、銀行単独の仕業じゃなさそうだね。カイザーコーポレーション本社の息がかかってるとしか思えない....」

 

「シロコの考察が当たってると思う。今は何もわからないけど、放っておける問題じゃなさそう」

 

もしシロコの言う通りだとしたら、これはアビドス全体が絡む騒動になるかもしれない。

 

「カイザー....一体何が目的なんだ....?」

 

謎は深まっていくばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒフミを見送った後、僕は学校の屋上でぼんやりと夕陽を眺めていた。

他のみんなは帰ったようで、学校は静寂に包まれている。聞こえるのは風で擦られる葉の音だけだ。

 

「アビドスの問題はまだまだ山積みか....」

 

一難去ってまた一難とはよく言ったものだ。難が去る前に難が来る場合があるなんて。

 

「....ユメ先輩は、どう思う?」

 

黒いアームカバー、手袋に包まれた左腕を見ながらそう呟いた。

もし、ここにユメ先輩がいれば、みんなにどんな言葉をかけるだろうか。

きっと、「大丈夫」だとか「なんとかなる」だとか、何の根拠もない前向きな言葉をかけるだろう。

...今思えば、あの言葉たちに救われていた。

どんなに辛い現実があっても、先輩の言葉ひとつで僕とホシノは前を向けた。先輩がいたから、今のアビドスがある。

でも、僕はそんな器用な真似はできない。あの頃みたいに、なんとなく明るい予感に甘えられていた僕は、もう死んだ。あの砂漠で、先輩と一緒に。

 

「なにしてるの、レイヤ」

 

「...先生」

 

僕は振り返ることなく先生に返事を返した。

 

「他の子達はみんな帰ったよ。いつ帰るつもり?」

 

「...別にいつでもいいでしょ」

 

「先生としては、生徒が不良になっちゃうのは嫌だなぁ」

 

僕はため息をつき、先生の方を向く。

 

「聞きたいのはそんなこと?」

 

「...じゃあ、本題に入るね」

 

先生が咳払いをして、真剣な表情に変わる。

 

「...もし、本当にカイザーがアビドスを狙っているとして、何が目的だと思う?」

 

それは先ほど対策委員会のみんなで話していた内容に似ていた。

しかし、少し違う。

バックに潜む企業の話ではなく、仮に企業がいたとして、何が目的なのか。

先生はそれを知りたいようだ。

 

「なんで僕に?それを聞くだけならシロコやノノミ、ホシノでもいいはず」

 

「...君は聡いからね。戦闘中だって、感情的になることなく冷静に対処する」

 

「レイヤなら、他の子たちとは違う、鋭い答えが返ってくるかもと思って」

 

「...別に、みんなと変わらないよ」

 

「で、レイヤはどう思うの?」

 

先生はその紺色の瞳で僕のことをしっかりととらえている。

アビドスを狙う理由なんて、僕だって知らない。

だけど、思い当たる節はある。

 

「....何か、大きな秘密がある可能性は捨てきれない」

 

「これだけ広いアビドス砂漠だったら、物を隠すのにうってつけだし」

 

「例えば、キヴォトスを支配するほどの力を持った何か、とか」

 

...もし、カイザーがアビドスに隠された秘密を探しているのだとしたら、あの砂漠について、ユメ先輩について何か知っているかもしれない。

だとしたら、この問題を追う価値は十分にある。

 

「....それが、レイヤの意見?」

 

「あくまで推測だけどね。アビドスが砂に包まれる前のことは僕もよく知らない」

 

「....貴重な意見ありがとう」

 

先生はふっと笑いかけ、感謝を僕に伝える。

 

「で、話はそれだけ?」

 

「実はあと一つ、聞きたいことがあるんだ」

 

「....何」

 

素気なく答える僕のことを、先生は目線を離すことなく見つめる。

 

「レイヤの眼、「視えてる」よね」

 

「あー....先生には言ってなかったっけ」

 

説明するのがめんどくさくて、先生にはしていなかったのを思いだした。

 

「そうだよ。僕の眼はちょっとだけ特別で、壁の向こうとか、暗闇の中にいる敵も視ることができる」

 

「だけど、それはあくまで空間把握能力に優れてるだけ。飛んでくる矢を避けるとか、銃弾を全て敵に当てるとかはできない。僕は目がいいだけのただの生徒だよ」

 

「それはみんな知っているの?」

 

「先生以外は、ね」

 

目についての大まかな情報を先生に話す。

しかし、細かな性能、弱点を先生に話すことはなかった。

 

「...僕は、まだあなたを信用していない」

 

「アビドスの問題に真剣に向き合ってくれてること、生徒に対してとても真摯であることには感謝してる」

 

「だけど、僕はそれだけじゃ先生を信用できない」

 

「どうしたら、レイヤは私のことを信じてくれる?」

 

先生は表情を崩すことなく、僕に尋ねる。

 

「...わからない。けど、先生がアビドスのためを思ってるのは知ってる」

 

「...ひとまずはこの問題を片付けることが先。先生を信じるかはその後」

 

僕は先生の横を通り、校舎へ続くドアに手をかける。

 

「それと、この学校で一番深く考えてるのはホシノだよ。僕じゃない」

 

「えっ、それって」

 

「また明日、先生」

 

僕は先生の言葉を遮って別れの言葉を告げる。先生は少し不服そうな顔をしたが、すぐに困ったように笑う顔を見せた。

 

「....うん、じゃあね」

 

そう言って僕はドアを閉じた。

この問題を解決できる大人なら、僕がいなくなってもホシノのことを、学校のみんなを任せられる。

これから僕らが敵に回すのは、学校よりももっと大きな敵。

おそらく厳しい戦いになると思う。でも、シャーレから来た先生なら。

ユメ先輩に似てる、先生なら。

きっと、何とかしてくれる。

 

 

 

「がんばってね、先生」

 

少し口角が上がっていたのか、いつもより高い声色で僕は呟いた。

 

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