ハッピーエンド   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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その力は

「あれ?あなた……バッドエンドハッピー……?」

 

「ほ……星空みゆき……!!」

 

 それは本来有り得てはいけないミスだった。

 心のどこかで楽観視していたのかもしれない、そして現実から逃げようと、目を逸らそうとしていたのかもしれない。

 完璧に隠しきっていた変装が一瞬崩れて、その瞬間にキュアハッピーに遭遇して、顔がバレる。

 お笑いにも程がある、なんの為に今まで潜伏していたと思っている。

 ワタシはキュアハッピーを倒す為に、この世界をバッドエンドで支配する為に蘇ったんじゃないのか。

 

 だったらやる事は一つ。倒すのみ。

 

「ん……?んん?……な、なんか知らないけど俺邪魔だったりする?」

 

「え!?あ、えーと……そ、それは〜……」

 

「悪いけど確かに邪魔ね。これはワタシと星空みゆきの問題、とっととどっかに行った方が身の為よ」

 

 とはいえコイツが今巻き込まれるのは寝覚めが悪い。

 シッシと手を振りながら追い払う……これで素直に聞いてくれるなら楽なんだケド。

 

「邪魔……うん、確かにそうか。じゃあさ、一つだけ聞かせてくれない?」

 

「なによ」

 

「……これから戦おうとしてない?」

 

「ギクッ、ち、ちちち違うよ!?」

 

「アンタが答えてどうすんのよ。……で?なんでそう思ったワケ?」

 

「あー……数日前、俺図書館でちょっとの間寝てたというか気絶してたみたいな事、キミには言ったと思うんだけど。起きた時図書館の窓から見えたんだよ……何となくキミに似てる子と星空に似てる子が戦ってるのをさ。

あの時はなんというか、気のせいというか夢でも見てたって事で片付けたんだけど……だって今の2人の空気、ただ事じゃないだろ?もしも世迷言なら笑ってくれても良いけど……」

 

 ……まさか見られてたなんてね。

 あの時、コイツを見逃して気絶させるだけにしたのが結果としてここに繋がってしまったかと思うと自分に呆れてしまう。

 どれだけワタシは甘くなってしまったんだろうと。

 

 それでも何となく……コイツに世迷言と誤魔化すのだけは何となく違うのではないかと口が自然と動いていた。

 

「じゃ、もしも世迷言じゃない、なんて言ったらどうするつもり?」

 

「止めるに決まってる。理由がどうあれ、友達が傷付く姿を見たいなんてそんな薄情な人間なつもりは俺は無い」

「はぁ……」

 

 聞いたらそう言われると分かっていた、何故かは知らないケド。

 

「…………というか隣にいるの、灰藤……くん、だよね?灰藤彩(カイドウ サイ)くん」

 

「あ、ああ……そういう君は星空、だよな?星空みゆき……俺と同じ中学の」

 

「ソ、ソウダネ。……って今はそうじゃなくって!灰藤くんはバッドエンドハッピーとは……」

 

「ん?俺の隣にいるこの女の子の名前がそうだって言うなら友達だ。この子が何者か、名前すらも知らないけど、俺のただ一人の友達だ」

 

 ドクンと胸が弾むのを感じた。

 感じた事の無い感情が生まれる気がして……そんなのは雑音だ、振り払うなんて簡単な話。

 だからワタシはそんななんでもないような感情を……

 

 感情を。

 

「トモダチ……」

 

 

 振り払う事が、出来なかった。

 

 

「そっかぁ、友達なんだね。うん、だったらなおさらわたしはあなたと戦えないよ」

 

 その言葉は『ワタシ達は今から戦おうとしてました』と言っているようなものだ、バカバカしい……と、言う事すら出来ずに毒気が抜かれていくのを放置するだけとなっていた。

 

 そして先に残ったのは、疑問。

 

「……星空みゆき」

 

「どうしたの?」

 

「アンタはなんでワタシと戦わない?倒そうとしない?ワタシはアンタや世界をバッドエンドで染め上げて支配しようとしてるのに」

 

 少なくとも、プリキュアがどういう存在かは知っている。

 世界を幸せに、平和にする存在。

 そう、ワタシ達とは真逆の存在、敵対でありべき存在。

 ならば四の五の言わずに倒しに来るのが普通……でもワタシが復活してからのキュアハッピーだけは違っていた。

 何故か倒そうとせず、対話しようとしていた。

 

 それがあまりにも歪で、つい聞いてしまう。

 

「だって今のあなたは、世界をバッドエンドに染め上げようとはしてない。もうわたしと戦うところまで来てるなら、した方があなたとしては楽……なのかなーなんて。わたしバカだから分からないことが多いけど。でも一応、長い間プリキュアしてきたつもりだし」

 

「……」

 

 否定はしない、いや出来なかった。

 確かに考えればあの後感情に身を任せてそうしてしまうのが一番手っ取り早がった、それでもしなかったのは……何故だったか。

 

「それにね、何故かは分からないけれど……あなたの力がなんだかあの時……まだジョーカーがいた時戦った頃と違った気がして」

 

「は?」

 

 それに、その言葉が特別気になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「バッドエンドハッピーの力が変化している可能性……ですか?」

 

「うん、何となくだけど違う気がして……でもやよいちゃん、なおちゃん、あかねちゃんに聞いても分からなかったかられいかちゃんなら何か分かるかなーと……」

 

「なるほど……詳しく、気になった点を聞かせてもらえますか?」

 

「うん、『そして、バッドエナジーを吸いまくってワタシがこの世界を支配する』……って言葉がね。わたしはれいかちゃんみたいに頭が良くないから説明できるか分からないけど……なんていうか、バッドエンド王国って『バッドエナジーを広げる』んだよね?だったら復活してからも被害を受けた人が多くいるのかな〜……なんて思ったんだけど……」

 

 あなたが逃げちゃったあと、わたし気になってたことがあったんだ。

 あなたが言ってた『そして、バッドエナジーを吸いまくってワタシがこの世界を支配する』って言葉が。

 それを友達に聞いてみたんだ、そしたらこんな言葉が聞けたんだ。

 

「確かにそうですね……バッドエンドハッピーがどこからどのように復活したのかは分かりませんが、復活する過程で彼女の力が変化している可能性はあります」

 

「ホント!?」

 

「はい、そもそもですがバッドエンド王国の幹部達がピエーロ復活の為にしていた事がバッドエナジーを増幅……つまりは増やして回収する事。ですが回収したとて被害を受けた方々は治る事は無く、私達でどうにかする必要があった。

しかし、今回のバッドエンドハッピーではそうした被害が無く力だけを得られている。という事は、彼女の力は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「その子は言ったんだ、もしかしたらあなたの力は『人々を苦しめるもの』じゃなくて『人々の苦しみを吸い取って力に変えて、和らげてあげている』んじゃないかって」

 

「……ワタシが?人々を?救う?ばっかじゃないの?ワタシはジョーカー様に生み出された存在、世界をバッドエンドに染め上げるのが本質に決まってるじゃない」

 

 真っ直ぐな瞳を前に一歩たじろいで下がりながらも、虚勢を張る。

 自分でも気が付かない内に力が変質していた?それも、プリキュアみたいな誰かを救う為の力に?

 

 そんなの有り得る訳が……

 

「ねえ、あなたは一体どこにいたの?」

 

「い……言わない」

 

「うーん、それじゃあ仕方ないか〜。無理に聞くのも違う気がするからね」

 

 無い、と言い切れない事に背筋がぞわりとする。

 何せワタシは『コイツの影の中にいた』んだ、唯一あるとすれば本意で無かったにせよプリキュアと同化していた時に力が変質したという事。

 コイツを倒す事を目的にしてきたのにワタシの方が浄化されていた……いや、そんなの認めない、認められるはずがない。

 

 ただ、戦うにせよ戦わないにせよ……いやワタシはまだ戦う気ではあるが、まずは隣の――カイドウだけは何とかしたかった。

 

「ところで、その話まだ続くワケ?どちらにせよコイツ……カイドウを巻き込むのは……まあ、あんまり寝覚めが良くないのよ」

 

「ん?俺?どちらにせよ戦わせる気はないからここにいるが?」

 

「アンタねえ……折角ワタシが見逃してやるって言ってるのに……」

 

「んーん!わたしも灰藤くんと同じだよ!わたしはあなたと戦いたくない!」

 

 だと言うのに2人揃ってこれとか本当になんなのよ。

 テコでも動かないつもりなのかしらこのバカ共は。

 

「わたしは……あなたが優しい心を知ったって思いたい」

 

「……何を根拠に」

 

「だって灰藤くんの事逃がそうとしたでしょ?それはあなたが灰藤くんに傷付いてほしくないからじゃないの?」

 

「俺もさ、キミの優しさに触れたから生き方を変えようと思えたんだ。自由に生きてみれば?なんて誰からも言われた事無かったからなあ……」

 

 どいつもこいつも腹立つ事しか言わないわね。

 誰が優しいのかしら、アホくさ。

 

 ……ほんと、アホくさいったらありゃしないわ。

 

「仕方ないわね……引いてやるわよ」

 

「え?」

 

「引いてやるって言ってんのよ。カイドウがいると邪魔なのよ、だから一旦引いて出直してやるってコト。それにまだ……コイツの弁当食べ切ってないし?」

 

 たかだかこんな事で一旦は鉾を収めようとしてしまう自分自身に。

 

「うん。……そうだね、またお話しよう?」

 

「やなこった。行きましょカイドウ」

 

「え?あ、う――」

 

 毒気を抜かれた。

 それは良いのか悪いのか、それはワタシには分からない。

 

 ただ――そのせいで、それが隙になった、なってしまった。

 

 

 

 

 

 

「おやおやァ?随分とプリキュアやニンゲンと仲が良さそうじゃありませんか――バッドエンドハッピー?」

 

「………………ぁ」

 

 

 

 

 

 

「ジョーカー……!?それに――」

 

 

 

「久し振りですねえ星空みゆき?…………ああ、これですか?お仲間は先に眠ってもらっていますよォ、永遠に醒める事の無い悪夢の中でね」




灰藤彩
今まで名前を出してなかったけど、流石にみゆきが彼の名前を知らない/出さないのは不自然なので付けた
『灰色の青春に彩りを』というこのオリキャラのコンセプトから名付けた

中の人ネタ
ネタというにはギャグ要素が0過ぎるキュアビューティの中の人(西村ちなみ氏)繋がりのネタ、勿論だが今後もちゃんと話に絡んでくる

小説版ネタ
スマプリ本編後を描いた作品が小説として公式から出ている
そのネタ……と言うにはギャグ要素の無いそれがここから先出てくるのでネタバレ注意
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