衛宮士郎をブチ込んでみただけの話inリゼロ 作:nonose
握った手は冷たい。
雪のような少女は、記憶の中の姿と変わりないのに。ただ握った手だけが冷たくなっていた。
「ねぇシロウ」
「ん……どうした」
「……私ね、貴方と会えて幸せだったわ」
少女はそう呟く。
まるで遺言のように……いや、遺言なのだろう
もう動かすことも叶わない身体で、それでもその一言を伝えるために視線を合わせてくれる。
「そりゃあ、切嗣のことについてか?」
「ふふ、それもあるけど」
"けど"と前置きをしながら少女はゆっくりと語る。
あの戦いから今日までの少女の生を。決して長くはなかった、けれど自分達にとっては永久の時のように思えた。あの雪のように儚い日々を
「私シロウと会えて、初めての事ばかりだった」
「そっか」
「……えぇ」
「イリヤ」
「ううん。良いのよ、私は充分生きたわ。それこそいままでの、どのアインツベルンよりも……きっと」
「…………そっか」
「だからねシロウ──」
自身の手が一際強く握られる。
「──私がまだまだ見れなかったものも、沢山見て沢山感じて。もしシロウが私のことを可哀想だなんて思うなら、私の分も沢山生きて幸せになって」
「……あぁ」
「そう、よかった──」
「イリヤ?」
「──…………」
「……おやすみ、姉さん」
少女が目を開くことは──もう二度と無かった。
◆
───数年後
「エミヤ……。エミヤ、何してるのしっかりしなさい」
「……あぁ悪い。少しボーとしてた」
「はぁ、コレだから。この調子ならまだレムが、改めラムが楽をするには程遠そうね」
「それならラムも少しくらいまともに仕事こなしてくれ」
「あら、後輩が先輩に指図? 随分と偉くなったものね」
「はぁ」
桃色の髪の少女の粗雑な物言いに溜息をつきながら仕事を淡々と熟す男。
少しくすんだ赤い髪に所々白髪が混ざる頭をした、彼の名前は"衛宮士郎"数週間前に紆余曲折あり、この屋敷の人間に拾われ、衣食住の提供の代わりに働いている。
そしてそんな士郎に野次を飛ばすのはメイドの"ラム"この屋敷においてメイドとして雇われている……筈なのだが。数週間前に来たばかりの士郎よりも仕事は些か、と言うのは口が裂けても言えないほど仕事が出来ない。
日々こうして士郎の周りを彷徨いては姑の如く文句を飛ばしてきたり、単にサボっていたりと、士郎がこの屋敷に来てから満足に働いている姿は見たことが無かった。
「それより今日、客人が来てるって話だったよな。ほら、エミリアが拾ってきたっていう」
「エミリア"様"よエミヤ」
「へいへい」
「そっちの方は気にしなくても構わないわ、レムとラムが起こしに行っておくから。貴方は」
「俺は用事。ロズワール……様に呼ばれてるんだ」
「あらそう。それなら行ってらっしゃい」
「あぁ」
慣れない様付けに苦労しながら、ラムとの会話を終わらせた士郎が向かう先は、先程も会話に出ていた"ロズワール"の部屋。ロズワールはこの屋敷の主である存在で、奇特な所在である士郎を一発で「ん〜、キミ良いね採用」と言いながらOKを出して住み込みを認めた人でもある。
士郎からすれば行く宛てもなく、途方に暮れていたところをこうして住ませてくれることについて、多大に恩を感じている…………ところではあるのだが、如何せん変わった人間でもあるため少し苦手意識があるのは否めなかった。
そうこうしているうちに士郎はロズワールの居る部屋まで辿り着き、戸をノックする。
「衛宮です」
「エミヤくんか。入りたぁまえよ」
「……んん、失礼します」
独特な間延びした喋り方に言い表せないもどかしさを感じながら部屋へと入る。
するとそこに居るのは、喋り方同様に変わった様相をした男が1人座っていた。
道化師のようなメイクをした、その男こそが屋敷の主、ロズワール・L・メイザース辺境伯である。
「それで、なにか用ですか」
「いぃーんや? 用という用があるわけじゃぁないんだ」
「となると雑談……とか? 生憎面白い話は持ち合わせてないですよ」
「まーぁ、それもそれで今度キミの話は聞かせてもらいたいものだーぁけれども? いまはそうではなくてねーぇ」
「……?」
ここに来てまだ長くない士郎だったが、こうして話の結論を話さず間伸びさせるのはロズワールが士郎に対して何か当てて見せろという合図だと言うのは分かっていた。
そのため、わざわざ呼び出してまで話す要件とは何か考えてみる士郎。ポツポツと色んな考えが思い浮かんで来ては消え行く中で、1つの事を思い出す。
それは先程のラムとの会話の一つである『客人』についてだ。
「エミリア……様が連れてきた客人のことに関する話ですか?」
「当たり。キミは聡いねエミヤくん、そのまーぁま? この屋敷での働きぶりも期待していぃーるよ?」
「出来る限りのことはやらせてもらってるつもりです。それで、その客人がどうしたんですか?」
「何も無いとは思うけーぇれど、一応気を配っていて欲しくてぇね」
「それは、何か行動しろ……てわけではないのか」
「そういうこと。あくまでも見ていて欲しい、と言うだけさ」
「それくらいなら。大丈夫ですけど」
士郎はロズワールの話を聞きながら何となく、入ってきた人間がもし自身の周りに危害を加える者ならそのまま士郎と共倒れしてくれたら良いな──とでも思ってるんだろうなと当たりをつけていた。
士郎がロズワールに対して苦手意識がある一因になっているのは此処だ。
常に値踏みされているかのような目線に晒され、一向にそれが収まる気配が無い。
「それじゃあ頼んだよ〜」
「はい」
◆
「……ん?」
ロズワールとの話が終わった後
士郎は客人の眠る部屋の前へとやって来ていた。そこに居たのは銀髪の少女"エミリア"。どうやら何か困っているようで部屋の前で入るか入らまいかオロオロと悩んでいるようだった。
「そんなとこで何してるんだ?」
「あっ、エミヤ……! 良かった、来てくれたのね」
「……? 何かあったのか」
「……えっと、ね。中に居るスバル……あっ、昨日言ってたお客さんの事なんだけど」
「あぁ」
エミリアが士郎を待っていた。あの言い方から察するに中に居る客人……改め"スバル"という存在に何か非常事態が起き士郎の力を欲している……と受け取れるのだが、士郎がこの屋敷に来てから彼女らに見せている力は全体的に家事が上手いことくらいしかない。
その為、何故自身がこうも来ることに喜びを見せているのか疑問に思えて仕方なかった。
「昨日……は気を失っちゃってたからもう少し前になるけど、その時はスバルも様子が変じゃなかったの。ただ……」
「起きたら錯乱状態だったってことか?」
「そう、とも言いきれないんだけど。エミヤってまだスバルとは会ってない筈よね……?」
「まぁまだ顔は合わせてないな。レムと2人とは言え屋敷の仕事もあった訳だし。手を離す時間は無かったかな」
「うん、そうよね……」
「その様子だとアレか? 俺のことを知ってて名前を呼んでるとかか?」
「……そうなのよね」
「マジか」
冗談めいて少し頭に浮かんだことを口に出して言ったものの、まさかそれが本当だとは思わず少し面食らってしまった。
現時点で士郎がスバルという名に思い当たる節は無かった。この様子だとエミリアがそのスバルに士郎のことを話した訳でも無さそうだった。
「とりあえず行ってみるか」
何が起こっているかは自身の目で確かめれば良い。
そう思いながら士郎は部屋の扉を開ける───
「……え、衛宮……俺が……お、俺のせいで……」
──そこに居たのは"見たことがない筈"の黒髪の少年が部屋の中央にあるベッドでこじんまりと座り頭を抱えていた。
その隣ではラムとその妹である"レム"が士郎へ向けて刺々しい視線を向けていた。
若干、どころか大分居心地の悪さを感じながら件の少年の元へ歩みを進める。
「エミヤ」
勿論そんなことをすれば、不本意ながらも渦中に巻き込まれてしまっている士郎に声を掛けられ、行動が止められるのは必然だった。
士郎へと声を掛けたのはラムだ。
一言ばかり、名前を呼んだだけだが、その言葉は何かを追求するような──ものではなく、士郎に対して任せても大丈夫なのかという心配故の呼び掛けだった。
それに対する士郎は言葉を返す訳でも無く、手振りで心配すんなと言うアクションで返すのだった。
「さて、まずは自己紹介……ていう雰囲気じゃないな。勝手に名乗らせてもらうけど、衛宮士郎だ。そっちは俺の名前を知ってるようだが、どこかで会ったことあるか?」
「………………はは」
ヒロイン決め ※候補決め
-
フレデリカ
-
ラインハルト
-
エルザ
-
メィリィ
-
ペテルギウス