怒れ、怒りがお前を強くする   作:クシャトリラ・ダストン

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平和はここまで

「重てぇ……」

 

 

 この産廃神器さぁ……!

 こいつに意思があるのだとしたら、俺はまだまだ認められる段階にはいないのだろうと言うのだけは理解できる、クソがよ。

 

 

「未だに素振りだけで腕が痛くなるんだよな」

 

 

 ちなみに、先の修行だが。

 グレイフィアさんに1日中ギリギリまでボコボコにされたぞ、やっぱ容赦ねえわありがてえけど。

 

 

「神器の能力としての重さ、って訳じゃないとは言われたが」

 

 

 この斧は俺が拾われた時からその手にあった、とは聞いている。

 サーゼクス様に拾われる前の、記憶のないがらんどうの俺の時から。

 

 つまり俺自身にも深く関係していると言うことで。

 んー……俺は一体?

 

 

「クレハ先輩」

 

「小猫か、どうした」

 

「何か甘いものでも、食べに行きましょう」

 

「1人で行け。俺はもう少しここにいる」

 

「もう3時間経ってます」

 

「後片付けはする」

 

「では、ここで待ちます」

 

「……店が閉まるぞ」

 

「そうなったらクレハ先輩に何かご飯を作ってもらいます」

 

「断ると言ったら?」

 

「作ってもらいます」

 

「……はぁ、片付けるからちょっと待っとけ」

 

 

 強引過ぎるこの後輩、遠慮を知らんのか?

 店が閉まる時間帯にこの健啖家が満足する量の飯を作っていたら夜が明けかねん。

 おとなしく従っておいた方が身のためだろう。

 

 

「で、どこに行くんだ」

 

「ここから少しの場所に、おいしいみたらし団子を食べられる甘味処があります」

 

「甘味処か」

 

「そこに行きましょう」

 

「わかった」

 

 

 みたらし団子か。

 持ち帰りもできるし街の見回りにもなる、悪くないな。

 

 

「何でまた俺を誘う。相手が必要なら部長や副部長がいるだろう」

 

「……部長達は忙しいですから」

 

「しかし、誘われたら無碍に断る人柄でもないだろうさ」

 

 

 慈悲深いからなぁ。

 

 

「……だめです」

 

「そうかい。まあお前なりの部長達への気遣いを尊重しとくよ」

 

 

 後輩の意思は固そうであった。

 にしても部長……部長と言えば。

 

 

「ああ、件の兵藤だが」

 

「?」

 

「彼女ができたとか、クラスで中々の騒ぎになっていたぞ」

 

「聞きました。……あんな人でも好きになる人がいるんですね」

 

「あんな人て。いやまぁ万人から好かれる人種ではないのも確かだが……」

 

 

 変態という通り名だけが下級生にも一人歩き……いや、実際にそうなのだから誤解ではないが……している現状、後輩の評価が地に落ちるのも仕方ない話ではあるのか。

 

 人は良さそうなんだがねあいつ。

 

 

「まあ、兵藤の良い所を見てやれる相手と出会ったんだろ」

 

「……」

 

「小猫?」

 

「先輩、あれ」

 

 

 後輩の視線の先にいたのは……ん?

 

 

「兵藤と……ありゃあ」

 

「先輩、行きましょう」

 

「て、おい」

 

 

 兵頭と美少女が仲睦まじそうに歩いている。

 それを確認した瞬間の小猫の判断の速さよ。

 

 

「しかし……」

 

「……何ですか?」

 

 

 兵藤は神器持ちで、最近ようやく部長が気付いたレベル。

 今この街には複数名の堕天使が紛れ込んでいる。

 んで、あの少々不思議な雰囲気を纏う女もまた、最近兵頭の彼女になった、と。

 

 

「……嫌な予感がするな」

 

「先輩の勘は当たりません、早く行きましょう」

 

「先輩への当たりが強いんだよ小猫こら」

 

 

 当たりませんって断言すんじゃないよ全く。

 今の今まで勘は外したことも当てたことも五分五分なんだがな。

 

 

「うぐおっ!?」

 

 

 急に、凄まじい力で腕を掴まれ引っ張られる。

 

 

「……いきなり腕掴んで引っ張るなよ」

 

「兵藤先輩達のことばかり見ているからです。今は甘味を優先してください」

 

「はいはい。押しの強い後輩だよほんっとに……」

 

 

 誰に影響されたんだこのバーサーカー。

 心当たりないんだが。

 

 

 


 

 

 

「……っ!!」

 

 

 凄まじい光と音が、部屋の中を駆け抜けていく。

 その大元となっているのは、1人の堕天使だ。

 

 

「……足りないっすね」

 

 

 小さき堕天使(しょうじょ)が呟いた先に佇んでいるのは、歪み抉れた鉄の塊。

 それは先程、彼女が無数の光を叩き込んだ場所に在ったものだ。

 

 

「あの悪魔は、この程度じゃ貫けない……!」

 

 

 ギリ、と小さき堕天使が歯噛みし悔しさを露わにする。

 あの悪魔の何が、彼女をここまで駆り立てるのだろうか。

 

 

「ミッテルト!」

 

「っ……はいっす」

 

「こんなところで何をして……また訓練か!」

 

「ぅ……すみませんっす」

 

 

 上司らしき男の堕天使の発言からして、彼女   ミッテルトと呼ばれた堕天使がこんなことをするのは初めてではないのだろう。

 

 

「向上心があるのは結構だが、己よりも優先すべきことがあるだろう!」

 

「……神器持ちがやってくるのはまだ先っすよね?」

 

「だとしても、だ。その他の面倒な神器保持者がいれば排除せねばならん、悪魔もまた同じ……」

 

「悪魔……」

 

「お前の気持ちを理解せんとは言わんが、最優先はレイナーレ様の悲願を達成することだ。お前がそこを忘れるなよ」

 

「……はい」

 

「分かったならさっさと行け」

 

 

 男の堕天使がミッテルトを残しその場を去っていく。

 

 

「……悪魔は、全部殺してやるっすよ」




ミッテルト→殺意極高。悪魔死すべし慈悲はない。
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