怒れ、怒りがお前を強くする   作:クシャトリラ・ダストン

5 / 8
焼けつく程の痛み

「……流石に面倒だな、こういうのは」

 

「鬼怒川……」

 

 

 じゅわじゅわと肉が焼ける音が、己の右手から発せられている。

 それも当然だろう、俺が今右手で掴んでいるのは光の槍なのだから。

 掴み続ける理由もないので、さっさとそれを握り潰す。

 

 

「邪魔しないで貰えるかな?」

 

「するさ、うちのテリトリーだぞここは」

 

「え、は……?」

 

「兵藤、呆けてないでさっさと動いてくれるか」

 

 

 気持ちは分からんでもないが、そこに居座られるとな。

 

 デート中の兵藤達を見かけた後、小猫の要求通りみたらし団子を食べに行ったんだが。

 一度覚えた胸騒ぎをそのままにしておくのが気持ち悪いと、さっさと抜け出して確認しに来た。

 そうしたらなんとびっくり串刺し寸前の兵藤を見つけた訳だ、笑えねぇな。

 

 

「ちっ、面倒なことになったわね」

 

「彼女が彼氏にやる事とは思えないがね」

 

「あら失礼ね? ……神器なんて持ってたって面倒ごとに巻き込まれるのがオチよ、さっさと片付けてあげるのも優しさじゃないかしら」

 

「そこは強く否定しないが……そこは守ってやる、ぐらい宣ってやったらどうだ」

 

「そんな義理はないわ」

 

 

 さっきまでの人の良さそうな感じはどこへやら、冷徹な雰囲気を醸し出し始める堕天使。

 厄介な。

 

 

「……ま、今夜はいいわ」

 

「イッセーくん、また会おうね?」

 

「今度は   今度こそ、私の手で殺してあげる」

 

「夕麻……ちゃん?」

 

 

 明らか困惑顔の兵藤と、情緒のよく分からん堕天使。

 

 

「どういう風の吹き回しだよ」

 

「悪魔には関係ないわ。……その子を悪魔にしたら、分かってるでしょうね?」

 

「さてね、そいつはうちの主次第だよ」

 

「ふん」

 

 

 そう言って去って行く堕天使……ユウマ? まあ流石に偽名か。

 いやなんだこいつ、殺そうとした癖に……堕天使の情緒はよく分からん。

 

 

「おい兵藤、大丈夫か?」

 

「……」

 

「兵藤?」

 

 

 返事がない、どこかを見つめている。

 ……まあ、そうなるかと言った具合だが。

 

 

「クレハ!?」

 

「部長」

 

 

 そんな折、小猫を連れた部長が文字通り飛んで来た。

 おかしいな? 後ろの小猫がラスボスに見える。

 

 

「右手は焼けてますが俺は大丈夫ですよ部長。とりあえず兵藤を安全な場所に」

 

「え、ええ……彼は私が連れて行くわ」

 

「いえ、俺が「先輩」……」

 

「じゃあ、連れて行くわね?」

 

「……はい」

 

 

 どうやら部長もお察しの様だ、とても無慈悲である。

 呆然としている兵藤と共に、部長がこの場を去る。

 

 

「「……」」

 

 

 残されたのは俺と小猫。

 何故か凄まじいオーラを放っている様に見える、そんな能力『戦車』にはなかった筈だが。

 

 

「……とりあえず、これをどうぞ」

 

「ん?」

 

「先輩の残したお団子です。お店の方に頼んだらお持ち帰りにしてくれました」

 

 

 なんとまあ親切な、ってそうじゃないよな今は。

 

 

「お団子の約束、すっぽかしましたね」

 

「途中までは食べてただろ」

 

「一緒に食べるという目的が何故途中までで終わりだと思ってるんですか」

 

「……」

 

「覚悟してください、先輩」

 

 

 その後、俺はお怒りだった小猫を宥めるのに苦労する事となった。

 悪魔とは言え夜更かしと夜食は良くないぞ後輩。

 

 ちなみにみたらし団子は時間が経ってもちゃんと美味しかった。

 

 

 


 

 

 

「……」

 

 

 そしてそれから数日後、俺は昨日の現場付近の見回りをしていた。

 特に兵藤のデートしていたルートの辺りをな。

 

 

「悪魔になるなら堕天使と話し合った後、ね」

 

 

 あれで案外、一途なんだな兵藤って。

 どうやらあの堕天使にベタ惚れしていたみたいでな、殺されかけたというのにまだ信じているらしい。

 いや、まあ……恋は盲目ってのが良くわかるよな、うん。

 

 

「脈はなくはないだろ、うん」

 

 

 案外上手く行ったりしてな、あそこまで真っ直ぐなら。

 とは言えその後すぐに部長達に鼻伸ばしてたしわからんぞこれ。

 

 具体的に、昨日あったことを整理すると。

 兵藤は事情を説明される→その上で部長が悪魔に勧誘する→兵藤が『悪魔になる前に夕麻ちゃんとちゃんと話し合いたい』って言う→取り引き成立。

 

 ってな感じ。

 なぜ取引? と言われたら、兵藤がこのまま待ってるなんてできない! 俺も参加させてください! ってな感じで一緒に行きたいと願ったから。

 あとはまぁ売り言葉に買い言葉で、とんとん拍子に進んで行ったよ。

 

 

「部長もロマンチストとは言えそこはきっぱり断って欲しかった」

 

 

 光で苦しまないとは言えただの一般人を巻き込む判断は如何なものかと。

 しかもその為に堕天使の痕跡集めましょうってのが今俺が散策してる理由だからな。

 確かに兵藤のアレは部長が好むであろう一面だったが。

 

 

「全く、レイナーレ様の気まぐれは困ったもんすね」

 

 

 とは言え好き嫌いの感情を判断のものさしに含むのはやめて欲しい。

 確かに気持ち的には納得できるんだけどもな、魔王様から『リアスを王として成長するのを手伝ってあげて欲しい』とやんわり頼まれた側としてはな。

 

 さて、魔王様は何を見越して俺にそんなことを言ったのか。

 

 

「上司達に板挟みにされるってのはどうにも面倒だ」

 

「っすよね。レイナーレ様はともかく、イシュタム姉様はなんで……は?」

 

「ん?」

 

 

 ……最近は厄日か俺は。

 

 

「久しぶりだなチビガラス。ちょっと背縮んだか?」

 

「レイナーレ様がお世話になったっすね脳筋コウモリ。死にかけて目線が少し高くなったんじゃないっすか?」

 

「へえ」

 

「ふん」

 

 

 目と目が合ったら開戦……とは行かない。

 今めちゃくちゃ昼だし、人いるし。

 そう考えているのは目の前の堕天使も同じらしい。

 

 

「お前ら何が目的だ?」

 

「教えると思うっす?」

 

「いいや。……お互い振り返って今日のことは忘れる。これで良いか?」

 

「……仕方ないっすね、今これ以上騒ぎを起こすのは面倒っすから」

 

 

 まあこれ以上騒げばシトリー家の方まで動かすことになる……ことにはならんな、部長がお断りする。

 そんなこと堕天使が知ってるわけがないが、そもそもシトリー家がいるってことすら知らんだろこいつら。

 生徒会長怖いんだよなあそこ。

 

 

「次会ったら、本当に殺すっすよ」

 

「こっちのセリフ……にしたいがな」

 

「?」

 

「またこんな調子で会ったら目も当てられん、遠慮しておく」

 

「……調子狂う奴っすね、汚い悪魔のくせに」

 

「お前側の怒りなんざ知ったこっちゃないんでな」

 

「ふん」




レイナーレ→なんか優しい。

ミッテルト→イシュタム姉様……だと?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。