怒れ、怒りがお前を強くする 作:クシャトリラ・ダストン
「チビどもどこに隠れてんだか」
駒王町は悪魔の陣地、そう易々と隠れ続けられる場所はないと思うんだがな。
……ああいや、あったな複数箇所。
「教会かぁ?」
だとするのなら相当ハイリスクというか、独断で行けば部長に怒られる案件ではある。
しかし行くなら俺が適任なのも間違いではない、一番硬いの俺だし。
「さぁて、どうするかな」
死にたい訳じゃないが、リスクを取れば最善の行動につながるとあれば取らない
しっかし部長達に迷惑かけるのもなぁ。
「あ、あのぅ……」
「ん? ああすまん、考えご……」
……?
えっ何コスプレ?
「コスプレか? 似合ってるが」
「えっ?」
珍しいものを見た。
この街、色々あって天使達がいないと部長からは聞いている。
シスターなんてものを見る機会はほとんどないんだよな。
「えっと、コスプレというのは……」
「ん? あー、何というか……衣装を纏ってその役職になりきる、って言うのか? そう言う感じのこと」
「わ、私はなりきりではありませんよ?」
「ほー……は?」
なりきりではないと言うことは、だ。
……ホンモノのシスター?
「まじか」
初めて見たな実物は。
悪魔の領地か、サーゼクス様に連れられて行ったところくらいしか経験がないからかもしれんが。
……敵か、この少女は。
「……ここには何の目的で来たんだ、シスターさん」
「! そうでした」
目的を思い出した、と言わんばかりの反応を示すシスター。
……チビを見た後だと落差がひでぇな?
「実は、今日からこの街の教会に赴任することになったのですが……」
「へぇ、この街に」
「ですが、道に迷ってしまったのですが、私は日本語がうまく喋れないんです。なかなか言葉が通じなくて……」
「ああ、成程。それで俺に」
「はい、ようやくきちんとお話できる方に出会うことができました! これも主のお導きです!」
ぐおっ頭がっ。
……祈ったら悪魔にダメージとか、ほんとにシスターかお嬢さん。
いや神聖なものに対して悪魔が弱いだけなのか。
「にしても教会か、場所は知ってる。案内するよ」
「本当ですか!」
「ああ、こんなことに嘘はつかねぇ」
丁度良い、教会の付近まで行けば流石に堕天使の気配もわかる筈だ。
あそこ神聖な気配がでか過ぎて機能しねえんだよ、誰もいないってのに。
「俺は鬼怒川紅羽、クレハでいい。あんたは?」
「私は、アーシア・アルジェントと言います。アーシアと呼んでください!」
「癒しの力ぁ?」
「はい、神様から頂いた素晴らしい物なんですよ」
「ほー、そりゃあ……」
尚更謎だ、そんなものがあるのに何故こんな辺境に。
というか、教会は天使の派閥で天使は撤退したらしいんだが?
……厄介そうだなぁおい。
「お前はその力を使いたいように使えてるのか?」
「……え?」
「いやな、そう言う特別な力ってのは得てして他人に使わされるってイメージがあってな」
具体的にどこってのがある訳じゃないが、どうにもね。
アーシアみたいな人の良さそうな奴は特に。
「……で、その辺大丈夫か」
「……」
「アーシア?」
「へっ、あ、大丈夫です」
ぼーっとしてたみたいだったが。
なんだ気に触るようなこと言ってしまった感じか?
「力ってのは、与えられてからの使い方を決めるのは己自身だ。自分が満足できない使い方に納得なんてしちゃダメだぞ」
「クレハさん……」
「逆に、自分がこうだって決めてやったことなら胸を張っとけ。誰になんて言われようが……自分が後悔する、その日まで」
「……はいっ!」
「……いや、何か説教じみたこと言ったな、悪い」
「いえ、私のためを思って言ってくださったんですよね。ありがとうございます!」
んー、お人好しだねぇ。
……まるで、悪い奴に騙されててもその自覚がなさそうなくらいに。
「ここです! 良かったぁ……このままずっと迷ったままかと思いましたぁ」
「流石にいつかは親切な奴と巡り会えただろ」
そこまで不運だと神様って奴の正気を疑うな、アーシア側のどこにも非がなさそうだし。
「……古そうだが、良い教会じゃねぇか。なぁ……チビ?」
「……」
何と不思議なことに。
教会の門の前に立っているのはすばしっこいカラス……翼を出してない関係でただのチビだな今は。
「何でお前がいるっすか」
「偶々だよ。見回りしてたら出会った」
「ふーん……この子に変なことしてないっすよね?」
「するかよ」
「ミッテルトさん、クレハさんも……お知り合いだったんですか?」
「ちょっとな」
「知り合いってほどじゃないっすよ、アーシア」
殺気がすごいな。
このチビもだが、教会の中に入る前からピリピリとした視線を感じる。
気配もな。
「クレハさんが迷子になっていた私を助けてくださったんです!」
「え、地図とか持ってなかったんすか?」
「……ええと、読めなくて……」
「あ」
おいマジか。
あって言ったぞこの堕天使……まあ、普段から読める聞けるに慣れてると読めないってのは考えなくはなるよな。
「……そっすか、悪いことしたっすね」
「アーシアは先に中に入ってるっすよ、うちはこいつに用があるっすから」
「え、でも……」
「大丈夫だよ、俺も丁度用事があったからな」
「……わかりました!」
「クレハさん、本当にありがとうございました!」
「おう、元気に過ごせよ」
「クレハさんにも、神のご加護がありますように……!」
うぐおっ。
……アーシアなりの気遣いを無碍にはできんが、この場所でその祈りは中々効くな。
「……行ったっすよ、全く」
「は、まさかとは思ったが本当にお前らだとはな」
「本当にアーシアに変なことしてないっすよね?」
「するかよ、何か企んでるカラスどもじゃねぇんだからよ」
「……」
黙り込んで、一丁前に罪悪感でも感じてんのかよ。
堕天使ってのも世知辛いねぇ。
「今ここで戦う訳には行かんが……近いうちにまた来ることになるさ、おそらくな」
「そっすか。その時は今度こそうちが殺してやるっすよ」
「すばしっこいだけのお前にそれができるんならな」
「一撃も当てられないよりマシっす」
「てなことがありまして、堕天使の根城はそこかと」
「……クレハ?」
「はい」
「一体全体何をしているのかしら、近付いちゃだめってわかってるわよね?」
「……ハイ」
「あなたは 」
と、言う訳で流石に報告はしたが、しっかりとした説教と共に暫くは様子見ということで落ち着いた。
ついでに俺はしばらく危ない場所に近付くことを禁止だってな。
ハハハ、ポンコツな時との落差凄えなほんと。