魔神王様、只今異世界へお出かけ中 作:野生の松ぼっくり
後なんか変なところあったりカットされるけど趣味作品だから許してください
その為のチラシの裏投稿
二人を屋敷まで届けた後。オルムは城下町の宿で一拍を過ごした。
城下町ルビエルテは中世時代のヨーロッパ建築が並ぶ街であった。
(こうしてみると、ファンタジー要素は少ないな)
オルムは城下町を歩きながら、そんなことを思う。
建築様式もヨーロッパ的であり言っては何だが面白みが無い。もっとファンタジーらしい──例えば魔法を使った大道芸人──等はいない。
オルムはある目的地に向かって淡々と歩く。向かう先は傭兵組合だ。
傭兵組合所とは数いる傭兵を纏める組織であり、傭兵ならば登録している組織だ。
依頼の斡旋から事後処理まで難なくこなす組織である。
(ここか)
オルムは目的地である傭兵組合所につくと見上げる。
石造りの建物の中にオルムは入っていく。
オルムが傭兵組合所に来たのは旅の資金稼ぎの為だ。
如何に盗賊から剥ぎ取った資金があるとはいえ直ぐにつきる。合法的に金を得るならばある程度表の仕事をしないといけない。
中はオルムの予想通り、傭兵らしきもので多かった。
(ガラ悪いな)
普段ならばまず近寄らないな、とオルムは思う。
帯剣した者も多く、軽装鎧を纏った者も多い。武装した集団の集まりなど怖くて近寄れるものではない。
だが今の自分は魔神王オルム。臆することは無いとオルムは受付に進む。
受付はむさくるしい男だった。
「傭兵として登録したいのだが」
「いいだろう。だが試験があってな」
「ほう」
「傭兵として力を示す必要がある。証明として自分で倒した獣、魔獣、盗賊のうち三匹を持って来てくれ」
「了解した、直ぐに持ってこよう」
オルムはそう言うと傭兵組合所を後にする。
「さて、ここらへんでいいか」
オルムは街の少し外れまで行くとエクスゲートの術で森の中へと転移する。
「目標はいるかな?」
等と呟きながら森を歩く。
鬱蒼とした森だ。木々が密集し木の根も露出し実に歩きにくい。だが魔神王の身体能力でごり押しすれば苦は無い。
そうしてオルムが五分程森を歩くと、獣気配を感じた。
「猪か」
オルムが見つめる先には猪が居た。それも二頭。
オルムは即座にスキル瞬歩を使用。猪に近づく。
そのまま手刀で猪の頭部を斬り落とす。龍の肉体ならば出来ぬことではない。
再度瞬歩でもう一匹に近づき再度手刀で頭を斬り落とした。
「これでいいか」
オルムはポツリと呟く。
「後一匹か……む」
がさり、と草の根をかき分けて巨体がやって来た。
オルム以上の長身、二メートルはある体躯だ。
でっぷりと太った体であり、肉付きが良い。
人型。ではるが頭部は人の者ではない。豚の顔──俗にいうオークであった。
「良い所に来た」
即座にオルムは魔力の閃光を放つ。魔法名は特にない、下位の魔法だ。
それでオークの頭から下は消し飛んだ。
「さて、行くか」
オルムは懐から袋を取り出し、猪二匹とオーク一頭を袋に詰め、街近くまで転移した。
オルムが傭兵組合所に入ると、やはりというか視線を集めた。
何しろ持っている袋がデカい。猪二頭の頭部とオークの頭部だ。デカくて当然である。
受付まで行くと、行きと同じ男が対応をした。
「こんなに早く持ってくるとはな……しかもオークか……ん? オークの魔石はどうした?」
「魔石?」
オルムが男に詳しく聞くと、魔獣は体内に魔石という物を持つらしい。
魔石は日常に使う魔道具や武器に加工されるらしい。
「成るほど。次からは取って来るとしよう」
「ああ。魔石も結構な金に成るからな、そうした方が良い」
「あと、これが登録証な。発行手数料が銀貨三枚だ」
「了解した」
オルムは懐から財布を取り出し、銀貨三枚を払う。
「では早速依頼を受けたいのだが」
「ならあっちに張り出されてるぜ。あの木札から探すのが一般的だ」
「成るほど。感謝する」
「デカい依頼をこなしたいなら傭兵団に入るのを勧めるぜ」
オルムは軽く会釈してから依頼を見に行く。
どれも小さな依頼ばかりだ。薬草採取等である。
(というか、何で今更だが言葉通じるし文字読めるんだ?)
これも龍の力だと勝手に疑問に思って勝手に解消したオルムは木札から一つ取る。
「この依頼を受けたい」
取った依頼はラタ村の薬草採取の護衛。地味な依頼だ。
(傭兵団に属するとなると何処から来た問題が発生するからな……故郷について一切話せない人間とかなんだお前案件だし)
それに同じ人間と長い事一緒にいると別の問題が生ずる。
オルムは龍だ。女神アロヴィナスが作り上げた最強の生物。不老の存在であり限りなく不死に近い生命力を持つ。
そんな化け物が人間と日常生活が出来る訳が無い。
「あんたならもっとデカい依頼も受けられると思うが?」
「千里の道も一歩から、と言うだろう? まずは傭兵の仕事という物に慣れたいのだ」
「なるほどな。そういう事から構わねぇぜ。ラタ村の薬草採取の護衛ね……それとあんちゃん、この依頼主には優しくしてやってくれや」
「……? 了解した」
■
翌日。
(空飛ぶの気持ちー!)
ラタ村近辺の空でオルムは快感を感じながら空を飛ぶ。
現実ではあり得ぬ事が出来るのもファンタジーの醍醐味だとオルムは顔を綻ばせる。
「と、この辺か」
オルムはゆっくりと下降し、村の近くまで降りる。
其処からは徒歩だ。エクスゲートで転移する事も龍のスペックで走ることも無い、普通の人間と同じ歩き。
其処から二十分も歩けばラタ村に辿り着いた。
木で出来た壁を有する村だ。壁も木製とはいえ分厚く高い。オルムの背より若干高い程度はある。
門の前には槍を持った男が二人いて、門番なのだとわかる。
門番の前までオルムが歩くと門番は警戒を露わにする。
それを見たオルムは懐から傭兵の登録証を取り出す。
「ラタ村の薬草採取の護衛依頼を受けた者だ」
「ああ、そうでしたか」
軽いやり取りを交わすと門番も警戒を解く。
「マルカという人物を探しているのだが、何処かね?」
「──フィオナさんのところの? でしたらあちらです」
オルムは案内されるがまま、家に向かう。
家に着いたオルムはノックをする。勿論三度のノックだ。
「はーい!」
若い女の声がオルムの耳に入り、疑問を抱く。
ドアが開けられ、声の者が姿を現す。
出てきたのはまだ小さい女の子だった。歳も十か其処らだろう。
マントを被った不審者スタイルに女の子は一瞬たじろぐが、オルムが傭兵証を見せるとすぐに安堵した表情を見せる。
「マルカという人物から薬草採取の護衛の依頼を受けた者なのだが、マルカ殿はいるかね?」
「あ、それでしたら私です」
少女──マルカは手を上げ主張する。
(こんな小さい子が依頼主なのか)
オルムは驚愕するも表情には出さない。
「……あの、直ぐに出発していいですか?」
「ん? 勿論、構わないが」
「やった! 直ぐに準備しますので、少し待っててください!」
オルムは言われるがまま家の外で少々待つ。
直ぐにマルカは動きやすい服で家から出てくる。
「お待たせしました! 行きましょう!」
「了解した」
オルムはマルカに案内されるがまま、森へと進む。
森へ入って五分程、オルムは暇なので問いかける。
「何故、君の様に幼い子が依頼を?」
オルムの問いかけにマルカはしどろもどろする。
「薬草採取場所にファングボアが出現するようになったというが……君のような幼子が危険を承知でするようなことかね? それに随分と急いでるようだが」
「……もうすぐお母さんが帰って来るんです」
「母親が? それが何故」
「お母さんにバレたら、きっと反対されちゃいます」
「……まぁ、母親の心理からすれば娘に危険な事をしては欲しくないだろうね」
「……去年、お父さんが亡くなったんです。お母さんが一人で私たちを育ててくれてるんです。
これまで薬草採取はお父さんの仕事だったんですけど、それを私が出来ればお母さん助かるかなって」
「──お母さんに、喜んで欲しいから」
(やだこの子すっごい健気! 自分の子供の頃と大違い!)
オルムが子供の頃など家から出ずにゲームばかりしていた。
そうして話ながら、二人は森の奥へと進む。
この薬草は貴重だとか、この薬草は熱に聞くなど、マルカが薬草を採取している間もオルムは警戒を怠らない。
龍のスペックをもってすれば小さな音一つ聞き逃さない。
そうして歩いていると、森の奥地の広間に辿り着いた。
随分と広い場所だ。森の中という中にあってもある種の人為的な物を感じる。
其処は少し崖になっていたがマルカは気にせず軽快に降りてオルムもそれに続く。
「やった! 花が満開の時だ! コブミの木が真っ白になってる!」
「……元気そうで何より」
オルムは一息つくと結界でも張るかと意識をそちらに向けようとし──即座に異物に気づきマルカを抱いて後ろに跳ぶ。
「オルム様?!」
「魔獣だ」
オルムがそう呟くと森の木々の中から異形がはい出てくる。
緑色の皮膚を持つ蜥蜴に酷似した怪物だ。三対の足を持つ異形の生物である。
「オロロロロ」
舌を出しながら異形──オルムは知る由も無いがジャイアントバジリスクという魔獣は餌を前に気をよくする。
まぁ──
オルムは極限まで弱めた魔力の閃光を放つ。それは綺麗にジャイアントバジリスクの頭部を消し飛ばした。
オルムの敵には成り得ない。
先手必勝。相手に何もさせない。一手イコールチェックメイト。
戦闘経験の乏しい自分では初手即死技ブッパこそが正攻法。それが今のオルムが考えだした戦闘手法である。
「すごーい! オルム様って魔法使いだったんですね!」
そして異形とは言え生物の頭部が消し飛んだ様を見てもマルカはきゃいきゃいと喜ぶ。
「まぁね。この程度雑作も無いよ」
──不意に得た力でずるをしているのは少々気分が悪いが。