魔神王様、只今異世界へお出かけ中   作:野生の松ぼっくり

4 / 9
第4話

 

 翌日の昼間。オルムは空を飛んでいた。

 目的地はエルフの森と呼ばれる場所であり、名の通りエルフが住まうとされている場所だ。

 同時に危険地帯としても知られている。

 

 オルムがここに来たのはエルフを探しているからだ。

 

 オルムがエルフを探しているのには当然理由がある。

 その中でも最大の訳は、エルフと友好関係を築きたいからだ。

 

 オルムは不老の龍だ。人の世界では生きていけない、怪物である。

 

 だが人より長寿であるエルフならば? ある程度同じ時を歩むことが出来るのでは?

 

 オルムはそう思い、エルフとの友好関係を得ようと行動しているのだった。

 

 

「ここらでよいか」

 

 オルムはそう言うと意識を集中する。

 遥か上空から地上の音を聞き分ける為にぴたりと空中で止まる。

 

 オルムの聴力をもってすれば不可能ではない。というか龍にだいたい出来ない事は無い。

 

 数分。音を聞く。

 

「こっちか」

 

 オルムは下方に目をやると急降下した。

 

 大地にぶつかる寸前に急停止。衝撃波が森に生ずる。

 

 其処から足音を出さぬよう浮遊したまま移動する。

 そうして少し動けば、目的地に辿り着いた。

 

 森の中に会って、開けた場所だ。

 

 其処には十人近い武装した人間と、馬車が一台あった。

 馬車には檻が付いており、中にはエルフの子供が四人ほど入っているのがオルムの場所から見えた。

 

(成るほど。こいつらがエルフ狩りか)

 

 さてどうするか。オルムは少し考える。

 

「ウドランさん、こいつらは大切な商品なんです。あんまり傷つけちゃ……」

「あぁ?! お前達の雇い主は僕の父親だぞ! 僕に指図するな!」

 

 等と、男たちは揉めていた。

 

(ルナテンタクルで全員拘束して、全員峰打ちでぶっ飛ばす)

 

 さぁ行くぞ。オルムがそう思うと同時に茂みから一人飛び出した。

 

「はぁぁぁ!」

 

 若い女性の声を出しながら女──オルムが昨日合ったエルフは剣を構えて飛び出す。

 

「なに?!」

 

 狩りをしていた一人が即座に剣を抜こうと腰に手をかけるが──それよりも女エルフの方が早い。

 

「はぁ!」

 

 威勢よく剣を振るい、男の腕を斬り落とした。

 

「お、俺のうでぇぇぇ!」

 

 嘆き、絶叫する男を尻目に女エルフは声高に叫ぶ。

 

「子供たちを返してもらうわよ! この下郎ども!」

 

 その言葉に男たちは各々武器を抜き取り構える。

 

 剣、槍。弓に短剣と各々武装をしているが、半面防具は弱い。

 軽装鎧やチェインメイル等であり、防御力よりも機動力を取っているとわかる。

 

「はぁ!」

 

 女は叫びと共に突進。武器を構えた男に肉薄する。

 

 そのまま袈裟斬り。剣事胴体を斬る。

 背後から回って来た男に対し女はその場で後ろに回転しながら大きくジャンプ。男の背後に着地する。

 そのまま剣を振るい背中を斬り裂く。男二人は倒れた。

 

「こ、こいつ強いぞ!」

 

 集団の一人が叫んだ。

 

(なんだ、あのエルフ、強いじゃないか)

 

 オルムもまた同じことを思っていた。

 

 これは加勢する必要は無いか、などとオルムが思った瞬間状況は動く。

 

「動くな!」

 

 集団の一人──ウドランと呼ばれた男が女エルフに向かって叫んだ。

 

 オルムと女エルフの視線がウドランに向かい、その所業を見た。

 

「大人しく投降しろ! さもないとこいつがどうなっても知らないぞ!」

 

 ウドランは檻の中のエルフの子供に向かって剣を差しながら、叫んだ。

 

「子供を盾にする気!? この下衆野郎!」

「はっ! なんとでも言え! こいつらに穴開けたっていいんだぞ!」

 

 ぎしり、と女エルフは歯ぎしりと共に剣を下げる。

 

「よし、動くなよ……」

 

 オルムはこの瞬間に介入を決める。

 エクスゲートの術でウドランの背後に転移する。

 

「流石に介入させてもらうよ」

 

 オルムはそう言うとスキル峰打ちを使用。ウドランを殴り飛ばした。

 

 オルムは拳を握り、瞬歩で適当なエルフ狩りに近づく。

 そのまま頭部を殴打。エルフ狩りの頭部ははじけ飛ぶ。

 

「はぁ!」

 

 それと同時に女エルフも動き、エルフ狩りたちを斬り裂いて行く。

 

 瞬く間に殲滅は終わり、エルフ狩りたちは物言わぬ屍に成り果てた。

 

「…………助けてくれて、ありがとう」

 

 女エルフは渋々と、本当に嫌そうにオルムに礼を言った。

 

「取り合えず、子供たちを檻から出そうか」

 

 オルムは檻の前まで動き、鍵がかかっている事を確認する。

 だがたかが鍵程度オルムの前では豆腐よりも脆い。軽く力を入れ、オルムは檻をべきりと外した。

 ドアをそこらに放り投げ、オルムは「もう大丈夫だ」と子供達に告げる。

 子供たちは普通に檻をぶち壊したオルムに恐怖を抱いた。

 

 子供たちは女エルフに向かって駆け寄る。

 

「もう大丈夫だからね」

 

 女エルフは子供たちを抱いて、囁いたのだった。

 

「喰魔の首輪(マナバイトカラー)……これを付けられてたのね」

 

 女エルフは首輪を見てそう発言する。

 

「なにかね、これは」

「……エルフの得意とする精霊魔法を封じる道具よ」

 

 これを解除する手段は無いし……と女エルフは途方に暮れる。

 

「ふむ。呪いの類かね?」

「……? そうよ。それがどうかした」

「ならば──」

 

 オルムは魔力を纏い魔法を行使する。

 

 月属性には相手の妨害をする魔法が多い。相手の支援効果などを破壊する魔法も多々ある。

 月属性の高位魔法をオルムは行使する。

 対象一体にのみ効果を発揮する、あらゆる魔法効果を打ち消すそれを行使する。

 

「嘘……」

 

 すると喰魔の首輪(マナバイトカラー)は外れ、地に落ちた。

 

「怪我をしている者もいるな。治しておこう」

 

 オルムは治癒の天法も行使すると子供たちの怪我も治る。

 

「……今のは治癒の魔法? いや、少し違う……?」

 

 女エルフが何かぶつくさ言っているのを尻目にオルムは子供たちの相手をする。

 

 女エルフは諦めた様にため息をつくと、口笛を吹いた。

 数秒後、空から鳥が降りてくる。

 

 大きな鳥だ。薄緑色の毛を持ち、腹はオレンジ色をしている。

 逞しい足で女エルフの腕に降り立った。

 

「子供達四人を無事救出。迎えを寄越して。場所はディエント近くのエルフの森。街道から入って暫くしたところだからすぐ分かると思うわ」

 

 鳥は頷くと、空へと飛んでいった。

 

「さっきの鳥はいったい?」

「囁き鳥。精霊獣よ。この子に伝言を覚えさせて相手に届けるの」

 

(伝書バトにボイスレコーダーを付けたようなものか)

 

「さて、死体の処理をしようか」

「それなら任せて……呑み込め、大地よ」

 

 女エルフが魔法らしき──実際精霊魔法──を詠唱すると地面が動き、エルフ狩りの死体が地面に消えていく。

 

「エルフの魔法か。始めてみる」

 

 ほぉ、と感嘆の声をオルムは上げる。

 

 そうして少し経つと、森の奥から二人、人が歩いてくる。

 ローブで体を隠した人物だ。性別も年齢も何もわからない。

 

「迎えが来たみたいね」

 

 女エルフはそう言うと子供たちを集め、もう帰る時間だと告げる。

 

 子供達と軽いやり取りを交わすと子供たちはローブを来た人物たちの方へ走っていった。

 

「……さて、改めて感謝するわ。私はアリアン・グレニス・メイプル。エルフ族の戦士よ」

「私はオルム。流浪の旅人だ」

 

 一拍おいてから。女エルフ──アリアンが口を開いた。

 

「ねぇオルム。貴方、前会った時傭兵と言っていたわよね……貴方を雇う事は可能かしら?」

「勿論可能だよ。だが良いのかね? エルフが他種族の力を借りて」

「同胞は良い顔をしないかもね……けど、貴方、転移魔法を使っていたわよね? 伝説と言われる魔法を」

「……あぁ。使ったとも」

 

(転移魔法そんな扱いなんかい)

 

「そんな魔法を仕えて、精霊獣と心を通わせ、子供たちの相手もしてくれた貴方だからこそ、雇いたいの」

 

 

 同胞を助けるために力を貸してくれ──アリアンをオルムにそう告げる。

 

「わかった。アリアンに雇われようじゃあないか」

 

 オルムは手を差し出す。

 アリアンはその手を握り締めた。

 

 ここに、契約は成ったのだった。

 

 




完全趣味作品なので出来ると同時に投稿!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。