魔神王様、只今異世界へお出かけ中   作:野生の松ぼっくり

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第5話

 

「早速、転移魔法を試したいのだけど」

「その前に。私の転移魔法には制約があってね」

 

 オルムとアリアンは話し合う。

 

「制約? どんなの?」

「相手の信用が無いと転移出来ないのだよ。正確には相手を無理に連れて行こうとすると何処に落ちるかわからない。世界の狭間にでも落ちてしまうかもね」

「何それこわ! 転移魔法にそんな制約があるのね……」

「私が使うのは特殊なモノだから、他の転移魔法とは違うかもしれないがね」

 

 オルムはそう言うとエクスゲートを開く。

 

「試しにディエントの街近くの川まで繋げた。通ってみようか」

 

 オルムはそう言うと気軽にエクスゲートで出来た空間の穴を通る。

 

 アリアンは一瞬臆した後、エクスゲートの中を通る。

 アリアンが抜けると、其処は川の前だった。

 

「……本当に転移してる。凄い。これは仲間の救出に最適の力ね!」

「救出対象が私を信じてくれるのか、という問題があるがね」

「其処は私が説得するから大丈夫よ!」

 

 その後、取り合えずディエントの街に行こう、という話になり二人はディエントの街まで向かったのだった。

 

 

 ■

 

 ディエントの街、門を抜けた先の広間でオルムとアリアンは人を待っていた。

 待つ事数分、待ち人がやって来る。

 

「待たせたな、アリアン」

 

 来たのはアリアンと違い人族と同じ肌色をし、金の髪を持ち緑眼を持つ男だ。

 特徴的なのは目つきの鋭さだ。見る者全て貫かんばかりに目つきが少々悪い。

 

「……隣の男は?」

「彼はオルム。任務を手伝ってくれた傭兵です」

 

 オルムは軽く会釈する。

 

「場所を変えて話しましょう」

「そうだな」

 

 オルムは二人に着いて行く。

 着いて行った先は酒場だ。テラス席のある酒場である。

 三人はこの街の名物だというゴアビーフの串焼きとハニービールを注文する。

 

 アリアンはオルムに男のエルフの紹介をする。

 

「彼がダンカ・ニール・メイプルさん。私と同じエルフ族の戦士で情報収集をしているの。ダンカさん。こちらはオルム。傭兵です」

「オルムだ。よろしく頼む」

「……ダンカだ」

 

 二人は自己紹介を交わすモノの、ダンカの方は渋々と言った感じだ。

 

「ふむ。エルフの名には詳しくないのだが、同じメイプルという事は何か関係があるのかね?」

「えぇ。エルフの名は自分の名。銅製の親の名。所属している集落の名で構成されているの」

「なるほど」

「私たちはカナダ大森林の森都メープルに所属する者、てなるわね」

 

「……本気でこの男と共に動く気なのか?」

「オルムはただの傭兵ではありません。転移魔法の使い手です」

「転移魔法……! 本当なのか?」

「事実だとも。正し、少々制約があるがね」

 

 むぅ……とダンカはうねる。

 

「それでダンカさん、奴らの拠点は?」

「拠点なら発見した。歓楽街の傍だ。あそこは日が暮れてからも人通りが多い。襲撃するなら夜中に成るな。外には見張りもいるし内部の警備も厳重だと思われる」

「囚われている人数はわかりますか?」

「四人らしい。近々追加が来るという話だったが……」

「それを私たちが潰した形になりますね──今日は彼の魔法があるから脱出については楽になるはずです」

「わかった。なら時間までここで待機するとしよう」

「なら私は族から剥ぎ取った物を売却するとしよう。失礼させてもらおうよ」

 

 ポンタの一声かけ、オルムは席をたった。

 

 

 暫くしてから、ダンカは口を開いた。

 

「あの男……信用できるのか?」

「精霊獣がよく懐いていました……それに彼は今日、助けてくれたんです。エルフ狩りを襲撃しているとき、ミスをして窮地に陥ったのですが、彼が助けてくれました」

「そう悲観な顔をするんじゃない。姉と比べるな……お前もよくやっている。暫くすれば姉にも引けを取らなくなるだろう」

 

 

「……もう一度だけ聞くが、奴は信用できるのか?」

 

「はい」

 

 

「……そうか」

 

 

 ■

 

 

 夜更け。太陽が完全に沈み、人々が寝静まる刻。

 三人はある建物の近くの路地裏に集まっていた。

 

「オルム。貴方の転移魔法で屋根までとべる?」

「ああ。可能だとも……だが、彼は私を信用しているのかね?」

「……どういう意味だ」

「私の転移魔法は相手からの信用が無いと成立しない。心からの同意が無いと相手を転移させることが出来ないのだよ」

「……正直直ぐ信用というのは難しい。だがアリアンが信じるお前を、信じよう」

「ならば結構。繋げるぞ」

 

 オルムはそう告げるとエクスゲートを開き、目的の建物の屋根上までつなげる。

 

「行くぞ」

 

 オルムはエクスゲートの中に入ると遅れてアリアンとダンカが入っていく。

 

「……本当に転移出来るとはな」

 

 ダンカはぽつり、と呟いた。

 

「中に入ろう……この入口だと狭すぎるな」

 

 屋根には小さな小窓が一つ付いているだけだった。其処から入ろうものなら苦労するだろう。

 ガタイの大きいオルムなど入る時に引っかかるし、アリアンも何処とは言わないが引っかかるだろう。

 オルムは再度エクスゲートを開き、今度は屋根裏部屋の中に繋げる。

 オルムがエクスゲートに入るとアリアンとダンカも入り、内部への侵入が完了する。

 

 内部は非常に暗い。窓から月あかりが多少入る程度であり、灯りの一つも置いていない。

 暗視能力を持つ自身は問題ないが二人は見えているのだろうか、とオルムは要らぬ心配をする。

 

 三人は階段を降りていく。

 降りた先は廊下だ。細長い廊下であり一列になって歩くことを強制される。

 左側の壁にはドアが置かれており、ダンカが警戒しながらドアを開ける。

 ドアを開けた途端、オルムの鼻に血の匂いが着く。

 

 三人が中に入ると、其処に会ったのは三つの死体だった。

 

 部屋は寝室であり、ベッドが四つあるだけの簡素な部屋だ。

 そのベッドの内三つに男がそれぞれ居り、死体となって寝っ転がっている。

 

「これは……」

「どうやら我々以外に侵入者がいるらしいな」

 

 警戒するぞ、とダンカ達は部屋を出て先に進む。

 五分も進まない内に三人は十字路に立つ。

 

「ここからは三手に別れよう」

 

 ダンカがそう言うと三人は別れて進み始める。

 

 オルムは一人左方向へ進む。

 徒歩ではなく。地面から浮遊しての進みだ。隠密性を求めた結果空飛べば足音でないんじゃないかという思考からの動きである。

 

 オルムは一人──正確には一人と一匹で奥へと進む。

 奥の部屋を見つけ、オルムは開けようとするも鍵がかかっているのか開かない。

 オルムはエクスゲートを座標を扉の少し向こう側に設定して開き、エクスゲートの中を通る。

 内部もまた寝室だ。そして同様に、死体が二つ転がっている。

 

「む」

 

 だが先程入った部屋と違うのは、生者が一人いる事だった。

 

 その者は部屋に入ったオルムに向けて何かを投げつけてくる。

 

(──クナイ?)

 

 オルムの視力ならばわかる。投げられたそれが。

 真っ黒な闇に紛れる形に作られた投げナイフ。忍者が使うクナイがオルムに向かって投げられる。

 オルムは右手を突き出し人差し指と中指を使って受け止める。

 

 そしてオルムは、クナイを投げた者を見つめる。

 

「忍者?」

 

 それは、まごう事無き忍者だった。

 

 全身を黒の布地服に身を包み、紅色の襟巻を首に巻いている。

 頭には金属板を縫い付けた鉢巻を付け、腕には篭手を、脚には脛当て型の金属製防具を付けている。

 

 何処をどう見ても和風忍者である。

 

(同胞か?)

 

 その姿を見たオルムは警戒し、思考を加速させる。一瞬を永劫の時間へと変え観察に移る。

 同胞、つまり自身と同じく何かしらのキャラクターで異世界に来た者であるという可能性。

 もし戦えば、最低でもここら一帯は消し飛ぶだろう。

 本気の月龍オルムは大陸の三つや四つ消し飛ばして尚余る程の力を持つ。

 最悪自身と同格、あるいは格上の場合アリアンもダンカも肉片一つ残らず消し飛ぶだろう。無論ポンタも。

 野生のラスボスが現れた! のオルムは強者だが、他作品でも強者かと言われると疑問が残るところだ。

 それこそオルムの中の人が知らないだけで銀河作成からの銀河崩壊アタックを通常攻撃として出すライトノベルもあるかもしれないのだから。そのレベルだと流石にオルムは死ぬ。

 そこまで考えてオルムは観察眼を思い出し使う。

 

 ステータス

 名前:チヨメ

 種族:獣人/猫人族

 

(あ雑魚だこいつ)

 

 管理者としての特別な観察眼──相手のステータスや名前を看破できるスキルを使い相手の正体を知ったオルムは人知れず安堵する。

 見た能力値は余りにも低い。魔法系の隠密型といったところだ。オルムの一割にも満たない脆弱にも程がある能力値。

 何かしらの手段で偽装しているにしても低すぎて偽装の意味が無いレベルだ。故に本当のステータスだとオルムは確信する。

 

 そこまで考えてから体感時間を戻すと忍者はクナイを片手にオルムに斬りかかる。

 

「ふむ。雑兵だな」

 

 放たれた斬撃を投げクナイと同じように指で挟み、受け止める。

 

 チヨメが押して引くも少しも動かない。ステータスの暴力だ。

 

 チヨメは即座にクナイから手を放しバックジャンプ。オルムから距離を取る。

 と言ってもオルムからすれば刹那で詰めれる距離だ。意味はない。

 

「きゅい」

 

 其処に、ポンタがオルムの頭の上から顔をのぞかせる。

 

 ポンタを見たチヨメ一瞬固まった後懐をまさぐる。

 次は何を出すのかとオルムが観察すると、出して来たのは三つの果実だった。

 小さな果実だ。形としては葡萄に近い。

 

 投げ出された果実をポンタは飛び掛かって回収しに行く。

 

 全身で果実を受け止めたポンタは床に着地し、果実をほおばり始める。

 

「ポンタ……お前……」

 

 人には余り懐かず、エルフですら懐くのは稀という精霊獣がこうも容易く見知らぬ人間が出した果実に釣られるのは良いのかと、オルムは無言でポンタを見つめる。

 

「失礼しました。どうやら貴方は敵では無い様子」

 

 チヨメは軽く頭を下げる。

 

「ふむ。そういうそちらも敵対する気は無さそうだがね。君のような者がここに来るとは……エルフに関してかね」

 

 オルムはとりあえずエルフを持ち出し、相手の反応を伺う。

 

「いえ。僕が求めていたものはここにはありませんでした。ですが……」

 

 チヨメはそう言うと懐から一つの巻物を取り出し、オルムに投げつける。

 オルムはこれをはたき落としたらどうなるんだろとくだらない事を考えながら巻物をきちんと受け取る。

 

「エルフの売買契約書です。貴方方には必要なものかと。あと、エルフは領主の館にも囚われていますよ」

 

 チヨメはそう言うと窓に身を乗り出し、跳躍。別の家の屋根上に着地する。

 

「ふむ……」

 

 オルムは巻物を開き、中身を確認する。

 相変わらずオルムにとって見知らぬ言語で書かれているが、問題なく読める事に奇妙な違和感を抱きながらもオルムは読み進める。

 

「成るほどな」

 

 そう言うとオルムは巻物を閉じ、ポンタに一声かけ部屋の鍵を開けて出ていった。

 

 

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