けれど雨は止むことなく   作:無明の旅路を照らす知識の灯火

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前話で書くのを忘れていましたが、この二次創作はシラクザーノの続編が近そうなので、そこで色々と詳細が明かされる前に好き勝手しておこうと思って制作したものです。
そのため作者には大陸版の続編イベントの知識はほぼ(実装されるオペレーター以外は)ありませんし、おそらくはグローバル版に続編が来たら整合性も取れなくなっているでしょう。
その辺りをご承知おきください。


SR-2 再会、一人目

 

「ハハッ、久しぶりだねシルウィア。ボクがシラクーザを逐われてから元気にしてたかい?シラクーザの雨、キミは嫌いだったらしいじゃない」

「確かに尻尾が湿気るから好きではないが。嫌いだとて、オレは逃げ出すわけにもいかないからね。それより君こそ壮健そうで何よりだ、確かロドス・アイランドという組織に身を落ち着けたと聞いていたが……」

「あそこは悪くないところだけど、テキサスがいないんじゃその良さも薄れちゃうからね。嫌気がさして壊しちゃう前に、こうしてシラクーザにやって来たってわけ」

「……どうやら馴染んでいるようで何より」

 

 黒と白のモノトーンで彩られた礼服──闘争の血脈シリーズ/典雅なる凶兆のコーデ姿で、二本の刀を携えたラップランドは笑っている。

 カポネとガンビーノにラップランドの所へ案内するように「お願い」した後で色々と連絡などを済ませたオレは、ウォルシーニの下町にあるピッツァ屋でラップランドと机を挟んで向き合っていた。

 ちなみに並べられているのは、モッツァレラチーズとトマトソースにオリーブやマッシュルームを乗せたスタンダードなピッツァから、ハムとパイナップルを乗せたシラクーザ人いわく「冒涜的な」ピッツァまで色々。後者に関してはこいつをメニューに載せた翌日にとあるファミリーから「二度と出すな」という脅迫が届いたとかいう代物だ。オレが報復して黙らせたが。

 オレとしては普通に美味しいと思うんだが……どうにもシラクーザ人は懐古が過ぎてよくない。ちなみにラップランドはパイナップルピッツァを食べては微妙な顔をしていた。大体は狂ったような笑顔かたまに真顔のラップランドの、なんとも言えない顔は正直面白かった。これがゲームだったらスクリーンショットを撮っていただろう。

 まあこの現実で写真なんぞ撮ろうもんならオレはミルフィーユにされてしまうだろう。オレも七年と少しの時を経て強くはなっているのだが、どうにもラップランドには勝てる気がしない。

 

「それで、旧交を暖めるのもいいけど。わざわざあの二人を誘い出してまでボクを呼び出して、シラクーザいちの暗殺者様はいったいどういう用件なのかな?」

「七年と五ヶ月ぶりに帰郷した友人に会いたかった……というだけでは不満かな」

「口説き文句としては三流だね、それならちょっと前にミズ・シチリアから送られてきたお誘いのほうが心躍るくらいだよ。それも燃やして捨てちゃったけどね」

「君らしいな。まあちょっとした冗談さ、三流役者のね……どうか笑ってくれよ」

 

 トントンと指で机を叩くラップランドは、笑顔を見せてはいるがちょっとおっかない。まあラップランドからすればテキサスを追う途上にあるのだから、その邪魔をしているオレは鬱陶しくて仕方がないのだろうが。

 とはいえその程度で尻込みするようならマフィアどもの上に立つなんてできないわけで。手元の皿に半分ほど残っているマルゲリータを頬張ってから、コップの水を飲み干した。

 手を拭いて、傍に置いていた鞄からバインダーに纏められた書類を取り出してラップランドに投げ渡す。ちょっとだけアーツを使ったからオレの小さな投擲動作の割には高速でかっ飛んでいったそれを、ラップランドは難なく掴み取った。

 パラパラとめくって確認するその薄灰色の双眸がわずかに広められたのを見て、内心してやったりと喝采する。ここ数日の間ウォルシーニのあっちこっちを駆けずり回って集めた情報なので、この程度の役得は許してほしい。

 

 一通り読み終わったのか、バインダーを閉じて机に置いたラップランドが再びオレを見る。

 それをアーツで手元に持ってきて、鞄にしっかりと仕舞い直した。何せここに記されているのはベッローネファミリーがまだ公にしていない情報──チェリーニア・テキサスのシラクーザ帰還に関するものだからだ。どうせあと数日もすれば広く知られるようになるが、こういうのは初見でのインパクトが大事なのだ。漏らしたと知られれば、まあただでは済むまい。

 またついでにというかオレ的にはこちらが本命だが、テキサスを利用したベッローネファミリー……というかベルナルドに唆されたディミトリの計画についても書いてある。確かシラクザーノではカポネとガンビーノをこき使って色々と情報を集めていた気がするが、それを先回りしてオレが持ってきたという形になる。

 ラップランドはシラクザーノでも色々な情報を知れる立場にいて、途中まで狂言回しのような立ち回りをしていたから、これを知るのが多少早くなってもそう変わりもないだろう。そういう判断からの情報提供だった。

 

「……キミがボクのために色々と調べてくれたのは分かったけど、一体どういうつもり?これでボクがテキサスのことを諦めてファミリーに戻るって考えてるのかな?」

「まさか。ドン・アルベルトは君の復帰を認めないだろうし、そもそもオレはもうサルッツォファミリーから古巣に戻ったからな。これは単に久々に会った旧友への歓迎だと思ってくれてもいい」

「ふうん。それなら貰っておくけど」

「ああそれと、君が龍門から連れてきた二人組だが、君さえよければオレに貸してほしい。このシラクーザで、十二家のどこの息もかかっていない駒というのは貴重だからな」

「あのシチリア人たち?構わないけど。もうボクの部下じゃないし」

 

 さて、ここでオレの目標を確認しておこう。

 テキサスとラップランド、ついでにレオントゥッツォやラヴィニア。彼ら彼女らがシラクザーノの最後に辿り着いた……というか辿り着くのは、現在のシラクーザへの叛逆だ。理由も方法も違えど、今の凝り固まったシラクーザを否定するというのは皆同じだと言えるだろう。

 だがそれは、薄氷の上を渡るような危ういものだ。そもそも旧体制の象徴とも言えるミズ・シチリアに対して反抗を突き付けるに至るまでにも、ひょっとしたら命を落としてしまっていたかもしれないくらいには。原作でそれでも成功した以上は別にそれが悪いものだとは言いたくないが、既にオレという異物が混じっている以上、そのまま進むという楽観も捨てておいたほうがいいだろう。

 というか原作云々の話を抜きにしても、このテラに生きるオレ個人としても彼女たちにはシラクーザの新たな未来を拓いてほしいと思っている。何だかんだシラクーザの泥沼から抜け出せないオレとは違うのだし。

 つまりは、そんな彼女らのことを陰からサポートしてやろうというのがオレの目標である。まあ転生者にはありきたりな、よりよい結末を迎えてほしいという願望の発露だと思ってくれればいい。

 

 で、そのためにオレは色々と手勢を集めている。何せシラクーザという国家はどこに行ってもファミリーが蔓延るクソみたいな国なのだ。いくらオレがそれなりに強いと言っても、数に押されれば数日としないうちに路地裏で物言わぬ死体になっているか、あるいは死体すら残らないだろう。

 カポネとガンビーノはその一部だ。ラップランドにはあしらわれていたとはいえそこそこ強く、野心もあり、また何よりも他のファミリーと関わりがない。これほど便利な駒もそうないだろう……ディミトリが目をつけていたのと同じように、オレも彼らに目をつけていたわけだ。

 本来ならディミトリの下でカラチ暗殺やボルトロッティを利用したラヴィニア攻撃を担うはずだった彼らをオレの下に引き込むことは、当然ながら原作の流れから乖離を生み出すだろうが。まあそれは今更という話だろう。

 

「でもいいのかい?彼ら、もうベッローネの下で小銭稼ぎを始めてるみたいだけど」

「その辺りは抜かりないさ。オレはドン・ベルナルドとそれなりに親交があるからな……まだファミリーに入ってもいない下請けの二人くらいなら、仕事を二、三件請け負えばチャラにしてもらえる」

「へえ、キミは順調に出世してるみたいだね。あの頃の弱っちいキミからは想像もつかないや」

「はは。いくら羽獣の雛が弱々しくても、成長すれば飛べるようになるものだろう。オレも成長したということさ」

 

 ちなみに当時のラップランド相手の試合の戦績は621戦53勝519敗49引き分けである。そりゃ弱っちいとも言われるだろう……いやオレは高台オペレーターとかそういう類だから。ゴリゴリの前衛オペレーターと正面きってやりあって勝てるわけない。きっとそうだ、うん。

 なおテキサス相手にはもっと負けていたり。さすがは先鋒でも特殊でも最高峰クラスなだけある。こっちはもう張り合う気にもなれん。

 

 それはさておき、ラップランドから承諾も取れたので早速カポネとガンビーノに連絡でもしておこうか。

 

「あー、あー、聞こえてるかな?これでもクルビアの最新式の通信機なんだが、いかんせんシラクーザの通信網は時代遅れだからな……」

『……これ以上ねえくらいには聞こえてるぜ、俺は二度と聞きたくなかったがよ』

「そいつは朗報だ。ああもう一つ朗報を伝えておくと、めでたく君たちはオレの部下に迎え入れられたから。おめでとう、シチリアマフィア復興の第一歩だ」

『ラップランドの次はあんたかよ……つくづくついてねえ』

「ちなみにラップランドもいるんだけど、話すかい?」

 

 遠慮しておく、と心なし小さな声で返してきたカポネに次の集合場所とか色々を伝えておいて通信機を切る。

 オレが話している間デザートに出てきた苺のミルフィーユを食べていたラップランドは、フォークを置いて上品に口を拭いていた。こういうところを見れば、ラップランドは良家の子女なのだ……その家が、致命的に狂っていたことを除けばだが。

 オレの方はピッツァで腹も膨れたのでデザートは無しだが、これを見ると食いたくなる。また明日にでも食おうか……とはいえ、もうそんな暇はないかもしれないが。

 

「それじゃオレはもう行くとしよう。わざわざこうして呼び立てておいて言うのもなんだが、オレは君を邪魔するつもりもないからな……このシラクーザでは好きにしてくれ、結局はそれがオレの意にかなう」

「そんなの当たり前じゃない。ボクはボクのやりたいように生きてきたし、これからもきっとそうするんだから」

「それでいいのさ。こんな泥沼に足を取られるなんて馬鹿なことはないからな……ただ」

 

 鞄を持ち上げ、椅子にかけていたコートを着込む。シラクーザの重く苦しい空気の染みたそれはずっしりとオレの肩に重くのしかかってきて、オレの気持ちも陰鬱な感じに引き込まれる。

 店のガラス張りの窓から、羽獣の親子が街灯の上から飛び立って消えていくのが見えた。彼らはこのウォルシーニから離れてどこに行くのだろう?パレルモか、ヴァイトシティか、それともシラクーザの外か。あるいは……ウォルシーニに戻ってくるのか。

 

「過去はどうやってもオレたちを追いかけてくるが。それから逃げるのか、立ち向かうのか、従容と受け入れるのか……どれかが正しいだなんて、誰にも言えないとオレは思うよ」




パイナップルピッツァに対するラップランドの反応は、英語版のYostarのYouTubeアカウントで見れます(Amiya's New Siracusan Food Guide)。
どうして日本語版にはないのか……。
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