エルフとデビルがダベるだけ~デビル:「ハンカチ持ってる?」エルフ:「家にある」~ 作:ジョン5
・髪切った?
「おい、お前。髪切ったか?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「いや、切ってないけど」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「あっそう。見間違いか」
「何をどう見間違いたのか意味が分からないのだけど」
「なんにでも意味を求めるな。無意味なことが意味を持つこともある」
「ええそうね。少なくともこの会話は無意味極まりないわね」
「相も変わらず、手厳しい奴だ。そんなんだから、アタシぐらいしか友人がいないのだ」
「いや普通にいるんだけど。というかむしろあんたが友人なのかどうかが不明瞭よ」
「え?」
「気づいてなかったの?」
「意外な真実。知らなかった方が幸せだったな」
「御愁傷様」
「冷たいなぁ。まるで外に降り積もる雪のようだ」
「いや、雪降ってないわよ。幻覚でも見てるの?」
「お前の言うとおりだな。どうせ浮き世は幻さ」
「勝手に世界を無に帰さないでいただける。大魔王さん」
「大魔王とは恐れ多い。せいぜい、中魔王だろ」
「何よ中魔王って。謙遜しているのかどうなのか微妙なラインなんだけど」
「まったくだな。なんだ中魔王とは」
「あんたが言い出したんでしょうが」
「そうだっけ?」
「数秒前の記憶もないとは。流石は魔族」
「よせやい」
「いや、誉めてないわよ」
「そうなのか?」
「そうよ。記憶喪失さん」
「失われた記憶を求め、世界を飛び回るか……それもまた一興だな」
「いってらっしゃい」
「冷たいな。一緒に行かないか?」
「……機会があったら、ね」
二人は喫茶店をあとにした。
・角どうよ?
「皆の衆、よくぞ参られた。今日、貴殿らに集まってもらったのは他でもない」
角のとがったデビルの少女が言った。
「いや、私以外だれもいないのだけれど」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「おいおい、水をさすなよ。雰囲気だよ雰囲気。それぐらいに重要な話があるということだ」
「随分とハードルを上げなさるのね。自己責任で飛び越えなさい」
「走りながらは無理だな。せめて高跳びの要領で」
「背中の羽は使わないのね」
「いや、これ使っても大して飛べんぞ」
「ホント? じゃあその羽は何のためについているのよ?」
「飾り」
「ダサ」
「うぉい! 辛辣にも程があるコメントだな!」
「背中に羽なんて今時流行らないわよ」
「なにを世迷い事を。お前も生えてるじゃないか、そのあるのかないのか分からないくらい透明な羽が」
「あるのかないのか分からないのなら、別にあってもなくても同じでしょ」
「む? ……それはそうか」
「嘘? 信じられないわ、今ので納得するなんて」
「常識では計り知れないのが、アタシという人間さ」
「流石。計測器も煙吹いて爆発することでしょうね。というかあんたって人間なの?」
「まあ、正確には違うな。俗にいう半人前という奴だ」
「言葉の使い方間違ってる。流石、魔族」
「誉めてもアメしか出んぞ。ほい」
「ありがとう。いや、誉めてないけど」
「そうなのか?」
「そうよ。で、何よ重要な話って?」
「ん? ああ、このアタシの角……どうかなっていう話?」
「別に……素敵だと思うけど」
「お、おう。ありがとう」
二人は喫茶店をあとにした。