エルフとデビルがダベるだけ~デビル:「ハンカチ持ってる?」エルフ:「家にある」~   作:ジョン5

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寝不足で・美味い店があってな

 

・寝不足で

 

 

「やっべ、マジ眠ぃーわ。マジでヤベぇ」

 

角のとがったデビルの少女が言った。

 

「じゃあ永眠させましょうか?」

 

耳のとがったエルフの少女が言った。

 

港町の喫茶店に二人の姿はあった。

 

「わぉ。ブラックジョーク」

 

「イエス。ブラックジョーク」

 

「いやいやおかしいだろ。何をいきなり殺害予告しとるのだ貴様は」

 

「予告状は怪盗の必需品よ」

 

「いつ貴様は泥棒業界に転職したのだ。そういうのははアタシに知らせてからにしろ」

 

「足を汚したことは咎めないのね。というかなんであんたの許可が必要なのよ」

 

「なんとなく」

 

「なんとなく。そうなんとない日常こそ、至高の宝物」

 

「何を寝ぼけたことほざいているのだ?」

 

「あんたに言われたくないわよ」

 

「それは同感だ。で、何の話だっけ?」

 

「いや別に、何の話もしてなかったでしょ」

 

「ご冗談を。アタシが眠くて仕方ないという話だろ」

 

「申し訳ありません。至極どうでもよい内容で仕方ないのですが」

 

「どうでもよくはないだろ。睡眠不足は万病の元になり得るのだぞ」

 

「確かに、それは真実だわ。ごめんなさい、私はとんでもない勘違いをしていたわ」

 

「分かればよろしい。過ちを認めることが成長の一歩だ」

 

「うざ。何様よあんた」

 

「……急に物腰を変えるでないわ。びっくりするだろ」

 

「そうよ。びっくりさせて、目を覚まさせてあげようと思ってね」

 

「何を調子のいい。まあ、お気持ちだけ……いただいておこうかな」

 

二人は喫茶店をあとにした。

 

 

 

・美味い店があってな

 

「あのソテーは実に美味であったな」

 

角のとがったデビルの少女が言った。

 

「え? 何言ってんの?」

 

耳のとがったエルフの少女が言った。

 

港町の喫茶店に二人の姿はあった。

 

「何って、先週食べた深海魚のソテーの話だよ」

 

「深海魚? ごめん、私の記憶が確かならそんなもん食べてないのだけれど」

 

「それはそうだ、アタシが一人で食いに行ったときの話だからな」

 

「ああそう。それはよかったわね」

 

「うん」

 

「……」

 

「……」

 

「え? 終わり?」

 

「こっちの台詞よ。何がどう美味しかったのかをトークしてちょうだいよ」

 

「これは失礼をした。己のトーク力のなさに涙が出るよ」

 

「その涙はぬぐって立ち上がりなさい。不足している力は努力で補うのよ」

 

「このスパルタが。私を崖から突き落として何が楽しい」

 

「別に楽しくはないわよ」

 

「ああ、そうかい」

 

「で、何の話だったかしら?」

 

「あ? 何かが美味しかったって話」

 

「どんどん情報が失われていくわね。ソテーでしょ、深海魚の」

 

「ああそれだ。よく覚えているな」

 

「バカにしてんのかよ。ぶん殴るぞ」

 

「よしてくれ。話せば分かる」

 

「話して分からない故の実力行使よ」

 

「やれやれ、こうして闘争は生まれるのだな。極めて愚かなことだ」

 

「まったくね」

 

「お前だろ、拳を上げたのは」

 

「そうだったかしら? で、そのソテーがどう美味しかったのよ?」

 

「え? それはお前、あれだ。酸味とあのー……酸味と……酸味が……」

 

「……もう一度食べに行きましょうか? 今度は二人で、ね」

 

「そ、そうだな」

 

二人は喫茶店をあとにした

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