エルフとデビルがダベるだけ~デビル:「ハンカチ持ってる?」エルフ:「家にある」~ 作:ジョン5
・釣り行かない?
「今度の休みさ、釣りに行かないか」
角のとがったデビルの少女が言った。
「魚屋で買えばよくない?」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「ん? なんか話が飛躍してないか? 釣り行きたいって話なんだが」
「いや、わざわざそんな面倒なことしなくても、魚屋で買えるでしょ、魚ぐらい」
「お前はアホかぁ? アタシは魚がほしいのではなくて、釣りをしたいんだよ」
「分かってるわよ。見くびらないでちょうだい」
「ひねくれ者めが。話の腰を折るでないわ」
「腰を折ると言えば、この前ね……」
「うぉい! さらっと話題を変えようとするな! どんだけアタシの話に興味ないんだよ!」
「分かったわよ。続けてちょうだい」
「まったく……って、この前に何があったんだ?」
「あんたの方から食いついて来てどうすんのよ。魚か? お主は」
「うまい! 座布団一枚!」
「ありがとう。後で質に入れとくわね」
「売るな売るな。いやすまん、今のはアタシが悪かった」
「そうよ。この前押し入れを整理していた時に……」
「だからその話を進行さすな! 優先順位を守れや、アタシの話が先だ」
「我よ我よと、相変わらず傲慢な奴ね」
「そんなに傲慢だった覚えはないのだが。まあいい、簡潔に言おう。一緒に釣りを楽しまないかい?」
「冒頭と何も変わってないのだけど。まあ……いいけど」
「いいんかい! じゃあ最初からそう答えろや」
「私、押しに弱いのよね」
「知るか。お前なんぞは押し入れに入っとけ」
「うまい。座布団一枚」
「やかましいわ」
二人は喫茶店をあとにした。
・メモをなくしてさ
「ひじょーにまずいぞ。これは」
角のとがったデビルの少女が言った。
「おっ、クレームでござりまするか? 店員さーん!」
耳のとがったエルフの少女が言った。
喫茶店に二人の姿はあった。
「待て待て、店員を呼ぶでないわ。そっちのまずいじゃないから」
「あら? そのコーヒーのことじゃないと?」
「当たり前だろ。このコーヒーは絶品だ」
「そう? 私はだいぶ不味い部類のものだと思うけど?」
「コラ! アタシのフォローが台無しだ! 水の泡だ!」
「すいませーん! お冷やひとつー!」
「だれも水をくれとは言っとらんだろ! 店員を弄ぶでないわ」
「じゃあ、あんたを弄ぼうかしら?」
「え? 何言ってんの?」
「ごめん。今のナシ」
「分かった。記憶から消しておく」
「どうせ覚えてないくせによ!」
「急に辛辣! まったく油断も隙もないな」
「嫌よ嫌よも隙の内」
「適当だな。さっきから発言が適当過ぎやしないか?」
「ごめん。なんか疲れてるみたい」
「疲れてるのはアタシの方さ。朝からなくしたメモを探し続けていたからな」
「ああ、それがまずいって奴の正体?」
「ばれたか」
「いや、別に隠してないでしょうよ。で、まだ見つかってないの?」
「ああ。まったく困ったものだ」
「そう。ところであんたの右角に貫かれている小さな紙はなに? さっきから気になっているのだけど」
「角? ……あっ、これメモだ。こんなところにあったのか」
「よかったじゃない見つかって」
「ああ。そういえば失くさないようにと角にかけておいたのだった。ワハハ」
「やっぱり……記憶力ないじゃないのよ」
「う、うるせぇ」
二人は喫茶店をあとにした。