東方稀幻伝   作:矢矧乙葉

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どうも、乙葉です。第五話投下します。


御札の本領

 

 カァーカァー

 

 俺は不思議な力〝神力〟によってふわりと地面に降り立つ。先程の丹葉様の話から、ここは〝幻想郷〟と呼ばれる地なのだろう。

 見た感じはB区の森と何ら変わりはない。ただ、違うというのは分かる。何故なら、限界まで澄んだ空気は〝妖気〟を纏っているからだ。

 呪具が纏う呪気や怨霊などが纏う怨などとも異なる、ほんの数回しか感じたことがない〝気〟がそこら全体を包み込んでいるかのように漂っている。

 

和葉「異常な程に妖気が漂っているな。いや、幻想郷ではこれが普通なのかもな」

 

 しかし、どういった場所なのか、立地も分からない。とりあえず、周囲の安全確認を行おう。

 

 と、歩き出したはいいものの、これは〝妖怪〟ってやつの気配だな。といっても、うちの神社に伝わる文献では〝妖怪〟との接触を最後に確認したのは、まだ第二次世界大戦も始まっていない1930年、曾祖父が十歳の頃だ。

 伝承でしか伝えられてないから、当たってるかは分からない。けれども、似たような気を纏う呪具に比べて数が多く、そして動いている。

 ただ、高祖父の残した《丹詠明治伝(によめいじでん)》や《丹詠大正伝(によたいしょうでん)》では、『〝妖怪〟ハ基本、人ヲ食スル』と記載されていた。

 場合によっては妖怪退治もする必要があるだろう。とりあえず、退魔札を持って注意しながら行動しよう。日が昇ってるうちに一夜過ごせる場所が欲しい。これからこの幻想郷に暮らすとして、安全の確保は必須事項だ。

 

 やらなければならない事は、寝床が欲しいところだが、まずは水分の確保が最優先だな。川が理想的だが、最悪の場合、水溜まりから水を掬って濾過と煮沸を行う他ないか。地道に探すか、いや、ここは神気を使おう。

 

 リュックサックから丁寧に袋詰めされた御札を取り出して、筆ペンで探索用の術を書き入れる。

 

「よし、『詠葉神術・探索〝水源〟』」

 

 俺が札の能力発動に必要な詠唱をすると、札が蒼く淡く輝き、宙に浮かび、一方の方向へ動き出す。

 

「あっちに川か何かがあるのか」

 

 詠葉神術・探索の御札はその名の通り、詠葉様が創った術の一つで探索に使う札だ。元々は登山やキャンプ、旅行が趣味だった双葉姉さんが遭難したり、困ったりしないよう心配して創ったものだ。

 

 効能は半径5〜10km圏内で目的のものを探索できる。発動後、浮遊し、目的のものがある場所へ移動しだす。無病息災や魔除けの札が規定量封入されているのとは違い、こちらは神気、妖気、魔力が時間が経過するごとに体内より消費されていく。使い過ぎには注意が必要だ。

 因みに、俺の場合、加持祈祷(かじきとう)を行う事で一時的に神気の回復量が増える。まあ48時間のうちの3時間程度のみだが。

 

 それにしても、本当にずっと森が続くな。やはり、ここは普通の土地ではないのだろうか。富士山麓の樹海なんかは姉さんから聞いた話だとこんなっぽいけどな(ところどころに呪気の溜まり場や怨霊の溜まり場なんかがあるらしいが)。

 空気が澄んでいて、気温も涼しくて、いいんだけどな。昔ながらの日本って感じだな。あとは丹葉様や詠葉様の出張について行ったときの諏訪の山とか伊勢の山とか白神の山もこんな感じでよかったなぁ。

 

 

〈1時間後〉

 いや、ほんっとうにずっと森が続くなぁ。いつかの白神山地や屋久島みたいに原生林になってるから歩きづらいったらありゃしない。もう彼此1時間は歩いているんだが、全く進んでいる気がしない。

 御札もこっちを振り返って俺を待つ始末だ。

 

 いや、まあ、これにはちゃんとした理由がある。妖気の流れや妖怪らしきモノの動きを察知して、野生動物や正体不明な妖怪と鉢合わせないように動いているからだ。

 

 とか思ってると、200mくらい先が開けているのが分かる。ただ、霧か何かで霞んでいて、そこから先は見えない。しかし、御札の輝きが強くなっているから、あの先に水源地があるのだろう。

 

 ガサガサガサガサ

 

 やっぱり霧だったか。すごく濃いな。10m先も見えない。ただ、妖怪の気配は森の中だから、少しは安心してもいいだろう。

 そのまま10分くらい歩くと、湖に辿り着いた。湖に辿り着くや否や、御札の効力はきれ、ふわりと地面に落ちた。

 

「湖か。これは好条件だな」

 

 湖なら、煮沸ぐらいでいいだろう。この湖、見たこともないくらい澄んでいるからな。ただ、気をつけなければならないのが、野生動物だな。ここにはどんな生物がいるのか分からない。猪や熊に出会ったら最悪だ。神力で対抗できなくはないが、準備が必要になる。拘束系や呪術系のお札は持ち出せてないし、作るのにも時間が掛かる。

 

 とりあえず、水を確保しなければ。

 

 空の500mlペットボトルのキャップを開けて、水を入れていく。飯盒にも水を溜めておく。

 

「米を食べたいけど、持ってこれなかったから、残念だな。水炊き食いたいな。いやアヒージョでも、いやいや焼き魚でもいいかもな」

 

 俺は料理が趣味だ。和食、中華、フランス、イタリアン、アメリカンなど材料さえあれば、かなり何でも作れる。和菓子や酒も作れる。酒に関しては、神社の祭りでの出品物や丹葉様、詠葉様への奉納品として作ってたからな。例えば日本酒やワインとか梅酒なんかだな。高校では家庭科部・料理研究同好会に所属して、料理の研究してたな。

 

「それにしてもこの辺り、霧が濃すぎやしないか?」

 

 いつの間にやら先程より霧が多くなっており、視界は勿論、気配や妖気すら絶たれ、周囲の気配は全く探ることの出来ない状況下にあった。

 

「とりあえず、早く飲料水を得て、ここから離れよう」

 

 ついでに荷物の整理とかもしておくか。

 

 えーっと、今持っているものは…

 ・リュックサック(容量60L)

 ・着替え(Tシャツ4着、ズボン3着、下着4着、パーカー3着)

 ・神事正装

 ・財布(42,580円、保険証、マイナンバー、生徒証)

 ・筆記用具(シャーペン2本、HBシャー芯2パッケージ、消しゴム、定規、カッターナイフ、筆ペン2本)

 ・サバイバルナイフ、アーミーナイフ

 ・御札用紙(116枚)

 ・刀剣(呪具「桜舞血刀」、奉納刀)

 ・応急処置セット(包帯、消毒液、薬剤、絆創膏、綿)

 ・飲食物(天然水(500ml)、食パン(4/6枚)、カップ麺(3食))

 ・着火物(マッチ(一箱)、ライター、キャンプ用ガス)

 だな。

 

 というものの、必要ないものはあまりないな。シャーペンは2本もいらないか。

 

 話が変わるが、この中で武器になるのは、カッターナイフ、サバイバルナイフ、アーミーナイフ、刀剣類か。でも、アーミーナイフはツールセットだし、刀剣類は普通の刀じゃないから使えないんだよな。

 まあでも、妖怪に対してなら御札も効力を発揮してくれるだろう。まあ、そういう危険がないことが一番なんだがな。妖怪の動きは人間と比べてやけに早いし、何かは分からんが、妖怪以外の気配もする。数も多いし、また移動を始めたらいつどこで鉢合わせるかも分からない。警戒は厳に、だな。

 

 ただ、この霧が怖いな。気配察知もできないし、視界も絶たれる。効力を発揮できるか分からんが、警戒用に御札もあげておこう。

 

和葉「『詠葉神術探知結界・厳』」

 

 探知結界と書かれた御札4枚が赤く輝き、宙に浮く。宙に浮いた途端に御札は激しく揺らぎ出す。これは、既に結界の範囲内に何かしらがいるという反応だ。

 

和葉「な、どこだっ!」

 

 俺は咄嗟にサバイバルナイフを取り出して構える。すると、霧の中に黒い人影が写り、それはどんどん迫ってきていることが分かる。

 

和葉「は、速っ!?」

 

 人影はかなりの速度で、それも飛翔している。まるでミサイルのように一直線に飛んでくる。

 

??「何も見えないのだー。誰か止めて欲しいんだけどぉぉ!」

和葉「ふぁ?」

 

 人影は叫んでいる事が分かる。

 

??「えっ!うわあぁぁ」

 

 と認識したと同時に、赤く輝く御札がその人影に一直線に飛翔し、人影を神力の紐で捕獲、俺の目の前にズザザッと落ちてくる。

 そういえば、『探知結界・厳』は妖力や呪力を感じたら、それを発する物を確保する能力も付与されてるんだった。

 

和葉「あ、え?」

 

 目の前に落ちてきたのは、金髪に何故か神力を感じるリボンか?をした、黒服の少女だった。ただ気配で妖怪かそれに近しい存在であることは分かるのだが。分かるからこそ驚愕する。

 

??「目がクルクルするのだー」

和葉「妖怪ってこんな見た目なの?」




今話も読んでいただきありがとうございます。

事情により、投稿が全くできない状況でした。申し訳ありません。

また、こちらも勝手ながら私の事情が関わってくるんですが、投稿頻度が不定期になります。重ね重ね申し訳ないです。
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