- プレイヤーは5種類の〈たべもの〉を定期的に摂取する必要がある。ただし〈たべもの〉のうち一種類には毒が入っている。
- お邪魔役として〈とりさん〉ことペストマスクが登場し、プレイヤーに襲いかかる。逃走は容易だが撃退はほぼ不可能。
- 冷静に情報を整理すれば生還は容易。ただしプレイヤーの殆どは自発的にコロシアイをさじ目ている。
見る限りの地獄だ。
用紙はその辺に落ちていた推理小説の余白、インクは其の辺のナイフから垂らした毒液。
移動を最小限に控えていたが、50mほど曲がりくねった通路を移動しただけで数人の死体を見つけた。目立った外傷は見当たらないので、運悪く毒を引き当てたのか?
(でも、私たちってホント幸運………こんなゲームに参加するまでを除いて、だけど。)
陽龍は安堵の息を漏らした。
目立たずに隠密していると、ミシロという女が率いる8人のグループに出会した。積極的に殺人をしてキャンディーを独占しているようだった。
自分でも襲われるのか、と思ったが
『行きましょう。虎穴へ無理に入り込む必要はありません。』
熟練プレイヤーを襲うことを良しとしなかったのだろうか、御城が去ると決めると初心者プレイヤーたちはおとなしく後に続いた。御城の後にべったりくっついていた幼女_____
『あのリコってやつやばいよ、襲われたら死んでたねー』と浄火は笑っていた。
陽龍には無害そのものにしか見えなかった、むしろあの子ならサシでも勝てそうだと思っていたのだが………やっぱり、このゲームの熟練者はすごい。
こんなゲーム一回こっきりで終わりにしようとしていたが、その決意が揺らいでいた。
吊り橋効果というやつだろうか。このゲームが始まった時から、彼女はずっと死の恐怖に苛まれてきた。解放されるためならもういっそ死にたいとさえ思ってきた。
でも、勇敢に3人を先導し続ける浄火を見ていると、そういう『逃げ』の精神が薄れていくのを感じた。
(私も同じ域へ、いけるのか?)
陽龍という少女は生きることにさしたる執着はなかった。学もない職能もないコネもない。そんな陽龍が真っ当に生きていこうとしたところで、安定しない非正規雇用で日々を食いつなぎ、それすらできなくなれば飢え死ぬのが限度。わざわざ殺されるまでもなく死んでいるようなものだ。今回だけ浄火の機嫌を伺って勝ち残ったところで、飢え死ぬまでの時間が少し伸びただけだ。
それくらいなら、この死亡遊戯の世界で生きて____一花咲かせてやろうか。
年2回参加するだけで日本人の平均年収を遥かに上回る額(闇の金なので非課税)が手に入る。それだけあれば姉妹ともどもそれなり以上の生活が遅れるはずだ。
生存可能性が増すにつれ、そういう思いは徐々に強くなる。
生き残りへの確かな道筋が見つかった。確信したのは2回目のアナウンスが流れ、ウォッチのあおむしが空腹状態(><)になった後だ。
キセルに緑以外の粉末を入れ、蒸して飲み干しても浄火、樹果、陽龍、絵麻は幸い身体になんら異常がなく、次の『収穫者』を退ける頃には4人は『うちらまじ最強だよね!一生の友達マジ卍』的な雰囲気に包まれていた。初対面の中学生が謎に盛り上がった時のアレだ。
その中で一番浮かれているのは浄火に見えた。浄火は陽龍たちの生命線だ。これまでも、そして陽龍にとってはもしかしたら……これからも。
いけるかな、と息を吸って。
「浄火、私を弟子にしてくれない?」
「エッッッ!?!??!?!?!??!?」
陽龍が切り出すと浄火は目を丸くした。今じゃなくてよかっただろうか。しかし、浄化ほどの熟練者なら引く手数多かもしれない。次に会うときは陽龍より筋の良い女の子をたくさん連れているかもしれない。これ以上の距離感で話しかけられるのは今しかない。
「ふっふつつかものですがよろしくお願いしま……いや、いやだめだよ!!!!」
周囲を考えないデカい声でその申し出は断られた。
「嫁入りか!」
「二人とも声が大きいよー。でも、私もいいと思うなー。」
もう10年来の友達のように気安く、絵麻と樹果がツッコミを入れる。
浄火の反応は奇妙だった。笑ってはいる。しかしどこか固い。それに、ナイフを持つ手が白くなるほど、力が入っているように見えた。
「わ、私も陽龍が…みんなが弟子になったら楽しいと思う。……尊敬するあの人みたいに弟子をたくさん取るって言うのも面白そうだし……でもダメだよ!君たちみたいな良い子は真面目に就職しなさい!こんなクソみてぇなゲームは一回切りにした方がいい......」
浄火は陽龍の提案を冗談で済まそうとするが、むしろ陽龍の決意を固めることになった。
『どうしてお前はそう生意気なことばかり言うんだ?』
『あの人はお前の夫になるんだぞ。少しは立てることを覚えろ。』
『余計なことばかり言う前に、妻としての心構えを養いなさい。旦那様を支えて子供を育てるの。そんな幼稚な反骨心も消え去るはずだわ』
かつてかけられた言葉がリフレインする。『真面目に生きろ』と言うのは陽龍が人並み以上に嫌う言葉だった。ソレに従えば幸せになれるのかもしれない。ソレなりの社会的成功に恵まれて、毎日美味しいご飯が食べられて
死亡遊戯に連れてこられ、初めて見た浄火の姿は夢に見た王子様のようだった。衣装を着崩し、腰まで伸ばした紫色の髪、紅のカラコンなど見るからにアウトローな装い。憧れの情は時と共に深くなる。人が死んでも死なせても歯牙にもかけない器の大きさ。陽龍が夢見る『強者』の体現のように思えた。
ソレを見失って、これまで通りのクズのように生きるなんてごめんだった。
「いやだ!私は浄火と同じセカイに行きたい!図々しいのはわかってる!お願い!私をこの世界でも生きられるようにしてほしいの!この世界は残酷すぎるけど、私が私でいられるモノがある!妹にももうひもじい思いをさせずに済む!」
気高い決意だなぁ、と浄火は思った。陽龍は浄火の想像以上に強い精神と決意を持った女の子なのだろう。
でも、
「できることならなんだってする!だから……」
冷たく見下されながらも涙を堪えて裾を掴む陽龍は、冷たく振り払われた。
(13.1/27)
浄火に蹴られて凹まされた部分を、担当のエージェントは舌打ちしながら修理の手続きを進めていた。自腹だ。彼女の所属する死亡遊戯の運営はプレイヤーをゲーム外で丁重に保護する一方、エージェントのようなスタッフは薄給で福利厚生も今ひとつ。
(なんで私の担当はロクなのがいねえんだ?)
紫苑、という少女を思い浮かべる。あの少女とアイには共通点がある。卓越した殺人の才。
他の参加者が生き残るために行動する〈生存者〉であるなら、それに真っ向から反する存在と言えた。他の真っ当なプレイヤーが知略を引き絞って作り出した有利を腕力のゴリ押しで解決しやがる。
止められたやつは居ない。やつらは〈生存者〉であって〈殺人者〉ではない。フィールドが違うのだ。藤井聡太にステゴロを挑むような、恋愛漫画の世界に格闘バトル漫画のキャラをぶち込んだような、ホラー漫画にコメディのキャラを持ち込むような、比較するのも烏滸がましい隔たりがある。
どちらが優れているわけでもないが、結果は火を見るより明らかだ。
オマケに奴らはタカを意図的に外している。
参加したゲームで必ず4割以上の死者を出す。平和に進行したゲームでも、いや、だからそういうゲームだからこそ最後にちゃぶ台をひっくり返す。参加者は無限にあるわけではないのだから、あまり好ましいとは言えなかった。
(そろそろ庇いきれねえよ。三十連勝したらさっさとのたれ死んでくんねえかなー。)
ピコン、とLINEの通知音。
通知ステーションにはコロッケのアイコン。
ちょうど話題にしていた問題児の片割れ、紫苑から。焼肉の日程について『どうせ暇だろ?』と。この前冗談で『貸しひとつなんで奢ってくださいよ』と言ったのをマジにしているようだった。いやホント冗談のつもりだった。金貰っても同じ飯なんて食いたくねえ。
(こいつら、マジでどうにかならねえのか……。)
はああー、とクソデカため息が漏れる。
携帯をポケットに突っ込み、彼女は再び修理に戻った。今頃浄火がゲームに参加しているはずだ。しかし、浄火の制御不能な衝動がこの先どう転ぶのか薄々予想がついていた。
彼女は派手なものが好きだ。ビルの解体動画とか。でもそう言うのはリアルだから面白いのであって。
イミテーションなんて見るに値しない。
死亡遊戯のプレイヤーネームってみんな漢字2文字ですけどそういう縛りあるんでしょうか
ないならフリーザってPNで参加したいですね
友達誘ってザーボンさんドドリアさんにします ホッホッホッホッ!
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