助けてください
ex.1
毒の巡りを止めるという意味では、恐ろしい最適解が思い浮かんだ。落とせばいいのだ、だめになった部位を。でも、そんなことやるくらいならこのまま死にたかった。
夢見たのは命がけのスリル、その果てにある一攫千金。
こんな、泥臭い、痛ましい努力なんて求めていない。汗をかいたり、息が乱れたり。現実の世界のそれが嫌だからここに来たのだ。ここでも同じなんて聞いていない。
怠け者?好きに呼べ。努力してまで生きたくない、こんな世界。
汗が目に入って瞬きする、その度に自分の肉体の中に刃物が侵入する冷たく破滅的な感覚を思い出す。
浄火の第一印象はクラスで一番暗いやつだった。普段なら話しかけもしない空気と同じやつ。はっきり言って見下す人種だ。そんな奴に殺されかけたという事実にもう耐えられなかった。
「助けて」って叫びたかった。そうすればこれまでの世界では、まあ、絆創膏くらいは貼ってくれる人たちが寄ってきた。でも、目の前で殺し合いをしているクズどもを見ると助けを求める気も失せてしまう。
理解不能だ。わざわざ積極的に殺し合うような人たちも、さっき肩を貫いた浄火も、それに憧れていた
木の虚のようなところに隠れていると、3回目のアナウンスは響き、手首にあるウォッチの青虫が><顔になる。朦朧とする意識の中でキセルに粉末を入れた。漬物の酸っぱい匂いがする。緑色だったが、それが何を意味するのかまでは思考が及ばない。
それよりもう、家に帰りたかった。両親はいるが、二人揃って他人への関心が薄いタチだった。彼らなんて居ないようにソファーでねっころび、暖房をつけてアイスを舐めながらネットショッピングをすることばかり考えている。そんなことだから近づく足音にも気が付かなかった。
意識を失いつつある彼女の目の前に現れたのは、黒装束を纏った、幽霊のようにゆらめく大柄な人影。襲撃者ペストマスクだ。感情の見えない黒の眼窩と、刃の一本一本がナイフのような巨大な鉤爪が死を予感させた。どうやら絵麻の人生はここで終わりらしい。
「殺す、殺すの?あはっ、最悪……ああ、ほんと最悪!何なのこのゲームのやつら!『殺すのが最適解かもしれない』って想うのはいいよ!それでなんでマジで殺しちゃうの?信じられない!信じられない!気狂いだ!お前もな、クソ厨二病マスク!このゲームに関わっている人間、みんな終わりすぎだよ!死にたいなら誰もいないところで一人で首括りやがれ!私の生活を侵害するんじゃねえ!」
自分でも何を言っているのかわからなかった。いやわかってたまるか。残った人生は数分?数秒?それだけで気持ちを言語化できるほど浅い人生じゃない。
その罵声に気押された訳ではないだろうが、ペストマスクはプイッと顔を向けると去っていった。
一瞬どういうことだと思ったけど、すぐに納得が行った。瞳、鼻、口、爪の間、身体中のあらゆる粘膜からドロリとした赤いものがおりもののように垂れていた。それはゆっくりと赤く染まり、眉のように摘んだプレイヤーを包んでいく。出血毒だ。
ウォッチの青虫は『><』という表情のまま、上空に天使の輪っかが浮かんでいた。
見れば、通路に円柱のようなものがぽつりぽつりと立っている。私もああなるのか?
ああ、そういえば『緑は毒』だったなあ。あの三人と確認したのに。
絵麻は負けたが、悔しいなんて思わない。生き残った奴らにも破滅的な運命しか待っていないだろうし。
こんなことならキャバで働き続けりゃよかったなぁ。一回生の時に入ったたの世界は不快でたまらなかったが、死ぬよりは流石にオッサンの聞きたくもない話を聞いていた方がいくらかマシだ。
ただただ、こんなところに来たところを後悔する。
ex.2はあるかわかりません
この世界が普通に合わない人もいるだろうな、というお話
そして別に元の世界が向いていたわけでもない
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