このペースなら三月中に一通り投げられそうでよかったです
投稿が終わるとどうなる?知らんのか、校正タイムが始まる
16
4回目のアナウンスとともに、プレイヤー・
これまでに彼女は青の粉末しか使用していなかった。『毒』の正体を掴みかねていたからだ。一種類の色にだけ毒が入っているのか。毒を取り込むと一発アウトなのか。たとえば、毒入りの粉末を一定数蒸すと死んでしまう設定かもしれない。
その辺を推理するには、いくつかピースが足りていない気がしていた。このまま青を飲むだけでいいのか。
考察がまとまらない中、妥協として通りがかったプレイヤーが白い粉末を蒸していたのでそれに従っている。
(大丈夫かなあの人?……いや、毒入りの選別手段を確定させられてないからヒトの心配をしている場合じゃないんだけど)
幽霊のように白い、というか白そのものな肌。老人のように白く、しかし子供のように潤った髪を腰まで伸ばしている。瞳はオッドアイになっていて、見たものに恐怖と美しさを同時に感じさせる、その振る舞いは死亡遊戯という猟奇極まった空間においても落ち着いていた。
狂人にも常人にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見えない。まるで幽霊のような少女だった。この惨状の中にあって、返り血の一つも浴びていないのが逆にそれっぽさを補強していた。
<三十の壁>をクリアした熟練プレイヤー____幽鬼。三十五回目のゲームだった。
彼女は努めて隠密していたが限界があった。実際の自然よりは地形がシンプルだし、たまに追跡してくるペストマスクのことを考えると、木のウロとか逃げ場のないところに隠れるわけにはいかない。
プレイヤーに何度か襲い掛かられ、戦闘不能にしては最低限のキャンディーを頂戴していた。〈利他〉というのが彼女のプレイスタイルで、ガンガン殺すのは流儀ではなかった。不殺の精神だとかそういうめでたい代物ではない。できるならやりたくない、それだけだ。
そんな彼女はまたプレイヤーに遭遇した。
もう動かなくなった死体相手にまたがり、徹底的に解体しているようだった。彼女は足音に気がつくとこちらに振り向いた。
(小学生…いや、中学生?)
あどけない顔立ちなのに、腰まで届くウィッグ、カラコン、包帯などをつけており、なんとなく背伸びしている感じ。
デスゲームの性質上、生き延びるのは体が出来上がった高校生以上が多い。それを踏まえると、結構レア物の美少女だった。前髪がちょっと変だけど。
まあ美少女と言っても例に漏れず返り血まみれなので、そんな可愛らしさは一瞬け消し飛んでしまうわけだが。
というか、と疑問が生まれた。おそらく殺し合いメインのゲームではないだろうに。
「なんで殺してる?必要ないでしょ。」
幽鬼は思わず声に出してしまった。正義感なんてものではない。純粋にその必要があんまりなかったから。あんまり要領が悪い子供を気遣うような声が出てしまった。
振り向いた浄火は目にいっぱいの涙を湛えながらも、胸に手を当てて演説するように話す。
「………ああ、ああその通り!彼女らは本来なら死ぬ必要などなかったね!だが人の小さく矮小なことか、なんと悲しいことか嘆くべきか……彼女らは生きていても最早無益な殺生を重ねるだけの命!ここで潰すのがせめてもの慈悲!僕がもたらす救いだったんだ!」
幽鬼は半分聞いたあたりから脳内のフィルタをオンにしていた。あんまり話聞いちゃいけない手合いだ。
端的に要件だけを聞く。
「やるの?」
「うん。ちょっと嫌なことがあってね。でも、その前に確かめたいことがある。」
ナイフを弄ぶそのプレイヤーはしかし幽鬼の顔を見つめていた。美少女の自覚はあったが、それにしてもあんまり見られると恥ずかしくて、相手の首から下に意識を集中する。
「あれ、もしかして、幽鬼?えっマジ嬉しい。」
「……どうも。」
最近は顔が売れてきたらしく、話しかけられるのはなれていた。たまにこういうファンみたいな子がいる。必ずしもハッピーエンドにはならないし、今回も相手がヤる気満々なのでなんか空気が変わったうちにそそくさと立ち去ろうとした。
「あっ待って待って姉弟子!!!!」
姉弟子、という言葉に幽鬼の足が止まる。彼女が師匠と呼べるのはこの世にただ一人だ。と言うことは?
「あなたも
「そうそう!って言うんだ!正式に教えを受けたわけじゃないけどね!」
精神的師匠ということだろうか?と幽鬼は思った。永世や古詠など白士の弟子は他にも知っているが、浄火というのは聞いたことがなかったし不信感しか感じない。
しかし浄火の方は体から力を抜き、打って変わって、10年来の親友に再開したような軽い足取りに幽鬼に近づいた。隙を狙おう、って感じではない。最低限の警戒すらなく、もし首に向かってナイフを振ればそのまま落とせるだろう。だからこそ幽鬼は困惑するばかりで迎撃できなかった。
「いや、聞いてた通りの美少女だなあ!会えて嬉しいよ〜〜〜〜〜〜!!!どう?しばらく共闘しない?えってかインスタやってる?」
「やってない。」
そう答えるとわかりやすく浄火の気骨がしぼんだ。何か悪いことをした気になって、静止のハンドシグナルと共に代替案を示した。
「LINEはやってるけど……」
「へっ!?!?!じゃ、じゃあこ、交換しようよ!もちろん嫌なら全然いいよ!むしろ邪魔だった感じたらすぐブロックしてくれていいから!」
「えーと、嫌なのも確かだけど、今スマホない…。」
「あうっ…..」
わかりやすく凹んだ。
ちょっとかわいいな、と思う。何か幼稚園にこんな雰囲気の子がいいた気がする。いつも端っこにいるけど、話しかけてみると意外なくらいフランクに返してくれる。
「まるでクラスで普通にやってる会話みたいだ。友達多いんだね。」
「アッそう!?いや、私もLINE家族以外登録してないんだけど、あっ私インキャだから、クラスの陽キャを真似て話してみてあっところで最近アニメとかなんかみてる?私フラーメンめっちゃ好きでさ」
「ごめん早口すぎて何話してるかわからないよ。」
……ちょっときついな。
黙ってればかわいい系か。
「ご、ごめん。普段はもっと落ち着いてて早口でもなくちゃんと話せるんだけど。会えたのが嬉しくて舞い上がっちゃった…….。」
てへ、と不慣れに自分の額を叩くのを見る。これはちょっとあざといな。
もしかして、そういう感想を求められてるんだろうか。戦わないに越したことはないしな。
「それかわいいね。私もやろうかな。」
と真似して額を叩いてみる……どうだろう。我ながら結構決まったんじゃないか?
「………」
なんだか、すごく不穏な沈黙だった。
浄火が突然下を向いてボロボロの爪をかみながら、ぶつぶつと何か言い始める。その眼光がどんどん鋭くなっていき、次に起こることを予感した。
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