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それでもウォッチのあおむしは満腹になり、「><」から「^^」に変わった。次のステージへ案内する。
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40分経過と同時に大きく二つの変化が起こった。
一つは〈あおむし〉の〈餓死〉。隠れる以外の行動を起こさなかったものや、意識不明で転がっていたものなど、アナウンスに従って5回以上粉末を服用していなかったプレイヤーには、手に装着していたウォッチから毒針を注入された。すでに動かなくなっていた少女たちが一度大きく痙攣すると、今度は永遠に沈黙する。どうせ見るものもいないだろうに、死体のあおむしは両眼がバツに変わっていた。幼い子供の声で『えーん』という効果音が流れる。
二つめは会場の風向きが変化し、新たな制限時間が始まったこと。浄火を退けた幽鬼は真っ先にそれを感知し、風の吹くほうへ走る。
(見つかった時はマズイ、と思ったんだけど。今のところ何だか逃げれてるな。)
頭上から鉤のついたワイヤーが飛び交っている。
ペストマスクはワイヤーを壁に引っ掛けながら、空を飛ぶように周囲を索敵するようになっていた。これで唯一の弱点だった足の遅さも克服し、最強のハンターNPCになったわけだ。アレは多分専門の人体改造を受けた運営の先兵で、立ち向かうのは絶対にノー。手足を地面につけて姿勢を低くし、障害物づたいに移動する。
数分で出口に到着した。
樹状のオブジェが倒れており、これまで覆われていた壁面から光が差していた。風の流れからして、ここが外に通じているはずだ。トラップなどが仕掛けられていないことを確認すると、慎重に扉を押す。
吹き込む風と共に、開いた扉の間から血みどろの腕が伸び、幽鬼の脳天めがけてナイフを突き立てる。
「……ッ!?」
腕をクロスさせて守るのが精一杯だった。
幽鬼はナイフを突き立てられて、倒れ込んでから、ようやくそれが幻覚だったことに気が付く。彼女自身は確信していなかったが、接種した毒が体に悪影響をもたらしていた。右目が大きく痛む。
実際問題、浄火の存在は頭痛の種だった。彼女がゲーム勝利のみを第一とするプレイヤーなら、もう決着はついているようなものだ。しかし短期間接した彼女は自分が得をするより相手が損をするのを望む性質に見えた。
そういう手合いが自らの保身を考えず諸共死のう、なんてやられたら対処法がさっぱり分からない。
ため息をつくと立ち上がり、右に頭を傾けながら扉に体重を掛ける。
改めて開いた扉の先は本物の青空が広がっていた。ただし雲が近く日差しも強い、地上は見えず数百メートルの高さにあるように見えた。ここは何かのタワーにある、小さい飛行場のようだった。ゲームクリアの場合は、疑いようもないくらい『終わりですよ』とアピールしてくれる…..というわけで、まだゲームは続いているようだった。
数十機の飛行機のような乗り物があり、虫の蛹のように白と茶色で塗装されていた。小学校すらまともに授業を受けていない幽鬼が飛行機を操縦できるわけはなかった。しかし、コクピットにはレバーが一つ据え付けられているだけで、おそらくそれを引けば自動で離陸から着陸までやってくれるのだろう。
そうすればやっとゲームクリアだ。
そこに至るまでに問題はいくつかあった。飛行機の近くにもペストマスクが待ち構えていたからだ。前のステージでも広いエリアに5体いたが、今回は2mほどの間隔を置いて10体近く待機していた。
他の生存者を揃えて強行突破、も考えたがそれは難しそうだった。幽鬼は一番乗りだったが待てど待てど足音も聞こえてこない。凸出しているわけでもない回避スキルが必要かもしれない。
しかしのんびりしているわけにはいかない。制限時間もさることながら、異常なプレイヤーに狙われているかもしれない。
迷っている間にも時間は過ぎていく。
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