97回目の死亡遊戯   作:覚絵テネ

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「なんとなく」

 

ユウキ、幽鬼という少女はどこか投げやりにつぶやいた。

夢乃真愛こと浄火4回目のゲーム。後に身につけるウィッグやカラコン、包帯などはなく、一筋のメッシュを入れているだけ。まだダイエットも始めたてで、『クラスのちょっとおしゃれを意識している女子』って感じだった。

近くでボヤボヤしている女に雑談を仕掛けて、『どうしてこのゲームに参加してるの?』ということになった。

 

「……は?」

「なんとなくで参戦してる。」

「…ふふっ。一歩間違ったら幽鬼がこうなってたのに?」

 

笑ってしまった。

 

だってありえないだろう、とカタナを振ってこびりついた綿と人脂を落とす。目の前には敵対チームのプレイヤーの残骸があった。命乞いする彼女らを浄火と幽鬼は手を止めずに始末したが、それにしたって吐き気がする。同情する気持ちもあったが、何より自分がこうなるかと思ったら頭がおかしくなりそうだ。

 

「ああ、言いたくない系か。深掘りはしないけど…。」

「嘘ではないが……」

 

幽鬼の声はあまりにも平坦で、嘘か誠か区別がつかない。

浄火は比較的デスゲームの才能がある。少なくとも正面戦闘においてはほぼ無敵で、生き残る可能性は人より高い。それでも参加前は毎回吐きそうになる。白士という眠れなくなるくらい恋焦がれた人と会えるから、無理やり参戦しているのだ。

 

いくら現実社会に適応できなくても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。......いや、もしかして、白士もそういう人種なのか?『なんとなく』で命をかける人間。

 

「本当なんだけど。…言うなら、99連勝かな?師匠のパクリだけど。キリがいいよなーとは思う。」

「はぁ。」

 

浄火も投げやりに返した。

ゲームが終わり、何度反芻してみてもその言葉に偽りはなかった。それで気が付く。

この少女は、白士さんと同じ側、狂人の世界にいる。

99連勝なんて馬鹿げた目標のために自分の命を平然とテーブルに乗せて、だからこそ、この馬鹿げた世界で誰も彼もに認められる運命なんだと。悟った。

浄火は白士や幽鬼、鈴々と同じ世界にいるようで、全然違う。生命なんて絶対に賭けたくない。死にたくない。そんなことをするくらいなら、辛くて安全な世界で大好きな人と生きていたい。

絶対的な隔たりだった。

 

その隔たりは...例えば、もし白士の心を浄火が手に入れたなら。

白士に貢ぐために社会活動に溶け込むだろう。愛する人のために、なんて真っ当な理由で。

手に入れたのが幽鬼なら、彼女は何も変わらず死亡遊戯に参加するのだろう。

 

「違う。」

 

……嫌だ、そんなの認められない。

 

せっかくこのデスゲームとかいう、自分が活躍できそうな世界を見つけたのに。そこで脳を焼くくらいに輝く星を見つけたのに。自分はそれを地上から見上げるのがお似合いの一般人なんて認めたくない。

だから浄火は、夢乃真愛は恥ずかしげもなく叫ぶ。

 

「死亡遊戯の主人公は、僕だ。」

 

命をかけてもいい輝きを見つけ!それでいてこの死亡遊戯の全てを手に入れるのは!!!

 

「そっち側に立つのは!!狂っても嫌われても殺人鬼になっても!誰からも愛されなくても認められるべきは!!!!!!!僕なんだ!!!」

 

クラスで下から3番目の少女は変わると決めた。

アニメキャラみたいなウィッグ、包帯、カラコン。メイクとヘアアレンジ、季節ごとのコーデ、美貌と体力を両立するトレーニング、そして望みもしない才能。

どこまでも真っ当に努力を重ね、しかし暴君のごとく死亡遊戯に降臨する狂人であれと自らに命じる。

 

 

あっち側の人間になるために。『なんとなく』で命をかける超弩級の狂人どもと並び立ち、認められるために。

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