97回目の死亡遊戯   作:覚絵テネ

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(23/27) 、(24/27)

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_______っ

 

馬鹿。そうなじらずにいられない。

そんなパチンコじみた手品で逃げられると思っているのか。

馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿バカ!!!!!!

 

白士(ハクシ)も、最初のゲームで出会った鈴々(リンリン)幽鬼(ユウキ)も。彼女らの本質はきっと同じだ。感受性とかそういうところがぶっ壊れていて、人からすればどうでもいい目標に異様な執着をして生きる理由を無理やり作る哀れな人たち。

どうせどうでもいいものを求めるのなら、それがイかれたゲームの連勝記録なんかじゃなくてもいいじゃないか。パチスロの99連勝でもいい。例えフリでも私を頼ってくれるなら何でもする。いわゆる都合の良い女でもいい、まっとうする。

 

どうして?生殺与奪の権を握っているんだ。どうしてもこの後に及んで、嘘でも、私を求めてくれない?

 

慟哭しながら、浄火が白士を追いかける。

 

白士の劣化が悲しかった。

全盛期の白士なら正面でわざわざ闘うこともなく、ゲームを利用して完膚なきまでに、浄火を叩き潰してくれただろう。そうすればこんな無様に逃げる姿を晒さずに済んだ。

 

しかも無様に逃げた先には死、しかない。

後ろの扉にはペストマスクがいるのは把握している。あいつらを振り切れない白士は死ぬしかない。

 

そんなの絶対にごめんだ。せめてあなたは_____私の手で死んでくれ。

 

白士のほとんど原型を留めない体が扉を叩き、その向こうへ突入する。碌に動けない白士に向け、ペストマスクが一斉に跳躍したように見えた。そら見たことか。

 

ペストマスクは1秒で白士を引き裂き命を砕くだろう。その後私に向かってくる。

 

フレーム単位で、取るべき動きを組み立てて。

 

____え?

 

肉が千切れる音が、思ったよりも近くから響いた。

 

(24/27)(謎解き)

 

「があああああああああっ!?ぎっ、ぎっぎっいいいいいいいいい!?」

 

青空に叫びながらも、我ながらこんなに野太い声が出るんだ、って心のどこかで感心した。

扉の先に配置されていたペストマスクたちが一斉に襲いかかり、その黒爪が浄火の脇腹を引き裂いたのだ。血はもちろん、溢れてはいけないかたまりがボロボロとこぼれ落ちる。地面に1mほどの赤の水溜りができ、白く染まっていく

 

痛みに喘ぎながらも、半ば本能的に後ろへ飛んだがペストマスクは瞬時に反応して追撃する。対して、スライムのように鈍重に動くことしかできない白士はスルーする。

 

「ぎゃああああああっ!?!?!?どういうことだっ…?」

「やっぱりな。」

 

白士の声は冷静で、まるでこの結果を予期していたかのようだ。

 

 

「私は毒を飲んだからな。毒入りの獲物なんて鳥は襲わない。」

「だから、どういうことだよっ!?毒を飲んだならじゃあなぜ死なない!」

 

このゲームは五種類のうち一種類の毒を避ける運、そしてペストマスクから逃げる肉体強度が試されるゲームではないのか!?

 

「まだらの紐。『スペックルドバンドの冒険』と言えばわかるか?」

「____っ」

「教養を深めるクソガキ。このゲームは二つのモチーフがある。『はらぺこあおむし』だけじゃない。」

 

遠い昔、図書館でそんなものを読んだ記憶があった。

かのシャーロック・ホームズシリーズの『まだらの紐』。

そこでは、燕尾服を纏った殺人鬼が登場する。この殺人鬼が少々特殊で、ミルクで毒蛇を飼い慣らし凶器としたのだ。

 

「白い飴はミルク……解毒剤……!緑はピクルスであり、蛇!毒は遅効性で、解毒剤を40分以内に飲めばいい......会場内で毒だけで倒れたやつはいなかった....」

 

浄火の頭の中で全てがつながった。

ヒントは無数にあった。この探偵服。ヨーロッパに流行したペストマスク。キセルはホームズがコカイン吸入に用いたもの。まだらの紐は叙述トリックの名作としても知られる。パッと思い浮かぶだけでもこれだけ。

いや、こんな予備知識がなくても、ゲーム会場には無数の推理小説があり、その中にも『まだらの紐』があった。それを読むか、あるいは読者に情報を共有してもらうだけで、白士と同じ推論を立てられたのだろう。

 

このゲームは恐ろしいほど簡単なゲームだ。

恐慌に陥らずチームワークを重んじ、冷静に情報共有すれば、幼稚園児でもクリアできる。『はらぺこあおむし』はホイ卒でも見覚えがあるし、『まだらの紐』についても現地に書籍そのものまで置かれている。だが、浄火のような積極的に場を乱す輩がクリアするのは相当に難しいし、またそのような輩に対しての試練でもあった。

もしサンドラたちと協力し、一つ一つ情報を整理して、誰もが笑えるハッピーエンドを少しでも目指す心が浄火にあれば、結末は違っていたかもしれない。

 

手遅れになってようやくゲーム内容を把握した浄火に再び襲いかかるペストマスク。体重の半分が失われ身軽になった状態で逃げ切れる相手ではなかった。なるほど、白士は浄火に正面から戦うほど衰えて居なかった。むしろその策謀は健在で、ここにきて白士は最強の護衛を手に入れ、浄火は最悪のハンターの中に飛び込まされてしまったのだ。

 

流石に回避のできない詰み、完膚なき敗北を目にして、浄火は力無く、けどすっきりと笑った。

 

「はは……っ、ははははははははは!!!!…っぱ、殺人ゲームなんて無理だったなあ。」

 

いくら虚勢を張ったところで、狂気の殺人鬼の仮面はこの死亡遊戯に通用しなかった。

 

彼女の人生は十一文字で要約できる。

愚図は愚図のままだった。

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