ヤンデレ四天王   作:あばなたらたやた

4 / 4
四話:ワカモ

狐坂ワカモ

 

 夕暮れの学校裏庭は、静寂と緊張に包まれていた。木々の間を吹き抜ける風が葉を揺らし、遠くで鳥の声がかすかに響く。

 

 だが、その穏やかな風景とは裏腹に、空気には鋭い殺気が漂っていた。狐坂ワカモは、長い黒髪に赤い筋が混じった狐のような姿で立っていた。

 

 彼女の瞳は燃えるように輝き、手には鋭い銃口が光っている。目の前には、地面に倒れた女子生徒が震えながらうずくまり、恐怖で顔を歪めていた。ワカモの足元には彼女の鞄が散らばり、その中身が無残に踏み潰されていた。

 

「先生に近づくなんて……許せません」

 

 ワカモの声は低く、怒りと執着が混じっていた。彼女は爪を振り上げ、再び女子生徒に襲いかかろうとしたその瞬間、背後から穏やかな声が響いた。

 

「ワカモ、待ってほしい」

 

 先生だった。彼は紳士的な佇まいで、落ち着いた足取りで近づいてきた。スーツの襟を軽く整え、柔和な笑みを浮かべているが、その瞳には真剣さが宿っていた。

 

「君が怒ってるのは分かる。でも、どうしてこんなことになったのか、私に教えてくれないだろうか?」

 

 彼の声は優しく、ワカモの攻撃的な衝動を静めようとするものだった。ワカモは動きを止め、銃を下ろして先生を振り返った。

 

 彼女の瞳が一瞬揺れ、怒りが混乱に変わった。

 

「先生……この子が、先生に近づいてたんですよ。昼休みに、先生と笑いながら話してて……私以外の誰かが先生と一緒にいるなんて、我慢できるはずがありません!」

 

 彼女の声が震え、独占欲が剥き出しになった。

 

「先生は私のものなのに…この子、先生を奪おうとした。私、許せなくて」

 

 彼女の銃が地面を引っ掻き、小さな火花が散った。先生は倒れた生徒を一瞥し、静かに息をついた。そして、ワカモに一歩近づき、穏やかに語り始めた。

 

「ワカモ、君がそんな気持ちでいるなんて、気づけなくてごめんね。私が他の子と話すのが、そんなに辛かったんだ」

 

 彼の言葉には共感が込められ、ワカモの感情に寄り添うものだった。

 

「でも、彼女を傷つけることで、君の気持ちが楽になるのかな? 君はどう思う?」

 

 彼は攻撃的な彼女を責めず、むしろ理解しようとする姿勢を見せた。ワカモの瞳が鋭く光り、声が低くなった。

 

「楽になります。この子が先生に近づかなければ、私、安心できます。先生は私のそばにいて、私だけを見てくれればいい。他の誰かが先生に触れるなんて…考えただけで頭がおかしくなるんです!」

 

 彼女は発砲し地面に小さな亀裂を作った。

 

「先生、私には先生しかいない。先生を奪うような子は、みんな消えればいい……」

 

 彼女の言葉には、他者への攻撃性と狂気が混じっていた。先生はワカモの激しい感情を静かに見つめ、少し考え込むように目を閉じた。そして、再び目を開き、優しく説得を始めた。

 

「ワカモ、君が私をそんなに大事に思ってくれるのは、私にとって嬉しいことだよ。君が私を必要としてくれるなんて、教師として光栄だ」

 

 彼は微笑み、ワカモの怒りを和らげようとした。

 

「でも、彼女を消すことで君が安心できるなら、私が君に近づくのをやめればいいのかな? でも、それじゃ君がもっと寂しくなるんじゃないかと思うんだ」

 

 ワカモの手が一瞬震え、先生の言葉に戸惑った。

 

「先生が…近づくのをやめる? そんなの嫌です! 先生がいなくなったら、私、どうすればいいか分かりません」

 

 彼女は一歩踏み出し、先生のスーツの袖を掴んだ。

 

「先生、私から離れないで。私、先生がいないと生きていけないんです。この子が消えれば、先生は私だけでいいって分かるでしょ? 他の誰かじゃなくて、私だけで……」

 

 彼女の声が震え、執着が鋭く尖った。

 先生はワカモの手をそっと握り返し、穏やかに続けた。

 

「ワカモ、君がそんな気持ちでも、私は君を見捨てたりしないよ。君が私を独占したいって思うのは、君がすごく強い心を持ってるからだ。でも、君が他の子を傷つけるのは、君自身を傷つけることにならないかな?」

 

 彼の声は優しく、ワカモの攻撃的な衝動に寄り添いつつ、それを抑えようとするものだった。

 

「私が君のそばにいるから、彼女を許してあげられないか? 君の心がそんなに強いなら、私を信じてみてくれないか?」

 

 ワカモの瞳が一瞬曇り、爪を握る手が緩んだ。

 

「許す……でも、この子がまた先生に近づいたら、私、どうすればいいんでしょう。先生他の人に優しくしてるの見ると、私、心が燃えるみたいに熱くなって抑えられないんです」

 

 彼女は倒れた生徒を睨み、再び爪を振り上げた。

 

「先生、私を守るには、彼女を消すしかない……先生は私のものですから」

 

 彼女の声には、ヤンデレの危険な決意が込められていた。先生はワカモの手を強く握り、彼女の動きを止めた。そして、静かに、しかし力強く言った。

 

「ワカモ、君が私を守りたいって思う気持ちは分かるよ。でも、私を守るために他の子を傷つけるなら、私が君を守れなくなる。君がそんなことをしたら、君自身が苦しむことになるんだ。」

 

 彼の瞳が真剣にワカモを見つめ、共感と説得が交錯した。

 

 「私が君のそばにいるから、銃を下ろしてくれないだろうか? 君がそんなに強いなら、私を信じて、一緒に別の道を探そう」

 

 ワカモの銃が震え、地面に落ちた。彼女の瞳に涙が滲み、声が小さくなった。

 

「先生……私、信じたい。でも、怖いんです。先生が他の人に取られるのが…私、ひとりになるのが耐えられません」

 

 彼女は先生の胸に額を押し付け、震える声で続けた。

 

「先生、私を置いていかないでください。私、先生がいないと、何するかわからない」

 

 彼女の言葉には、攻撃的な衝動と依存が混じり、精神の脆さが覗いた。

 

 先生はワカモの頭をそっと撫で、優しく答えた。「置いていくなんてしないよ、ワカモ。君がそんな気持ちでも、私はここにいる。君が怖がる気持ち、僕に預けてくれないか? 私が君のそばにいるから、少しずつ安心していこう。一緒になら、君の心を静められるよ」

 

 彼の温もりが、ワカモの燃えるような感情に寄り添った。

 ワカモは涙を拭い、かすかに頷いた。

 

「先生が…そばにいてくれるなら、少しだけ……試してみます。でも、約束してください。私から離れないで、私以外見ないで」

  彼女の声にはまだ攻撃的な影が残りつつも、先生の言葉にすがる微かな希望が混じっていた。

 

「約束だ」

 

 先生は優しく微笑み、ワカモに安心を与えた。

 

「君が自分で立てるまで、そばにいる。君のペースでいいから、一緒に進もう」

 

 裏庭の夕陽が沈み、薄暗さが広がった。ワカモの特性は、他者への攻撃性として鋭く現れ、先生への歪んだ愛情が彼女を支配していた。

 

 先生の紳士的で共感的な説得が、彼女の銃を下ろさせ、燃える心を少しだけ静めた。だが、ワカモの瞳にはまだ不安と執着が宿り、完全に説得されたわけではなかった。それでも、先生の存在が、彼女の攻撃的な衝動を抑える一歩となった瞬間だった。

 

 




読了ありがとうございます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

七囚人『災厄の狐』(成り代わり転生者)(作者:百合って良いよねって思う)(原作:ブルーアーカイブ)

七囚人『災厄の狐』狐坂ワカモに成り代わったブルアカユーザーが、色々破壊しつつ頑張ってキヴォトスが滅ぶのを阻止する話。▼なお、若干二名ほどは彼女が先生であった時の記憶がある模様。▼一部、年齢や神秘などに関して独自設定・独自解釈があります。▼途中からガッツリ百合要素入って来る予定なので注意です。▼ほぼないも同然ですが性転換要素があります。▼また、「先生に惚れてな…


総合評価:8667/評価:8.82/連載:12話/更新日時:2026年05月16日(土) 12:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>