主人公はチート設定ではありません(作者が書けません)。
写輪眼は開眼しますが、万華鏡写輪眼は開眼しません。
努力型の主人公を書いていきたいと思います。
ご感想等お待ちしてます。
「…なぜです」
少年は、問いかける。
薄暗い闇の中、一族特有の紅い色だけが爛々と、あやしく輝く。
傍から見れば、少年の顔からは一切の表情が抜け落ち、声もまた、温度のないものだっただろう。
だが、彼を生まれた時から見守ってきた俺にとっては、その繕いは通じない。
少年のこころは、悲鳴をあげていた。
声なき悲鳴。
「なぜ、アナタは…」
再びの少年の問いに、俺はようやく口をひらく。
「なぜ?…お前な、俺を誰だと思ってるんだ。お前が、…いや、
なあ、イタチ。
「…
あえて言い直した後、少年―――いや、イタチの唇は、はっきり視認出来るほどに、わなわなと震えた。
俺は、出来うる限り、やさしく囁く。
これから先、地獄と言っては生ぬるすぎるであろう壮絶な道を行く若すぎる忍に、俺はあえて明るい口調で語りかける。
「お前は間違ってないよ。―――だからな、優先すべきことを間違えるな」
「………っ」
「それがお前の選んだ道だろう。だからこそ、ここに居るんだろう。―――なら、躊躇うな」
最後の言葉だけ、あえて力を込めて紡ぐ。
俺の言いたいことは、それだけだった。
全身から一切の力を抜き、立ち尽くすイタチを見上げる。
俺の言葉に、何かしら感じるものがあったのだろうか?
色のない表情に、微かに変化がやどる。
彼の手に握られる忍刀が、かちゃり、とどこが現実味を帯びない音を立てる。
次いで、音もなく間合いが詰められる。
だが、あえて俺は無防備なまま、うすく微笑む。
「…それでいい」
「………」
―――音もなく、そして視認できぬ速さで、刃が肌に食い込んだ。
イタチの正確な腕のおかげが、綺麗に俺の急所は貫通されていく。
そこに、恐怖は無い。
じわり、じわりと血のあとが広がっていくのが分かった。
おそらく背中の紋は、イタチの忍刀が貫いているだろう。
イタチが刀を引き抜くのと同時に、俺の上体はふらついた。
根性で身体が地に伏せるのを手で留め、俺は顔を上げぬまま、囁く。
いや、囁くつもりではなかったが、喉の奥に引っかかったような声しか出なかったと言うべきか。
知らず、息があがっていた。
「………行け。もう俺も保たん。―――早く、お前のやるべきことをやれ」
イタチの持つ血に濡れた刀が、霞み始めた視界でちらついた。
肩で息をし、瞬きをした後には、小さな影は消え失せていた。
俺は、ゆるりと頭をあげ、ふらつく体を引きずって壁際に移動する。
―――首だけ動かし、開いた障子から外を見ると、
「…ああ今夜は、満月か…」
もう殆ど力が入らない右手を、そっと持ち上げた。
届くはずもないそれに、だがあえて手を伸ばす。
「全く。…まさか、こんなに早くお前らに会いに行くことになっちまうとはな」
俺は、くくっと喉を鳴らして笑った。
「すまんな、オビト、シスイ。俺も、もうすぐ、そっちに行くみたいだ…」
先にあの世に旅立ってしまった若い忍達に向け、語りかける。
こうなったことに、後悔はない。
ただ、強いて言うならば。
「まあ叶うことなら、…もう少し……お前達兄弟の傍に、いてやりたかったなあ…」
限界を迎えた腕が、畳に落ちた。
瞳を閉じると、一気に視界が暗くなる。
―――この十六年。
―――あなたの子供達を見守り続けた。
―――あなたの息子達は、本当にすばらしい子達だ。
恐らくは、もう
―――俺はもう、ここまでだけれど。
―――あなたは、あの世で何て言うんだろうか。
きっとあのひとは、きゅっと眉を寄せて、うつくしい声で、早く来すぎだと俺を窘めるのだろう。
そう、あの日からもう、十六年も経ってしまったのだ。
まだ一族に暗雲が立ちこめてなかった頃。
俺が十六歳でまだ中忍だった頃から―――。