【書籍版1巻2/20発売】貞操逆転ハードモード異世界を鋼メンタル冒険者が生き抜く   作:風見ひなた(TS団大首領)

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第102話「鋼メンタルで無謀のツケを払い抜く」

「というわけで、精霊石掘りの見学に行こうと思うんだ!」

 

 僕の言葉を聞いた家族の反応は様々だった。

 

「わあ、面白そう! あたしも一緒に行く!」

 

「……やめといた方がいいんじゃねえか」

 

「ゴブリンは厄介だぞ?」

 

 アイリーンは諸手を上げて賛成する一方で、ウルスナとアミィさんは渋い顔をしている。

 

「でも、ドラゴンが守ってくれるなら安心じゃないの? いくらゴブリンが馬鹿でも、さすがにドラゴンに喧嘩を売るほど無謀じゃないでしょ」

 

 僕の疑問に、ウルスナは腕組みをしながら顎に細い指を置く。

 

「ゴブリンは蛮族ではあるが、小柄ですばしっこい上にずる賢いぞ。あまり舐めねえほうがいい。お前、ゴブリンに追われて逃げ惑ったことを忘れたのか?」

 

「うむ。衛兵隊もゴブリンには手を焼かされている」

 

 お嫁さんたちの意見が割れる一方で、ドラコはむふーと荒々しく鼻息を上げた。

 

「ふふん、先生の言う通りだ! ドライグならブレス一発吹き込んでやるだけでゴブリンなんてイチコロだよ! 人間の基準で考えないでよね!」

 

「そりゃ正面から戦ったらドラゴンが圧勝するに決まってるだろ。だが……」

 

「でしょ! そもそもドライグを見たらゴブリンなんて逃げ惑うしかないんだよ! ウルスナ先生だってドライグが数匹群れてるところに襲い掛かろうなんて考えないでしょ」

 

「そりゃそうだけども」

 

 ウルスナは何やら煮え切らない顔をしているが、ドラコの自信を打ち崩すほどの根拠もないようだ。

 

「……ドラゴンがゴブリンを退治しきれていないという時点で、向こうに力量差を覆すほどの有利な要素があるってことなんじゃねえか? どうも嫌な感じだ」

 

「ウルスナは心配性だなあ。ユージィのことはあたしが守ってあげるからね!」

 

「まあドラコの言う通り、ドラゴンの部隊を襲うことはないだろう。退治しきれていないというのも、すばしっこく逃げられているということなのではないか?」

 

 難しい顔をしていたウルスナだが、えっへんと薄い胸を反らすアイリーンと軍人のアミィさんの意見に、渋々と頷く。

 

「まあ……それもそうか。なあ、ユージーンはどうしても行きたいのか?」

 

「うん、見たい!」

 

 僕は力強く頷いた。

 だって吹雪の後ににょきにょき生えてくる石だよ?

 地球じゃ絶対見られないおファンタジー極まる現象だ、そりゃ気になるさ。

 

 というか、それ以上に今ストレスがたまりまくってヤバい。

 ひたすらカンヅメにされて自動車の絵を描かされ続ける生活に心が悲鳴を上げている。

 そしてオスドラゴンからの期待の眼差しのプレッシャーがすごい。【精神耐性】で他人からの精神的影響を受けづらくなってはいるけど、どうもこのスキルって自分の心の中から湧いてくる感情には効果が薄いみたいだ。彼らの期待に応えなければと思ってしまっているから、その反面でめちゃめちゃストレスを感じている。

 

 ぶっちゃけると今すっごく逃げたい。

 

 いやもちろんスケッチは描くよ? 最終的には描くけど、ちょっと気晴らしさせてほしい。

 締め切り寸前の作家が旅行に行きたがる気持ち、今なら理解できる……!

 

 僕の必死の気持ちが伝わったのか、ウルスナはしゃあねえなと疼いてくれた。

 

「夫がそこまで行きたいなら、叶えてやるのが嫁の甲斐性ってもんだな。いざとなれば俺が守ってやればいいだけのことだし」

 

「もー! ユージィはあたしが守るの!」

 

「はいはい」

 

 むくれるアイリーンの頭をポンポンと叩いて、ウルスナが苦笑を浮かべる。

 あれ? 今の僕ってハネムーン先の観光に文句をつけるわがままな新妻みたいに思われてる?

 ……まあいいか、要望が通るのなら願ったり叶ったりだ。

 

「決まりだな。デアボリカはどうする? 私たちについてくるか?」

 

「はぁ? なんで私がそんな一銭にもならんことに付き合わなくちゃいけないんです?」

 

 アミィさんに水を向けられたデアボリカは、へっと小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。

 何こいつ、腹立つわぁ。僕は別に来てほしくもないし、家族だとも思ってないんだけど。

 折角気を利かせて誘ってくれたアミィさんの好意を鼻で笑われたことにもイラッとするね。

 

「そんなことより商談ですよ! こっちは全然売れなくて困ってるんです! くそっ、ケチくさいドラゴンどもめ! どうしてサウザンドリーブズの毛皮を買わない!?」

 

「売れるわけあるか、羊毛の産地だぞここ」

 

 銭ゲバ剥き出しのデアボリカに、ウルスナが呆れた目を向けた。

 

 この里って高原の地形を生かして山羊や羊を飼育してるんだよね。

 一方、サウザンドリーブズの特産品は大角ウサギの毛皮。そりゃ需要がないよ。一応毛を採る以外にも、皮の丈夫さを活かしてレザーアーマーの素材に加工できたりもするんだけど、ドラゴンにそんなもの必要ないし。

 他にもサウザンドリーブズではワインなんかも作ってはいるんだけど、これもドラゴンには度数が弱すぎると不評だ。

 

 要するにこの里との商売で儲けようというデアボリカの目論見は、完全に当てが外れていた。どうせこいつのことだから、田舎者のドラゴンに高値で特産品を売りつけてぼったくろうなんて思っていたんだろうけど。

 

 そもそもドラゴンはあちこちに飛んで貿易できるんだから、サウザンドリーブズみたいなどこにでもある田舎の街と商売する理由がないんだよね。原料の大角ウサギだって近所の草原に勝手に棲みついてるのを狩ってるだけでしょ。品質も大したことないよ、狩ってた僕が言うから間違いない。

 

 もっともこの里の近隣にはウサギがいないようだから、その点についての目論見は正しいんだけど。山に囲まれた高原なので、ウサギは入ってこれないみたいだ。

 正直この世界に来て初めて青々とした草原なんてものを見たよ。大体の平地ではウサギが大繁殖して食害を受けてるからね。

 まあつまり、大角ウサギの毛皮なんてこのブリシャブ島では至極ありふれたものだってことだ。他の街でも容易く手に入るんだから、わざわざサウザンドリーブズと取引する理由がない。

 

「ぐぬぬ……。こうなれば“特典”をつけるしかないな……!」

 

 僕の方をチラチラ見ながらそんな独り言を呟くデアボリカ。

 なんだろう、背筋をゾワッと悪寒が走った。

 

「もしかして僕のスケッチをネタに取引契約を結ぼうとしてるんじゃないだろうなお前。言っておくけど、これは僕からドラゴンへの完全な好意だよ。他人の贈り物へ勝手に値段をつけないでくれる?」

 

「おい、銭ゲバ。俺の夫を勝手に金儲けのネタにしようなんてしたらブチ殺すからな」

 

 僕とウルスナの指摘が図星だったのか、デアボリカはギクウッ!と肩を震わせた。

 

「な、な、なんだよっ! 別にいいだろ! 私はこいつの義理の妹だぞ! こいつの作るものは私にも権利がある!」

 

「ねえよ。なんで妹に兄貴のものを好きにする権利があるんだよ」

 

「うるさいなっ、平民め! 貴族のやることに口を出すな、何様のつもりだ!」

 

「奥様だが? 妻には夫のポケットに手を突っ込む他人をぶん殴る権利があるよな」

 

「ウギイーーーーーッ!」

 

 平民だと思っているウルスナには強気に噛みつくデアボリカだが、あっさり口げんかに負けてキャインキャインと尻尾を巻いた。弱すぎるだろ、よくそれで策士ヅラできたな。

 

「ア、アミィ姉様っ! この平民生意気ですよっ! 叱ってください!」

 

 そして次にとる手段が身内への泣きつき……。アミィさんの誘いを鼻で笑った直後に、よくこんな態度取れるなこいつ。ツラの皮がジェラルミンでできていらっしゃる?

 

「いや……私もお前にはユウジを好きにする権利はないと思うのだが」

 

「アミィ姉様まで!? くうっ、この悪男! 不埒な悪男め! お前が来るまではアミィ姉様はいつだって私の味方をしてくれたのに! どんな手段でアミィ姉様を誑かした! どうせそのスケベな体でアミィ姉様の心の隙に取り入ったんだろう!」

 

「そいついい加減ぶん殴れよアミィ」

 

「こんな邪悪な人から妹離れできたんだから、やっぱりユージィは聖者なんだね」

 

「お前見てるとドライグが人間より高尚な生き物だと勘違いしそうになるから、視界から消えてくれない?」

 

「ちくしょー! 味方がいない! いい気になるなよバーカ!」

 

 ウルスナとアイリーンとドラコに心底白い目で見られたデアボリカは、みっともなさすぎる捨て台詞を吐いて逃げ出した。

 まあこんな奴どうでもいいんだけど、アミィさんはどうして冷や汗をかきながら明後日の方向を見てるんだろうか。たまにはガツンと言ってやった方がいいと思うんだけどなあ。

 

 

≪説明しよう!

 そもそもの馴れ初めは門番してたらドスケベボディの薄着の女が「ここを通してくれたらいいことしてあ・げ・る♥」と胸チラしてきた(貞操逆転アミィ主観)ことなので、デアボリカの指摘は決して的外れではないのだ! 嫌なところで姉への理解度を見せる妹だなお前!≫

 

 

 

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「おおー……! これが氷の精霊石か……!」

 

 ゴンドラから身を乗り出した僕は、眼下に広がる光景に歓声を上げた。

 

 地面からにょきにょき生えてくるというからどんなもんかと思ったが、実際目の当たりにすると想像を絶している。

 雪山の頂上付近に巨大な穴が開いており、そこから内部の空洞へと空から侵入できたのだが、それがとんでもなく広い。

 そして地面どころか天井や壁、いたるところから蒼白く輝く結晶が隆起し、ぎっしりと空間を埋めているのだ。そのサイズも様々で、中には1本のサイズが10メートルほどあるものも混じっている。人間が立って乗れるね。

 

「ユウジ、あまり身を乗り出したら危ないぞ」

 

「うん、わかってるけど!」

 

 アミィさんに生返事を返しながら、僕は興味津々で目の前の幻想的な光景に見入った。

 

 いや、そりゃ興奮するでしょ!

 まさに最終幻想なRPGに出てくるクリスタルの洞窟って感じだよ。

 メキシコかどこかの国にある石膏の結晶でできた巨大な洞窟の写真が出回ってたけど、まさしくあんな感じ。ただしあちらは白い柱だけど、こっちは蒼白く光っていてより「本物っぽい」感じがある。

 

 一度でいいから訪れてみたいなあという光景が、今まさに目の前に広がっているのだ。

 

「ねえ、もうちょっと近くで見られない?」

 

「凍死したくなかったらこの距離で満足しておくがいい」

 

 ゴンドラを持ち上げているメスドラゴンにオーダーするも、すげなく断られてしまった。

 ちぇっ。

 

 この氷の精霊石で埋め尽くされた結晶洞窟、そりゃもう気温が低いらしい。

 雪山自体が寒い環境なのもあるが、氷の精霊石自体が冷気を放っているのだ。ドラゴン曰く、「冷たい」という概念そのものが結晶化したもの……らしい。

 

 精霊石は知的生命体に観測されることで概念を放出するのだ。直接その目で見る必要はなく、その存在を認識されることで効果を発動する。

 氷の精霊石の場合は冷気を放出する。そのサイズによって放出される冷気は異なるそうで、ここまでの巨大なサイズだと大空洞の中はしばらくいると肺から出血するほどの冷気に満たされているらしい。

 

 ドラゴンはこの結晶柱を鋭い爪と強靭な握力で折り取る。それが「精霊石堀り」だ。

 当然ドラゴンにとってもこの寒さは致命的だが、精霊魔法で気温差を遮断するバリアーをはって、魔法が切れないうちに急いで作業をする。

 なるほど、危険って言われるわけだよ。寒さだけでなく、ちょっと力加減を間違えたら崩落の危険だってあるわけだし。

 

 僕は防寒具に身を包んだ上に、ドラコに精霊魔法をかけてもらっているけど、それでもまだ寒い。ちなみにドラコは人間体でゴンドラに乗っているよ。

 ドラコが持ち上げないの?って聞いたら、「ボクを便利な乗り物扱いするな! 言っておくけど、先生を里まで運んできたのは特別だぞ! 本来ボクはお世話される立場なんだからな!」って怒られてしまった。そりゃそうか、王子様だもんな。

 

 ちなみにアミィさんも今はホウキではなくゴンドラに同乗して、身を乗り出す僕を心配そうな目で見ている。

 アイリーンはこわごわと、ウルスナは興味深そうにこの風景を眺めているね。

 

 うーむ、しかし興奮するなあ。こんなファンタジード直球な光景は反則でしょ。

 今までこの世界で見た中で一番ファンタジーしてる! いや、中学生男子のように性に飢えた女性しかいない光景もファンタジーではあったが、それとは別の意味で!

 

 もう胸のワクワク感が抑えられないよ!

 ずっとこういう景色に憧れてたんだ! 血がめっちゃ沸き立ってる! この興奮の前ではちょっとくらいの寒さも消し飛んじゃうね。

 

「ねえ、やっぱりもうちょっと寄れない? 寒くてもいいんで! 凍死しないギリギリのラインで!」

 

「ええ……何この人間」

 

 メスドラゴンには露骨にドン引かれてしまったが、「先生の言う通りにしてやってくれ」とドラコが命令すると素直に言うことを聞いた。

 

 どうやら天井付近の柱くらいまでなら近寄っても大丈夫ということで、ドラゴンが徐々にホバリングして高度を下げていく。ちなみに飛行魔法だから別に翼は羽ばたかせなくてもいいらしいんだけど、魔法って明確なイメージがあった方が発動しやすいから翼を動かすんだって。これ豆な。

 

 おお……! 結晶が間近に見える……!

 これ触れてもいいやつ? さすがにダメかな?

 

 僕がゴンドラから身を乗り出して結晶柱を間近で見ようとした、そのとき……。

 

 ヒュンッ!と鋭く空気を切り裂くような音がした。

 

「なっ……!?」

 

 ゴンドラを支えているメスドラゴンが声を上げる。

 え、何? どうしたの?

 

「敵襲だ! 伏せろ!」

 

 咄嗟に近くにいたドラコの頭を床に押し付けながら、ウルスナが叫ぶ。

 唖然としながらも見上げれば、ドラゴンの翼や足にロープのついた鋭い銛が何本も撃ち込まれていた。

 そのロープは周囲の精霊石の柱から伸びているようで、暗い中で目を凝らせば精霊石自体が放つ光に照らされて、小さな人影が数人がかりでロープを掴んでいるのが見える。

 

 ……え?

 まさか、ゴブリン?

 嘘だろ、あの柱どう見たって十メートル超えてるぞ! あの柱をよじ登って身を潜めてたのか!?

 どういう姿をしているのかまではよく見えないけど、待ち伏せして集団で狩りをするような知能があるモンスターなのか!?

 

「ユージィ、戻って! 危ないよ!」

 

 アイリーンの手で、半身を乗り出していた僕はずるずるとゴンドラの中へと引き戻される。

 と、そのとき……。

 

「があああああ痛ええっ! ふざけるなよ地虫が、高貴なドライグに舐めた真似を……! 『ひれ伏せ、チビが!』」

 

 ゴンドラを持つメスドラゴンが悲鳴を上げ、怒りに満ちた咆哮をあげる。

 その“力ある言葉”に、ロープを手にした人影がびくりと体を跳ねさせて力を弱めるのが見えた。何人かはそのままへなへなと力を失い、柱の上にへたり込む。

 だが、その咆哮に反応してしまったのはゴブリンたちだけではない。

 

「あ……あ……!」

 

 僕の胴体を掴んでいたアイリーンの腕から、一気に力が抜けていく。

 まずい、アイリーンにも効いてしまっている……! チビって言葉に反応したのか!?

 

 真っ青な顔でぶるぶると身を震わせながらも、それでもアイリーンは僕から手を離さない。ありがたい……!

 ここまで体勢を持ち直していれば、後は自力でゴンドラの中に戻れる。

 そう思ったとき、

 

「この業火で骨も残さず焼き焦げるがいい、ゴブリンども!」

 

 怒りに支配されたメスドラゴンが口の中に赤い光を集中させる。

 

「ば……馬鹿者! こんな狭いところでブレスなんて……!」

 

 制止するドラコの声。

 それを無視して放たれるドラゴンのレーザーブレス。

 

 横薙ぎに放たれた赤い光は柱をまとめて焼き切り、ガラガラと音を立てて崩壊していく。

 ブレスの光に照らされて、黒い人影が動けない仲間を抱え、大慌てで逃げ出していくのが見えた。

 だが、それだけではすまなかった。

 天井から突き出た柱だって、ただ伸びているだけで別に固定されているわけじゃない。巨大な柱がまとめて崩れ落ちる衝撃で、大空洞は激しく揺れ、天井から何本もの柱がガラガラと崩落する。

 そのうちの一本がメスドラゴンの体に直撃した。

 

「ぐあっ……!?」

 

 体勢を大きく崩したドラゴンが、ゴンドラを揺らす。幸いゴンドラの取っ手から手を放しはしなかったが、まるで天地が反転したかと錯覚するくらいには傾きは大きかった。

 

「まずい、どこかに掴まれ! 落ちるぞ!」

 

 ウルスナの悲鳴交じりの号令を受け、僕は慌ててゴンドラのへりにしがみついた。

 

「あ……」

 

 その横を通り過ぎるように。

 ドラゴンの咆哮を受けて脱力していたアイリーンの小さな体が、何にも掴まることもなくゴンドラから投げ出されていく。

 一瞬、彼女と視線が合った。助けて、とその瞳が言っていた。

 

 その瞬間、僕の体は反射的に動いていた。

 アイリーンの方へとジャンプし、空中で彼女の体を抱きとめる。

 

「ユウジ!」

 

 僕たちの方へと身を乗り出して手を伸ばすアミィさんの腕の中へ、アイリーンを投げた。

 咄嗟によく体が動いてくれたものだ。体を鍛えていてよかった。僕はこのときほど自分を誇らしいと思ったことはない。冒険者やっててよかったよ。

 

「この子たちをよろしくね、アミィさん」

 

 アイリーンを抱きとめたアミィさんが、空いた腕でなおも僕へと手を伸ばす。

 しかしゴンドラが大きく揺れ、慌ててへりにしがみついた。

 

 空中へと投げ出された僕の体は重力に引かれ、みるみるうちにゴンドラが小さく遠ざかっていく。

 

「ユウジーーーーーーーッ!!」

 

 そんなに声を涸らして叫ばなくても大丈夫だよ、アミィさん。

 まあ……なんとかなるさ。僕一人ならね。だって僕には【エクステンドライフ】がある。

 とっててよかった第二の命。

 チートスキルで僕は一度だけは死ねる。こうして墜落死しても大丈夫。

 命なんて安いものさ、特に僕のはな。少なくともアイリーンと我が子の2人分よりは断然安いと言い切れる。

 

 そんな余裕をぶっこいていた僕は、追いかけるように頭上から降ってくる巨大な結晶柱に言葉を失った。

 おっと、それは話が違ってくるぞ?

 

 

 巨大な結晶柱の崩落に巻き込まれ、僕は死んだ。




書籍の発売日が決まった日にする話か、これが……?(白目)

というわけで書籍1巻の発売日が2026年2月20日に決まりました!
GC文庫様より発売、イラストレーターはトコビ先生です!
一部で予約も始まってるようなので、ぜひよろしくお願いします!

あ、雄士は無事です。
前話のラスト変わってるので、前回投稿直後に読まれた方はそちらもよろしくお願いします!
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