【書籍版1巻2/20発売】貞操逆転ハードモード異世界を鋼メンタル冒険者が生き抜く   作:風見ひなた(TS団大首領)

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第107話「聞こえますか……我は今貴方の脳に直接語り掛けて……爆発したぁ!?」

「地虫どもがあああアアッ! わざわざ潰すまでもないと情けをかけてやったのが仇となったわ!」

 

 雄士死すとの訃報を聞いた黒王の憤激は、二夜をまたいでも未だ収まることを知らなかった。

 全身から漏れ出る竜気が漆黒の雷球を形作り、彼の黒い髪や長く伸ばした髭を逆立てる。

 まさに逆鱗に触れたとはこのこと。普段は温厚で、そのために苦労ばかりを背負い込んでいる黒王は、スノーゴブリンたちへの殺意を露わにしていた。

 

 その怒りの凄まじさに、会議室に詰めた配下のメスドラゴンたちは言葉もない。皆が皆、黒王と目を合わせないように顔を伏せている。

 

「黒王様、反乱軍に与していなかったドライグへの招集はじきに完了します。新大陸やインディスパイスまで交易に出ていた者も、合流するでしょう。……本当にやるのですね?」

 

「無論だ。出撃可能な者はすべて駆り出し、ブレスの一斉射をもって山ごと焼き討ちにせよ! 一匹たりとも逃すな、確実に根絶やしにするのだ!」

 

 山中に複雑な巣穴を張り巡らせ、ゲリラ戦を得意とするスノーゴブリンたち。

 ドラゴンのブレスを横穴に逃げることで回避する彼女たちだが、ドラゴン側にはその戦術を潰す策があった。

 100匹を超えるドラゴンブレスの一斉放射により、山ごと熱するのだ。そうすればスノーゴブリンたちは巣穴の中で一人残らず蒸し焼きになるだろう。

 

 これまでドラゴンたちがそうしなかったのは、そこまでする理由がなかったから。大量のドラゴンを動員してまでゴブリンを排除することにコストが見合っていなかったのだ。

 ドラゴン側もゴブリンが精霊石を生活に利用していることは把握していたが、これまで採取の邪魔をしてくるくらいで、小競り合い程度で収まっていたのだ。

 

 それに、山を火の海にするまで環境を変えてしまうと、もはや氷の精霊石があの山にできることはなくなる。焦土となればまだマシで、火の精霊魔法が山の根っこにまで火を点けて、火山化してしまう可能性すらあった。

 

 だが、それでも。

 

「氷の精霊石が採れるのはあの山だけではない、構わん! 汚らわしい地虫どもに誰を手に掛けたか思い知らせてやれ! 先生は我らドライグの希望だったのだ! せっかく見出した希望を目の前で奪い去られた我々の無念を……否! 我が友を殺した報いを受けさせてくれる!」

 

「……はっ」

 

 腹心のメスドラゴンは、もはや何も言葉を重ねることはなかった。

 温厚さと知性を併せ持った彼女たちのリーダーは、今怒りに呑まれて我を失っている。

 だが復讐を果たすことでしかその怒りが収まらないのであれば、自分がすべきことは彼を止めることではない。自分もまた復讐の刃を振りかざし、その先兵となろう。

 

 明朝、まだ日が昇る前に100匹以上のドラゴンは出撃し、山ごとゴブリンを族滅する。

 仮に抜け穴を通じて脱出しようとも、ドラゴンたちは空から執念深く山を監視し、ただの1匹も残さず完全に殺し尽くすだろう。

 

「父上」

 

 ドラコはそんな残忍な作戦を立てた父親の前に立つと、胸に手を当てながら口を開いた。

 

「どうかボクも連れて行ってください。自分の手でゴブリンどもに引導を渡したいんです。目の前で先生を奪われた無念を晴らさせてください」

 

 その赤い瞳には憎悪の光が灯っていた。

 まだ10歳の子供に過ぎない彼の表情は、一気に大人びたように見える。敬愛する師の喪失とゴブリンへの憎悪によって成長がもたらされていた。当の師である雄士は決して望まない方向への成長であっただろうが。

 

「うむ、よく言った我が息子よ。吾輩も同じ気持ちだ。共にあの地虫どもを根絶やしにし、あの山を我らが友ユウジの墓標にせん!」

 

「はい! 必ずこの手で先生の仇を討ちます!」

 

 そう父親に誓う王子を見たメスドラゴンたちは、心の中でそれでこそ次期族長だと頷いた。大臣派に甘やかされ、人間狩りなどに現を抜かす彼の軟弱ぶりに、内心でその器を疑問視する者も多かったのだ。

 しかし復讐を自らの手で果たそうという気概は、まさしくドライグの気性にふさわしい。

 舐められたら殺す! それこそが強者を尊ぶドライグ精神の根本なのだから。

 

 そうして頼もしげにドラコを眺めて頷くドラゴンたちは、会議室の隅からそっと誰かが立ち去ることに気付かなかった。

 

 

 

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「どうだった?」

 

「……作戦は実行秒読みだ。明日の朝には決行されるらしい」

 

「そうか……」

 

 アミィはウルスナが覗き見した会議室の様子を聞き、溜息を吐いた。

 

「ユウジがいなくなったら途端に世界が血生臭くなった気がする。ほんの2日前までカーオナニーだのエロマンCar先生だの浮かれてバカやってたのが別の世界の出来事のようだ」

 

「いや、それは違うだろ」

 

 ウルスナは首を横に振る。

 

「元々世界はこうだったんだ。どこに行っても流血と争いだらけの残酷で無慈悲な世界が、俺たちの当たり前なんだ。それがユージーンの周りだけ不思議とおちゃらけてて、あまりにバカバカしくて、とんでもなく楽しくて。誰もが思わず毒気を抜かれちまったんだ」

 

「そうか……そうだな。この世界の人類なら誰もが纏っている闘争の臭いが、彼からは一切しなかった。そばにいるととても安らげて、思わず優しい気分になる。まるで別の世界から来たような、そんな不思議な人だった。失うにはあまりにも惜しい男性だったな」

 

「……ああ」

 

 ぎくりとしながらも、ウルスナはアミィの言葉に頷く。

 もっとも、それもどうでもいいことだが。ユージーンは、彼女の夫は死んでしまった。

 ゴンドラから落ちた雄士が地面に叩きつけられ、血の華を咲かせるのをウルスナはその瞳で見た。今更彼の出自など何になろう。

 

 ウルスナは客間の奥の扉に視線を送る。

 

「……アイリーンは?」

 

「泣き疲れて寝てしまったよ。この2日間、ずっと泣き通しだ。食事もロクにとってなかったからな……」

 

「何か無理矢理にでも食わせるか? 腹の子にも障るだろう」

 

「いや……寝かせてやろう。ようやく眠れたんだ。正直、私もできるならそうしたい。……夫のために泣いてやれない自分を、ひどく冷たい女だと心の中の私が責めているんだ」

 

 自嘲の笑みを浮かべるアミィに、ウルスナは眉根を寄せた。

 

「それは……軍人なら仕方がないことだろ。身に沁みついた習性ってやつだ。指揮官なら誰でも、感情から切り離されたもう一人の自分が心の中にいる。ひどく冷たくて憎たらしい奴だが、だけどそいつのおかげで今も生きていられる。そうだろう」

 

「……お前がいてくれてよかった、ウルスナ。自分を殺してやりたいくらい憎まずに済む」

 

 アミィは弱弱しい笑みを浮かべた。その顔を見ていられず、ウルスナは目を背ける。

 その背中に、アミィが問いかけた。

 

「これからどうする?」

 

 今後の身の振り方をどうするのか、ということだ。

 雄士という夫が失われた以上、この一家は崩壊する。この世界の家庭は共通の夫という一点で結束しており、夫に先立たれた妻たちは離散して新しい生活を始めるのが常だった。ましてやアミィはまだ夫と肉体関係を持ってすらいないのだ。

 

 一方で、ウルスナとアイリーンの腹には雄士の忘れ形見がいる。雄士の言葉が正しければだが、その点は疑っていない。だからウルスナは、

 

「アイリーンと暮らすよ。あいつが妙なことを考えないように、俺が近くで見ていてやらないとな。仮にも妹と認めた仲だし、放っておけねえよ」

 

「そうか……」

 

 アミィは頷くと、わずかに顔を上げた。

 

「なあ、私もそこに置いてくれないか」

 

「……でも、お前の器量なら別の男だって……」

 

「今度こそ守らせてほしいんだ。お前たちを……ユウジの子を。守ることが私の人生に意味を与えてくれる」

 

「……どういうことだ?」

 

 疑問をぶつけるウルスナに、アミィは力のない微笑みを返した。

 

「私はな、人生に目標がないんだ。子供の頃は学者になりたかった。だけど母に衛兵になれと命じられてその夢を捨てた。それ以来、何かを成したいと思えなくなった。自分の人生に意味を見出せないんだ。

 

 だけど、誰かを守るとき……夢とか目標とか希望とか、そんな輝かしく大切なものを持っている他人を背中に庇っているとき、こんな自分でもその手助けができていると感じられる。自分に意味を見出せる。それが嬉しかった。

 

 ソロ冒険者のユウジは私が守るべき者だった。それがお前たちと結婚して、守るべきものが増えた。ユウジは去ったが、その忘れ形見はここに残っている」

 

「……」

 

「私にとって、自分の血を引く子供を残すことよりも、愛する人の子供を守ることの方が意味があることだ。

 

 ユウジを抱かなかったのもそれが理由だよ。お前たちが臨月を迎えたときにもし何らかの危機が迫っていて、私まで身重だと守れなくなってしまう。だから私はお前たちが出産するまで、自分は孕まないようにしようと思っていた。……まさか孕む可能性が完全に失われるとは思っていなかったがな」

 

「……そんなことを考えていたのか」

 

 ウルスナの言葉に、アミィは自嘲の笑みを浮かべた。

 

「馬鹿な女だろう。……ユウジを守れなかった奴が今更何を大言壮語するのかと思われても仕方がない。だが、それでも私はユウジの遺児を……」

 

「もういい。何も言わなくていい」

 

 ウルスナはぎゅっと唇を噛み締めると、正面からアミィを抱き寄せた。

 その柔らかな感触に、アミィは言葉を失う。

 そんなアミィの肩にぽたりと滴が落ちた。

 

「アンタは俺たちの姉様だ。アンタの好きなだけ、そばにいていい。いつかアンタが自分から新しい人生を踏み出す日まで、俺たちは共通の夫を持つ姉妹だ」

 

「……ありがとう」

 

 しばらく抱き合っていた二人は、やがてどちらからともなく身を離す。

 女同士で抱き合うなんて普段なら姉妹でも嫌がる行動だが、なぜか今は顔が熱かった。

 

「……とりあえず、ドラゴンたちの作戦に俺も同行させてもらおうかと思ってるんだ」

 

「そうだな。私も正直ゴブリンは許せない。私たちの夫を殺した罪を償わせよう。奴らが裁かれないのであれば、この世に正義などない」

 

「ああ! 俺も奴らの巣にとっておきの魔術をぶち込んでやらないと気が済まねえ!」

 

 ウルスナとアミィは頷き合い、ゴブリンへの復讐心を露わにする。

 

「アイリーンが起きたら、あいつにも話してやらねえとな。多分あいつもついてくるだろ」

 

「ああ。明日の朝日を拝ませることなく、ゴブリンたちを地獄に送ってやる……!」

 

 

 

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 気づけばアイリーンは、とてもふわふわした場所にいた。

 足元は柔らかな雲に包まれ、ピンク色の空はなんだかとっても明るくてぽかぽかしている。天国というものがあるなら、こういう場所に違いない。そう思わせる光景だった。

 

「あれ? ここどこ?」

 

『ここは我の暮らす領域……主人(ごす)に愛された獣が死後に行く空間である』

 

「ふぇ? うわぁあ!」

 

 アイリーンは飛び上がって驚いた。突然目の前に巨大な獣がいることに気が付いたのだ。

 実はアイリーンが気付かなかっただけでずっと前から目の前にいたのかもしれないが、こんな巨大な獣がまったく目に入らないなんてことがあるだろうか。

 シルエットからはおそらく狼だと思われるが、獣の全身が神々しい光に包まれており、その姿をはっきりととらえることはできない。ただ、それが人智が及ぶ領域の存在ではないことは明らかだった。

 

「あ、あなたは……?」

 

 恐る恐る問うアイリーンに、獣は重々しく頷いた。

 

『我はわんこ仙人。人でありながらわんこの心を持つ娘よ。お前に託宣を授けるべくここに呼び寄せたのだ……』

 

「わんこ仙人!? 獣なの!? 人なの!? どっち!?」

 

『うるさいな、お前たち唯一神ってやつの信徒なんだろ! 神って名乗ったらややこしいことになりそうだから仙人って言ったんだよ! ぼくはかしこいわんこなんだ!』

 

「あ、はい……。ええと、神獣様ってことでいいの?」

 

『そう呼びたければ呼ぶがいい』

 

 わんこ仙人改め神獣様は、再び威厳たっぷりに頷いた。もう手遅れだろ。

 

「それで、あたしに何の用? 悪いけど、あたしは今すごく落ち込んでるの。ちょっと人の話を聞ける状態じゃないかな……用があるなら、他の人に言ってくれる?」

 

 どんよりと表情を曇らせて目を逸らすアイリーン。

 神獣様はそんな絶望の淵にある彼女に語り掛ける。

 

『お前を呼んだのはまさにそのこと。よいか、ごす……じゃなくてお前の夫、男島雄士は生きておる』

 

「えっ!?」

 

 アイリーンは瞳を見開き、神獣様に向き直る。

 だが、すぐにはは……と自嘲するような笑みを浮かべた。

 思い出してしまったのだ。彼女の身代わりとなった夫が、地面に叩きつけられた瞬間をその目で見てしまったことを。あれが死んでいないわけがない。

 

「あはは……あたし、バカだ。あれが夢ならいいのにと思って、ずーっと泣いてて、こんな都合のいい夢まで見て……。何考えてるんだろ……」

 

『夢ではないぞ。いや、まあお前の夢と接続しているから、夢っちゃ夢なのだが。どれ、そこまで疑うのなら今のごす……お前の夫が何をしているのか見せてやろう』

 

「え、そんなことできるの?」

 

『フフフ、千里眼を会得した我に見通せぬことなどない。さあ、この鏡を覗き込むがいい』

 

「うん!」

 

 アイリーンは神獣様が浮かべた鏡を興味津々に覗き込む。素直な子だった。

 そして何も映ってない鏡に、じわじわと像が浮かび始める……。

 

 

 

「きゃーーーっ♥♥♥ ロックスター素敵ーーーーーっ♥♥♥」

 

「ロックスター、あーんして♥ この魔猪(マッチョ)、あたしが狩ったんだよ。すごいでしょー♥」

 

「ロックスターの歌は沁みるでぇ……」

 

「ロックスター、一緒にお絵かきして遊ぼー♥」

 

「ロックスターはウチに歌を教えてくれるって約束したもん!」

 

「はいはい、喧嘩しないで。順番だよ、順番」

 

『はーい♥♥♥』

 

「ロックスターだーい好き! ずっとここにいてね♥♥♥」

 

 

 

 ボンッ!!!

 

『ひいっ!?』

 

 アイリーンの頭から何かが爆発するような音がして、神獣様は思わず腰を浮かせた。

 

 最初は映し出されたステージの上で熱唱する雄士の姿に瞳を輝かせていたアイリーンだが、やがて場面が移り変わるたびに様子がおかしくなった。

 

 雄士が膝の上に座ったゴブリン(褐色ロリ)に肉串を食べさせられたり、左右から抱き着いたゴブリンから一緒に遊ぼうとねだられたり、きゃっきゃと順番待ちのゴブリンが列を作っていたりするのを見るたびにアイリーンから表情が失われ、今はどろりとした闇のような瞳の色をしている。

 

「ふぅーん。あたしたちが心配してる間、ゴブリンと楽しそうにしてたんだ。あたしより小さい子と遊んでたんだ。あたしより無邪気な子と一緒だったんだ」

 

『お、おい……?』

 

「あたしの方が小さくて可愛くて素直だよねえっ!!」

 

『ヒッ!?』

 

 

≪説明しよう!

 アイリーンは一家の妹キャラであることに居場所を見出しているので、他のロリキャラに対して強い敵意をむき出しにするのだ! 幼形成熟(ネオテニー)してロリキャラで成長が止まる種族なんて……ずるいよねえ! 許せないよねえ!!≫

 

 

「ね、この鏡って他のものも映せるの? さっき見通せないものはないって言ったよね?」

 

 無表情のままコンコンと逆手で鏡の端っこを叩くアイリーンに、話の手綱を取られた神獣様は不服そうな表情を浮かべた。

 

『それはそうだが……今のはお前の夫の無事を教えるために特別に使ったもので』

 

「こいつらの暮らしてる巣穴の構造を映して。警備の手薄なルートは? こいつらも把握してない入口とかないの? この際ごみの排出孔とかでもいいよ」

 

『いや、だからそう軽々に使っていいものでは』

 

 ダンッ!

 アイリーンが無言で脚を地面に叩き付ける音に、神獣様はビクッと身を震わせた。

 

「貴方もユージィを助けたいんだよね? そのためにあたしを呼んだんだよね? じゃあ早くして」

 

『くぅーん……』

 

 その日、ペロは思い出した……!

 前世で飼われていた家では女性が支配していた恐怖を……!

 普段は大きな顔をしていたジジイが、最終的に婆さんにシメられていた屈辱を……!

 

 所詮男島家のオスなど、腰を振ってるとき以外メスに優位を取れない哀れな生き物なのである。

 その家風に従って、ペロは尻尾を巻き巻きアイリーンの言う通りにした。

 

 

「よしっ、こんなもんでいいかな」

 

 ほどなくして、アイリーンはゴブリンの巣穴の構造を頭に叩き込んでいた。

 忘れないうちにこの情報を持ち帰らなくちゃ……!

 

 踵を返そうとしたアイリーンは、ふと思い出したように神獣様を見上げた。

 神獣様は神通力使いすぎてぜぇぜぇと荒い息を吐いているが。

 

「ところで、なんであたしに声をかけたの? ウルスナやアミィさんの方が頭良さそうだし、マップ覚えるのも得意そうだけど」

 

『託宣にも相性というものがあるのだ。我が声は、我が巫女にしか届かぬ』

 

「えっと、あたしが貴方の巫女ってこと? そんなものになった覚えは……」

 

 そこまで言って、アイリーンは神獣様の視線が自分に向けられていないことに気付いた。

 その穏やかで柔らかい視線は、アイリーンの下腹部に……まだ膨らんでいない腹に向けられている。

 

「え……」

 

『交神終了。さらばだ』

 

 ぶつん、という音と共にアイリーンの視界は暗転した。

 

 

 

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「その作戦、待ったーーーーーーっ!」

 

 ばぁんと会議室のドアを開けて入ってきた闖入者に、ドラゴンたちは目を丸くする。

 その小さな人影が雄士の妻のひとりであることに気付き、黒王はホッと安堵の息を吐いた。

 何やら金髪の妻が止めようと羽交い絞めにしているのを無理矢理引きずっている。

 

「ああ、君か……悪いが今は作戦会議も大詰めでな。ユウジ君の弔い合戦には君らも連れて行ってあげるから、今は退出してもらえるかね?」

 

「その作戦、待ったです! あたしの夫……ユージィは生きています!」

 

「……は?」

 

「なので! これからあたしたちが実行するのは、ゴブリン殲滅作戦ではなく、ユージィ救出作戦に変更です!!」

 

「…………は!?」

 

 黒王やドラコが瞳を見開く中、アイリーンは自信たっぷりに言い放ったのだった。




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【挿絵表示】


ウルスナとアイリーンの表情がめっちゃ可愛いですね。
ウルスナのおっぱいの方が目に入る? せやな!
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