【書籍版1巻2/20発売】貞操逆転ハードモード異世界を鋼メンタル冒険者が生き抜く   作:風見ひなた(TS団大首領)

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なんか息抜きのつもりの幕間だったのに、書いてたら楽しくなっていつも通りに長くなっちゃった。


第120話「幕間:その後のスノーゴブリンちゃん(後)」

 スノーゴブリンが住まう雪山は、“魔の山”と呼ばれ恐れられる魔境である。

 この地の山頂では氷の精霊石という非常に希少な資源が採取できるが、その中心部は極寒の環境であり、何の対策もなければ瞬く間に肺が凍傷でズタズタになり、呼吸困難により死に至る。

 

 さらには精霊石が発生するほどの魔素にひかれてか、魔狼・魔猪といった凶暴なモンスターが生息していた。どちらも熟練の冒険者でもてこずる強敵であり、生半可な腕前の冒険者が挑むのは自殺行為として立ち入り自体がギルドに許可されない。

 

 だが、本当に恐るべきモンスターはこの山に住まうスノーゴブリンの部族であった。

 凶悪にして凶暴な性質の兇賊であり、彼女たちによって滅ぼされた集落は古来より枚挙に暇がない。しまいにはこの山の近辺に住まう他種族は、ドライグ族以外全滅してしまうほどだった。

 

 それで被害が収まったかといえば、そんなことはなかった。

 近隣の獲物を狩り尽くしたスノーゴブリンは、遠征隊を組織してかなり離れた街道や集落にまで出没し、略奪を行ったからだ。人間をはじめとする他種族側としては、“魔の山”の環境はあまりにも過酷すぎてうかつに討伐隊を送ることもできず、心底困り果てていたのだ。

 

 ことに男性にとっては、スノーゴブリンは本当に恐ろしい怪物だった。

 多淫で繁殖力旺盛なことで知られるゴブリン種のなかでも、スノーゴブリンの男性の扱いは酷薄極まることで有名であり、略奪した男性をよってたかって犯し尽くす。

 精力を極限まで搾り取られた男性が勃たなくなったら、今度は猛毒に等しいほどの効力を持つ媚薬を飲ませ、睾丸が機能を失うまで無理やりに搾り取るのだ。

 当然こんな扱いを受けた男性はすぐに死んでしまうが、おかまいなしだ。スノーゴブリンにとって男性など使い捨ての存在にすぎず、刹那的に快楽を貪るだけ貪ればそれでよい。

 

 おかげでスノーゴブリンは男性にとって恐怖の象徴であり、「いいこにしてないと夜中にスノーゴブリンにさらわれるよ」と男児を躾ける集落があるほどだ。

 

 さて、そんなスノーゴブリンの巣の現在はというと……。

 

 

 

「おにいちゃーん♥ これあたしが獲ってきたお肉だよ、あーんして♥」

 

「えへへー、おにいちゃんだーいすき♥ ちゅーしちゃお♥」

 

「お兄ちゃんかっこいー♪ イケメン♥ 髪の毛ふさふさ♥」

 

 スノーゴブリンの巣に設けられた新設区画、その名も“愛の巣”では、一人の青年が半裸の褐色ロリたちに囲まれながら、甘いひと時を過ごしていた。

 その囲まれようも、彼が噂に聞いていたものとは程遠い。

 

 ゴブリンたちは青年の膝に乗ってニコニコと笑顔で見上げてきたり、左右から腕に抱き着いて頬を擦り付けたり、頬にちゅっちゅとキスの雨を降らせたり、隙あらば濃厚なスキンシップで青年に好意を伝えまくっている。

 部屋の中は精霊魔法によってぽかぽかとした暖気が満ち、床には大きなウサギの毛皮が敷かれており、まったく寒さを感じさせない快適な空間となっていた。

 

 まったく噂はあてにならないものだ、と青年は思った。

 彼はファンボといい、数日前にとある街から連れてこられた貧民だ。

 貧しい家庭に生まれた男子だが、母親は彼を人買いに売り飛ばすことなく、大人になるまで手元で養ってくれた。もっとも、ファンボは栄養不足のためひょろりと痩せて男性的魅力に欠けていたため、決して高値では売れなかっただろう。

 

 その母親も病によって先日亡くなってしまい、特に目立ったとりえもないファンボはいよいよ体を売るしかなくなるまでに追い詰められた。

 世界一の大帝国とまで称される大ブリシャブ帝国だが、国民への福祉は非常に未発達で、到底身寄りもない男性が一人で生きていけるようなものではない。

 裁縫なり料理なりの技術がなければどぶさらいやネズミ退治といった底辺労働をするしかないし、そんな不潔な環境で毎日休みなく働き続ければ早晩体を壊すか気が狂う。半年も無休で底辺労働を続けられるような奴は、もはや人間ではない。

 

 ファンボはごく一般的な人間であったため休みが必要だったし、貧しい育ちのため生計の足しになるような技術も習得できなかったので、母が残してくれたほんのわずかな蓄えを使い果たしたあとは、さっそく路頭に迷った。

 もはや娼館に身売りするか、奴隷として自分を売り飛ばすしかない。どちらにしても、器量の悪いファンボが丁重な扱いをされることはないだろう。

 ファンボが選べるのは、自分をどちらに売るかだけだった。

 

 そんな選択を突き付けられて絶望に暮れていたある日、ファンボの住んでいた街に奇妙な楽隊が現れた。もっとも、彼女たちは一般的な楽隊とは程遠い存在だった。

 どこからともなく現れたゴブリンの一団は、あっという間に広場を占拠すると、誰も聞いたことがない奇妙な旋律とともに歌を歌い始めたのだ。

 

 ファンボは無学だし、時折広場で歌を披露する吟遊詩人の歌に耳を傾けるほどの余裕もなかったから、音楽など生まれてこの方聴いたこともないし、興味もなかった。そういったものは金と時間に余裕のある金持ちの道楽だと思っていた。

 だが、そのゴブリンの歌は明らかに彼のための歌であった。

 貧しく、行き場もなく、愛する人もなく、ドン詰まりの人生にもがき苦しむ人へのエールが込められた、激しく胸を掻き立てるような情熱に満ちた、温かい歌だった。

 

「ゴブリンだ! モンスターが図々しくも人間様の街に侵入してきやがって!」

 

「あっ、やべ! 衛兵だ、にっげろー!!」

 

 乱入してきた衛兵を見るが早いか、楽器を抱えてとんずらを決め込んだ彼女たちの小さな影を見ながら、ファンボの胸は早鐘のように高鳴っていた。

 彼女たちと話したい。彼女たちの歌をもっと聴きたい。その一心で、ファンボはゴブリンたちの背中を追いかけていた。

 

 もちろん彼だってスノーゴブリンがどういった風評を受ける種族なのかは知っている。

 母親から「悪い子にはスノーゴブリンが迎えに来るよ」と躾けられて育ったのだから。

 それでもファンボは胸の鼓動が命ずるまま、これまでの人生で走ったこともない脚を必死に叱咤して、街のはずれまでゴブリンたちを追いかけて行った。

 はたして、ゴブリンたちはそこにいた。小さなベルを手に、頭上を見上げて何かを待っているような顔で。彼に気付いたゴブリンは、幼げな顔立ちで首を傾げる。まるで世の中に悪いことなど何一つないと信じている、いたいけな幼女のような仕草だった。

 

「あれ、お兄ちゃんどうしたの? おひねりくれるとか? お金とかは別にいいよー」

 

 ゴブリンが人間の言葉で話しかけてきたことに内心で驚きながら、ファンボは叫んだ。

 

「あ、あのっ! あの歌をもっと聴かせてほしいんです! お願いします!」

 

「ふぅーん?」

 

 ゴブリンはちろりと唇を舐めると、じっとりとした瞳で笑いかけてきた。

 

「それって、オフパコ希望ってことかにゃあ?」

 

「おふぱこ……?」

 

「つまりあたしたちのダーリンになってくれるなら、好きなだけ聴かせてあげるってこと」

 

「……!」

 

 構うものか。どうせ自分には絶望の二択しか残されていないんだ。

 娼夫になろうが、奴隷になろうが、どうせろくな末路は残っていない。

 それならゴブリンの肉奴隷という第三の選択肢でも同じことだ。同じ絶望なら、せめてあの曲をもう一度聴いてから死にたい。

 

「わかりました……おふぱこします!」

 

『やったー! 彼ピゲットだー!』

 

 その言葉に、ゴブリンたちはぴょこぴょこ飛び上がって喜びを表現した。

 

「よーし、決まり! じゃあ乗ってきなベイベー!」

 

 

 

 そうして空輸で連れてこられたファンボは、過酷な肉奴隷生活を覚悟していたのだが……。

 スノーゴブリンたちは決してファンボに性行為を強要しなかったし、冷たい牢屋にも閉じ込めなかった。それどころか複数人で抱き着いて愛を囁いてきたり、暖かい部屋で精の付く肉料理をふるまってきたりと、ちやほやと甘やかしてくるのだ。

 

 もちろん何もしないのかといえば、そういうわけではない。

 

「おにーちゃん、今からいい?」

 

 膝の上に乗ったゴブリンが、頬を赤く染めながらファンボの着ている毛皮の隙間より細い指を差し込み、すりすりと棒の先端を撫でさする。

 その幼げな容姿に見合わないこなれた愛撫に、ファンボのブツはすぐにいきり立った。

 

「ああ、もちろんさ」

 

「やったあ♥ お兄ちゃん大好き♥」

 

「あー、ずるーい。あたしもおちんぽ見せて♥」

 

「私もー。わぁ、お兄ちゃんのおちんちんすっごく大きくて立派~♥ 魔猪の肉をたくさん食べたから、ほっぺもふっくらしてきたね。お兄ちゃんかっこいい♥ おちんぽかっこいいぞ♥」

 

「イケメン極太ちんぽかっこいー♥ もっともっと食べて、あたしたちの自慢のお兄ちゃんになってね♥」

 

 口々にそんなことを言いながら、ゴブリンたちはちやほやとファンボのブツを誉めそやす。膝の上に座っていた子は先端の割れ目をぺろぺろと舐め、また別の子ははむはむと袋を口にしてマッサージし、火傷しそうに熱い吐息を吐いていた。

 こんな可愛い子たちに情熱的に求められて、誰がはねつけられようか。

 

 ファンボは股間を愛撫してくれるゴブリンたちの頭を優しい手つきで撫でて、彼女たちの愛情に応える。

 

「はあ……ここはこの世の楽園だ」

 

 たまに別の部屋で暮らしている男性と会話することもあるが、彼らもゴブリンたちから乱暴な扱いを受けたことは一度もないという。みんな口々に、愛する妻たちがいかに優しく、宝物のように大切に扱ってくれるのかを語り、ここに来て本当に良かったとしみじみと口にするのだ。

 確かにこの世でこれほど女性から丁重な扱いをされる男性など、どこかの王族くらいのものだろう。

 

 ファンボはこの幸福に満ちた生活が少しでも長く続いてくれることを祈りながら、今日も愛しいゴブリンたちに精を注ぐのだった。

 

 

 

 

「皆さん、初代ロックスターは言いました。“争ってはならない”“奪ってはならない”“貪ってはならない”と」

 

 つけひげを付けたゴブリンシャーマンは、重々しい口調で部屋に集まった者たちを見やった。その視線の先にいるのは、まだ雪焼けしていない青白い肌のゴブリンたちだ。彼女たちが持つ碧色の髪、赤い髪、金髪などの様々な髪色は、最近ここに合流したばかりの他部族出身者であることを示していた。

 

 他部族からやって来たゴブリンたちは、まずゴブリンシャーマンの講義を受けて、スノーゴブリンの流儀を徹底的に仕込まれる。

 新入りたちの眼差しはとても真剣で、普段のアホっぷりが微塵も感じられない。みなゴブリンシャーマンの言葉を一滴残らず吸収しようと努めていた。

 これはスノーゴブリンとして受け入れられるための通過儀礼であり、みんなこの部族の一員となるために頑張って知性を総動員させている。

 

 何しろこの講義を受けて試験にパスしないと、男性と接触することを許可されないのである。たとえ元の部族で女王だろうが総隊長だろうが、一切の例外は認められない。みんな等しくスノーゴブリンとしての心得を身につけなければならないのだ。

 いくら歌や演奏を覚えようが、楽器作りのマイスターに相応しい技術を身に着けようが、男性との正しい接し方を覚えなければ絶対に子作りさせてもらえないのだから、そらもう必死よ。

 

 聴講者たちが真剣に聞き入っているのに頷きを返し、ゴブリンシャーマンは続ける。

 

「私たちスノーゴブリンは、彼の聖句から気付きを得ました。そう、男性を貪ってはならないのです。私たちゴブリンは、これまで大きな間違いを犯していました。男性はレイプして子種を搾り取るよりも、ちやほやと宝物のように扱った方が、勃ちが良く長持ちする……!」

 

 おおー、という驚きの声と共に、生徒たちは大きくざわめいた。

 

「そ、そうだったの……!?」

 

「知らなかった……! 力任せに搾り取ればいいものとばかり……!」

 

「ご飯を無理やり口に詰め込んでもどんどんやつれていくから、それが常識だと思ってたのに!」

 

「なんて画期的な発明なの!? こんな搾精法があったなんて! これはゴブリン界の革命だわ……!!」

 

 

≪説明しよう!

 現代日本人の眼にはポッと出のモブがいきなり褐色ロリハーレムもらってる殺意の湧く光景に見えたと思うが、先ほどの光景は子種汁を効率的に搾るための行為である!

 もっともそこに愛情は確かにあるし、男性にとって居心地のよい空間であるのは確かだ! 自分が飼われていることに気付かなければ楽園なのである!

 男女は対等であるべきというのは現代日本のような余裕のある時代の思想であり、この世界の男性からするとありえないほど大切に扱われている環境であった!≫

 

 

「先生! 質問があります!」

 

「質問を許可します」

 

 ゴブリンシャーマンに促された生徒は、必死の形相で口を開く。

 

「しかし子種を搾り取っている以上、どうしてもオトコはやつれていくのものでは……!?」

 

「いい質問です。実は5人程度の決まったメンバーでちやほやしている分には、男性も乗り気で子作りに応じることがわかりました。我々の巣では男性をバンドメンバーの共有物として扱い、それ以外の者には一切触れさせません。また、これまでゴブリンの上位者に優先的に与えてきた魔猪の肉も、男性に真っ先に与えるようにしています。こうすることで、最初は痩せていた男性もみるみる健康になり、子種の量・質ともに220%向上しました」

 

「魔力の源とされる魔猪の肉をオトコに!? そんな発想があったなんて……!」

 

「男性ファーストの逆ハーレム生活。これが初代ロックスターが教えてくれた搾精の秘訣です。ただし、くれぐれも男性に自分が飼育されているとか、なんのかんの言っても所詮は種馬だとか悟らせてはいけません。徹底的に甘やかし、世界は自分を中心に回っていると思わせるのです。彼らに接触して余計なことを吹き込む者は、厳罰に処しますのでそのつもりで」

 

 ギラリと鋭く瞳を光らせるゴブリンシャーマンに、生徒たちはコクコクと頷いた。

 悪戯好きなゴブリンたちだが、そんなことで折角の子作りの権利を失ってはたまらない。

 

「とはいえ、男性は大切に扱われて幸せ。私たちは質のいい子種をもらえて幸せ。WIN-WINの関係です、あえてそれを崩しに行く必要などありませんよね?」

 

『はーい、先生!』

 

 ゴブリンたちが唱和するなか、おずおずとひとりの生徒が手を挙げる。

 

「あの……質問よろしいでしょうか」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「夫をもらうには、絶対に歌えないといけないんでしょうか? あと、私はもう10回出産してるんですけど……こんなおばちゃん、若い子には嫌がられるんじゃ……。望まないメスをあてがわれて、嫌がられたらどうしようって……」

 

「いい質問です」

 

 ゴブリンシャーマンはうむうむと頷く。

 

「まず最初の質問ですが……必ずしもバンドを組む必要はありません。ドラゴンへのエロマンCarの提供や、楽器工房、調理人、ベビーシッターなど重要な仕事はたくさんあります。そちらへの従事を希望する方には、人買いや奴隷商人、または婿の募集などで集めた男性をあてがいます」

 

「おお……! 福利厚生しっかりしてるぅ!」

 

「ベビーシッターがいるんだ! これならいくら孕んでも安心!」

 

「子育て経験には自信あります……! ベビーシッターやろうかな……」

 

 ゴブリンシャーマンの言葉に、ゴブリンたちの間に納得と安心が広がっていく。

 その波及を確認してから、ゴブリンシャーマンは言葉の爆弾を投げ込んだ。

 

「そして2つめの質問ですが……。他種族はゴブリンの年齢なんてわかりません! 何人産んでいようが『私初めてなの……お兄ちゃん、優しくしてね……♥』と甘えれば年下だと思って優しくしてきます!」

 

『な……なんだってーーー!?』

 

 洞窟を揺るがすほどの驚愕の叫びを受け止めながら、ゴブリンシャーマンは自慢げにつるぺたな胸を反らせた。

 

「事実、私もつけひげを外してショタにさっきの言葉を言ってみたら、『大丈夫だ、怖くないよ。俺に身を任せて……』と年上ぶって優しくされました」

 

『!?!?!?!?』

 

 バカな……! もうババアだぞ! というかいい年こいて何やってんだこの人……!?

 さまざまな感情がないまぜになった視線が、ゴブリンシャーマンに向けられる。

 そんな視線を受け止めて、ゴブリンシャーマンはぽっと頬を染めた。

 

「自分も経験が少ないくせに、頑張って気丈に振る舞おうとする小僧の指先が震えるのがもうめんこくてめんこくて……♥ 私も思わず脚を絡めてだいしゅきホールドを決めてしまいました。20年ぶりに孕んだかも……♥」

 

 頬を染めてイカ腹を撫でながらそんなことをのたまうつけひげ偽幼女に、羨望と殺意の混じった視線が集中した。

 実際人類でありながら幼体成熟(ネオテニー)するという稀有な種族であるゴブリンの年齢は、他種族には絶対に見破れない。ゴブリン同士ならどういうわけかかなり正確にわかるのだが。

 まあ地球でも白色人種には黄色人種の女性はかなり幼く見えるそうなので、人種が違えばそんなものなのかもしれない。

 

 ともあれ、ゴブリンシャーマンの体験談がゴブリンたちに希望と安堵を与えたのは確かだ。

 大体の歴戦のゴブリンは男を散々食い漁ってきているので、内心自分にラブラブお兄ちゃんトークなんてできるのかと思っていた者も多かったのだ。

 このばあさんが妹ムーブできるんなら、あたしにだって楽勝だわ!

 

 願わくばその少年が真実を知る日が永遠に来ないことを祈るばかりである。

 

 そんな空気の中、先ほどの生徒がもう一度手を挙げた。

 

「あの……もうひとつ質問が」

 

「ふむ。言ってみなさい」

 

「その……配分の順番はどうなりますか? 新しい男が手に入ったら、まず部族内の序列が高い人から割り当てるのが一般的ですけど……女王が一番先に味見する形ですか?」

 

「ああ……」

 

 ゴブリンシャーマンは小さく息を吐くと、その質問に応えた。

 

「男性の希望が最優先です。バンドのおっかけで来た男は、大体そのバンドのものになります。希望がなければ、こちらから空いてる集団にそれとなく誘導してあてがいます。……それと、うちの女王は男を食いません。それについては、一切気にかけなくて結構です」

 

「え……!? で、でも……女王は強い血を残すことも大事な務めで……」

 

 そう口にする生徒の言葉に、ゴブリンシャーマンはどこか遠い目をした。

 

「女王の心は、とびっきりの男性に囚われてしまいました。もうあの人は、彼以外との子作りを望まないのです」

 

「??? 心を……? どうしてその男を捕まえて、取り戻さないの?」

 

 きょとんと互いに顔を見合わせる生徒たちに、ゴブリンシャーマンはふっと笑った。

 

「人間風に言えば、恋をしてしまったということですよ」

 

「恋……?」

 

「まあ、いずれ皆さんにもわかりますよ。ここの生活を続けていればね……」

 

 ゴブリンシャーマンは意味ありげに微笑むと、ぱんと手を打ち鳴らした。

 

「さて、今日の講義はこれでおしまいです。繰り返しますが、男性には絶対に優しくすること! これだけは徹底するのですよ!」

 

『はーい!!!』

 

 

 

 後にスノーゴブリンがライブ後に男性を誘拐していたことが他種族に知れ渡ると、彼らを奪還するために種族連合の救出部隊が組織された。

 だが、魔の山に押し寄せた救出部隊を待っていたのは、断固として帰還を拒否する男性たちの姿だった。

 

 取り囲む褐色ロリたちを大切そうに抱き寄せながら、自分は望んでここにいるのだから邪魔をしないでほしい、今の生活は幸せで何の不自由もない、自分たちのことを思うならどうか何もせずに帰ってほしいと、彼らは口々に訴えた。

 救出部隊には夫や恋人を取り戻そうと参加した女性もおり、かつての夫や恋人に拒絶された彼女たちはある者は泣き崩れ、ある者は脳が破壊された。

 

 

≪説明しよう!

 地球人の価値観では、ゴブリンに連れ去らわれたはずの女性がゴブガキにケツや胸を撫で回されながら、うっとりとした顔つきで「私は真実の愛を見つけたんです! もう人間の男性のところには帰りません」と主張してくるようなものである!≫

 

 

 しかし、彼らの主張も当然のことだったのかもしれない。

 何しろこの世界において、スノーゴブリンほど男性に優しくしてくれる女性などそういるものではないのだから……。少なくとも娼館や奴隷に身売りするよりもずっと快適で愛情に包まれた生活を送れていることは間違いなかった。

 

 救出対象に拒絶されて大義名分を失った救出部隊は、それでも未知の魔術でゴブリンに洗脳されているに違いない!と主張して攻撃を強行した。まあある意味洗脳されているのは確かではあったのだが。

 

 しかし、結局は精霊石によって武装したゴブリンの戦闘力に加え、ドライグ族による援軍が航空支援を行い、救出部隊は手も足も出ずにすごすごと退却せざるをえなかったのである。

 

 救出部隊の隊長を務めていた傭兵の女性の言葉は、後年に至るまで記録に遺されている。

 

「くっそおおおお! 誰だよゴブリンに入れ知恵した奴は! ゴブリンが自分から男に優しくしようなんて思うわけねえだろ! 絶対に余計な知恵をくれてやった奴がいるわ!! あーもうやってられるか、撤退だ! ……あたしも、帰ったらダンナに優しくするかな……」




可愛いゴブリンちゃんがこんなことするなんて……とショック受けた人は思い出してほしいんですが、この子たちの本質は「山賊」もしくは「海賊版」です。

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キャラクターデザインも見られますよー! 顔と体だけは最高と噂のデボ子をぜひご覧ください。

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