【書籍版1巻2/20発売】貞操逆転ハードモード異世界を鋼メンタル冒険者が生き抜く   作:風見ひなた(TS団大首領)

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第14話「医療崩壊からの暴徒蜂起コンボ+おまけ」

 半年にも渡って冒険者にしがみついてきた雄士が、突然の電撃引退を決意したことで夢広がる時間を楽しんでいたデアボリカ。

 しかしその至福の時間を楽しんでいられたのは、わずか1日にも満たなかった。

 

「た、大変です! 突然街中で天使と称する人物を中心に謎の集会が発生! 天使にすがればどんな病でも治るという流言が飛び交っており、噂を真に受けた民衆が全地区から続々と詰め掛けています!!」

 

「続報です! 民衆の中心にいる天使の正体は、我々のギルドに所属するユージィだということが判明! 新たな宗派でも起きかねないほどの熱狂が巻き起こっています!」

 

「とんでもないことがわかりました! ユージィは人々を集めるために冒険者ギルドの旗印を使用しています! このままではこの事件が我々のギルドが糸を引いて起こしたクーデターだとご当主様に判断されてしまう可能性も……! どうしましょうか!?」

 

「えらいこっちゃ! ユージィを担ぎ上げた民衆たちが領館を占拠! ご当主様たちは脱出され、ユージィたちが新都市政府の樹立を宣言したとの噂が!」

 

「……は?」

 

 執務室でのんびり皮算用に浸っていたデアボリカは、配下の者たちから次々に飛び込んでくる急報に唖然とするばかりだった。いくらなんでも予想外の事態だし、混乱しているのかどう考えても誤報としか思えないような情報まで届いている。

 

「ど、どうなっているんだ! なんでユウジが反乱の中心に……!?」

 

 しかしデアボリカとて無能ではない。

 直ちに情報の洗い直しを命じて、都市で何が起きているかの正確な情報を集め直す。

 その結果、集会は決して反乱ではなく雄士の始めた商売に人々が集まったものだとわかり、その商売の旗印として冒険者ギルドを利用していることが判明した。民衆と共に領館を襲っただの、当主が脱出して新政府樹立が宣言されただのとデタラメを伝えてきた部下は厳重に処罰した。

 どうやら彼女の母親たる現当主は、今も領館でぴんぴんしているようだ。

 

 しかしこのままでは確かに冒険者ギルドが民衆を扇動したと見られても仕方がない。なにしろ雄士はギルドの旗印を使っているのだから。

 デアボリカは現時点で判明している情報をまとめると、急いで母親に伝えるようにと急使を出した。これで自分に反乱の意図はないということはわかってもらえるはずだ。デアボリカには母親を討つつもりなどない。とりあえず今は。

 

「いやあ、びっくりしましたね。まさかユウジ君にこれほどの求心力があったとは」

 

「……ウェズ君。彼に冒険者ギルドの看板を使って商売する特権を与えたのは君だったな。まさかこうなることをわかっていてやったのか?」

 

 険しい視線を向けてくるデアボリカに、ウェズは肩を竦めた。

 

「まさか、予想できるわけがないでしょうこんなもの。私はユウジ君が商売を通じて少しでもこの世界の相場を学べるようにと考えただけですよ。何しろ彼、半年の間ずっとドブさらいとウサギ狩りしかしていない極貧生活をしていましたからね。きっとまともな相場観なんて身に付いていませんよ。……ほら、見てください。報告書によれば銀貨5枚*1で治療したそうです。私たちの家が雇っている医師なんて、瀉血(しゃけつ)ひとつで金貨3枚*2を要求してくるというのに。しかも彼、一瞬で治してしまうそうです。そりゃあ誰だってユウジさんの救いにすがるでしょうね」

 

 報告書をパンッと手の甲ではたきながら、ウェズはどこか面白そうに言った。

 瀉血というのはナーロッパ地域の医者がよく行う治療で、体に流れている悪い血を抜くことで病気の元を取り除くという行為だ。万能の治療法と信じられており、具合の悪い患者はとりあえず瀉血しているほどだ。もちろんこんなもので病気が治るわけがない。ウェズも本心ではこの街で雇っている医師は詐欺師まがいの輩だと思っている。しかし気休めにせよ医師の施療が人の心の救いになるのならば、存在する価値はあるだろう。……子供の小遣い程度の金額で、一瞬で確実に病気を治してしまう天使さえいなければの話だが。

 

「ま、彼が黙っているのをいいことに、雑用を投げつけて飼い殺しにしたギルドにそもそもの問題があったと思いますけどね。他の街への配送業なり、狩りの成果物の委託販売なり、もっとまともな仕事を与えてあげていれば、こんな金額で治療しようなんて思わなかったでしょうに。彼を思い通りにしようと、この世界の情報を制限して世間知らずのままにしておいたのは貴方ですよ」

 

「言ってくれるねえ……」

 

 デアボリカはギリギリと奥歯を噛みしめながら、ここぞとばかりに皮肉をぶつけてくる従兄を睨み付けた。

 既にデアボリカの計画は破綻を迎えつつある。ここまでの問題を引き起こしてしまった雄士を、そのまま何もなかったかのように冒険者の婿にして終わらせるなんてことができるわけがない。当主が納得するだけのオチをつけなくてはならないのだ。彼女がまだ冒険者ギルドの執務室に居座り続けるためにも。

 もしやこの従兄は、デアボリカの企みを破るためにこの事態を仕組んだのか?と彼女は疑う。後ろ暗いことがある人間は、他人も陰謀を巡らせていると考えがちである。

 まあいい、すべては雄士を捕らえてからだ。民衆の手から彼を取り上げなくては。幸い彼は予想もしなかった利用価値を示した。それを利用するのも、なかったことにしてしまうのも、奴の身柄を抑えてこそ。

 

「ユウジを急ぎ連行しろ! 衛兵を動かし、捕縛させるんだ! ユウジには絶対に傷をつけるなよ! 民衆には最悪被害が出ても構わん!」

 

「デアボリカ、落ち着いてください。貴女には衛兵への命令権はないでしょう? 衛兵は貴方の姉上の管轄です。横紙破りをして勝手に命令を出したとなれば、なおさら政変を企んでいると疑われてしまいますよ」

 

 ウェズの冷静な指摘に、デアボリカはぐっと唇を噛みしめた。よほど動揺しているのか、普段の冷徹な策士気取りの物腰が剥がれかかっている。まあ自分に政変疑惑がかかっているとなれば、落ち着いてもいられないだろうが。

 デアボリカはすっと息を吸い込み、指示を出し直す。

 

「手の空いている冒険者に特別依頼を発注しろ。ユウジを傷ひとつ付けずに捕らえるように。成功報酬金貨10枚、わずかでも怪我をさせたら罰金を徴収! 急げ!」

 

「まあその必要もないんですけど」

 

「何がだ!?」

 

「ユウジさんならさっき衛兵に保護されて、ギルドの1階に連れてこられましたよ。どうも自分から衛兵に泣きついて保護してくださいと頼み込んだそうで」

 

「……早く言いたまえ、そういうことは!!」

 

 しれっと抜かすウェズに血管がブチ切れそうな勢いで怒鳴りつけてから、デアボリカは全力で執務室を飛び出していった。日頃ギルドハウスの中では決して走らず、堂々と落ち着いた姿を見せつけているデアボリカには珍しい姿だ。

 その背中を見送ったウェズは、クックッと喉の奥で笑いを浮かべる。

 

「少しは普段の留飲が下がりましたね。やはり貴方は面白い方です、ユウジさん」

 

 そして同僚たちが引きつった表情を浮かべる中、悠々と執務室を出てデアボリカの後を追うのだった。

 

 

 

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 僕は冒険者ギルドの1階の片隅で毛布にくるまり、ガチガチと震えていた。

 

「群衆怖い、群衆怖い、群衆怖い……」

 

 スラムでの治療を終えた後、じゃあ次の地区に向かうかーと出発した僕だったが、その後に続いたのはとんでもない数のスラム住民たちだった。その数たるや、なんと数百人規模。僕を慕って行進に加わりたいということだったが、既に統制の利く規模を大幅に逸脱していた。そもそも僕だって彼らを統制するつもりなんてなかったし、なんせ僕を慕っているとはいえスラム住民だ。どさくさに紛れて略奪を働こうとすることは十分に考えられた。

 ……というか、実際略奪が起こりかけた。スラム外の地区に出た彼女たちの一部が、お祭り気分でそこらの露店から勝手に商品を持って行こうとしたのである。これは例のスラムのおじいちゃんの配下のお姉さんたちが阻止してくれたのだが、この時点で僕は行進を率いて治療を行うことは不可能だと判断していた。

 

 僕は足を止め、なんとか彼女たちを解散させようと説得を試みたのだが、群衆心理なのか僕という旗印を得たせいなのか、やたら強気になったスラム住民たちは聞く耳を持たない。このまま都市全域を練り歩いて天使様の御威光を知らしめようなんて言い出した。それだけならまだしも、領主がいる領館に攻め込んで、自分たちの都市政府を作ろう! なんて妄言を言い出す者まで出る始末。多分、スラムに潜んでいた政治犯がこれ幸いと僕を利用して、一発クーデターぶち上げようとしたんじゃないかな。

 

 僕はもう限界だと悟った。このまま彼女たちといると、反乱の首謀者に仕立て上げられて絶対に破滅する。なんとか逃げ出そうとしたんだけど、興奮した群衆は僕を逃すまいと包囲してくる。なんかどさくさに紛れて服を脱がそうとしてくるのまでいたし、命だけでなく貞操の危機も感じたね。

 

 しかしそこに未届けの集会が行われているという通報を聞いてやってきた衛兵のみなさんが駆けつけてきたので、僕は身も世もなく助けて! と保護を訴え、なんとか無事に冒険者ギルドまで連れてこられたのだった。気が立っていたスラム住民……に紛れた政治犯も、さすがに非武装だったからね。しっかり武装した衛兵に立ち向かう覚悟はなかったようだ。衛兵のうちの一人が僕をかっさらうと、暴徒になりかけている集団を突っ切って、冒険者ギルドまで保護してくれたというわけだ。

 

 僕の隣ではここまで連れてきてくれた衛兵のアミーティアさんが、困惑とも呆れともつかない顔で僕を見ている。

 

「お前さん、またとんでもないことをやらかしたな。クーデター未遂だなんて、市民になって2日目の人間がやることじゃないぞ」

 

「旗頭に祀り上げられそうになっただけですよ。僕は無実です。僕がクーデターなんかして、何の利益があるっていうんですか」

 

「そりゃ私はお前がそんなこと企むようなタマじゃないと知ってるがね。判断する上の人たちはお前がどういう奴なのか知らないからな。……いや、よく考えたら私もお前がいったい何考えて生きてるのかわからんぞ。ふふっ」

 

「アミィさん、笑い事じゃないんですよ……」

 

 何が楽しいのか、アミィさんは僕の顔を見て涼やかな笑いを浮かべる。

 彼女は僕が異世界転移してきたときに最初に会話した門兵さんだ。後でお礼をするという約束で、こっそりと市門を通してもらった。

 お礼はちゃんとしたよ。酒場のキッチンを借りてサンドイッチを作って差し入れたら、がっかりしたような安心したような、なんとも判断のつかない溜息を吐いていたものだ。もっと高級な食べ物を差し入れてくれると思ってたのかな。

 でも、僕が作ったお手製の弁当だと言うと、満面の笑顔を浮かべて同僚たちに見せて回っていたみたいなので、きっと喜んでくれたのだろう。それ以来、市門を通るときに見かけたら世間話する関係に落ち着いている。多少の料理の心得があって良かった。

 僕ね、料理は割とする方なんだ。日本にいた頃、筋トレ用のメニューを自作してたからね。家族が喜んでくれたから、甘いものも結構作ったっけな。この世界に来てからは宿の部屋にキッチンもないし、そもそも街で家庭料理を作ること自体が一般的ではないみたいなので、とんとご無沙汰してるけど。機会があったら自炊もしたいよなあ。

 ……群衆から逃げて衛兵に保護されてる状況では、夢のまた夢の話か。

 

 

≪説明しよう!

 ブリシャブ人の女性にとって、料理上手な男性はとても価値がある存在である! キッチンのある家に住める時点で中流以上の家庭であり、料理スキルを身に着けた男性はかなりのレアなのだ! 男が料理している姿を見るだけで、ブリシャブ人の未婚女性は幸せな結婚生活を妄想して濡れる!

 そして男性にお弁当を作ってもらうというのは独身女性にとって永遠の憧れであり、最早プロポーズされたも同然と見なされている! 日本で言う「俺のために毎日味噌汁を作ってくれ」である! アミィの勝ち組マウント行為に、未婚の同僚たちは血の涙を流して悔しがった! そして雄士はまたひとつ自分の首を絞めた!≫

 

 

「いや、しかしすごいな。ここまで大事になっているとはね」

 

 まるで他人事のように言うアミィさんの視線は、窓の外へと注がれている。

 そこにはギルドハウスをびっしりと取り巻く群衆が、殺気立った様子でわいのわいのと叫び声をあげていた。

 

「天使様を返せー!」

 

「冒険者ギルドは天使様の奇跡を独占しようというのか!」

 

「官憲横暴! 官憲横暴!」

 

「天使様は市民全員のものだ! 即刻解放しろ!」

 

「私の子供をまだ診てもらえていないの! お願い、この子を診てちょうだい!」

 

「天使様は我々スラム地区が保護する! 貴族の手の者になど任せておけない!」

 

「調子に乗るな、貧乏人! 商業地区なら何不自由ない暮らしをお約束するわ!」

 

「なんだと!? そもそも天使様は平等を説かれたはず、差別主義者のお前たちに天使様を保護する資格はないぜ! 大方自分たちの商売の道具にしようってんだろう! ……さては天使様を借金漬けにして【肉竿ワッショイ】するつもりだな!? このスケベ商人どもめ!」

 

「スケベはそっちでしょ!? どうせ歓待とか称して、よってたかって【肉竿ワッショイ】する気でしょう! これだから低俗な貧乏人は!」

 

「天使様、お顔を見せてください!」

 

「天使様の子種をお授けください! 抱かせろ!」

 

「天使様! 天使様! 天使様!」

 

 わぁお、地獄絵図。

 味方同士で勝手にいがみ合ってケンカを始めてるのもひっどいね。しかもケンカの内容が頭シコ猿のマウント合戦。こんな低俗な階級闘争見たことないよ。あと肉竿ワッショイって何……? 翻訳スキルがバグってるの?

 

「……わかっているとは思うが、絶対に顔を見せたりするなよ。火に油を注ぐ」

 

「いや、この状況で外に出たいなんて思うわけないよ……」

 

 釘を刺してくるアミィさんに、僕は憂鬱な溜息を返した。

 一体どうしてこんなことになってしまったんだ。

 僕は誰だろうが平等に病気を治してあげただけなのに。銀貨5枚で。

 ……やっぱ安すぎたか。外食1回程度の価格だしね。

 いくらくらいが相場だったんだろうなあ、これ。

 今更そんなことを考えていると、

 

「キイイイイイイエエエエエエエエエエッ!!!」

 

 怪鳥が叫ぶような声が、突如としてギルドハウス内に響き渡った。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

※以下は本編の内容とは関係ありません。

 

シリアスな本編を補うべく、おバカなおまけを書きました。

 

『ある衛兵の手記』

 

 

〇3月12日

 

 今日も今日とて城門の警備だ。

 商人の取引証を確認して通行料を徴収したり、出入りする冒険者のギルド証を確認したり、街にこっそり入ろうとする流民を追い返したりするだけの簡単で退屈なお仕事。

 たまには取引証を『忘れてきた』商人が心付けでもしてくれるようなオイシイことが起こらないかな……と思うけど、そういうのは大体『裏口』を使うから私たちの役得はないんだよね。

 

 別の時間帯を担当してるアミィに言わせれば「城門の警備こそ衛兵にとっての最大の名誉」だってさ。本当にこいつはクソ真面目で堅物だ。

 確かに城門の門番は衛兵にとっての花形だし、街を守ってる感が出てる仕事だけどさ。やってることって要するに入国管理官なんだよね。役所仕事って退屈だなぁ……。こんな仕事でも毎日張り切ってこなしてるアミィは偉いよ。

 堅物が過ぎて男ができる様子もないみたいだけど……。25にもなろうってのに娼館で娼夫のひとりも抱いたことがないってんだから、ちょっとビョーキだよ。そりゃ下手な相手の子は産めないって家庭の事情もあるだろうけどさ。

 

 ま、私がどんだけ婚期が遅れても、アミィよりは早く結婚できる自信があるかな。オキニの彼氏(娼夫)もいるしね。

 へへへ、悪いねアミィ。今度忘れたふりして春画を机の上に置いといてやるから許してよ。あいつ勤務態度はクソ真面目なのに、ムッツリだからからかうと面白いんだよね。

 

 

〇3月15日

 

 詰め所に戻って来たアミィの様子がなんか変だった。

 どことなくぼーっとしていて、受け答えが上の空というか……。

 かと思ったら突然にへらと緩んだ笑顔を浮かべたり、ぶんぶんと頭を横に振ったり。

 今日はあいつの相方が非番で夫とデートしてるからアミィ1人で仕事してたはずだけど、なんか勤務中にあったんかね。もしかして、闇ギルドから白いお薬でもプレゼントされたりとか……いや、アミィに限ってそんなことあるわけないか。

 もしくは流民に色仕掛けされて通しちゃったりとか……いや、ないな。あの堅物のアミィが屈するほどの男がいたら、それはもう歩くセックスみたいなエロさの塊だよ。私が見てみたいっての。

 

 なんか同性のことばっか書いてるとレズみたいでキモいので、男のことも書こっと。

 明後日で彼氏と付き合って1年になります、どんどんぱふぱふー!

 うへへ、明後日はいよいよプロポーズするんだ! でもって彼を身請けして、いよいよ結婚! そしたら毎日無料で孕まセックスし放題ってわけ! まいったなー! 来年は産休取らないとだめかも! 貯金はバッチリ、どんとこいベイビー!

 

 

〇3月17日

 

 ふられた

 

 

〇3月18日

 

 私は大丈夫。だってアミィがいるから。

 私が最後尾じゃない、アミィが一番後ろを引き受けてくれるから私は耐えられる。

 これから新しい恋を見つけるんだ。頑張れ、私。

 

 

〇3月20日

 

 アミィが彼氏特製の手作りサンドイッチを見せびらかしてき

 

 あああああああああああああああなんでなんでなんで!?

 なんでサンドイッチ?

 小綺麗なバスケットに入ったオープンサンドで、具はピーナツバターとソーセージとマッシュポテトで、表面はカリッと香ばしくローストされてて、細切りにされたジャガイモと玉ねぎのフライが添えられてて、彩りにクレソンとか乗ってて、とてもおいしそうだった。

 嘘だ、見栄を張って店で買ってきたに違いないと自分に言い聞かせようとしたけど無理だった。大ブリシャブの店があんな繊細でうまそうな料理作れるわけないだろ! マッシュポテトに緑色のパセリソースを雑にぶっかけた汚い飯を出すのが大ブリシャブの飯屋なんだよ!

 

 どうして!? いつの間に彼氏作ったの!? 同期で一番最後に残るのはアミィだと思ったのに! 裏切ったな! 私の気持ちを裏切ったんだ! うわああああああ!!

 

「冗談でしょ? 本当にそんな男実在するの?」って平静を装って聞いてみたら、「あの男なんだ」って物陰からこっそり紹介してくれた。

 太陽の下で裸の上半身から汗を吹き出させながら、何故かドブさらいをしているエキゾチックな東洋人の若い男の子だった。スマートだけどしっかり肩回りに筋肉が付いてて、腹筋が6つに割れてる、とんでもなくセクシーな体つきをしていた。周囲にはウンコとヘドロが混じった汚臭が漂っていたけど、彼の周りだけキラキラしててすっごく良い匂いがしてそうだった。しかも黒髪の東洋人でピッチピチの若さ。もうその概念だけでエロい。存在がシコリティの塊。神の創りたもうた珠玉のエロス。それがあのアミィの年下の恋人という事実で脳が灼け……あっあっあっ……。

 

 ……あれからどうやって自宅に戻って来たか記憶にない。気が付いたらこうしてペンを握っていた。

 今思い返しても、この世のものとは思えないエロさだ。あれに弁当を作ってもらえる女って前世でどんな善行を積んだの? 男が弁当を作るって、要するに結婚してくれるってことだよね。今こうしてるときも、アミィはあんないい男とイチャラブしてるんだ。あんな愛情たっぷりの料理を毎日作ってもらえるんだ。そう思うだけで悔しくて悔しくて……なんかかつてなく下腹部が熱くなってきた! すごい! 悔しさでシコれる! 悔シコれる! えっ、私にこんな能力があったんですか!?

 

 今日はこの手記をオカズにシコって寝ます。

 アミィ、最高のズリネタをありがとう。爆発しろ。

*1
雄士の感覚で約1000円

*2
雄士の感覚で約50万円




たまにバカエロやらないと頭がおかしくなって死ぬ。

油はこの世界では贅沢品ですが、酒場の女将にレシピを教える見返りに材料費タダで使わせてもらいました。
サンドイッチとフライドポテトとオニオンリングで「愛情たっぷりの繊細な料理」と認識されるのが世界に冠たる大ブリシャブ帝国の飯なんだよね。
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