【書籍版1巻2/20発売】貞操逆転ハードモード異世界を鋼メンタル冒険者が生き抜く 作:風見ひなた(TS団大首領)
「お初にお目にかかります、ローズ伯爵の息子のジャニスです。よろしくお願いします、聖者様」
翌日、ブートキャンプに連れられてきたミドラー氏の息子のジャニス君は、かなり線の細い感じの少年だった。体型はお母さん似でほっそりとしていて、小太りのミドラー氏にはあまり似ていない。顔立ちは細面のかなりの美少年なのだが、大分内気そうで声も小さい。ここは僕から歩み寄って、暑苦しいほどフレンドリーに接するべきか。
「よろしく。僕は男島雄士、今は聖者を名乗ってるけど東洋から来た一介の旅人です。もっと気楽に兄貴って呼んでくれよなっ! なんならタメ口でもいいぞっ!」
「ええと……」
びしっと親指を立てる僕を見て、ジャニスはちらりとミドラー氏に視線を送る。ミドラー氏が頭を横に振ったので、ジャニスは真顔で頭を下げた。
「いえ。僕は伯爵家の一員ではありますが、未だ何者になっているわけでもありません。そんな身で、一家の恩人である貴方に対等な口をきくわけにはいきません」
ううん……これは父親の操り人形と見るべきか? それとも結構しっかりしていると見るべきか? ちょっと様子を見てみよう。
「オッケー、でも兄貴とは呼んでくれ。ミドラー氏にもそう呼んでもらってるんだ」
「わかりました、父に倣います」
そう言いながら、ジャニスはおじさんたちの後ろに引っ込んでいく。内気で人目を避けたがるという性格はミドラー氏が言っていた通りだ。ただ、おじさんたちの後ろからじっとこっちを見ているんだよね。視線がすっごい気になる。
……これは、アレか? 僕を詐欺師と思って怪しんでるのか? そりゃ確かに不治の病と言われてる梅毒をあっという間に治療してしまうわ、お父さんを巻き込んで怪しいダンスの儀式をやらせるわ、タチの悪い詐欺師かカルト宗教が伯爵家に取り入ろうとしてると思われても仕方ないもんな。僕なら両親に私を信じればどんな病気も治りますよーって怪しい外国人が接触して来たら、絶対詐欺だと思うもん。
うーん……まあ別に疑われたままでもいいっちゃいいんだけど。折角年齢が近い男と知り合えたんだから、仲良くしたいよなあ。この世界、男性と知り合う機会が本当に少ないんだよね。どこ行っても女性ばっかりで、男は部屋に押し込められているからなあ。
まあおいおい仲良くなればいいか、とりあえずブートキャンプだ!
「ようし、今日もノリノリで行くぞソウルメイツ! ではまずストレッチから!」
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2日目だけあって、昨日から参加しているメンバーは随分動きがこなれていた。昨日より持久力もあり、ひいひい言いながらも若干長くしたレッスンに最後までついてきたくらいだ。今日から参加するメンバーを励ます余裕まで見せていて、僕は密かに感心した。
ジャニス君はぜえぜえと肩で息をしてへばっていたが、初見で最後までしっかりついてこれたのは見どころがある。君、マッチョの素質あるよ。
ソウルメイトたちは水をがぶがぶと飲みながら、合間にメイドさん(男)が持ってきてくれたサラダラビットの蒸し焼きをつまんでいる。
「これは随分変わった味付けですな。肉がすごく柔らかくて、噛むほどに味が沁み出してくる」
「牛肉に比べるとやはり物足りない感はありますね……脂が少ない」
「しかし運動後のおやつには、こってりとした牛肉よりこういうあっさりした肉の方が喉を通りやすいですね」
「俺は気に入りましたよ。漬け汁もおいしい。この汁でスープを作って晩飯に出してくれないものかなあ」
よしよし、サラダラビットも受け入れられないってことはないみたいだな。
コンビニで売ってるサラダチキンは食品添加物バリバリで人によっては受け付けないって人もいるけど、こっちは完全お手製だし、拒絶はされにくいだろう。バジルとかのハーブで味付けしたり、燻製にしたりして味変すれば連日食べても飽きにくいと思う。しょうがとかごま油を手配できれば、よだれ鶏とかバンバンジーっぽくアレンジしてもいいね。後で料理人さんにアレンジレシピ案を伝えておくか。
「しかし暑いな……」
僕は手の甲で額を拭った。
この国は緯度が高く、さらに秋口ということで普段は結構肌寒いのだが、今日は真夏日でカンカン照りだ。
「こう暑いと、水浴びしたいなあ」
すると僕の独り言を聞きつけたミドラー氏が、やはり汗だくになりながら頷いた。
「確かに……いっそ、プールを用意しましょうか?」
「え、あるんですか?」
「ええ、庭園の奥に。ジャニス、アレを持ってきてくれるか?」
「わかりました、父様」
「では兄貴、こちらへどうぞ。みんなも付いてきてください」
本館の方に走って行くジャニスの背中を見やってから、ミドラー氏は僕やソウルメイツを連れて歩き出した。
この国ではかなり水が貴重だと聞いていたんだけど、プールなんて用意できるのか。お金持ちは違うなあ……。
ミドラー氏が案内してくれたプールは、庭園の奥にひっそりと流れる渓流の近くにあった。すり鉢状に穴が掘られており、底には石が敷き詰められている。
しかし……。
「水がないですけど……川から水を引くんですか?」
この世界、水道とかないからね。水を引くなら川から持ってくるしかない。ただゴムホースみたいなものも見当たらない。
どうでもいいことなんだけど、この国の川の水って大体が茶色なんだよね……。最初に見たときはギョッとした。別に土壌汚染とかされてるわけでなく、それが正常。この国の人にとっては川の水は茶色というのが常識だ。地中深くに泥炭という層があって、この泥炭がフィルターの役目をして雨水をろ過しているので、その色がついてこういう色になるらしい。
ちなみに日本の水に比べてかなりマズい。ミネラル分が多い硬水なんだろうね。舌に刺さるような苦い味がする。どんだけミネラルが多いかというと、この水をケトルで沸かすと目に見えるくらい結晶がこびりつく。年季が入ったケトルだと、中が鍾乳洞みたいになるよ。
硬水はレモンの搾り汁を混ぜると結構マシな味になるから、僕は水を飲むときは値が張ってもレモンを合わせて買うようにしてる。このお屋敷の飲料水にもレモンが混ぜられてるね。冷やしたり炭酸水を混ぜたりしても味が良くなるとキャンプのハウツー本に書いてあったけど、冷蔵技術や炭酸水の製造法はまだ発見されてないようだ。残念。
そんなおいしくない水でもこの島では貴重だし、生まれてこの方この水しか飲んでない人たちにしたら、水とはこういう味だという認識なんだろうなあ。水がまずいって言ってる人見たことないもの。
おっと、話がそれちゃったね。川から水を引くのかという僕の疑問に、ミドラー氏は笑いながら首を横に振った。
「いえいえ、逆です。川はプールの水を捨てるためのものですよ。水は……ああ、来ましたね」
ミドラー氏の言葉に僕が振り返ると、ジャニスが砂煙を上げながら疾走してくるところだった。ものすごいスピードで、なんか物理的に風をまとっているかのようにすら見える。……いや、違うな。本当に彼の周囲に追い風が吹いているんだ。
風の魔法を使って周囲に追い風を吹かせて走る彼は、自動車並みのスピードが出ているように思われた。生身ではブートキャンプに付いてくるのがやっとの彼も、魔力でブーストすればこんなことができるんだなあ。伯爵家の魔力おそるべし……。
「持ってきました、父様」
「ああ、ご苦労。兄貴、これが我が家のプールの秘密、『湧き水の宝珠』です」
ジャニスが差し出した布袋を受け取ったミドラー氏は、中から青く輝く宝玉を取り出した。常に玉の中で光が躍っているような、神秘的な輝きを見せている。これはいかにもすごそうなマジックアイテムだぞ。
ミドラー氏が何やら呪文を唱えると、宝玉はふわりとひとりでに舞い上がって、プールの上へと移動していく。おお、何ともおファンタジーな光景……! そしてプールの真ん中まで来たところで、ブシャアアアアアとすごい勢いで水を放出し始めたではないか。それも川の水とは違う、僕の見慣れた透き通った水だ。すごいすごい! まさしく魔法だ!
興奮する僕に目を細めながら、ミドラー氏が自慢げに口を開く。
「どうです、面白いでしょう。キーワードを唱えると、あのように水が湧き出てくるのですよ」
「あの水、飲んでも大丈夫ですか?」
「え? ええ。これからプールで泳ぐ水ですが……」
僕は好奇心に突き動かされるまま、プールにずんずんと入っていく。そして放出されている水を手で受け止めると、口に運んでみた。
おっ……これは硬水じゃないな。かといって軟水でもない。うまくもまずくもないぞ、完全に無味無臭だ。
……蒸留水? 小学校の頃の理科の実験で舐めたやつがこういう感じだった気がする。不純物が一切含まれてないので、味がしないのだ。水の味って、要するに溶け込んでるミネラルとかの不純物の味なんだよね。
硬水とは別の意味であまり飲用には適さないだろうけど……。
「え、これすごくないですか? このマジックアイテム、プールのためだけに使ってるんですか? もっと他の使い方とかあるんじゃ……」
「ああ……まあ、そうですね。何で農業に使わないのかと思われますよね」
ミドラー氏は困ったように頬を掻いた。
「これは私が結婚するときに、婿入り道具として実家から持たされたものでして。私たちが結婚する直前に、ロングフィールド領が日照りで水不足に陥ったことがあったんです。そのときにロングフィールド家の先代様が、行き遅れていた私を婿に迎える条件として私の家に伝わっていたこの宝玉を譲ってほしいと頼み込んだんですよ。先代様は、これがあれば苦しむ村を潤してやれると大層喜んだのですが……」
もっともな話だ。この島は全体的に水不足になりがちである。乾季があるうえに、クソデカウサギどもが植物を食い荒らしているせいで土の保水力が少ないんだよね。宝玉で川を作ってやれば、どの村も随分と助かるだろう。
「……村の間で水利権争いになりまして。どこの村も自分の村を川上にしろと言い出したわけです。他の村が使った後の濁った水は嫌だ、と」
「ああ……」
なるほどね。日本でも古くから水利権は争いの元になってたもんな。川下になると、上流から農業排水や生活排水が流れ込んでくるわけか。生活インフラは命に直結してるから、妥協できないよね。ましてや行政が作る人工の川なわけだし。
「自然にできた川の流れならそういうものだから仕方ないと納得できても、それが領主の一存で作れる水源であれば、どうにかして自分たちを優先させようとする、と」
「そういうことです。おかげで領内は内乱寸前まで荒れてしまい、さらに噂を聞きつけた隣の領地の貴族までが宝玉を奪い取ろうと戦争を仕掛けようとする始末で。仕方なくこの玉にはそんな大それた力などなかったということにして封印しました。今では夏場にひっそりと内々で水浴びに使う程度ですよ」
便利なのにもったいないなあ……。
僕のそんな考えが顔に出ていたのか、ミドラー氏は苦笑を浮かべた。
「私もこの宝玉も、本来期待された役目は果たせなかったのですが……。それでも先代様は私を義理の息子として可愛がってくださいました。故に私はこのロングフィールド家こそ我が家と思い定めて、今に至るというわけです」
「そうですか……」
なんというか話を聞けば聞くほど、このおじさんに親切にしてあげたくなるな。
僕にできることは限られてはいるだろうけど……。
「でもこのアイテムを眠らせておくのはやっぱりもったいないなあ。来年から野菜の大規模栽培をするなら、水はたくさん必要だろうし……。なんとかして活用できないですかね。たとえばある程度株が増えるまでは野菜の栽培を公共事業化して助成金を出すとかして、この水はそのためにだけ使えという建前にするとか」
じろっ……!
うっ、口に出した途端にすごい視線が。ジャニスが遠くからものすごい眼力で見てきている。え、何? もしかして僕がミドラー氏を騙そうとしてると思われてる? それとも無類の肉好きで野菜栽培に断固反対とか?
ミドラー氏はふーむと顎髭をさすり、僕の提案を吟味している。
「水をどう使うかを監視するまで手が回りそうにないですね……。しかし確かに栽培の公共事業化はいい手かもしれませんな。庭園の野菜もそれほど数があるわけではありませんし、この水を利用して私たちの手元で株を増やし、栽培法を研究してから各村に配る方が良さそうです。よい案をありがとうございます兄貴、少し私の方でも検討してみます」
「う、うん」
さっきからジャニスの視線が留まるところを知らないんだけど。こわいよぉ。
そんな話をしているうちに、プールにはそこそこの水が溜まり始めた。なかなかの勢いだ、これなら農業用水に利用するのも非現実的な話じゃないな。
しかしこうなると……。
「プールより、いっそお風呂に浸かりたいな。この水、お湯にできないかなあ」
「風呂……ですか? このプールをバスタブにすると?」
変なことを聞いた、と言わんばかりにミドラー氏は困惑を顔に浮かべた。
「それは少々難しいかと……。これだけの量の水を熱する手段がありません。このプールの下に薪を焚く空間などもありませんし。ファイアーボールを直接水に叩き込むことは昔から禁忌とされていますしね。何やら水が爆発して大やけどを負うとか」
「あー……水蒸気爆発か」
WEB小説が粉塵爆発と並んで大好きな水蒸気爆発は、水が液体から気体になるときに一気に体積を増やすため起こる現象だ。高温のファイアーボールを直接これだけの水に叩き込んだとしたら、あたり一面に熱湯が飛び散ることになるだろう。さすがにそのあたりは長年の知恵が蓄積されているんだな。昔これやって大事故を起こした魔導士が何人もいたんだろうね……。
えーと、下から薪で熱するとかできない場合に水を安全に沸かす方法があったような……。
「あ、そうだ。石焼き風呂だ」
僕はパチンと指を鳴らした。
「石焼き風呂……ですか?」
「この国にはないのかな。えーとね、カンカンに熱した石を水の中に投げ込むんですよ。そうすると石から水へ徐々に熱が伝わって、水が温かくなっていきます。水に放りこんだとしても石が持ってる熱はすぐには全部放出されないから、ファイアーボールをぶちこむよりも爆発も起こりにくいと思いますよ。それにお湯がなかなか冷めにくいんです」
「ほお……! 水を沸かすのにそんな方法が。兄貴は本当にいろんなことをご存じですね」
「いや、知ってるだけですよ。本当にすごいのはこれを考えた人です」
キャンプで石焼き風呂を試した人がいるって聞いたことがあるんだよね。実のところ、以前に大洗へ家族旅行に行ったときに、鍋の中に熱い石を入れて作るあんこう鍋を食べたのが先だったけど。同じ原理で風呂が沸かせると聞いて、はえ~と驚いたもんだ。どうやってこんなの考え付いたんだろうね、つくづく感心しちゃうよ。
野外で薪で石を熱するとなると結構時間がかかるから、キャンプでやるのは現実的ではないとも聞いたけどね。海外の石焼き風呂では、
「魔法で石を熱する方法なら、薪で風呂を沸かすよりもずっと経済的ですな」
「お風呂で体を温めるのはすごく気持ちいいし、健康にもいいですよ。僕の故郷では湯治といって、病気になったらお湯に浸って治す風習があるんです」
「ほう……? しかし湯で垢を落としてしまうと病気になりやすくなるので、控えた方がいいと医者が……」
「それはとんでもないデマです、忘れましょう! せめて3日に1回は入浴するべきです! みんなもっとお風呂入りましょう! ね!?」
「なるほど……他ならぬ聖者様のおっしゃることなら、間違いはありますまい。わかりました、今後はできるだけ入浴する機会を増やそうと思います」
やったぜ。梅毒に水垢離を勧める医者と一瞬で治す聖者なら、聖者の言うことを信じるのが当たり前だよなぁ? ネームバリューでゴリ押しとかイキリ転生者丸出しで恥ずかしいんだけど、これに関してはゴリゴリで通させてもらう。周囲の人間がクサいと頭痛くなってくるからね。回り廻って自分のための一手だよ、これは。あと僕もお風呂入りたい。
「じゃあ、石を探しましょうか。できるだけ中身が詰まってる感じの、大きめの丸い石をたくさん集めてきましょう。ヒビが入ってたり、中身に空洞があると、熱したときに爆発する危険があるから避けてください」
「わかりました、兄貴! みんな、話は聞いていたな! 手分けして探すぞ!」
『ウッス!』
ミドラー氏の号令で、ソウルメイツはバラバラになって河原へと散っていく。ミドラー氏も気弱に見えて、締めるところはしっかり締めるんだな。日本の武家も正妻がしっかり奥を管理してる家はお妾さんが何人いても大丈夫だったっていうけど、ミドラー氏は貴族の旦那さんとしての役割をちゃんと果たしているようだ。
ソウルメイツもなんだか楽しそうな顔をしているし、石探しもオリエンテーションとして気分転換になっているのかもしれないね。
うっ、また強烈な視線が……。
「…………」
すぐ後ろにジャニスが立っていて、じーっと僕に視線を注いでいた。
この視線は敵意なのか? 好奇心なのか? 共感性が死んでるんでわからないよ。
あー……。
「一緒に石探しする?」
コクリ。
なんかいきなり無口キャラになるやん……。
そういうわけで連れ立って河原へと消える僕たちであった。
……これ、野菜嫌いな彼にいきなり暗殺とかされないよね?
僕は魔法一発で死ぬので、お手柔らかにお願いします。
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※女たちの反応がないと寂しいので、あとがきで追加しました
「旦那様方がみんなで風呂に……!?」
そのとき、屋敷中の女に電流走る――!
「覗いたら処刑だぞ、変な気を起こすな」
警備隊長の一言に、背筋に悪寒が走る――!
「何故です!? 減るものじゃなし、ただ晩のオカズを一品増やしてほしいだけなのに! 旦那様方は聖者様においしいおやつを作ってもらっているのに、我々は見ているだけ……いや、見ることすら許されないというのですか!?」
「うまいこと言ったつもりか!? 旦那様方の裸は奥様だけのもの、それを下賤の目から守ることは我々の仕事だ!」
「えー、横暴だー。お貴族様は使用人の眼なんて気にしないでしょー?」
「そうだそうだー。隊長だって見たいでしょー?」
「見たくないわけ……ないだろうがああッ!!」
警備隊長の頬に、赤い血涙が走る――!
「た、隊長……。そこまで……そこまでの葛藤と忠義を……!」
「お、女や。隊長は女やでぇ……! わかりました隊長、私たち命に代えても覗きません……! 職務を貫きます!」
一方その頃伯爵家の応接室では……。
「……それでですね、ぜひ我がサウザンドリーブズとの間に特産品を交易する便を設けていただければ、お互いの利益になるかと。……伯爵様? オペラグラスを手にどちらへ?」
「悪いがくだらん金儲けの話は後にしてもらおう。今から最高のショーが始まるのでな。貴君は配下の冒険者たちを全員揃えて客室で待っておれ。よいか、誰一人漏らさず抑えておけよ」
「は、はあ……?」
伯爵様、物見塔へ走る――!