【書籍版1巻2/20発売】貞操逆転ハードモード異世界を鋼メンタル冒険者が生き抜く 作:風見ひなた(TS団大首領)
「お゛ーっ♥ お゛ーっ♥ らめえ、天国イグッ♥ 天国イグのお゛お゛っ♥ こんなの気持ちよすぎゆっ♥ イ゛ッぢゃう♥ イ゛ッぢゃうのお゛っ♥ もうらめええええっ♥」
僕の腕の下で汚い喘ぎ声を繰り返し、快感にのたうつ人物……。
もちろんそうさせているのは僕だ。しかしその相手はアイリーンでもウルスナでもない。
スラムの某所に招かれた僕は、事情あってこの人物を快感の淵に叩き落していた。
一体どうしてこんなことになってしまったのか……。
僕はこの人物にさらなる愛撫を繰り出しながら、これまでのことを思い返していた……。
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アイリーンとウルスナという僕には不釣り合いなほど可愛い女の子たちと婚約を結んだものの、即日初夜を迎えるというわけにはいかなかった。
というのも、サウザンドリーブズには公衆浴場がなく、アイリーンたちを風呂に入れてやることができなかったのだ。
慢性的に水と薪が不足している大ブリシャブ帝国だが、別に入浴という文化がなくなったわけではなく、100年ほど前にはどんな街にも公衆浴場が存在したらしい。
お湯に浸かると血行が良くなって気持ちいいのは人間どこも同じだもんね。場合によって領主が施しとして貧民に風呂をおごってやるという、公共福祉も行われていたようだ。
しかし裸になるということはどうしても風俗と結びつきやすい。
日本で言うソープランドみたいなサービスも行われていたんだそうだ……貞操逆転世界だから、主に男が女性に奉仕するという形だけど。
性風俗も社会を維持するためには必要なものなので、庶民のガス抜きとして許容されていたんだね。
ところが新大陸から梅毒が入ってくると話は変わった。
性風俗からあっという間に梅毒が広まり、エロ関係なく公衆浴場を利用する客にまで粘膜感染するようになったため、公衆浴場は次々と閉鎖させられてしまったのだ。なにせこの時代だと不治の病だからね、致し方ないことだと思う。
さて、公衆浴場がなくなったため、庶民たちは自宅で風呂に入らなくてはならなくなった。村落だとまだ村単位で浴場があったり、川で水浴びしたりするらしいので結構身ぎれいらしいんだけど、都市に住んでるとそうはいかない。
アパルトメントに住んでる人の場合は、建物に共用のバスルームを使う。
これはでっかい湯桶みたいな湯船に水を入れて、下から薪で水を炊くという……わかりやすいイメージで言うと木製のドラム缶風呂みたいな感じだ。
なーんだお風呂あるんじゃんと思ったんだけど、この国ってまだ水道がないから水が詰まったタルを水売り業者から買わないといけないんだよ。
ちなみに入浴1回に使われる水の量は大体200リットルらしい。単純計算で200キロもある水のタルを運んでこないといけないし、さらに下水道もないから捨てるときは湯船からまたタルに詰め直して、汚水を処理しないといけない。重労働だね……。
しかもこの国の文化だと、1人が入浴するたびにお湯を全部とっかえる。
これは僕たちの世界でも同じなんだけど、家族でお湯を使いまわすのってアジア限定の文化で、西洋だとお湯を1人ごとに交換するんだって。
つまりその度に水を入れ替えて薪を炊いてお湯を入れ替えないといけないわけだ。まあ、そもそも彼女たちが浸かったお湯は他の人が入れないくらい真っ黒になってるだろうけど……。
200リットルの水が入ったタルとそれを沸かす薪を3人分用意するなんて、さすがに夜になってからできるわけない。というか、数日前から手配しておかないと無理だよ。
そして、これがまたお金がかかるし重労働だ。
これはアイリーンも水と薪がもったいないって言うわけだよ。だからって諦めるつもりなんて毛頭ないけど。
一応アイリーンもウルスナも、髪を洗ったり水を含ませたタオルで体を拭ったりはしてるからそこまで汚いというわけではないんだろうけど、やっぱり……ねえ?
日本人としてはお風呂入って隅々まで綺麗になった状態で初夜を迎えたいじゃないか。
お互い一生に一度しかない脱童貞・脱処女の機会なんだし、体からペロ臭がするのはちょっとね。(キューン……) あれ? 今、犬の鳴き声がしたような。……気のせいか。
そんなわけで次の日に水屋と薪屋に3人分を発注したんだけど、その日の午後にスラムのおじいちゃんに呼ばれてお屋敷に顔を出すことになった。僕がスラムで治療した、脚の悪いおじいちゃんだね。
どうもデアボリカとこのおじいちゃんの間で、僕が彼の家に一か月に一度は訪問するという約束がされていたらしい。
正直、なんでデアボリカがした約束で僕が呼び出されることになるんだ? とは思うんだけど。
スラムのおじいちゃんには暴動が起こりかけたときに民衆を諫めてもらった恩もあるし、僕自身も彼のことは好きだから、顔が見たいというのなら全然行くよ。
ということでアイリーンとウルスナを護衛に、おじいちゃんがアパルトメントまで寄越してくれた馬車に乗って彼の家に遊びに行った。
家といってもスラムだし、こう言っちゃなんだけど彼を治療したときのみすぼらしい格好から、狭いあばら家なんだろうな……と思ってたんだけど。
びっくりしたことに、結構なお屋敷だったよ。
そりゃもちろん伯爵様の御屋敷なんかと比べたら全然小さいけども、今暮らしてるアパルトメントはもちろん、現代日本の一般的な平屋よりずっと大きい。しっかり広い庭もあるからね。
まさかスラムの奥にこんなでかい屋敷があるとは思いもしなかった。しかもかなり綺麗に掃除が行き届いているし……あとなんか警備してる人があちこちにいる。それも結構目つきが悪い女性ばかりで、常に周囲への警戒を怠ってない感じ。
なんというか、こう……。日本で言うと、ヤクザの親分が住んでそうな雰囲気を出している屋敷だった。
「……これが噂に聞く闇ギルドの元締めの黒屋敷か。まさか足を踏み入れることになるとはな」
「闇ギルド……ああ、なんか密輸とかしてるっていう盗賊団のこと? もしかしてウルスナも関係者とか?」
馬車の窓から庭を眺めるウルスナの呟きに聴き返すと、彼女はぶるぶると首を振った。
「よせやい、一緒にするんじゃねーよ。俺はあくまでも
「ふーん? でも男の部屋にワイン持って押しかけてきて、酔い潰して手籠めにしようっていうのは犯罪者のすることだとあたしは思うなー」
「お前が言えた口か!?」
「はいはい、ケンカしないの」
隙あらば口論しようとする2人を宥めながら、僕は首を傾げた。
「じゃああのおじいちゃん、盗賊団の偉い人ってこと? 街の中にこんな屋敷堂々と建てちゃってるけど、領主に捕まったりしないのかな」
「ゴールドン翁ほど力を持ってれば、もう一口に盗賊団とは言えないんだよ。なんせ失脚したとはいえ、元侯爵様だ。今でもあちこちの貴族との強力なパイプを持ってるし、そいつらの領地を結ぶ取引もしてる。
盗賊行為なんざあの人にとっちゃビジネスのひとつにすぎないんだよ。密輸に人身売買、麻薬栽培……後ろ暗い悪事は山ほどしてる。
だけど、スラムの人間にとっちゃ救世主みたいな人でもある。領主が見捨てた貧民たちを食わせてるのは闇ギルドだからな」
「そうだね。あたしが育った孤児院も、闇ギルドからいっぱいお金をもらってたし、食べ物や服も寄付してもらってたからね」
アイリーンの言葉に、ウルスナが頷く。
「もちろんそれは将来的に闇ギルドの人員を確保するためでもあるが……。
しかしそれだけでもない。慈善家としての一面もあるし、銀行業や金貸し業を通じてこの街に富をもたらしている金融家でもあるんだ。だから領主もおいそれとは手を出せないんだよ。
領主のホットテイスト家が市民の王様なら、ゴールドン翁はスラムの人間の王様ってわけだな。サウザンドリーブズ以外のスラムも支配しているから、もしかしたら領主よりも力を持っている存在といえるかもしれねえよ」
「あー……そういうことか」
なんで地方貴族の三女に過ぎないデアボリカが、伯爵様とのコネを持ってるのかなーと不思議には思っていたんだけどね。
デアボリカじゃなくて、スラムのおじいちゃんのコネだったわけだ。なるほどね。
「ねえウルスナ、僕はおじいちゃんにどう接したらいいと思う? これまでの御無礼、失礼仕りましたーとか言って土下座から入るべき?」
するとウルスナは面白くもなさそうに鼻を鳴らし、軽く手を振った。
「おいおい。婚約したばかりで幻滅させてくれるなよ、ユージーン。俺はお前の誰にも媚びないところに惚れたんだ。これまで通りでいいさ、向こうだってそうあってほしいと思ってるだろうぜ」
「ふーん」
僕はにやっと笑うと、すかさずウルスナの唇を奪った。
んっ、とウルスナは目を丸くしたが、そのまま瞳を閉じて舌を絡ませてくる。
しばらく彼女の味を堪能してから、舌を引き抜いた。
「こんな僕でも好き?」
「バーカ。好きだよ」
赤らんだ顔を隠すように額をぐりぐりと押し付けてくるウルスナを、小さく抱きしめる。あー可愛い。はやくエッチしたい。
意表をついてドキドキさせたら女の子は喜ぶっておじいちゃんが言ってたからやってみたけど、効果バッチリみたいだね。さすがおじいちゃん直伝の恋愛テクニックだ。
僕の方を見て何か言いたげに唇を尖らせているアイリーンに手を伸ばすと、嬉しそうに身を寄せてきたので続けて口の中を味わっておいた。
おじいちゃんがモテる男は包容力も大事だって言ってたからね。甘えたいなら好きなだけ甘えさせてあげよう。僕もイチャイチャしたいし。
≪説明しよう!
意表をついて相手を誘惑してドキドキさせ、求められたらどこまでも甘やかす男は、我々の世界では男を溺れさせる魔性の女に相当する!
あとお前の祖父の教えは恋愛テクではなくジゴロの手管だ!≫
ちなみにアイリーンはお風呂は入らないけど、歯磨きは毎日ちゃんとしてるので、虫歯は一本もないよ。
この世界の人、歯磨きはしっかりするんだよ。特に冒険者は徹底している。
冒険者って、怪我を治すときにポーションを経口摂取するじゃない。そうするとポーションが虫歯を治そうとして、気絶するレベルの激痛を発するんだって。戦ってるときにそうなったら悶絶して戦闘不能だからね。冒険者は歯が命なのだ。
もちろんアイリーンも口の中はピカピカで、可愛い舌と絡め合っても大丈夫。ラブ握りしながら、アイリーンが満足するまでキスを繰り返した。
……この子、結構なキス魔だな。吸い付いたらなかなか離れないぞ。僕もこの子が安心してキスできるよう、毎日歯磨き頑張らなきゃな。
そんなことを考えながら、扉を開けた御者さんが気まずそうに咳払いするまで、僕はお嫁さんたちとイチャイチャしていたのだった。
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「おお、よくいらっしゃいました。ささ、どうぞどうぞ、こちらにお座りください」
久しぶりに会ったギルドのおじいちゃん……ウルスナから教えてもらったようにゴールドン氏と呼ぶけど、彼は以前とは見違えるようなきれいな服を着ていた。燕尾服に身を包んだ様は、絵に描いたようなジェントルマンだ。
この世界にイギリスはないけど、イギリス紳士がこういう服装をしているのを写真や映画で見たことがあるよ。異世界のはずなのに似たような服があるのって不思議だなあ。文化の収斂進化ってやつだろうか?
ゴールドン氏はどうやら犯罪結社のボスらしいけど、僕にはニコニコと好々爺の笑みを見せている。こうして見る限りだと、どこにでもいるようなおじいちゃんだ。
「こんにちわ、遊びに来ました。脚の加減はその後どうですか?」
「ええ、すっかり元気になりましたよ。今ではそこらに散歩に出かけていましてな。もう20歳は若返った気分ですわい。これも御使い様の御蔭で御座います」
「それはいいですね。散歩すると脳が活性化して、ボケにくくなると聞きますし。健康のためにぜひお散歩する習慣を続けてください」
「はい、御使い様のおっしゃることでしたら喜んで。……せっかくの楽しいひとときです、ひとまずお茶にしませんか。もちろんお連れの方にも運んでいますぞ」
ゴールドン氏の言葉を見計らったように、メイドさんがワゴンを運んでくる。
当然のように男性のメイドさんだ。
ちなみにアイリーンとウルスナは隣の部屋に待たせている。元侯爵様だし、マフィアのドンだし、平民が直接相対できる身分ではない……ということで、ウルスナとアイリーンが遠慮したのだ。
僕にはよくわからないけど、そういうお約束があるらしい。
でもお茶もいいけど、ティータイムが始まると長くなっちゃうんだろうなあ。
せっかくならひと仕事を終えてリラックスしながらお茶を楽しみたい。
そんなわけで、
「お茶は後でいいですよ、待たせている人がいるんじゃないですか? 苦しんでいる人たちは早く治してもらいたいでしょうから、先にそちらの用を済ませたいです」
「おお……。デアボリカ嬢からお聞きで?」
「ええ。10人程度治してほしいと聞いてます」
デアボリカから、ゴールドン氏に顔を見せるついでにスラムの病人を治しておけと言われているのだ。
というか、スラムの病人を治療するのが主な目的で、後はどうでもいいと言わんばかりの口ぶりだった。
「……あれも使い程度のことはできるのですな……。いえ、失礼を。御使い様がそうおっしゃるのでしたら、すぐに彼女らのところへご案内しましょう」
別に10人ぽっちじゃなくても、50人でも100人でもいいんだけどな。
これ、どっちが10人治せって言い出したんだろ。
正直ぽつぽつと連れてこられても手間だし、後回しにされて手遅れになった人が出ても可哀想だし、いるだけ連れてきてくれないかなあ。
大量に治したら医者が困るっていうけど、どうせその医者は最初からスラムの人たちを助けるつもりなんてないんでしょ? じゃあいるだけ僕が治しちゃってもいいんじゃない?
……あ、それとも治療費がかかるから遠慮してるとか?
「あの、治療費のことですが……」
「ご心配なく。もちろん、御使い様の御望みの額をお支払いいたします。伯爵家では1人あたり金貨6枚で治されたそうで」
おいおいデアボリカ。僕には金貨3枚をくれたけど、話が違わないかい?
まあいいけどね、あいつが連れていってくれてくれなきゃ僕も稼げないわけだし。
それよりも。
「そんなにいらないですよ、前と同じで銀貨5枚でいいです」
「なんと? しかし……」
「僕はスラムの人たちからは銀貨5枚しかもらわないと決めました。僕の望みの額をお支払いいただけるんでしょう?」
銀貨5枚、現代日本の価値だと700円ってとこだね。それでいいよ。デアボリカからいくらもらえなんて指示も受けてないし。
金は余ってるところからもらえばいいんだ、その日のパンにも事欠くような人たちからもらっちゃいけないよ。
なんせ僕もほんの一か月前まではめちゃめちゃ貧乏なウサギ狩り生活だったからね。爪に火を点すようなひもじい思いは多少わかってるつもりだ。
「ああでも、もしもおじいちゃんがもっと僕にお金を払いたくて仕方ないっていうのなら……」
「はい」
わずかに身構えたゴールドン氏に、僕はにっこり笑って告げた。
「その差額は、孤児院への寄付とか、働けない人たちへの炊き出しとかに使ってくれませんか? 栄養は病気を遠ざけるのに一番必要ですから。病気の予防をすれば、僕も病気を治す手間が省けて助かります」
「…………っ」
ゴールドン氏は深く頭を下げて、肩を小さく震わせた。
「貴方様の高徳の志、しかと……。この儂の名にかけて、必ずお言いつけ通りにいたします。スラムの民にも貴方様よりの施しと重々言って聞かせましょう」
「あー……別に僕からだなんて言わなくていいですよ? 僕がそうしたいだけなので、気にしないでください」
みんなが元気になってくれたら病気を治す手間が省けるのは本当だし、そもそもゴールドン氏の財布から出るお金なんだから、それはゴールドン氏からの施しだもんね。
それに何より、アイリーンが孤児院育ちってさっき本人から聞いちゃったからね。
本音を言えば、僕のお嫁さんを育ててくれた孤児院に少しでもお返しができたらいいなってだけなんだよ。これは僕のエゴなんだから、そんなに大げさに感激されても困っちゃうんだよなあ。
「さ、それより患者さんはどこです? 首を長くして待っているだろうし、早く案内してください」
「は……ははっ! こちらです!」
ささっと治しちゃって、お嫁さんたちとイチャイチャしたいなあ……。
そんな不埒なことを考えながら、僕はゴールドン氏の後をついて歩いた。
あ、病気はサクッと治しておいたよ。
特に聖水とかのハッタリもしなくていいでしょ、格安料金だからそのくらいの手抜きはね。いやー、無駄に儀式に凝る必要ないと楽だなあ……。