【書籍版1巻2/20発売】貞操逆転ハードモード異世界を鋼メンタル冒険者が生き抜く   作:風見ひなた(TS団大首領)

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第53話「鋼メンタルでラブホを予約し抜く」

「おい! お前ら、私の屋敷で(みだ)らな行為に耽ろうとしているんじゃないだろうな! 私の眼が青いうちは、絶対にそんな行為は認めんぞ!」

 

 僕たちが屋敷に戻るなり、肩を怒らせて駆けつけてきたデアボリカは開口一番そんな風紀委員じみたことを口にしたのだが。

 

「「フーッ……フーッ……(ギロリ)」」

 

「ひっ」

 

 ウルスナとアイリーンに殺意全開の視線を向けられ、ビクンと体を跳ねさせて後じさった。

 うーん。あまりにも弱い……。

 

 という光景を、僕はウルスナの肩の上で簀巻き状態で担がれながら見ているよ。

 なんか僕たちが帰ってきた直後、出迎えてきたメイドさんが僕を一目見るなり真っ青な顔で屋敷の奥に走って行った。それからすぐにデアボリカが駆けつけてきたのだ。

 なんだろうね? すごい慌ただしい動きだった気がするけど。

 

 

≪説明しよう!

 信じて送り出した聖女が、屈強なコワモテ冒険者たちに縛られ肩に担がれた状態で戻ってきた状態である! しかも冒険者たちはギンギンにチンポを勃起させてこの上なく発情していることがありありとわかるものとする!

 やべーぞレイプだ!!≫

 

 

 だがデアボリカはここで踏みとどまり、キッとウルスナとアイリーンに力強い視線を送る。

 

「そ、そんな目で見ても無駄だぞ! 私はこれでも元冒険者ギルドのマスターなんだからな! いくら将来有望でも、中堅とルーキーが私とやりあえるとは思わないことだ!」

 

 アイリーンとウルスナは顔を寄せ合うと、ひそひそと言葉を交わした。

 

「どうするの、処す? 処す?」

 

「いや、ここでバラすのはまずい。やるならもっと証拠が見つからない場所で……」

 

「ふ、不穏な相談をするんじゃない!」

 

 おや。なんかアイリーンとウルスナが仲良くなってるね?

 うんうん、お嫁さんたちの仲がいいことはとてもいいことだよ。

 できればもうちょっと別の形で仲良くなってくれてたらもっとよかったけどね。

 

 デアボリカは大きな胸を張ると、堂々と言い放つ。

 

「ともかく! 私の屋敷で我が物顔に猥らな行為に耽るのはやめてもらおう! この屋敷ではどんな行為であれ、セックスは絶対に禁止だ!」

 

「フシャーーーーッ!」

 

「グルルルルルル……!」

 

「ひぃっ」

 

 アイリーンとウルスナはあまりにも一方的な宣言に、殺意を隠そうともせず威嚇音を発した。性欲に正直でかわいいね。

 

「わかった。お互いの健全な生活のために、その提案を呑もう」

 

「ユージィ!?」

 

「どういうことだユージーン! 俺たちとイチャイチャするなって言われてんだぞ!」

 

 恋人たちの悲鳴に囲まれながら、僕は簀巻きにされたまま重々しく頷いた。

 

 確かに今夜が初夜だ! とウキウキしていたアイリーンとウルスナが悲鳴をあげる気持ちもわかる。僕だって正直つらいよ。

 でも僕としては、デアボリカの気持ちもわかるんだよ。共感性が失われている僕だけども、現代日本での経験があるからね。

 

 たとえばそう、あくまでたとえ話なんだけど。

 大学のゆるい文化系サークルのサークル棟で、彼女ほしいよなーなんて愚痴りあう非モテオタクの集団がいるとするじゃん? それがある日突然そのうちの2人に可愛い彼女ができて、所かまわずイチャつき始めるわけ。で、部室棟の一角をヤリ部屋にしちゃって、毎日毎日アンアンアンアン喘ぎ声が漏れ聞こえきたり、明らかに事後の女の子の腰を掴みながらニヤケ顔の男がうろついてたりする。どう?

 

 殺してやりたくなるよね。

 

 自分の知らないところでやるなら何やろうが別にいいんだよ。所詮他人だしね。

 でも自分の縄張り(テリトリー)の中で他人にイチャイチャエロエロされると、非モテからすると本気で殺意が湧くんだ。

 

 僕もそういう経験があるから、デアボリカの気持ちもわかるんだよ。

 少なくとも当面の間はデアボリカとはこの屋敷をシェアハウスするわけだし、相手の精神的な健康を守るという意味で譲歩は必要だと思うんだ。

 

 あとね、これは僕たちのためでもあるんだけど、好きにイチャイチャできると絶対に歯止めを失う。20歳そこそこの健康な男女が毎日種付けセックスし放題していい権利をもらったら、そりゃ溺れるでしょ。それまでの人間関係破綻してでものめり込むよ。賭けてもいい。

 なんせ件の連中、本気で周囲にキレられてサークル棟追い出されるどころか、退学処分まで行ったからね。よほど半羞恥プレイのヤリ部屋ライフが気に入ったらしい。

 

 僕は2人がこれから出世していくためにも、そういう性欲で身を滅ぼすような可能性は防ぎたい。だから屋敷内ではイチャイチャはともかく、セックスは控えたいのだ。

 

 ……ということを大学やサークルといった彼女たちには理解できない単語を伏せながら説明したところ、ウルスナもアイリーンも確かに……と納得してくれた。

 

「俺たちにそこまで自制心がないとは思わねえけど、ナーロッパ人はセックスのことになると人が変わるとは言うからな」

 

「あたしたち、自分のことばかりでデアボリカのこと考えてなかったね。ごめんなさい」

 

 うんうん、2人ともさすが僕の恋人だ。ウルスナの判断力も、アイリーンの素直さも、とても好ましいよ。

 

「おい、私を非モテ呼ばわりとは何事だ!?」

 

 せっかく条件を呑んだのに突っかかってくるデボ子は、とても好ましくないね。

 そんなデアボリカに、ウルスナは眉を寄せる。

 

「じゃあお前恋人いるのか?」

 

「今はいないが……」

 

「これまでいたことは?」

 

「ないが……」

 

「へっ。じゃあ非モテなんじゃねーか」

 

 半笑いで肩を竦めるウルスナに、デアボリカは八重歯を剥き出して吠えた。

 

「違う! 私は恋愛やセックスなどという低俗なものに興味がないだけだ! 私の高邁な知性は、名誉や地位というより高尚なものにこそ興味を注ぐべきなのだ! あの男がエロいだの、どこの誰に彼氏ができただの、そんなくだらん話に振り回されるか! 愚物どもが!」

 

 さすがデアボリカだ、言うことが違うなあ。

 

「また名誉を求められるような地位にまで這い上がれるといいね」

 

「ぶ、ぶち殺すぞ貴様!? 私がすべてを失ったのは誰のせいだと思っている!?」

 

「100%お前のせいだと思ってるよ」

 

「ぎいいいいいいいい!!」

 

 僕が応援してあげると、デアボリカはちょっと元気になったみたいだ。よかったね。

 

「もういい! 交尾しか頭にないお前らサルに付き合っていられるか! 私はもう出かける! 私がいないからといって、絶対に屋敷内でセックスするなよ!」

 

 デアボリカはそんなことを言い捨てて、背中を向けた。

 はて? こいつはもう屋敷から出ないなんて泣いてたと思ったけど。

 

「どこに行くの?」

 

「何故私がお前なぞに予定を教えねばならん! いや……姉様に呼ばれて高級店で接待を受けるのだ! くくくっ、貴様ごときが一生かかってもいけないような、この街一番の高級店だぞ! 羨ましかろう、ハハハハハハ!」

 

 言いかけた途中で自慢モードに切り替わったらしく、くるりと振り返ってきた。

 得意げな笑みを浮かべ、見るからにウキウキとした表情をしている。

 クルクル変わるのは手のひらだけじゃなかったんだな。

 なるほど、アンゼリカさんとご飯か。当のアンゼリカさんにすべてを奪われたわけだけど、話を聞く限りは姉妹仲は悪くないようでよかったよ。

 

「まあ私も一度処分を受けて、後ろ暗い行為の清算をすべき頃合いだったからな。ここからまた姉様に便宜を図ってもらい、再起するというわけだ。ふふふ、ふははははは!」

 

「そっか、よかったねえ」

 

「……あの女がそんな甘い裁定をするとはとても思えねえけどな」

 

「しっ」

 

 白い眼を向けるウルスナに、小さく声をかけて黙らせる。

 何はともあれ、デアボリカが希望に満ち溢れていてよかったじゃないか。

 というか、ウルスナはやっぱりどっかであのやり取りを見てたよね?

 

 まあもう夜も更けてきたし、今日は闇夜で足元も悪い。とりあえず転ばないように気を付けてねって忠告しておくか。

 

「せいぜい、月のない夜に気を付けることだな」

 

「な、なんだ!? 脅しか!? やっぱりセックス禁止に怒ってるのかお前!? 私はお前ごときの脅しなんかには屈しないからな!!」

 

 デアボリカはビクッと全身を跳ねさせながら、ひっひっと荒い息を吐いていた。

 うーん? なんか翻訳スキルが誤作動したかなあ?

 

 

 

 

「で、結局どーすんだ? あいつマジで出かけたし、見られてなきゃバレねえだろ」

 

 簀巻きから解放されてソファーに座った僕は、ウルスナにゴロゴロと肩に甘えかかられながら、耳元で熱い息を吐きかけられていた。

 なんかライオンとかトラとか、大型のネコ科の猛獣にじゃれつかれてるような感覚がある。決して襲われることはないとわかってても、甘噛みひとつで大怪我させられそうなスリルがあるね。おくびにも出さないけど。

 

 ちなみにアイリーンは僕の膝に頭を乗せてくつろいでいるよ。

 こっちは犬っぽいね。

 見た目は小型犬だけど、戦闘力と気性は歴戦の土佐犬もかくやのバリバリの闘犬だ。甘えてくるうちは無害だから全然怖くないよ。よしよし。(くぅーん……)ん? なんか犬が羨ましがる声がどっかから聞こえた気がする。幻聴かな。

 

 まあそれはさておき。

 

「いや、一度約束した以上はそれを破るのはよくない。大丈夫、僕だって今夜を初夜にするつもりだ。ちょっと友人に連絡してみるね」

 

 そう言って、僕はポーチから六角錐型のクリスタルを取り出した。

 これは先日ある人からいただいた、通信機の魔道具だ。これと対になっているクリスタルがあり、その持ち主と会話できる。バイブレーション機能で相手に受信通知を知らせる優れものだ。

 

 これがあれば電話なんていらないじゃん! と思う一方で、これのせいでこの世界では電信技術の発明と普及が遅れそうだなあという予感もある。クリスタルを持つ者同士じゃないと会話できないうえに、かなりの高級品というデメリットもあるので、将来的には電信技術を研究した方がいいとは思うんだけどね。

 

「もしもし、おじいちゃん? 僕だよ僕僕。そう、僕。ちょっと困ったことがあるんだけどさあ」

 

「……ユージィ、何か危ない話してない……?」

 

 ん? そう言われればオレオレ詐欺みたいだな。

 こういうのの怪しさって、異世界共通なんだね……。

 

『おお、御使い様! なんでもおっしゃってくだされ。儂にお力になれることでしたら、何でもさせていただきましょうぞ!』

 

 そう、通話の相手はゴールドンのおじいちゃんだ。

 この前、彼の体調が急に悪くなって今日はお引き取りを……となったときに、お土産としてこれを渡されたのだ。

 呼びつけておいてろくな饗応もなしで帰してしまう詫びとして、困ったことがあったら何でも頼ってほしいと言われたのだった。

 

 あまり人におねだりするのも悪いな……と思いつつ、ちょっとしたお願いをする程度なら構わないだろうとも思う。

 

「夜分ごめんね。ええとね、実は家でエッチなことするなってデアボリカに釘を刺されちゃって困ってるんだ」

 

『ほう、なるほど。あのガキがまだ身の程もわきまえずそんなことを。わからせますか?』

 

「いや、それについては僕もごもっともだと思うよ」

 

『相変わらず御使い様の懐は海よりも深うございますな……』

 

 そんな言われるほどのことでもないけど。

 おじいちゃんの方こそ、相変わらず僕を買いかぶってるなあ。

 

「それでね、おじいちゃんを見込んで聞きたいんだけど……この街で恋人とエッチなことができるお店って知らない? できれば一緒に入れる広いお風呂がついてるとうれしい」

 

 要するにラブホだよ、ラブホ。古い言葉だと連れ込み宿か?

 こんなこと恥ずかしくて、女の人には訊けないからね。

 ゴールドン氏なら、僕の気持ちが通じるはず。

 何せ同じ男性だし、長生きしてるから若い男の気持ちもわかってるよね。

 

『儂を見込んでそれを尋ねなさる……わかりました。この儂のメンツにかけて、最上級の店を用意いたしましょう』

 

「え、最上級……?」

 

 最上級のラブホって何? ベッドがぐるぐる回るとか? いや、それは普通のラブホでもあるやつか。全然想像がつかないぞ。

 

「いや、最上級とかそこまで大きな話にしなくても」

 

『ご安心を! 貸し切りになっておりましたが、儂が一声かければ簡単に空けさせられますわい。この街で御使い様より優先されるべきものなど御座いません! どうぞ最高の夜をご堪能くだされ』

 

「ええ、いいの? 急な話なのに、紹介だけじゃなくてそこまでしてもらうなんて……なんだか悪いなあ。料金はいくらぐらい払えばいいの?」

 

『お代などとんでもない! 儂の傘下の店ですので、お気になさることはございません。いくらでも好きなだけタダで楽しんでいただいて構いませんぞ』

 

「いやいや、それはさすがに悪いよ。いくら僕とおじいちゃんの間でも、そこはきちんとしなきゃ」

 

『ふうむ……しかし正規の料金ですと結構な額に……。いえ、でしたらこうしましょう』

 

 ゴールドン氏は声を潜めると、ぼそぼそと耳打ちするように囁いた。

 

『実はその店のキャストが、客から病気をうつされたという疑惑がありましてな……。性病対策は万全だったはずなのですが、事実なら由々しきことです。利用料金の代わりにするとは何とも不遜なことですが、よろしければ彼らに治癒の奇跡を授けてはいただけませぬでしょうか?』

 

「え、そんなことでいいの? やるやる」

 

 そんなの僕の十八番(おはこ)じゃんね。

 もう目を閉じてても簡単にできるよそんなの。

 

「じゃあそっちに着いたら真っ先に治療するね」

 

『おお……承知いたしました。それでは御使い様が到着する前に、店には話を伝えておきましょう』

 

「やったあ! よろしくね!」

 

『ときに……相手というのは、先日紹介いただいたあの2人のことでよろしいのですな?』

 

「うん、そうだよ?」

 

 するとゴールドン氏は、何やら深い深いため息を吐く。

 なんだろ。

 

『……本当にそれでよろしいのですな?』

 

 ゴールドン氏って結構僕のおじいちゃんを気取ってるところあるし、儂の可愛い孫をどこの馬の骨とも知れぬ娘にはやれぬ!みたいな?

 そう言われても、こればかりは譲れないよ。

 なんだか不安そうな顔でこちらをうかがっているウルスナとアイリーンの頭を撫でて、僕はきっぱりといった。

 

「よろしいも何も、僕にはもうこの2人以外考えられない。僕は何があっても、生涯を懸けて2人を愛するつもりでいるよ」

 

『……わかりました。御使い様がそう仰るのでしたら、儂も肚を括りましょうぞ』

 

 え、ラブホを紹介するのってそこまで覚悟がいる話なの……?

 

『では1時間ほどしましたら、使いの馬車を寄越します。店の名は“蜜月楼(ハニームーンパレス)”と申します。店の者に儂の名を出してくださいましたら、すぐ入れますわい』

 

「“蜜月楼”だね、わかったよ。いろいろありがとう。じゃあまた再来週にでも、そっちに遊びに行くね」

 

 僕がその名を口にした途端、ウルスナの体がびくっと跳ねた。よしよし、どうしたどうした。ゴロゴロ。

 

 実の祖父とでも会話するかのような気楽さで、僕は通話を終える。

 ゴールドン氏とはもうツーカーの仲だね。

 まあ祖父からラブホを紹介してもらう孫がいるかって話だが。

 

「ようし、今から初夜だ! 出かける準備をしよう!」

 

「……なあ、今“蜜月楼”って聞こえたんだが。まさか今からそこに行くのか?」

 

「うん。あれ、もしかして有名なラブホ?」

 

 超マニアックな道具が揃ってたりとか……? いや、SMとか興味ないんだけどね。

 やっぱり最初はオーソドックスに純愛イチャラブだよね。

 

 ウルスナは眉根を寄せながら、やや引きつった笑みを浮かべた。

 

「そこ、この街で最高級の娼館だぞ。金色の蜜のごとき甘い夢と共に無限の金を搾り取る、腰を据えて遊ぶなら万金を用意して臨めと言われる遊郭。それが“蜜月楼”だ」




ちょっと前の話で娼館フリーパスもらってる一文が入ってたんですけど、あれは消し忘れなので記憶から削除しちゃってください。
その日のうちに消したので今は入ってないです。
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