【書籍版1巻2/20発売】貞操逆転ハードモード異世界を鋼メンタル冒険者が生き抜く 作:風見ひなた(TS団大首領)
「それにしても、この娼館って黒髪の人が多いんですね」
一列に並ぶ娼夫たちの頭をぺちぺちと叩いて治しながら、僕は腕組みをしながら横に佇むアレス氏に話しかけてみる。
いや、なんかすごく気になってたんだよね。50名くらいいるみたいだけど、その7割くらいが黒髪なんだよ。
あと、体をそこそこに鍛えてる人も多いね。
やっぱり体が資本だからなのかな。それは結構なことだよ。運動習慣はあったほうがいいね。毎日セックスだけしてる生活って絶対体に悪いもん。
するとアレス氏は、すごく複雑そうな顔で何やら口ごもった。
はて。何か変なことを言っただろうか。
「あー……えーとね、それはその……」
「天使様ブームですよ!」
僕の治療を受けている娼夫が、ニコニコの笑顔で口にした。
……てんしさまぶーむ?
「なにそれ」
「今、この街の女の間では天使様が大人気なんです! 聖者様もご存じですよね、天使様。聖者様みたいに病気を治してくれて、髪が真っ黒で、すごくエロい引き締まった体をしてるんですって! だから僕たちもニーズに合わせて、髪を黒く染めてるんですよ!」
「オイ!」
アレス氏がドスの利いた声を上げると、娼夫はびくっと体を震わせながらどうして怒られたんだろうといった顔をした。
あー……。つまり、それってさ。
「これ、僕の真似なの……?」
「……ごめんねぇ。聖者ちゃんには気づかせないまま帰ってもらいたかったんだけど」
アレス氏が申し訳なさそうに頭を下げる。
「え、聖者様って天使様と同じ方だったんですか!? すごいや!」
「ちょっとテメエは黙ってろ!」
アレス氏にキセルでどつかれ、娼夫は頭を押さえながら涙目でへたり込む。
「娼夫に真似されるなんて、カタギの男にとっちゃ気分良くないわよねぇ。黙ってるように言ったつもりだったんだけど、天使様と聖者ちゃんが同一人物だって気づいてない頭の軽いアホがいたなんて思わなくて」
「いや、それは別に構わないんだけど」
僕はへたり込む娼夫の体にジロジロと視線を向けた。
ふーむ。
「僕のコスプレにしては、ちょっと筋肉の付け方が甘くないか?」
「えっ」
娼夫の体に手を伸ばし、もみもみと全身の筋肉の付き具合を確かめてみる。
「上半身だけシェイプアップしてる感が出てるんだよな。これマジ? 上半身に比べて下半身が貧弱すぎるだろ。もうちょっと全身運動を心掛けないと見せ筋にしてもバランスが悪いよ」
「それは確かに。この子たち、あんまり動かないから運動の仕方がわかってないのよね。見習い時代は雑用するけど、それだって全身運動ってわけでもないしね」
最初は目を丸くしていたアレス氏も、筋肉の話題になるとふむふむと身を乗り出してくる。さすがアレス氏だ、僕の言いたいことを理解できると思っていたよ。
「アレスさんの筋肉はいいね、立派な下半身だ。毎日相当自分をいじめてると見た」
「ふふ、一流の娼夫は腰遣いができなくちゃ立ちいかないわ。プランク、ヒップリフト、ニートゥチェスト、階段昇降に反復幅跳び*1を日に50セット。この道に入ってから下半身の鍛錬を欠かした日は一日としてないわよぉ」
「素晴らしい。彼らは同じメニューをこなさないの?」
僕が視線を向けると、娼夫たちは顔を青ざめさせながらぶるっと体を震わせた。
アレス氏は頬に手を置き、ふうっとため息を吐く。
「この子たち、私のことを狂ってるだとか筋肉達磨だとか陰口を叩くのよぉ。聖者ちゃんの真似をするにも見せ筋だけ。筋肉を鍛える暇があったら化粧を覚えたいだの、美容を保つ方が大事だのなんて言うの。俺を追い落としたいなら、俺以上に筋肉を虐める根性を見せろってんだよ、ねーえ?」
「まったくその通りだ。アレスさんが正しいよ」
うんうんと僕が頷くと、娼夫たちは何やら絶望でも目の当たりにしたような顔をした。僕、何か変なことでも言ったかなあ。千里の道も一歩を踏み出すための筋肉作りからだよ。筋肉を信じろ、筋肉はすべてを解決する。
あれ? 最後尾の方に交じってる女の子たちが、ドン引きした顔をしてるね。
「あの娘たちは?」
「ああ、あれは娼婦よ」
「へえー、女の子もいるんだ」
それはびっくりだね。てっきりこの世界、体を売るのは男ばかりかと思ってたよ。
やっぱり金持ちのオッサンが買いに来るのかな? へへへ、趣味が合うじゃねえか。
「ええ、お客様にもちょっと変わった嗜好というか……男よりも女の方が好みだっていう方もいらっしゃるのよ」
残念だ、趣味が合わないようだね。
いや、百合カップルっていうのも悪くないな。ふーむ。
僕がじろじろとその中で一番かわいいロングヘアの娘に視線を送ると、彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめながら俯いた。げへへ、ええのうええのう。というか、もしかしてちょっと脈あり?
いやーまいったな。おじさん百合に挟まる男ポジになっちゃうぞブヘヘヘ。
「ちなみに今聖者ちゃんが見てるのは男の娘よ」
「クソッ!」
おのれ多様性! 僕を弄んでそんなに嬉しいか!
あっ、僕を上目遣いに見て投げキッスとかしてくるんじゃない! 僕は男なんて抱かないぞ! そっちはなんで乗り気なんだよ! スカートをたくし上げるな! デンジャラスゾーンでちらちら白フリルのパンツをチラつかせるのをやめろ! 本当に男かお前!?
「……聖者ちゃんもしかして、男が好きなの?」
「絶対にノゥ!! というか、今日ここに来たのは嫁さんを抱くためなんですが!? 新婚初夜を迎えに来て、なんで男の娘の絶対領域で挑発されなきゃいけないんだよ!」
「あらぁ、残念ねぇ」
そう言ってアレス氏は、艶めかしい笑みを浮かべた。
アレス氏? 冗談だよね?
もうやだぁ。鋼メンタルにも金属疲労というものがあるんだよ。
とっとと治療終えてプレイルームに帰ろう。
そう思いながら治療を進めていると、何やらドアの向こうが騒がしくなってきた。
はて? なんじゃらほい。
「困りますお客様! ここは今、大事な業務をしているところでして……」
「ええい、うるさいぞ! 今日は貸し切りということで予約をしていただろうが! それを綺麗どころが上から全員不在とはどういう了見をしているのか! 人気もないブス男どもに酌をさせるために高い金を払ったのではないのだぞ!」
「それはその……ともかくこちらの用事が済み次第、すぐに人気のキャストをそちらに向かわせますので、どうかご勘弁を」
「ええい、これ以上一分でも待てるか! 入らせてもらうぞ!」
その叫びとともに、ドアが蹴破らんばかりの勢いで開かれる。
扉の向こうに立っていたのは、真っ白なワンピースドレスに身を包んだ十代後半くらいの少女だった。赤茶けた色合いのセミロングヘアにフリルで作った花飾りのついた帽子を被っており、一見すると深層の令嬢といった感じの風体だ。
しかしその顔は知性と自信に満ちており、口元から覗くギザ歯がどうにも隠し切れぬ性格の悪さを漂わせていた。
「ふん! いるじゃないか、綺麗どころがずらりと! 今すぐこいつらを連れて行かせてもらうぞ。何、全員とは言わん。10人もいれば十分だ」
そう言って、少女はふんふんと部屋中に視線を向けて品定めを始める。
「そうだな、あの方のお好みから考えて……こいつとこいつとこいつと……」
少女は順番に娼夫たちに指をさして指名していく。
おっ、若くて比較的いい筋肉をしている美少年を選んでいくね。なかなか見る目があるじゃないか。
「それから……少し年がいっているがこいつと」
「…………」
あ、アレス氏が指名された。なんかすごいじっとりとした視線を向けている。
店のナンバーワンなのに後回しに指名されたことに内心ビキビキしてそう。
「それとこいつだ」
「僕ぅ?」
おっと、僕が指名されちゃいましたよ。参ったなあ。
「お客様、本当に困ります」
「うるさい! いいから早く支度をさせろ!」
腕をつかんで制止しようとするスタッフの腕を払い、ギザ歯を剥き出しにして恫喝する少女。
そんな彼女の態度に、アレス氏が低い声を漏らす。
「おいお嬢ちゃん、いい加減にしろよ。あたしらは構わねえよ、所詮人の道を踏み外した奴らだからな。だがこのお方は……」
「ま、いいよ。何? 僕にお酌してほしいの?」
そう言って僕はにこりと笑いながら、アレス氏を制止した。
僕の言葉が意外だったのか、アレス氏は黙って僕を見下ろしている。
すると少女はフンと鼻を鳴らし、そこそこ豊かな胸を反らした。
「なんだ、本人は乗り気じゃないか。顔は地味だが、よくよく見ればなかなかエロい体つきをしている。フン……つまらないキャストで茶を濁そうとしてくれた分、お前には何か面白い芸のひとつでも披露してもらおうか!」
「このガキが……! いくら金払いが良かろうが、限度ってもんがあるぞテメエ!」
「あぁん? なんだ、賤しい娼夫風情が口を出すな。私を誰の家臣だと思っている?」
やべーな。
このメスガキ、面白そうな予感しかしない。
こんなのを連れ歩いてる主人がどんな顔してるのか、私気になります!
これはどうあっても、お座敷に呼ばれなくっちゃ。
「いいとも……僕のとっておきの芸を披露してあげようじゃないか!」
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「ホーカンちゃん、遅いわね~。どこまで行っちゃったのかしら~」
そう言ってアンゼリカはブランデーの入ったグラスを傾けた。
「そ、そうですね姉様。きっといい酌夫を探すのに時間がかかっているのですよ」
「まあいいんだけどね~。あの子おしゃべりなわりに、内容があまり楽しくないし~」
そう言って、薔薇の形を象った砂糖菓子をコロンと口の中に放り込む。
齧るのではなく、ゆっくりと舐めて溶かし、そしてブランデーをもう一口。
「うん、お酒はおいしいわ~。今日はキャストさんの質もいまいちだけど、これだけは店の格に合ってるわね~」
面と向かっていまいちと言われた娼夫たちが、内心の歯噛みを抑えてぎこちない笑みを浮かべる。
彼らは顔立ちは整っているのだが、質は足りていない。内心の不満と外面の笑みを切り離し、艶やかな笑みを浮かべながら心にもない美辞麗句を紡げてようやく二流なのだが、彼らはとりあえず顔立ちが整っているからと時間稼ぎに宛てがわれた修行中の身だった。
本来この店は今日貸し切りのはずで、店中の綺麗どころの娼夫たちがこぞってアンゼリカたちを接待する予定だった。それが突然予定が変わり、重要な業務が入ったとのことで急遽上位のキャストたちが別の部屋に集められているらしい。
誰でもいいから頼むから早く戻ってきてくれ……と姉の隣でデアボリカはぷるぷる震えていた。だってあからさまにアンゼリカが不機嫌なのだ。
「今日のお詫びに、明後日はいいお店でデアボリカちゃんをもてなしてあげるわね~。そうね、“蜜月楼”がいいかしら~」
一昨日の会議後にアンゼリカからそう言われたとき、デアボリカは天にも昇る気持ちだった。
これはもう一度チャンスをくれる流れに違いない!
そうとも、優しいアンゼリカが妹を見放すわけがないのだ。今回は対外的に示しをつけなくてはいけないから一時的に処分を受けただけで、すぐにまた元の地位に戻してくれるはず。
そう確信したデアボリカは、姉の招待を受けた。場の盛り上げ役として腹心の部下も連れてきた。
ちなみに部下の名前はホーカン・ドラムベアラーという。
雄士が聞いたら「
ホットテイスト家から先々代で分家した家の出身で、騎士なのだが武芸はさっぱりで事務仕事の方がうまい。そしてそれ以上に熱心なのが陰謀とご機嫌とりで、デアボリカをひたすらヨイショして気に入られ、腹心のポジションに収まった。つまり似た者主従だ。
なお、本人は既に落ち目のデアボリカに見切りをつけており、この機に手柄を立ててアンゼリカに乗り換えるつもり満々である。
だから店側がいまいちな酌夫しか出してこないと見るや椅子を蹴立てて憤慨してみせ、自分が行ってまともなキャストを首に縄をかけてでも連れてきますよ!と場を離れたのだった。
私をこの空気の中に置いていくなよ!とデアボリカは内心で絶叫した。
アンゼリカは今、非常に機嫌が悪い。
それは酌夫がイマイチなのが理由なのではなく、前もって予約して貸し切りにしておいたのに、突然緊急の業務とやらで人気のキャストを寄越さない店側の不公正さに憤っているからなのだが、傍目からはそんなことはわからない。
酌夫もほほ笑んでいるようにも見える糸目のまま、ピリピリとした空気を出しているアンゼリカの異様さにびびってトークができていない。
そんな中、彼女の怒気にさらされ続けるデアボリカは、既に胃が痛くて仕方がなかった。この空気の中で自分の復権のために姉と交渉する? 御冗談を……。
しかし逆に考えれば、変に男が入ってぐだぐだした空気になるくらいなら、今差し向かいで話した方が、交渉は進むのではないか?
そう考えたデアボリカは、意を決して口を開く。というか、徹頭徹尾ビビリであるデアボリカには、これ以上重い空気に耐え切れそうになかった。
「あ、あのー姉様。それで、私を今日呼んでいただいたのは、やはり私を……」
「そうよ~。デアボリカちゃんが何もかも失ってがっかりしてそうだったから、元気づけてあげようと思って~」
「え?」
「え?」
アンゼリカは不思議そうに小首をかしげる。
「姉妹の絆を深める以外に、何かあるかしら~?」
「その……私をもう一度ギルマスに任命するとか、都市政府内でいいポジションをくれるとか……」
「どうして~? デアボリカちゃんはまだ何も手柄を立ててないでしょ~。手柄のない人に地位をあげることはできないわよ~」
「ほ、宝珠! “湧き水の宝珠”という無限の水資源を持ち帰ってきたじゃありませんか!」
「ああ、あれ」
アンゼリカは頬に手を置いて、ため息を吐いた。
「あんなの使えるわけないでしょ~。争いの種になるだけよ~」
「黙っていればいいではありませんか!」
「人の口には戸は立てられないのよ~。隣人さんが突然豊かになったら、どうしてと探りを入れるのが人間というもの。私も母様も、他領と戦争するなんて絶対に嫌。戦争で得するのは商人だけよ。世の中それがわかってない貴族さんばかりだけどね~。どうしてあんなにバカなのかしら」
まあとにかく、とアンゼリカはブランデーで舌を潤す。
「母様はただただ現状を維持したい。私は街を発展させて、みんなを幸せにしたい。目指すところは違うけど、戦争の種は排除するという意思は一致している。だからデアボリカちゃんを評価するわけにはいかないのよ~。また別の形で手柄を立ててね~。そうしたら、私は公正に貴女を評価してあげるから~」
デアボリカは無言のままがぶりとブランデーを喉の奥に注ぎ込むと、だんっとグラスを机の上に叩きつけた。
励ますつもりが、余計にがっかりさせちゃったかしらとアンゼリカは思う。
「……姉様は」
「ん?」
「アンゼ姉様は、どうしてそうなのですか」
「何の話かしら~?」
「どうして! そんなに冷たいの! 私が、妹が困ってるのに! なんでそんな冷酷なの!? もっと私に優しくしてくれたっていいじゃないか!」
血を吐くような妹の叫びに、アンゼリカはゆっくりと首を傾げた。
「優しくしてるでしょ~? 本来なら殺さなきゃいけないところを、道理を曲げて命だけは助けてあげてるんだから~」
「優しくない! 家族だっていうなら、もっと優しくしてくれていいじゃないか! 財産だって没収された!」
「だってしょうがないじゃない。元からデアボリカちゃんのものじゃなかったんだから」
「私が出した金だってあった!」
「だから、貴女が住み続ける権利を認めてあげたでしょ~? 公正な取り分だと思うわ~」
デアボリカは唇を噛みしめると、大声を叩きつけた。
「またそれだ! 公正、公正って! アンゼ姉様はそればっかり!」
「そうよ~。私は“公正”でありたいの。すべてのものごとを正しく平等に判断して、微塵の間違いもなく裁きたい。それが私にとって一番大事なことなのよ~」
そうして、にっこりとアンゼリカは胸元に手を当てた。
「だから今日はこんな高いお店を貸し切りにして、お金を落としているのよ」
「は……?」
「だってゴールドン翁に、貴女がしでかしたことの賠償金を払わないと公正じゃないもの。でも、都市政府が犯罪結社に公金を直接手渡すのは不公正でしょう? だからこうしてこのお店を通じて、賠償金を払っているのよ~。これなら商取引として公正でしょ~」
「…………」
デアボリカは幼い頃から、実の姉に対して隔絶を感じていた。
会話していても、どこか意図が通じていないような、そんな違和感。
今日ようやく、理解した。
理解できないということを理解した。
アンゼリカの価値は“公正”さに帰結する。
しかし何が“公正”なのかの基準は、アンゼリカの中にしかない。
だから卑俗を煮しめたようなデアボリカには、アンゼリカを理解できない。
思わずイヤミが口を吐いて出る。
「そんなに“公正”であることが大事ですか。夫のある身でこんな場所で酒を飲むことはさぞ“公正”なのでしょうね」
「ええ、もちろん“公正”よ~。だって男の人とお酒を飲むことくらい、不倫でもなんでもないもの~。これは女なら誰でもやっている、お酒の席でのお付き合いよ~」
嫁に黙ってキャバクラ通いをする昭和のサラリーマンみたいな公正さだなお前。
まあ、それはこの世界の女にとっての共通認識でもあるのだが。
イヤミすら通じずに言葉を失うデアボリカに、アンゼリカはにこにこの笑顔を向ける。
「まあまあ、デアボリカちゃんもそんな打ちひしがれたような顔をしないで~。かわいい男の子に囲まれておいしいお酒を飲めば、気分なんてすっかり良くなるわよ~♪」
「……アンゼ姉様が羨ましい限りです」
「本当は今日は姉妹3人水入らずで飲みたかったんだけどね~。あの子、本当に固いんだから。報告書をまとめる仕事があるからって断られちゃったわ~。昔っからこういうお店にはついてこないのよ~。男っ気なしで生きてて楽しいのかしら~?」
「……でも中姉様は彼氏ができたそうですけどね」
「えっ? ……本当!? あの子に男が!?」
「この前会ったときは、婚約者にサンドイッチを差し入れてもらったって浮かれてました」
「まあまあまあまあまあ!!」
アンゼリカは満面の笑みを浮かべてグラスを傾けた。
「あの子、木や石でできてるわけじゃなかったのね~。それは最高にいい知らせだわ~。アミィちゃんと付き合える男の子って、どんな子なのかしら~! 一度顔を見せてほしいわ~!」
そのとき、ドアが開いて得意げな笑みを浮かべたホーカンが姿を現す。
「どうもどうも、お待たせしましたアンゼリカ様! このホーカンめが厳選した綺麗どころを見繕って連れてきましたよ! おい、アンゼリカ様にご挨拶しろ!」
「みなさんこんばんわ! 今日は一発芸を披露しに来ました、ユージでーす♪」
「ブッフォ!!?」
アホの顔を見たデアボリカが、ブランデーの飛沫で部屋に盛大な虹をかけた。