【書籍版1巻2/20発売】貞操逆転ハードモード異世界を鋼メンタル冒険者が生き抜く 作:風見ひなた(TS団大首領)
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今回の話(ウルスナの身の上話)の必要性がわかるはずです。
「……とまあ、これがわたくしの事情ですわ」
ウルスナはそのように彼女の半生を結んだ。
なるほど。高貴な雰囲気を垣間見せることがあるとは思っていたけど、まさか本当に家出中の貴族の令嬢だったとは。
それも辺境伯とはね。僕だってWEB小説読みだから、辺境伯が相当な高位貴族だってことは知ってるよ。
辺境伯っていうのは王都から離れたド田舎暮らしの貧乏貴族のことじゃなくて、他国との国境線を任されている高位貴族のことだ。当然戦争になったときは真っ先に戦端を開くわけで、持っている軍事力も非常に大きい。また、他国との交易も活発だから、相当なお金持ちだね。下手すると国王よりも金持ってたりする。
そして国王からの信任篤い家じゃないといけない。そりゃそうだよね、敵国に寝返られたら大ピンチだもの。
だから爵位としては侯爵相当……それより上は王様の血族である公爵しかいないわけだから、王様と血族関係にない貴族としてはほぼ最高位だと言っていいんじゃないかな。細かいところは国と時代によるらしいけどね。
養子とはいえ、そこの五女かあ。
話を聞く限り元は相当高潔な騎士だったろうに、それが酒場で男におっぱい見せつけて喜ぶようなチンピラに落ちぶれていたなんて……。
いや、まあそのことは問うまい。
よくよく考えたらホストに扮してパンツ一丁でリンボーダンス踊るような僕が、人様をどうこう言えた口じゃないだろ。日本の家族には絶対に知られたくないな。
「ふええ……すっごいお貴族様……。こんな人に張り合おうとして、あたし失礼な口を……」
話の大きさにあわあわしているアイリーンを見て、ウルスナは小さく笑った。
「今はただの一介の冒険者です。貴族の義務を捨てて出奔したわたくしに、今更貴族を名乗る権利などありませんわ。あなたと対等の一平民にすぎません」
そういうことをごく当たり前のように言える精神性こそが、本当の気品だと思うんだよね。人間を気高くするものは地位ではなく心の在り様だと、僕のおばあちゃんも言っていた。
もし仮にデアボリカとかが辺境伯家出身だったら、それを鼻にかけてめちゃめちゃ威張り倒すよ。まあ、あいつがそんなおいしい地位を捨てて平民落ちするわけないけど。
「わたくしは生涯、平民として生きるつもりです。アルティエ家に戻るつもりはありませんし、これから二度と
ウルスナは言葉を切ると、まっすぐな瞳で僕を見つめた。
「どうやらわたくしの血には、アルティエ以外の家の血が流れているようなのです。大方、どこぞの滅びた貴族家の遺児なのでしょう。いつかわたくしやその子供を連れ去ろうと、追手が現れるやもしれません。そのとき、あなたたちを巻き込む恐れがある……。それを知ってなお、わたくしと添い遂げてくださる覚悟はおありですか?」
「うん、いいよ」
僕がけろりと言い放つと、ウルスナはガクッと態勢を崩した。
「ほ、本当にちゃんと考えてますの!? 一生を追手に怯える人生になりかねないと警告してますのよ!」
「黙っときゃバレないでしょ。ウルスナも僕もアイリーンも他人にしゃべらなきゃいいんだよ、へーきへーき。ね、アイリーン」
「う、うん! あたしも絶対にしゃべらない!」
こくこくと力強くアイリーンは頷く。この子こう見えて結構強情だからね、信用できるよ。
僕はどんっと胸を叩き、笑みを浮かべてみせる。
「それに、僕としてもここまできてみすみすウルスナを放してやるつもりもないしね」
「ユージーン……」
正直僕の股間は、今かつてないほど勃起している。
“貴族令嬢”の“元騎士”だよ。
これは貴族のお姫様、つまり姫騎士と言っていい。
そんな高貴さの塊のような女の子に、僕の遺伝子を混ぜられる……!
日本人のオタク男性として、これほど股間が高ぶるシチュエーションがあろうか。
僕のおじいちゃんも言っていたね。
「いいかい、雄坊。おじいちゃんは、男の価値というのはどれだけいい女に自分の子を産ませられるかで決まると思っているよ。金や地位なんて、所詮一時的なものだ。人間は裸ひとつで生まれ、骨になって死ぬ。あの世には何も持っていけないんだよ。
だが、この世に遺せるものはある。それが血だ。優れた子孫を残すこと、それこそがすべての生物の意義だよ。だから雄坊も、大人になったらいい女を嫁にしなさい。優れた子孫を残せるような、気品があっていい体をした、精神も肉体も美しい女をなんとしても妻に迎えるんだよ。
おじいちゃんも、おばあちゃんみたいな気品があって愛情深い女と一生を添い遂げられて幸せ……うっ、ううっ! 俺も! 俺ももっとあいつ以外のいろんな女を孕ませまくる人生を過ごしたかったああああああっ!!」
直後、押し入れから飛び出してきたおばあちゃんにマウントを取られて、即座にあの世に送られかけていたね。
「た、頼む雄坊! 俺の代わりに夢を! たくさんのいい女を孕ませまくり子孫を残すという俺の夢を代わりに叶えてげぼふぁっ」
「これ以上あの子にイカれた思想を吹き込むんじゃありません!」
この日がおじいちゃんの命日にならずにすんで本当によかったよ。
……うん、今更だけど僕っておじいちゃんの影響めちゃめちゃ受けてるね。
まあ話は若干ズレたけど、僕の女性観はおじいちゃん譲りなので、ウルスナの出自にものすごく興奮を覚えている。
この娘となんとしても結婚したい。ここでこの娘を逃したら生涯後悔することは間違いないよ。
「ウルスナを妻にできるなら、将来の危機なんて問題にもならない。死ぬのが怖くてお姫様を嫁にできるか、もしそれで死んでもウルスナとの子供が遺れば僕は本望だ」
「そ、そこまでおっしゃってくださるのですか……」
ウルスナは裸の胸に手をあてて、僕の言葉を噛みしめるように瞳を閉じた。
「あたしも! あたしも今更仲間外れなんてやだからね! あたしはユージィのお嫁さんなんだから、ユージィが望んでウルスナの運命に巻き込まれるなら、それはあたしの運命でもあるんだ! ユージィも、あたしたちの子供も、あたしが守ってみせるんだから!」
「アイリーン……」
力むアイリーンの手を取り、ウルスナはかつて見たことがないほど柔らかな笑みを浮かべた。
「ありがとう。とても心強いわ。本当に、あなたが一緒にいてくれてよかった」
「へへへ……。それに、ウルスナもあたしと張り合う程度には強いもの。あたしとウルスナの2人なら、どんな追手が来たって負け知らずだよ!」
「ええ、そうね」
ふーむ、実際この2人ってどのくらい強いんだろ。
ドラゴンと戦ってる場面やケンカしてるところは見たことあるけど、本気出した2人の強さを見たことはないんだよね。まあ僕なんて巻き添え食らって死にそうだし、知る機会なんてない方がいいか。
「そういえば、なんか前に言ってたウルスナが隣国の王家の落胤ってのは?」
「ああ……あれはその、
ウルスナは恥ずかしそうに髪をかき上げ、ぼそぼそと言葉を発する。
「ああいうホラ話をことあるごとに言ったり、下品な行動をしていれば、万が一追手が来てもわたくしがアルティエ家の娘とは感づかれにくくなるかと思いましたの。根も葉もないデタラメですわ」
「ああ、なるほどね」
確かにそれはそうだ。僕も仕草や言動の端々から高貴さを感じることはあっても、酒場でおっぱいを見せてくるチンピラのイメージが強くてまさかね、となってたからね。確かにウルスナの策略は成功していたと言える。
「情報交換はこれくらいでいいかな。大体のことは確認できたと思う」
「ああ。ここからはもう俺はウルスラグナじゃなく、ただの冒険者ウルスナだ。改めてよろしく頼むぜ」
「うん! よろしくね!」
不敵な笑みを浮かべるウルスナに、アイリーンが元気よく頷く。
すっかりいつもの空気だな。よしよし。
「あ、そうだ。ウルスナだけに語らせておくのは不実だな。僕も言っとこ。
実は僕って異世界人なんだよ。元の世界で死んで、この世界で元の世界の姿のまま生まれ変わったんだ」
「…………」
「…………」
「「え?」」
1話にすると長すぎるから半分に切ったら今回短くなっちゃった。
こういう日もあるよね……。