【書籍版1巻2/20発売】貞操逆転ハードモード異世界を鋼メンタル冒険者が生き抜く 作:風見ひなた(TS団大首領)
蜜月楼で無事初夜を迎えることができたアイリーンとウルスナ。
最初の数日は、夜通し抱かれ抜いた後、体力の限界で気絶するように眠りに就き、起きたら起きたでスタンバイしていた雄士に「あ、そろそろいい?」とまた抱かれるサイクルを繰り返していた。
食事は運ばれてきたルームサービスを片方が抱かれている間に食べ、食べ終わったらバトンタッチして食事休憩。雄士がお腹が空いたら口移しで食べさせ合いっこするという、とてつもなく爛れたサイクルである。
こいつら一日中セックスと睡眠と食事しかしてねえ!
生物の三大欲求を満たしに満たしまくった、人間って所詮動物でしかないんだなっていうことがひしひしと伝わる生態である。
多分動物園のパンダの方が客にアピールする分だけ文化的な生活をしていた。パンダは生殖欲が減退しているそうなので、むしろこいつらより知的なのかもしれない。
アイリーンもウルスナもこの世界のシコ猿女の例に漏れず男子中学生並みの性欲を抱えているので、そんな荒淫極まりない生活でもセックスに嫌気が差すどころか、むしろますますハマりこんだので合意です。
アイリーンのパーティメンバーは、かつて酒の席で「セックスってのは覚え立ての頃が一番楽しいもんだぜぇ。だからお前もいつか娼館で処女を捨てたら、通いすぎないように気をつけろよ。貯金なんてあっという間に吹き飛んで、借金まで抱える奴が後を絶たねえからな。ガハハハ!」なんてくだらないことを吹き込んでいたものだが……。
それは真実だったとアイリーンは痛感することになった。
抱かれれば抱かれるほど心が満たされるし、もっと気持ちよくなれるコツがわかってくるのである。だからへとへとになって休憩しても、ほんの30分ほど休めばすぐにもっと気持ちよくなれる方法を試してみたくて、雄士に甘えかかるのだ。
日本人オタクの視点から見れば“エロ調教されてる”という感じなのだが、むしろこの世界的には“エロガキが自由にしていい男に好き放題している”状態であった。
ちなみにアイリーンが一番お気に入りの体位は後背位だ。ムチムチの肉厚ヒップを自分で割り開いて「ここ、お兄さんの欲しがってるよ……♥」とお尻を振りながら流し目を送ると、雄士がめちゃめちゃ興奮して激しく襲い掛かってくれることに気づいたのである。
何事にも筋のいいアイリーンは、ほんの数日で雄士が喜ぶツボを押さえつつあった。ピュアなくせにエロには貪欲なショタっ娘である。
このポーズは自分を捧げている感じがして、アイリーンもとても興奮した。おそらく愛される経験に飢えているので、雄士が激しく求めてくれるほど愛情を注がれていると認識して心が満たされるのだろう。
実際それも間違いではない。
むっちりしたお尻を鷲掴みにされ、愛情と情欲がミックスされた液体をお腹に大量に流し込まれるたびに、アイリーンは脂肪の少ない背中をゾクゾクと反らせて絶頂に達した。
アイリーンがそうしてみるみるうちに雄士好みに染まっていく一方で、ウルスナは自己嫌悪に苛まれていた。
「わたくし、こんなだらしない性癖を抱えていたのですね……」
ウルスナが悄然としている理由は他でもない、言葉責めで悦んでしまうマゾ気質のことである。
日本人オタクからすれば別にいいじゃん、むしろ嬉しいと思ってしまいがちだが、この世界では女性の方が男性より肉体も魔力も社会的地位も強い。女尊男卑が常識の社会であり、原則として【性行為とは女性が男性を抱くもの】なのである。
ましてや騎士ともなれば、男を組み敷いて力強い騎乗位でガツガツ搾り取るような女こそが騎士にふさわしい理想像と考えられていた。君たち姫騎士の称号は捨ててアマゾネスに改称しなさい。
そんな文化の中で育っていながら、ウルスナはマゾなのである。雄士に低い声で「孕ませてやるからケツを高く上げろ」と囁かれると、「はい……♥」と思わず心と子宮を甘い期待で疼かせてしまうのだった。
騎士として恥ずべき痴態、言語道断である。
現代日本で言えば【年端もいかないメスガキに射精管理されながら小さなお尻で下敷きにされて勃起してしまう成人男性】くらい恥ずかしいと考えれば、ウルスナが抱えている羞恥心の程度がわかるだろう。
雄士は聖者の肩書がなければ、子供程度の社会的地位しかない生き物なのである。この世界の男性はそれくらい軽く見られているのだ。
当初は騎士としての価値観から絶対に自分が主導権を握ろうと、雄士にまたがってがむしゃらに腰を振ったり、雄士の逸物を激しくしごいたりしていたウルスナだが、「痛い!」と悲鳴を上げた雄士が白桃のようなお尻を叩いて制止すると、「きゃうん♥」と甘い悲鳴を上げて大人しくなった。
そこからウルスナのマゾ気質に気づいた雄士は、痛いのが好きなのかと一時は誤解しながらも、弱者である男に上位に立たれることがツボなのだと気付き、ウルスナに羞恥責めするようになったのである。
ちなみに雄士は別にサディストではない。独占欲が強すぎて抱きながら相手に歯型とキスマークをつけてしまう悪癖があるが、彼に人を虐げて喜ぶような性向は一切ない。
すべてはウルスナのためである。ウルスナが悦んでくれるなら、軽くサドを演じるくらいはどうってことないのだ。雄士なりの奉仕精神の現れであり、愛情の示し方だった。
SMのSはサービスのS。SMカップルで本当に大変なのは、受け身のM側ではない。マゾのために次から次に刺激的な快感を与えてあげなくてはいけないS側なのである。
まあ、その奉仕精神のおかげでウルスナは気づきたくもなかった自分の性癖を知ってしまい、悩んでいたのだが……。
散々抱かれ続けて、3日目には吹っ切れてしまった。だってその方が気持ちいいんですもの。普段とは違うキャラを演じてくれているダーリンの愛情も感じるし……♥ 本来の自分を受け入れてあげるのも、人間の成長には必要なことですわよね。うんうん。理解ある夫を得て、わたくしはまたひとつ成長したのです♥
日本人オタク的には“マゾ堕ちした”という感じだが、ウルスナの主観では“本来の自分を受け入れた”となっている。物は言いようだな。
なお、ウルスナの俺っ娘口調は基本的には変わらない。
別に雄士の前ではチンピラムーブを装う必要はないのだが、既に板についてしまったのと、普段が強気な俺っ娘であるだけ、言葉責めでマゾ性をくすぐられたときの落差が快感になると気付いたのだ。
抱かれるときだけしおらしく令嬢モード口調になるあたり、完全に味をしめていた。
そんなこんなで3日間ほど繁殖期のライオンですらここまでやらねーよってくらい肉欲まみれの生活を送っていた3人だが、そろそろこのままじゃよくないよねと思い立った。言い出したのは雄士である。
「ねえ、そろそろお仕事行かなくていいの?」
『……?』
雄士の股間に顔を埋めていたアイリーンと、彼の乳首を舐めながら手マンを楽しんでいたウルスナは、欲情に濁った瞳に「はて、私のつがいは何を言っているんだろう。新しいプレイの提案かな?」という色を浮かべた。
完全に色ボケしている。知能がボノボ程度まで減退していた。
「別に僕はこのままでもいいんだけど……。君たちが抜けたままで、パーティは大丈夫なの?」
『あっ』
ここでようやく正気を取り戻した2人は、肉欲の沼を抜け出してそれぞれのパーティメンバーのところに謝罪に向かうことになった。
3日間も連絡なしでセックス三昧の日々に耽っていたのである、激怒されていることは間違いなかった。
これが工房などの職人ギルドなら親方からぶん殴られて大目玉、よくて減給、悪ければ破門ということもあり得る失態である。事前に連絡を入れていればまあめでたいことだし……と休暇を認められたかもしれないが、無断で休んでいるのはまずい。
アイリーンもウルスナも、パーティの中ではそれぞれ前衛とスカウトという欠かせない役割を担っていることもある。彼女たちが抜けたことでパーティが回らなければ、狩りができず食い扶持に困っていることも考えられた。
ちゃんと貯金しているような計画性のある連中ばかりではない。なにしろ元が犯罪者スレスレの社会不適合者なのだ。冒険者にならなければ盗賊になっていたとしてもおかしくない連中なのであった。
しかもウルスナのパーティは、リーダーを務めているのがよりにもよってウルスナ当人だ。仲間を見捨てて色事に耽っていたなど、パーティリーダー失格。メンバーに見放されても仕方ないとしか言えなかった。
床に頭を打ち付けてでも土下座して詫びなければ、という覚悟を固めて冒険者ギルドに向かった2人だが、そこで待っていたのは……。
「おや、もうハネムーンはいいのかい? 随分淡泊なことだね」
アイリーンのパーティリーダーを務める魔術士のリイダは、平然と2人を迎え入れた。どころか、アイリーンとウルスナのパーティメンバーが一緒にいて、2人が来る直前までゲラゲラと下品な声を上げて談笑していたのである。
「え? なんでウルスナのパーティの人たちが一緒に……?」
「ああ、合併したんだよ。我々の4人パーティは前衛の君が抜け、彼女たちの4人パーティはスカウトのウルスナが抜けただろう? なら、残った我々のパーティが合併すれば、ちょうど6人パーティになるじゃないか」
事もなげに語るリイダの言葉を受けて、アイリーンの仲間のスカウトとウルスナの仲間の戦士が拳を打ち鳴らしながらニッと笑って見せた。
「そんなわけで、こっちは君たちが抜けていてもまったく問題なく活動できている。遠慮なくイチャイチャしていても構わんよ」
「い、いやいや……え? リーダーはリイダがやってるのか? お前ら、それを受け入れたのか?」
ウルスナはぷるぷると震えながらパーティメンバーに問いかけるが、彼女たちはきょとんとした顔を向けるばかりだ。
「だって連絡もなしにいなくなったの、ウルスナの方じゃん?」
「ウチらリーダーってガラじゃないしさ。面倒な仕事やってくれるんだからありがたい話じゃない」
ぐ……とウルスナは言葉に詰まる。明らかな正論だった。
「だ、だけどよ。パーティランクが違うだろ。俺たちはシルバーランクだぞ。あとちょっとでゴールドにも手が届くのに、ブロンズ級と合併でいいのか?」
「ああ……」
ウルスナの言葉に、彼女の仲間たちは顔を見合わせる。
それはアイリーンの仲間を軽く見ての発言ではなく、これまでの努力が言わせた言葉だった。
この半年間というもの、ウルスナはギルド内のランキングを上げて雄士を娶ろうと必死になってきたのだ。それ以前はウルスナの生家であるアルエット家からの追手から目をそらそうと手を抜いていたため、残念ながら上位には入れなかったが。
しかしお陰でもう少しでゴールドランクに手が届くところまではきた。なのに、ここで下位のアイリーンのパーティと合併してしまうと、順位が下がってしまう。それがこの半年間の努力を棒に振ってしまうようで、ウルスナには抵抗があったのだ。
だが……。
「ウチはいいよ。リイダのとこの連中、将来有望だしさ」
「ああ。この前の仕事で、こいつらの腕も知れたしな。ロングフィールドの屋敷で過ごして人格面も問題ないとわかってるし」
「それにさ……」
ウルスナの仲間はコリコリと頭を掻いて口ごもったが、結局言葉にした。
「私たち、足引っ張ってるじゃん。ウルスナ、私たちのレベルに合わせて手を抜いてるでしょ? ホントはもっと強いんじゃないの。上位陣にも食い込めるくらいに」
「それは……」
絶句するウルスナの態度に、仲間は苦笑を浮かべた。
事実だった。
騎士として、魔術士として厳しい修練を積んだウルスナの本来の実力は、中堅冒険者パーティのリーダーなどで収まるものではない。名門貴族出身の騎士と、平民出身の冒険者では、そもそもその身に流れる血の魔力量も戦闘スキルもまるでレベルが違う。
身も蓋もないことを言えば、高位の騎士や魔術士とは戦術兵器なのだ。剣の一振りの衝撃波で数十人を斬り倒し、魔術詠唱で広範囲を焦土に変えうる。魔力のある世界において、人殺しに特化して育成された存在とはそういうものだった。
「わかるのよ、ウルスナ。鉄火場で命を燃やしながら戦ってれば、横にいる奴にどれだけ余裕があるのかなんてわかっちゃうの。私たちがヒイヒイ泣きながら、死にたくない、殺されまいと必死であがいてた場所で、アンタは鼻歌でも歌えそうな顔してたよ。……勘違いしないで、それが悪いって言ってんじゃないの。ただ、申し訳ないなって思うのよ。私がもっと強ければ、お前にもっと本気を出させてやれるのになってさ」
「そういうこった。あたしらはもう少しでゴールド帯に入れるほどの実力があるんじゃない。お前がキャリーしてくれてただけなんだ。多分実力で言えば、リイダのところの連中と大差ないんだよ」
「だからあたいらはリイダのパーティと合併することに異存はない。なに、こいつらも結構な才能だぜ。すぐにみんなまとめてシルバーランクに相応しいって言われるようになるさ」
「お前ら……」
仲間たちの言葉に、ウルスナは言葉もなかった。
自分がみんなからどう思われていたのか、苦楽を共にしてきた仲間たちがどれほど鬱屈を抱えていたのか、ウルスナはこのとき初めて知った。
立ち尽くすウルスナの顔を心配そうに見つめるアイリーンに、リイダはふっと微かな笑みを浮かべた。
「随分と仲良くなったものだ。本当の姉妹のようだね。血の源流は同じとはいえ……」
「えっ?」
「竿姉妹ともなると仲の良さが違うねぇ、と言ったのだよ」
「もう、下品だよリーダー!」
セクハラ発言しながらゲヒヒと笑うリイダに、アイリーンは真っ赤な顔で食ってかかった。
すっかり雄士好みのエロ仕草を身に着けても、心はまだまだウブなようだ。3日程度じゃなかなか人間は変わらないのである。
そのうち魔性の美女に成長する可能性もあるが、そもそも一緒にいるのが魔性の細マッチョな雄士なので、生涯ずっと振り回され続けるのかもしれなかった。
「でも、リーダーはどうやってあたしとウルスナの休業を知ったの? ユージィとのことも、みんなに言ってなかったのに……」
「ああ、新ギルマスが教えてくれたのだよ。ユージ君の家族が迷惑をかけるのは、我々にしのびないからとね」
いつもの受付席で、ギルマスに就任したウェズがキラリと眼鏡を光らせた。
「そうなんだ! ギルマス、ありがとー!」
大きく手を振って呼びかけるアイリーンを、ウェズはちらりと一瞥する。小さく頷くと、そのまま手にした書類にサインする業務に戻った。
雄士は知らないことだが、真正の女嫌いのウェズは女性冒険者に例外なく塩対応する。“冒険者ギルドの氷眼鏡”と呼ばれるほど、女に冷徹な態度をとっているのだ。
おそらく銭ゲバな前ギルマスや、抱き着き癖のある冷血次期領主という、クソみたいな人格をした姉妹に幼少期から接したために、女性そのものに嫌悪感を抱くようになったと考えられる。
彼が柔らかな視線を向けるのは雄士を前にしたときだけで、それが“雪解けの笑顔”と呼ばれて女冒険者から「てぇてぇカップル……!」と涎を垂らされていたりする。だから余計に女嫌いになるのだが、女冒険者たちはそれに気づいていない。
自分が男からどう見られているのかわかっていない、残念な美少女たちであった。
まあともあれ。
「君たちが留守の間は引き続き6人で冒険するつもりだが、もちろん復帰は大歓迎だ。君たち2人が戻ってきたら、元の4人ずつに分かれて、2つのクエストを同時にこなすこともできる。そんなわけだから、日がな一日夫と肉欲に耽るもよし、夜だけに自制するもよし、好きにしたまえ。ああ、それと……言い忘れていたが、婚約おめでとう」
リイダはこの一件をそのように締めくくったのだった。