【書籍版1巻2/20発売】貞操逆転ハードモード異世界を鋼メンタル冒険者が生き抜く   作:風見ひなた(TS団大首領)

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第66話「鋼メンタルでドラゴンの襲来を迎え抜く」

「た、大変でござる! ドラゴンが! あのときのドラゴンが、仲間を連れてギルドに襲来したのでござるよ!!」

 

 はい、お久しぶりです。聖者ユージィです。

 最近は毎晩お嫁さんに抜かれまくる日々を過ごしていたので聖者っていうか賢者なんじゃないかという気分になってたけど、僕は結構リカバリー早いのであんまり賢者タイムになったりしないよ。

 お嫁さんから期待に満ちた目で見られると応えてやらねば男じゃないって気分になって、みるみるタマタマがチャージされていきます。うおおお僕は異世界種付けお兄さんだ!

 

 そんな感じで昼は料理とエロダンスを教導し、夜はお嫁さんとまぐわい続けるエロ方面だけに特化して充実した日々を過ごしていたんだけども、そこにジライヤ(服は着てる)が飛び込んできてドラゴンの襲来を告げてきたのだった。

 

 いや、正直僕なんか呼ばずにギルドで処理してよ。

 僕を呼びに来たってことは魔封じの力でまたドラゴンをやっつけてくれってことなんだろうけど、この力はもう使わないってウルスナと約束したんだよね。

 だから僕に期待されても困るんだけど……。

 

「衛兵隊や冒険者ギルドは何してるの?」

 

「ギルマスと領主代行が出動を抑えてるでござる。血の気が多い冒険者が『ヒャッハー! ドラゴンスレイヤーに俺はなる!』って襲い掛かりに行きそうだったけど、下手に刺激したらこんな街あっさりと消し炭にされるでござるからな」

 

 あらやだ理性的。

 というかドラゴン側も問答無用で数十匹がかりでブレス吐いて街を焼き滅ぼすとかするのかと思ったけど、そういうわけでもないのかな?

 

「それが、ドラゴンがユージーを出せって言ってるのでござるよ。我が子に恥をかかせた聖者とやらに会わせろと言ってきかないのでござる」

 

「ええ……?」

 

 確かにドラゴンの子供には壊した馬車の賠償金を支払えとも言ったし、お前が払えなければ親に出してもらえとも言ったけどさ。

 あの子ドラゴン、親にあることないこと告げ口した感じか? それともやっぱり親もめちゃめちゃ人間見下してて、人間ごときが我が子に恥をかかせるなどドラゴンの名折れ、自分が代わって成敗してやるって流れかな?

 どうも厄介なことになってそうだ。素直に賠償金払ってくれればそれでいいのになあ。

 

「ともかく、ユージーを呼んできてくれってギルマスに頼まれたのでござる。お願いするでござるよ」

 

 うーむ、仕方ないか……。他ならぬウェズ君の頼みだからね。

 

「わかったわかった、それでギルドに行けばいいの?」

 

「あ、もうドラゴンはユージーの屋敷に連れてきたでござる」

 

「何してんの!?」

 

 10日間ほど留守にしてるからって、勝手にドラゴンを人の家に案内しないでほしい。

 

「いや、血の気の多い冒険者たちがいっぱいいるから、ギルドには連れていけなかったのでござるよ。ユージーの屋敷なら比較的安全でござるからな。見た目も立派なので、気位の高いドラゴンの歓待にもぴったりでござるよ」

 

「歓待するのか……」

 

 とにかくドラゴンを怒らせないようにしようという意識が透けて見える気がする。

 まあ田舎の地方都市にとっては、ドラゴンは絶対勝てない歩く災厄みたいなものなのかもしれないな。

 

 いや、あのドラっ子自分のことをドラゴン族の王子とか言ってたし、その親ってことはドラゴンの王様なのか? この世界のドラゴンの立ち位置がいまいちよくわかってないけど、もしかして結構偉いのかもしれない。

 

「しかし屋敷に入り切るのかな……それで襲撃してきたドラゴンってどれくらいいるの?」

 

「あ、2匹でござる」

 

「2匹!?」

 

 

 

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 ドラゴンの襲来っていうから僕は数十匹くらいでお礼参りに来たのかと思ったけど、よくよく話を聞いてみればやって来たのは例のドラっ子とその親の2人だけだった。

 

 あのドラっ子と、さらに立派な体躯をした黒竜の2匹が連れ立ってサウザンドリーブズ上空に飛来し、猛烈な咆哮を繰り出したのだという。

 衛兵たちは大慌てで飛行部隊を出動させて迎撃に移ろうとしたのだが、ドラゴンたちは突然掻き消えるように姿を消した。

 そしてしばらくして、僕に会わせろと主張する親子連れが市門に姿を現した……という流れだ。

 

 うん、まあ確かに突然ドラゴン2匹が飛来してきたらそれは“襲来”と表現するべきなのかもしれない。なんせ子供1匹でこんな都市軽く焼き払える大怪獣だものね。

 でも僕の感覚だとそれは“訪問”なんだよなあ……。

 

 そこらへんの事情を屋敷に戻る道でリスニングして、僕は屋敷の応接室の前に立つ。扉の前には、僕の到着を今か今かと待ちわびていた人物の姿があった。彼女はバサッとローブを翻しながら、知的に眼鏡を輝かせる。

 そう、デアボリカだ!

 

「遅かったな、ユウジ。さあ、ドラゴンに身の程をわからせてやろうじゃないか!」

 

「お前なんでいるの?」

 

「ここ! 私の屋敷! いて当然!! 居候お前の方!!」

 

 デボ子はむきーっと地団太を踏みながら、片言で屋敷の居住権を主張する。

 いや、そういうことじゃないんだけど。

 

「デアボリカはこの件にまったく関係ないだろ。なんで首を突っ込んでくるの?」

 

「当事者だぞ私は! ドラゴンに馬車の賠償金を支払う約束をさせたのは私だ!」

 

「いや、馬車は冒険者ギルドの所有物だろ。じゃあ賠償金の受取人はギルドじゃん。お前関係ないじゃないか、もうギルマスはクビになったんだぞ?」

 

「馬車の賠償金を支払う約束をさせたときは、まだ私がギルマスだっただろ! あの馬車には私の私財も投入しているんだ、私にも賠償金を受け取る権利がある!」

 

 ああ、なるほど。

 つまりどさくさに紛れて賠償金の一部をもらって再起の資金にしようってわけか。

 こいつ本当に厚顔無恥というか、公私混同甚だしいな……。でもこの時代の貴族なんて公私混同してて当たり前なのかもしれないね。

 アンゼリカさんがそんなの認めるとは絶対に思えないけど。あの人いろんな意味でこの時代の貴族とは一線を画してるよなあ。

 

「……まあいいか。ついてきたけりゃ勝手にしなよ」

 

「うむ、当然だ! 無学なお前に私の華麗な交渉術を見せてやろう!」

 

 腕組みして無駄に威張るデアボリカを背に、僕は応接室の扉を開いた。

 

 どうせ交渉の場にはアンゼリカさんが同席してるだろうし、デボ子がどさくさに紛れて適当なこと吹いてもとっちめてくれるだろ。

 そんなことを考えながら部屋の中を見ると……。

 

 部屋の入り口側にはアンゼリカさん、ウェズ君、それからアミィさんが座っていた。はて? 領主代行のアンゼリカさんとギルマスのウェズ君はともかく、なんで衛兵のアミィさんがいるんだろ。ドラゴンを警戒してボディガードを呼んだのかな。

 ウェズ君は顔色が悪く、アンゼリカさんも珍しく額に汗している。アミィさんはピリピリとした魔力を纏いながら、剣呑な目つきを部屋の奥に向けている。

 

 そして部屋の奥には……。

 

「あ! あいつだよパパ! あいつがボクをいじめた奴だ!」

 

 例のオスガキドラゴンが、僕を指さして声をあげる。

 

 その横に座っているのは、なんとも威圧感のある男性だった。年齢は40台半ば頃、身長は190センチほどの堂々たる巨漢。黒々とした立派な顎髭を長く伸ばしており、ぎょろりとした威圧感のある眼差しをしている。

 閻魔大王とか関羽雲長とか、そういう厳めしくておっかない感じの人だった。ダンディというにはあまりにもコワモテで、迫力がありすぎる。

 

 これがドラっ子のお父さんか。……めちゃめちゃ強そうだな。

 僕も魔力を感じられるようになったけど、もうビンビンに強大な気配を発している。アンゼリカさんやドラっ子くらいでもすごい強いってわかるけど、これはもうレベルが違うよ。そりゃ“襲来”って言葉になるわ。

 RPGで言えば裏ダンジョンのボスってくらいの威圧感じゃん。

 

 まあ僕くらい雑魚なら相手が誰だろうが一撃で殺されるので、逆に相手が誰でも同じっちゃ同じだけどね。

 

(うぬ)が我が息子と相対したという聖者を名乗る男か」

 

 ドラパパは厳めしい外見に似つかわしい、低音の渋い声を部屋中に響かせる。

 あくまでも客人に過ぎないはずの彼が、ただ一声でこの場の支配者であることを知らしめるほどの迫力に満ちていた。

 

「あ、はい。そのようなものです」

 

「パパ、そいつやっちゃってよ! 人間のくせにボクに恥をかかせたんだ! ドライグの誇りに泥を塗った奴なんて生かしておけないよね!」

 

 ドラっ子はニヤニヤと笑いながら、椅子の上で脚をパタつかせている。

 ドラパパはそんな息子の声を無言で受け止めながら、じっと僕に視線を送ってきていた。

 

「我が息子の言うことは真実(まこと)か。こやつは貴様に力を封じられ、顔を何度も叩かれて、高額な金銭を要求されたと申しておる。……相違ないか」

 

 クワッと彼の(まなじり)が引き上げられ、ぎょろりとした視線が僕に注がれる。

 

『答えよ!!』

 

 ビリビリと空気を物理的に震わせ、彼の轟音が耳朶を打つ。

 

 プシャアアアア……と音がするから何だろうと思ったら、横でデアボリカがへたり込みながら足元に水たまりを作っていた。

 

 あっ、こいつやりやがった!

 ったく、ここは僕の家でもあるんだぞ。後で自分で掃除させてやるからな。

 

 まあそれはさておき。

 ドラパパの声には人間に恐怖感を感じさせる魔術的な効果があるのかな。

 ウェズ君とアンゼリカさんはガタガタと体を震わせているし、アミィさんは歯を食いしばりながら殺意に満ちた視線をドラパパに向けている。

 前にドラっ子が咆哮で謝罪を要求してたけど、あれと同じ類のものなのかもしれない。効果はドラっ子よりも遥かに上っぽいけど。

 

 もっとも、僕にはまるで効かないけど。

 【精神耐性】は他人からの影響を極端に受けづらくしてるらしいから、その効果が出てるんだろうね。正直まるで実感がない。

 なので、

 

「いや、違いますよ。先に僕に迷惑を掛けてきたのはあなたの息子さんです」

 

 けろりと言い返すと、ドラパパは驚いたように瞳を見開いた。元がぎょろりとした瞳だから、余計にインパクトがあるね。

 

「ほう……? ならば、仔細を聞かせてもらえるのだな?」

 

「もちろん。僕には人道に恥じることは何もありませんから」

 

 ヒュウ~♪とどこかから口笛が聞こえた気がして、僕は天井を見上げる。

 ……過保護だね、ウルスナ。でもお嫁さんに見られてるとなれば、なおさらみっともないところは見せられなくなったぞ。

 

 僕はむんっと下腹に力を入れると、ドラパパの視線をまっすぐ正面から受け止めて口を開く。

 

「それじゃあ今回の件について、順を追って説明しますね」

 

「うむ、聞かせてくれ」

 

 そう言って、ドラパパは腕組みをしながらどっかりと椅子に座り直す。

 ドラっ子がまずい、というように口元を引き攣らせるのが見えた。

 

 おっかないパパの威圧感の前なら、人間なんてビビって何も言えなくなるとでも思ったか?

 今更後悔しても、もう遅いからな。

 

「ドラっ子の被害者です。全てをお話しします」

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