【書籍版1巻2/20発売】貞操逆転ハードモード異世界を鋼メンタル冒険者が生き抜く   作:風見ひなた(TS団大首領)

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第81話「鋼メンタルでアミィさんを新居に迎え抜く」

「おはよーアミィさん!」

 

「おはよう、アイリーン。爽やかないい朝だな」

 

 テーブルで新聞を広げていたアミィさんが、アイリーンの挨拶ににっこりと笑みを返した。

 

「ふぁ……ねむ……」

 

 アイリーンに続いて食堂にやってきたウルスナが盛大なあくびをあげると、ふぅむとアミィさんが唸り声を上げる。

 

「アイリーンに比べて、ウルスナは眠そうだな。寝るのが遅いのではないか? 今度私と組み手をしてから寝てはどうだ、心地よく体がほぐれてよく眠れるぞ」

 

「はは、遠慮しとくよ。お前とやると熱が入りすぎて体がボロボロになっちまう。それより、お前こっちの方はどうなんだ。イケる口なのか? 飲めるなら今度付き合えよ」

 

 そう言ってグラスを傾ける仕草をするウルスナに、アイリーンがもう!と唇を尖らせた。

 

「アミィさんをウルスナの堕落した生活に巻き込まないで!」

 

「んだよ。仲間外れにされるとでも思ってんのか? ちゃんとお前も誘ってやるから安心しな」

 

「そういうことじゃないもん!」

 

 アイリーンの反応を見てへらへらと笑うウルスナに、アミィさんが小首を傾げた。

 

「この屋敷では飲み会は結構やるのか?」

 

「いんにゃ、まだやったことはねぇな。ユージーンがちっとも酔わねえからつまんねえんだよ。アイリーンも弱くてすぐ真っ赤になってひっくり返っちまうし」

 

「まあアイリーンくらいの歳なら、自分の限度を知らなくても仕方あるまい。何度も吐いて自分の限界を弁えていくものだよ。みんなそうやって大人になっていくものさ」

 

 アイリーンの頭をぽんぽんと撫でるアミィさん。

 そんなお姉さんの掌にアイリーンは気持ちよさそうに目を細める。

 

「えへへ、アミィさん好き~」

 

「私もだよ、アイリーン。ウルスナ、そう言うならみんなで今度酒宴を開こうか。実家からいい酒を持ち出してこよう」

 

「おっ、そうこなくっちゃな!」

 

 ウルスナはパチンと指を鳴らして、アミィさんの言葉に快哉を叫ぶ。

 

 そんな感じで朝っぱらから飲み会の話でワイワイ盛り上がっているお嫁さんたちを、僕はニコニコの笑顔で眺めていた。

 

 いやぁ、早速仲良くやってて本当に微笑ましいなあ。

 ハーレムで一番の問題って、どうやって経済面を賄うかとか生まれてきた子供への財産分与をどうするかとかじゃなくて、やっぱり第一にみんなが仲良くやれるかどうかだと思うんだよね。

 

 戦国時代の日本でも大体の殿様は愛人が複数人いてハーレムを作ってたけど、家中のゴタゴタって大体正室と妾が仲悪くて起こるんだよね。仲が悪い家臣同士の争いが家の存続を揺るがすほどのもめ事になることはあんまりない。盤石だった家は、大体正室がしっかりハーレムを采配してた家だって言われてるよね。

 

 そこへ行くとウチのお嫁さんたちは本当に仲がいい。

 昨日まさかの婚約発表からなだれ込むようにアミィさんが屋敷の一室に引っ越すことを決めて、とりあえず身一つで泊まって、明くる朝の光景がこれだよ。

 3人とも十年来の親友みたいにめちゃめちゃ意気投合してる。

 誰が正室って決めてるわけでもないんだけど、なんか自然に一番年長のアミィさんが3人の中心にいるような感じがあるね。

 

 実を言うと、ちょっとくらいは揉めると思ってたんだよね。

 なんせ色恋沙汰が絡んでくる関係だし、嫉妬とかあって当然じゃない?

 その気配がまったくない。

 アミィさんは自分は新入りだからとちょっと遠慮してるところがあるみたいだけど、別にアイリーンもウルスナも自分の方が先輩だからと偉そうにするわけでもないし、逆にアミィさんが家族の輪に入りやすいようにと積極的に絡みにいってる感もある。

 

 いやホント、棚ぼたでこんな素敵なお嫁さんがやってくるし、先にいた2人は和気あいあいと迎えてるし、こんなうまい話があっていいのかな。嬉しすぎるでしょ。異世界転生最高だな!

 

 

≪説明しよう!

 我々の価値観ではものすごく男性にとって都合の良いハーレムに映るが、これは【女性が男性を共同所有している】から起きている現象である!

 

 地球では有史以来の、夫婦とは男性が女性を所有するものという歴史的背景があるため、ハーレムにおいて女性は主人である男性の寵愛を奪い合ってときに骨肉の争いを繰り広げるのだ!

 しかしこの世界の結婚は女性側が男性を所有するものなので、共同所有する側の数が増えても目くじらを立てない! むしろ女性側は積極的に仲良くして、家庭を盤石なものにしようという文化が成立している!

 

 つまり「えっ、貴女も夫がほしいの? ええやろええやろ、種を分けたげるわ! その代わり私たちはこれから姉妹ね! 仲良く家庭を作っていこうや!」と義兄弟を結成するのがこの世界の不文律なのだ!

 地球では女性側が1年に1人の男性の子供しか妊娠できないためこの文化は成立しない。男性が少ない貞操逆転世界だからこそ成立する文化だと言えよう!

 「我ら竿姉妹、生まれた日は違えども、同じ男の種で孕んで同じ日に産まん!」

 

 ちなみにこの世界の男性は性欲が薄いので、普通は妻が増えたら負担が増えてげんなりする! ウッキウキになっているこの聖者がありえないくらいにドスケベなのだ!≫

 

 

「……何で嬉しそうなんだ、お前……? お前の意思を無視して盛り上がってる女どもに怒りとか湧いたりしないの?」

 

 テーブルに座るドラコがなんだかムスッとした顔で視線を送ってくるけど、お前なんで機嫌悪そうなの?

 

「いや、怒ったりするわけないじゃん。お嫁さんたちが幸せそうで、僕は本当に嬉しいよ」

 

「……本当に変な奴。ちぇ、心配したボクがバカみたいじゃないか」

 

 そう言いながら、ドラコはぐいっとアップルジュースを飲み干した。

 ふうむ? なんか気難しいね、思春期が近いんだろうか。

 

 ちなみに3人のお嫁さんの中で一番この状況を喜んでいるのはアイリーンだ。

 アミィさんが年下に優しくて、アイリーンが何を言ってもうんうんと笑顔で聞いてくれるので、すごい速度で懐いた。

 頼りがいがあって包容力も兼ね備えた長女と、だらしないけどキメるときはキメる次女の下で気ままに過ごせる末の妹ポジションを満喫している。この生活が幸せで仕方ないって感じのイキイキした顔だ。

 

 多分これ、孤児院育ちで年上の家族がいるのが当たり前だったからなんだろうなあ。冒険者になる前は孤児院の子供たちの一番上のお姉さんだったらしいけど、本人的にはストレスがかかる日々だったのかもしれない。

 逆に実家では末っ子だったけど姉との折り合いが悪かったというウルスナは、心なしかアミィさんとの距離感を慎重に測ってるところがある。僕相手ならもっとざっくばらんにいろいろぶっちゃけてくるもんね。

 

 そんな新しい妹たちができたアミィさんは、まんざらでもなさそうだ。

 元から年下への面倒見がいいタイプなのかな。軍人としての生活が長いみたいだし、後輩の扱いに慣れているのかもしれないね。

 

 このタイプも全然違う3人が、僕という共通の夫を軸に姉妹として成立しているのって本当に不思議な気分だ。いやあ、こんな女の子たちに慕ってもらえるなんて、男冥利に尽きるよ。どれだけ歳月が経っても、この3人はずっと仲良し姉妹であってほしいもんだなあ。

 

 バンッッッッ!

 不意にテーブルに拳が叩きつけられ、僕たちはその音の主を見やった。

 

「アミィ姉様は私の姉なんだが!? 実の妹の私の目の前で、キャッキャウフフとよく盛り上がれるものだな!?」

 

 うがーっと犬歯を剥き出して吼えるデボ子に、僕たちは無言で目配せして肩を竦める。

 

「だって、なあ?」

 

「ねえ?」

 

「姉を裏切ったのは他ならぬオメーだろうが。もうお前に妹を名乗る資格はねえよ。むしろよくもノコノコとこの場に顔を出せたもんだな? 普通の感性してたら合わせる顔がねえだろ、心臓に金属針でも生えてんのか?」

 

 ウルスナの言葉に、僕たちはうんうんと頷いた。

 マジで僕でもねーわって思うよ、こいつ天然の【精神耐性】でも持ってんの?

 いや、ドラパパやドラコにびびり散らかしてたからそれはないか。

 単に共感性が低すぎるサイコパスなだけだな。最悪じゃん。

 

「アミィ姉様は私を許してくれると言ったぞ! つまり私がしたことはチャラということだ!」

 

 いやそうはならんやろ。

 許されたからって罪が消えるわけじゃねーんだぞ。

 こいつ何も反省してないのか……?

 

「マジかこいつ……?」

 

 あのドラコが絶句している!

 

「よく見ておくんだ、あれが反省をしないまま自分を甘やかして20年近く生きてきてしまった人間の姿だぞ。あんなみっともない大人になりたくなかったら、失敗したときにきちんと反省する癖をつけることだ」

 

「う、うん……」

 

 僕の言葉に、ドラコがごくりと喉を鳴らす。

 

「黙りたまえ! 他人に迷惑をかけてロクに反省もしないのは貴様だって同じだろうが! たまたま自分が周囲に怒られなかったからって、私に偉そうな態度をとるんじゃあないッ!」

 

 そう言って、デアボリカはうがーっと吠え掛かってくる。

 うん、まあ……それはそうなんだよな。僕、割と他人に迷惑かけることをナチュラルにやってるよな。天使騒動を起こしたときもそうだし、この前の壁一面に図面を貼ってたときもドラコに止められなかったら大問題になってそうだったし。

 どうして行動を起こす前にその結果を考えて制止することができないんだろうなあ、僕は。そんな感じでちょっと気分が下がっていると。

 

「ユージィはみんなの役に立ちたいって気持ちが空回っただけでしょ! あなたみたいに他人にわざと迷惑をかけたり、開き直ったりしないもん!」

 

 アイリーンはそう言って僕に抱き着き、デボ子にあっかんべーした。

 ぎゅっと僕を抱きしめてくれるアイリーンの体温が心地よい。

 

「アイリーンの言う通りだ。ユージーンは根本的には善性の人間だぞ。お前みたいな悪人と一緒にしてんじゃねえよ」

 

 きっぱりとしたウルスナの言葉に、アミィさんも頷いている。

 しかしその表情が困っているように見えるのは……。

 ああ、なるほど。アミィさんが年下に優しいのって、子供の頃からこの問題児に悩まされているからなのか?

 

「うぐぐ……! 何故私ばかりが責められるのだ!」

 

「褒められるようなことしてないからじゃないの?」

 

 テーブルの下で脚をばたつかせながら地団駄を踏んで悔しがるデボ子に、ドラコは心底しょうもないものを見る目を向けた。

 デアボリカはその言葉に衝撃を受けたかのように、大きく目を見開く。

 

「ドラコ様!? おもちゃを差し入れて無聊を慰めようとして差し上げた私の献身をお忘れですか?」

 

「いや……頼んでないし……」

 

「そんな! 受け取ってくださったではありませんか! 受領されたからには、将来ドラゴンの長になられた暁には私をお引き立てくださいませ! 責任とってください、責任!」

 

「えぇ……? 何なのこいつ……」

 

 自分よりガキっぽい態度で責任責任と喚く大人に、露骨にドン引きするドラコ。

 そんな世間知らずのお子様に、僕はため息を吐いた。

 

「付き合う相手を考えないからそうなるんだ。誰彼構わずいい顔をするなよ、押し売りの手口だぞ。甘い言葉ですり寄ってくる奴は、疑ってかからないとダメだ」

 

「う、うん……わかったよ」

 

 デアボリカはそんなドラコに恨みがましい目を向け、壊れたスピーカーのように舌を回し続けている。

 

「責任! 責任! さっさと責任! はよ!」

 

「デアボリカ、いい加減にしないか。ドラゴンとはいえ年端もいかない子供に……大人として恥というものはないのか?」

 

 妹のあまりの醜態に苦言を呈するアミィさんだが、デボ子はまるで堪えた素振りは見せず、ヘラヘラと笑みを浮かべている。

 

「私、おかげさまで今は社会的信用がゼロなので、人からどう思われようが気になりませんね。今の私は無敵です! ワハハハハーーーッ!」

 

 そうして高笑いを上げるデアボリカ。無敵の人って怖いなあ。

 

「で? 結婚の許可とやらはいつ取りに行くんだ?」

 

 ぼそりと呟かれたウルスナの言葉に、デアボリカはびくりと肩を震わせた。

 

「こればかりは有耶無耶にできると思うなよ。お前がしっかりと責任を果たすまで、絶対に逃がさねえからな。できるよな? こんなガキに責任を求めるくらいなんだ、自分だって責任を取れるよな?」

 

「わ、わかっている……。ちょっと時間が必要なだけだ、言われなくてもやるとも」

 

 ママから言われて今宿題やろうと思ってたの!って返す小学生みたいな言い訳するじゃん。本当にやるつもりあるんだろうなこいつ。

 そもそもこいつがやらなかった場合の強制力とかないよなあ。

 僕がそう思っていると、ウルスナはデアボリカを睨みつけながら口を開いた。

 

「お前が責任を履行するまで、どんな事業で再起を目指そうが必ず潰してやるからな。逃げるなよ、いいな?」

 

「……わ、わかった」

 

 露骨に虚勢を張った顔で、デアボリカは頷く。

 はて、ウルスナはこんなこと言ってるけど、そんなことができる権力とかあるのかなあ。実家は隣国の辺境伯だっていうけど、今は家出して逃亡中の身だし、ただのチンピラでしょ?

 まあ口先の脅しでも、デアボリカが多少なりともヒヤッとしてくれたらいいか。

 

「ウルスナは心配性だな。大丈夫だよ、デアボリカは私のことを祝福してくれると言ってるんだ。そんな脅しをかけなくても、しっかり許可を取って来てくれるさ」

 

「ンギイイイイイッ!?」

 

 聖母のごとき慈愛の笑みを浮かべるアミィさんの言葉に、デアボリカが苦悶の声を上げる。頭から聖水をぶっかけられて溶けかかる悪霊みたいな叫び方するじゃん。

 こいつ、人の善意でぶん殴られるのが一番効くんだな。ますます邪悪なクリーチャーにしか思えないんだけど、本当に人間なんだろうか。

 

「というか、その許可って必要なの?」

 

 小首を傾げながらそもそも論をぶっちゃけた僕に、アイリーンもこくこくと頷いて同意する。

 前々から思ってたんだけど、この世界の結婚制度って相当緩いよね。ほぼほぼ事実婚というか、夫婦ですって言ったもん勝ちというか。

 結婚には巨額の持参金が必要だって話だけど、お金を用意できてなくても性交渉するのはオーケーだし、同棲まで許されてるし。

 正直お金を用意できなくて国から法的に夫婦と認められなくても、別にこのまま事実婚で済ませることもできそうじゃない?

 持参金が必要だっていうのも、要は女性側の見栄なんじゃないかなあ。

 

 それと同じで、アミィさんももう25歳の大人だし、実家の許可なんてなくたって夫婦にはなれるんじゃないだろうか。

 

 そう思っての僕の発言に、ウルスナは首を横に振った。

 

「いや、必要だ。俺たち平民と違って、アミィは曲がりなりにも貴族だからな。貴族には守らなければならないしがらみってもんがあるんだよ。アミィは現時点ではホットテイスト家の人間だ。そこから出て、新たな家を作って独立するという手続きは踏まなくちゃならないのさ」

 

「ふうん、そういうものなの」

 

「めんどくせーんだよ、貴族ってのは。なにせ見栄で飯食ってる身分だからな、何をするにも正規の手順ってのが必要になるわけだ」

 

 まあそれを口にしてる当人は、隣国の辺境伯家ってしがらみから脱走して平民になりすましてるわけだけど、深くは問うまい。

 

「こいつ、平民のくせによくも貴族の前でそんな不敬を……!」

 

「ふふ、耳が痛いな」

 

 カリカリと怒るデアボリカと対照的に、アミィさんは苦笑を浮かべている。

 ……寛大だね。それとも所作の端々から、ウルスナも貴族だと感じ取っているのかもしれないね。

 

「それにユージーン、実はお前持参金は必要ないんじゃないかみたいな顔してるけど、絶対に必要だからな」

 

「そうなの? 何か用意しないデメリットとかある?」

 

「ある。万が一お前がさらわれて、誘拐先で持参金を用意されてしまった場合、そっちが法的な夫婦として認められてしまうんだよ」

 

 ウルスナの言葉に、アイリーンが目を剥いた。

 

「ユージィが誰とも知らない女と結婚!? あたしたちがいるのに、そっちが本物の夫婦ってことになっちゃうの!? そんなの、そんなの……許せないよ! あたしたちの方が先にユージィと結婚したのに! 生かしちゃおけない……どこにいるの、そいつは!?」

 

「……え? なんでお姉ちゃんハァハァ言ってるの……?」

 

 一瞬で目を血走らせてヒートアップしたアイリーンに、ドラコが怯えた視線を向けた。これまで優しくて面倒見がいいまともなお姉ちゃんの一面しか見せてないからね、仕方ないね。

 

「落ち着け、アイリーン。これはたとえ話だ。ただまあ……ユージーンの存在がこの街の外にも広く知られるようになったら、身柄をさらってでも迎え入れたいという貴族が出てきてもおかしくはないな。だからこそ、俺たちは持参金を用意しなくちゃいけないんだ。わかったか?」

 

「はぁ……はぁ……。うん、わかったよ。持参金の必要性が理屈じゃなく心で理解できた」

 

「いや、理屈でも理解しような?」

 

 そんなやりとりを見ながら、アミィはふむと顎に指を置いた。

 

「持参金か……確かにそれは必要だな」

 

「結構巨額になっちゃうみたいなんだけど、大丈夫……?」

 

「ああ、問題ない。何しろ私はこれまでの給料のほとんどを貯蓄しているからな」

 

「…………」

 

 間の悪い沈黙が満ちる中、アミィさんは掌で自分の目を覆い、クックッと笑い声をあげた。

 

「ああ、そうだ。男も買わない、酒も飲まない、博打もしない。趣味といったらただひたすらに体を鍛えるだけ。そんな砂漠のように不毛な生活を入隊以来ずーっと続けてきたのがこの私だ。同僚から『何を楽しみに生きているのかわからない』『渇ききった喪女砂漠の中でも随一の無雨地帯』『男関係は不毛なのにムダ毛は密林』『結婚詐欺師にハマるタイプ』と散々に陰口を叩かれながら処女のまま25歳まできてしまった私が……私が……」

 

 アミィさんはおもむろにガッツポーズを取り、食堂に響く声を張り上げた。

 

「私は、私が勝ったぞおおおおおおおおお!! あはははははははーーーーーッ! 見たか、見たか喪女ども! 私の勘違いじゃないぞ! 詐欺師でもなかった! 私と結婚してもいいって男が本当にいたんだ! やったあああああああああああ!!!」

 

 渾身の勝利の雄たけびをあげるアミィさん。

 なんかいろいろ溜まってたのかな……。

 一晩経って今更婚約の実感が湧いてきたのか、物凄い勢いで勝利に浸っている。

 

 そんなアミィさんの狂態を沈黙と共に見守っていたアイリーンとウルスナは、にわかに両の手を打ち鳴らし始めた。

 

 パチパチパチ……。

 

「コングラッチュレーション……! コングラッチュレーション……!」

 

「おめでとう、アミィ。お前は……俺たちは、勝者だ!」

 

「ありがとう……私の新しい姉妹たち!」

 

 涙を浮かべながら、ひしっと抱き合って喜びを分かち合う3人。

 

 そんな彼女たちの姿を目の端に捉えながら、ドラコは僕にどんよりとした視線を向けた。

 

「こいつはマトモだと思ったのに……。お前の嫁、みんな個性的すぎるんだけど」

 

「そうかな? 幸せそうでいいと思うよ」

 

 あっ、さては。

 

「僕のお嫁さんが全員あまりにも魅力的すぎるってことか? ダメだぞ、絶対に惚れるなよ。みんな僕のなんだからな」

 

「ねーよ!!」

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