【書籍版1巻2/20発売】貞操逆転ハードモード異世界を鋼メンタル冒険者が生き抜く   作:風見ひなた(TS団大首領)

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第84話「鋼メンタルで受胎を告知し抜く」

 今日も今日とて平穏な朝。

 アイリーンはもしゃもしゃと幸せそうな顔でブレックファーストをかきこみ、ウルスナはしきりにあくびしながらこれを肴に酒飲めねえかなあとぼやき、アミィさんはうむうむと何やら感慨深そうに頷きながら一品ずつ料理を味わっている。

 

 ドラコもおいしそうに食べてるね。感想を聞いたら相変わらずドライグの里の残飯よりマシだなみたいな悪態をつくんだけど。

 テーブルの端っこに座っているデアボリカも同じメニューを食べているけど、これは僕が作ったものではない。僕が料理を教えたメイドさんが作ったものだ。同じものを食べるなら僕がまとめて作った方が手間がなくていいんじゃない?と思わなくもないけど、それだとメイドさんの仕事がなくなっちゃうからね。

 僕とメイドさんの間でこの体制が決まった初日は、「どうして私の皿だけ出来が悪いんだ? 失敗作を押し付けたのか貴様!」みたいに無駄吠えされて閉口したもんだよ。

 

 アミィさんがうちに来て2週間ほど。アイリーンとウルスナもアミィさんを受け入れているし、ドラコの教育もしてくれているし。

 デアボリカの話では、領主であるお母さんとアンゼリカさんも問題なく婚約を受け入れてくれたそうだ。デアボリカが何やら怯えたように頑なに家から出ないのが気になるけど。もう冒険者に命を狙われることもないはずだけど、なんかあるのかね。

 

 とりあえず、もうアミィさんを迎えた新体制も盤石と言っていいだろう。

 そろそろ次のステップに移ってもいい頃合いではなかろうか。

 そう判断した僕は、朝ごはんを食べているお嫁さんたちに声を掛けた。

 

「ところでそろそろアミィさんとエッチするべきだと思うけど、みんなはどう思う?」

 

 ブッフォ! と全員が口から紅茶を噴出した。

 

「ユ、ユウジ!? 朝から何を言い出すんだ!」

 

「爽やかな朝にする話か、それ?」

 

「せっかくの朝ごはんが生々しい話で台無しだよぉ!」

 

 お嫁さんたちが三者三様に抗議を浴びせてくるじゃん。

 

「いや、だって仕方ないじゃないか。みんながこうして揃うのはご飯どきくらいだし。夜だと娼館が既に営業してしまっているから、朝にするしかないだろ? せっかく初夜を迎えるなら、数日ほど休みをとって集中的にイチャイチャしたいし」

 

 なにせ家ではエッチをしないっていう取り決めが存在するからね。

 ヤるからには娼館に籠って数日ほどみっちりとセックスと飯のことしか考えないアニマルライクなハネムーンを過ごす、それがウチのスタイルだ。

 

 そんな取り決めを結ぶきっかけになったデアボリカは、何やら死んだ魚のような目でもしゃ……もしゃ……と砂を噛むようにご飯を食べ続けている。

 

「……なあ、ボクって席を外した方がいいか?」

 

「いや、別にいていいよ。娼館に籠るとなればその間教育もお預けになるし、お前にとっても無関係じゃないだろ?」

 

「……いや、ボクが居づらいんだけど……」

 

 そう言ってドラコは何やら言葉を飲み込んで席に座り直した。

 はて、こいつは何を遠慮するような仕草をしてるんだろうか。共感性が失われているので僕にはピンとこないな。

 

 そういえばドラコってそろそろ思春期だろうけど、性欲とかどうなってるんだろう。僕がこのくらいの頃は既に精通を迎えていて、寝ても覚めても脳内ピンク色の暇さえあればオナニー&オナニーのシコ猿だったけど。

 この前井戸で精通したパンツ洗ってたから男性機能がないってこともないだろうけど。実はドラコが僕のお嫁さんに横恋慕しないかと密かに警戒してたんだよね。みんなめちゃめちゃ優しくてエッチだもん、こんな魅力的なお姉さんたちと一つ屋根の下で暮らせるとか僕なら常時フル勃起もんだよ。

 なのでたまに釘を刺してみてるけど、なんか全然そんな感じないんだよなあ。やっぱりドラゴンはドラゴン相手にしか欲情しないんだろうか? 謎が深いね。

 

 まあドラコのことはさておき、今は自分のことだよ。

 この家に嫁いできたアミィさんだけど、この2週間というもの全然エッチなアプローチをしてこないんだ。かといって僕を意識していないというわけでもなくて、僕の顔を見たらニコッと微笑んでくれるし、たまに隣に座ってさりげなく手を重ねたら頬を赤らめて俯いたりするし。初々しくて可愛いね。巨乳揉み倒したい。

 

 親から婚約の了承を取れてないから手を出さないというのならわかるんだけど、その了承もデボ子が割と早い段階から動いてくれたしなあ。

 この家の中でエッチなことはしないというデボ子との取り決め以外、何の問題もないはずなんだけど。デボ子との約束? 馬に蹴られてろよ。

 そんなわけで僕は可及的速やかにアミィさんとエッチなことをしたい。こんな優しくて凛とした巨乳美人と結婚しておいて子づくりしないなど種付けお兄さんの存在意義に反する。

 

「もう何も問題ないよね? だからエッチしよう。子供を作ってハッピーエンドを迎えよう」

 

「う、うむ……。男にそこまで求められるのは女冥利に尽きるが」

 

 アミィさんはもじもじと指を交差させながら、頬を赤らめた。

 

「その、なんだ。もうしばらくは清い関係でいたいというか。私たちが相思相愛の関係になってから、まだ2週間しか経っていないんだ。今は互いの想いを熟成させるべきではないかと思うんだが」

 

 はぁ~~? 何を言ってるんだアミィさんともあろう人が!

 なんだよその草食っぷりは!?

 まるでNTRモノに出てくる短小早漏チンポの寝取られ役のごときヘタレ思考! そういうこと言ってだらだらと時間をかけるとオラオラ系巨根竿役に寝取られるんだぞ! 僕は詳しいんだ!

 とにかく恋愛は早い者勝ち、魅力的なメスはとっとと食え! おじいちゃんのアカウントでDLs●teに入り浸ってエロ同人を読み漁った僕は、恋愛の極意をそう学んだのだ。

 僕はアミィさんのことを人間として尊敬できる女性だと思っているけど、それだけは同意できないね!

 

 だというのに、

 

「わかる、わかるぜ……! 俺もとにかくこの魅力的なオスを捕まえようと焦って肉体関係を迫ったけどよ。今にして思えば、もうちょっとじっくり恋愛を楽しみたかったな……ってもったいない気持ちになるんだよ。肉体関係を持ってしまうと恋もゴールインってところがあるしさ」

 

「そうだね、あたしもできるならユージィともっと甘酸っぱい恋をしたかったかな。なにせ余裕がなかったもん。強力なライバルがいたから、とられないうちになんとかしなきゃって気持ちが焦っちゃったし」

 

 僕のお嫁さんたちがアミィさんのヘタレ思考に賛意を示している!?

 どうしてだよ、あれだけ初夜でエロエロな熱い夜を過ごしただろ! めちゃめちゃ満足した顔してたじゃん! オンナに生まれてよかったみたいなこと言ってたじゃん!

 

 そんな僕の顔を見て、ウルスナはやれやれと首を振った。

 

「はぁ……わかってねえなあ、男って生き物は」

 

 

≪説明しよう!

 我々の世界の男性は、頭の先から下半身の先端まで海綿体でできている脳味噌チンポ野郎な性欲を持つと同時に、女性との心ときめかせるような心の交流をしたいというセンチメンタルな感傷を持っているものなのである! 雄士は種付けお兄さんという根っからの竿役なのでそんな繊細な思考は持ち合わせていないが!

 

 貞操逆転しているこの世界の女性も、普段は中学生男子のようなシコ猿マインドに頭を支配されているが、性欲が満たされた状態だと繊細な恋もしたいとか言い出すのだ! ちなみに食えそうなオスを目の前にした状態だと、大体のメスはとりあえず性欲を満たすことを優先する! プラトニックな恋など所詮賢者タイムの世迷いごとに過ぎないと知れ!

 そういう意味では、アミィは肉欲に脳を支配されきっていない希少種と言えるだろう! まあ、エッチなお礼を期待して不審者を街に入れてしまうようなむっつりシコ猿ではあるのだが!≫

 

 

「いいんじゃねえか、アミィはゆっくり恋すれば。全然いいと思うぜ! 俺が応援する!」

 

 ウルスナは爽やかな笑顔を浮かべ、バンっとアミィの背中を叩いた。

 アイリーンもニコニコと満面の笑みを浮かべて、それを見守っている。

 

「そうだよ! もうアミィさんは婚約してるし、横から人のオトコをさらおうとするような薄汚い泥棒猫が割って入ることもないしね!」

 

「あ゛?」

 

「あ゛?」

 

 ウルスナとアイリーンは互いにメンチを切り合って泥棒猫同士の威嚇を始めた。なんて不毛な喧嘩なんだ。

 なんかこの2人がバチバチやり合うの久々に見たな。

 

「2人とも……ありがとう。では、私はゆっくりと愛を育ませてもらうとしよう」

 

 アミィさんは幸せを噛みしめるような笑みを浮かべ、そんなことを言う。

 ウルスナとアイリーンは取っ組み合った体制のまま、よかったよかったと頷いた。

 

 いや、よくないよ!

 主に僕のチンポが納得してないよ! どういうことだよ!

 女の子の友情劇とか今はいいんだよ!

 

「抱かせろよ! 女の人っていつもそうですね! 僕たちの性欲のこと、なんだと思ってるんですか!?」

 

「いや、ボクをお前みたいな淫乱男と一緒にしないでくれる?」

 

 僕の渾身の訴えは、ジト目のドラコに一蹴された。なんてことだ。

 というかこの世界の男性ってそんなにエロに対して受け身なの? それで何が楽しくて生きてるの?

 改めてなんだけど、この世界の男性と僕の間には隔絶を感じるなあ。

 

 まあ、仕方ないか。

 アミィさんがそういうのなら無理に抱くわけにもいかないもんな。

 僕は和姦しか認めない男だ。筋金入りのユニコーンなのだ。最終的に膜をこの自慢の角で突き破ることができるのならばヨシとしよう。いや、ユニコーンってどこが聖獣なんだよ。どう考えても淫獣だろこれ。

 

「そうか……じゃあアミィさんの気の向いたときまで待つよ」

 

「ああ、待たせてすまない。ユウジにもっと好きになってもらえるよう、私も頑張るよ」

 

 照れたようにそんなことを言うアミィさんに、僕は訊いた。

 

「それで、具体的にはいつ抱かせてくれるの? アイリーンとウルスナはもう妊娠してるし、タイミング的には今仕込めばほぼ三つ子みたいな感じで生まれてくるかなと思ったんだけど」

 

「「え!?」」

 

 アイリーンとウルスナが突然大声を上げたのに、僕は眉を跳ねさせた。

 どうしたの? そんなすっとんきょうな声出して。

 

「……あたしたち、妊娠してるの?」

 

「してるよ」

 

 着床が2週間前だったから、今で妊娠1か月目くらいかな?

 そういえばここまで本人たちには言ってなかったね。

 だってほら……さすがに「君たち僕の子供を妊娠してるよ(ニチャア)」って告げてくる男って気持ち悪すぎるかなって……。

 

「してるよって、そんなこともなげに……。いや、確かに最近やたらだるくなったり、あくびがよく出るようになったなとは思ったが」

 

 ウルスナはまじまじと自分のお腹に手を当てて、何かを考えているようだ。

 アイリーンはお腹に手を添えながら、これまで見たことのないような顔でほうっとため息を漏らしている。ロリロリした子がママの顔してると、破壊力すげーな。

 

「待ってほしい。どうしてユウジはそんなことがわかるんだ? 本人たちですら気づいていなかったようなのだが」

 

 アイリーンの表情に節操なくチンポをムクムクッとさせていた僕は、アミィさんの言葉に現実に引き戻された。そういえばアミィさんには僕が異世界人だって言ってないな。

 

「えーと……神のお告げで」

 

 まあ自動販売機のアナウンスなんだけどね。

 神が用意したシステムが告げるメッセージなのだから、それは神託って言っても間違いではないだろう。え、じゃああの自販機は天使ってこと?

 

「そうなのか……。さすが聖者だな」

 

「それ、マジなんだ……。箔付けのフカシだとばかり思ってたのに」

 

 アミィさんとドラコは何やら感心した顔で頷いている。

 よく考えたら、本人より先にお前妊娠したでって告げてくる神様ってツッコミどころ満載だけどいいんだ……。

 

「ウルスナはお酒控えないとね。妊婦のアルコール摂取って良くないらしいよ」

 

「ああ、もちろんだ。この先、無事に産むまでは一滴も飲まねえよ」

 

 空気を変えようとウルスナをからかってみると、予想に反して真面目な顔で頷かれてしまった。あれ、普段は酒が何より好きだって豪語してるのに、すごい決意に満ちた表情見せてくるじゃん。

 

 というか……。

 

「妊娠してからも冒険者って続けていいの? あまり激しい運動をすると、流れちゃう可能性も……」

 

 それ、すごい大事な問題だよ。

 なにせアイリーンとウルスナはお金を稼いで持参金を用意しなくちゃいけない身なのに、その稼ぐあてが冒険者の仕事しかないんだもの。

 さすがに半年にもなってお腹が大きくなるまでは大丈夫じゃないかと思うけども、種を仕込んだ身としてはできるだけ大事をとってほしいというか。とはいえ、そうも言っていられないというか……。

 そんなハラハラする僕に、女性たちはきょとんとした顔を浮かべた。

 

「続けていいに決まってるじゃない、何言ってるのユージィ?」

 

「妊娠したら腹の中の子供が力を貸してくれるって言われてるからな、すげーパワーアップするんだぜ? 冒険者や騎士ってのは妊婦の方がつえーんだよ」

 

「うむ。軍律では妊婦の軍事行動を禁じていない。大陸の方には絶えず男を漁り、常時妊娠状態を維持したまま戦う豪の者もいると聞くぞ。まあ養育費でいくら稼いでもおっつかないのではないかとは思うが、真の英雄とはなりふり構わないものなのかもしれんな」

 

「………………」

 

 マジかよ。

 今、この世界に来て最大級のカルチャーショックを感じてるわ。

 これまで魔力とかいうわけのわからない要素で人間離れした強さを見せてくるのを何度も目の当たりにしてたけど、ここまで僕の常識を打ち破ってきたことはない。

 この世界の女性って、本当に僕の知っている人間なのか?

 

 僕としてはアイリーンとウルスナには子供を産むまで危険なことをしてほしくない。いっそ冒険者を廃業して、ずっと家にいてほしいくらいだけど、それは他ならぬ2人自身が拒否するだろうな。

 この世界の男性って、どんな顔して妊娠してるお嫁さんを頑張って稼いできてねって戦場に送り出すの? うーむ、価値観の相違がすごすぎるよ。

 

「アイリーンとウルスナは既に妊娠しているのか。まあ、といって私が焦ることもないが。私の子は、2人の姉なり兄なりに見守られながら育ってもらうとしよう。妹という立場も良いものだよ」

 

 アミィさんは涼しい顔でそんなことを言う。

 

「よくない……どうして私はあんな恐ろしい姉様の妹に……ううっ」

 

 脇で聞いていたデボ子は真っ白な顔色で、ぶるぶると震えている。

 なんか最近こいつずっとこんな感じなんだよな、何があったのやら。

 

「しかしそうなると、出産までに持参金のあてをつけたいところではあるな。持参金を用意できないまま産むと、法的に私生児ということになってしまうぞ」

 

「えっ、そうなの……!?」

 

「まあそうなるな。とはいえ、ちゃんと考えはある。心配無用だ」

 

 アミィさんの言葉に、アイリーンはがーんとショックを受け、ウルスナはさらりと受け流しているね。その問題も予期していたということか。ウルスナってやっぱり頭いいんだな。

 ウルスナの言葉に、アミィさんはうむと頷きを返している。

 

「さすがはウルスナだな。では、私も同じ時期に持参金を用意するとしよう」

 

「……いいのか? 今ならお前が一番乗りして、唯一の妻になれるぜ?」

 

 ウルスナの問いに、アミィさんはフフッと笑う。

 

「姉妹をさしおいて男を独占するつもりはないよ。どうせなら3人同時に結婚式を挙げ、幸せを掴みたい。そうは思わないか?」

 

「アミィさん……!」

 

 アイリーンがぎゅーっとアミィさんの腕に抱き着き、ウルスナはわかってたさと言わんばかりに笑い返した。

 相変わらず、本当に仲がいいね僕のお嫁さんたちは。

 アミィさんを抱けるのはまだ先のことになりそうだけど、この3人の幸せそうな笑顔を見られるのなら、今はそれでよしとしようか。

 

 

 

 そんな穏やかな日々に転機が訪れたのは、その日の昼にアルシェさんが持ち込んだ冷蔵箱がきっかけだった。

 

 僕がアトリエに持ち込んだ図面から、ようやく試作品が完成したのだ。

 結構長いこと待ったような気がするけど、まだ2週間か3週間しか経ってないんだね。

 一か月もせずに開発に成功したんだから、結構なスピードなのかも。

 

「とりあえず氷を入れた実験では、問題なく食材を冷やすことに成功しました」

 

「よーしよし、本当にありがとう! これで食生活が少し豊かになる!」

 

 まあ構造としては単純なもんだから再現は難しくないんだろうけど、それでもありがたいよ。僕個人でこれを作れって言われてもかなり難しいはず。

 日曜大工でなんとかできそうな範囲ではあるとは思うけど、やっぱ扉の内部におがくずやコルクの層を仕込むのが難航するだろうね。本当にいい技術者が見つかってよかったよ。

 

「はー……へえー……」

 

 ドラコは箱の周囲をぐるぐる回ったり、扉を開け閉めしたりしながら、しきりに感心した顔で冷蔵箱をチェックしている。

 こういう新しい技術に興味があるのかな。やっぱり男の子だね。

 

 アルシェさんはこいつを見て可愛い女の子ですね、生徒さんですか?なんて言ってたけど。

 まあドラコは家の中でもフリフリの女装してるから仕方ないね。外出するときだけでいいような気がするんだけど、わざわざ着替えるのがめんどくさいのかな。

 水泳の日にパンツの代わりに水着を仕込んでいくような感覚なのだろうか。

 

「ただ、まだ氷の精霊石を入れた実験ができてないんですよ。あれがあれば、もっと効率的に冷やせますし、排水も必要ない。食材を凍らせることだってできるはずなのですが」

 

 しきりに感心するドラコを目の端に捉えながら、アルシェさんは悔しそうな顔をした。

 

「そんなに珍しいものなの?」

 

「やっぱり需要がありませんからね。冒険者もわざわざ採取してこないんですよ。運ぶときにすごく寒い思いをすることになるし、結構重いですから」

 

「まあ、石だしね……」

 

 こういうときアイテムボックスとかのチートがあるWEB小説主人公が羨ましいね。

 僕も欲しかったけど、売り切れだったよ。

 まああの能力は悪用法がいろんなWEB小説で広まっちゃってるからね。アニメにもなったくらいだし、そりゃ売り切れるわ。

 どうやらこの世界にも空間操作系の魔法やマジックアイテムはあるらしいんだけど、結構お高いらしいしなあ。

 

 しかしそうか。氷だと食材を凍らせることができないのか。

 そりゃ当たり前だが。

 

「そうなると、アイスクリームをドラコに作ってやれないな」

 

「えっ!?」

 

 ドラコは露骨にショックを受けた顔で振り向いてきた。

 そんなものに興味はないって口では言ってたけど、結構楽しみにしてたのか……。

 

「氷の精霊石がないから物を凍らせられないんだよ。ミルクを凍らせることができないと、無理なんだ」

 

「氷の精霊石? あるよ!」

 

「どこに?」

 

「ボクの里に! ドライグの里なら、氷でも炎でも、精霊石なんていくらでも手に入っちゃうんだから!」

 

 ほほー。

 ドラゴン!? と声を上げるアルシェさんの横で、僕は顎に手をやった。

 なるほど、ドラゴンなら図体もでかいし、空も飛べるし、重い石も簡単に運べるだろうな。それにドラゴンは精霊魔法に詳しい種族だってこの前言っていたし。

 そういうことなら……。

 

「行くか、ドラゴンの里!」

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