【書籍版1巻2/20発売】貞操逆転ハードモード異世界を鋼メンタル冒険者が生き抜く 作:風見ひなた(TS団大首領)
ドラゴンの里で僕たちに用意された部屋は、結構狭苦しい部屋だった。
ベッドなんかはちゃんと人数分置かれているんだけど、そもそも5人分のベッドを置くだけで結構なスペースとられるよね。残ったスペースには机や椅子が置かれるので、それでもう結構なぎゅうぎゅう具合だ。
ドラゴンの宮殿で客にあてがう部屋がこれ?という感じはあるんだけど、そもそも客人が来ることを想定してないんじゃないかな。だってこんな険しい山を越えて来る人なんているわけないもの。
多分なんか別の用途に使われていた部屋を大急ぎで掃除して、そこに人数分のベッドなんかの家具を運び込みましたって感じなんじゃなかろうか。
まあ別に僕はお嫁さんたちとイチャイチャできれば居住性とかどうでもいいけどね。ここは僕の屋敷じゃないからエッチ禁止令も関係ないし、エロエロ三昧し放題……。
と思ったけど、デボ子がいるから結局エロはお預けなんだよな。
邪魔だなあこいつ……。
そんな僕の視線を知ってか知らずか、デアボリカは狸の皮算用に夢中だ。
「ふふふ……あの食事を見る限り、やはりドラゴンはとてつもない財宝をため込んでいるぞ。ビジネスチャンスだ! 私の時代始まったな……!」
ニマニマとほくそ笑みながらソファにどっかと座って、そんな悪だくみをしている。
ドラゴンにカネがあったとしても、お前にその財産をせしめる手段はないと思うがなあ。
アイリーンはベッドでゴロゴロ転がり、ウルスナはキャビネットに収められた酒を物欲しそうに眺めている。アミィさんは椅子に座って腕組みしながら、じっと目を閉じて瞑想しているね。お嫁さんたちはいつも通りだな。
あ、僕に見られてることに気付いたアイリーンがこっちに来る。僕の膝を枕にして喉を鳴らしてるね。可愛い可愛い。よしよしと手で髪を梳いてやると、ふみぃ~と気持ちよさそうに甘え声を出した。
年下のドラコがいないから、久々に甘えスイッチが入っているみたいだ。来なさい、いくらでも甘えさせてやるぜ。僕という美酒に酔いな……!
「しかしドラコはいつになったら会わせてくれるんだろうな」
アイリーンを甘やかしながら、僕は気になっていたことを口にした。
宮殿についたときに引き離されてから、全然会わせてもらってないんだよね。
正直こっちとしては精霊石をもらえればそれでいいんだけど。ドラコがいないと帰ることができないし、それ以前に教え子が心配っていうのもある。まあここはあいつの実家なんだから、別に何の危害も加えられないだろうけど。
「もう会わせるつもりはないんじゃねえか」
気づけばウルスナがこっちに視線を向けていた。
「あいつの周囲の女の目が、どうも嫌な感じなんだよな。なんというかこう、敵意を感じる。あいつら多分、俺たちのことを王子様をさらった悪人だと思ってんじゃねえか」
「ウルスナもそう感じたか。私もよもやと思ったが……」
眼を開いたアミィさんもウルスナに同意してくる。
「でも、僕たちはドラパパさんに頼まれてあいつを預かったんだよ? その命令には逆らえないでしょ」
「ド、ドラパパ……? いや、あの人がこの群れの中でどういう立ち位置なのかちょっとわかりかねていてな。そりゃある程度の裁量は許されているはずだが、あくまでも男でしかない。人間の社会じゃ男の意見なんて、いかに王配であっても基本無視されるもんなんだよ」
そうなの? なんか改めてすごいハードモードな世界だね……。
「どうもあの人、周囲に黙って独断でドラコを連れて来たんじゃないかって気がするんだよな。だとしたら、ここに来たのは失敗だったかもしれねえぞ」
「失敗というのはどういう風に?」
「もうドラコは俺たちのところに帰ってこないかもしれねえってことさ」
「そんなのだめだよ!」
ウルスナの言葉に、僕に膝枕されていたアイリーンがむくっと体を起こす。
「ドラコはもうウチの子だもん! 取り返しに行かなきゃ!」
「いや、ここの子だろ。落ち着けアイリーン」
息まくアイリーンに、ウルスナがため息を吐いた。
アイリーンって一度身内になった人間を束縛する思考があるよね。孤児院育ちだから、そういう感じに育ったのかなあ。愛着が深いというか、若干ヤンデレ気質なのかもしれない。割とサバサバしてそうな感じなんだけどなあ。
ほーらこっちおいで、僕の膝はあーまいぞ。膝に頭を引き戻すと、アイリーンは一瞬でふにゃあと甘えた。いつも甘えられるたびに思うんだけど、こんなごつごつした筋肉質な膝でよくくつろげるね。女の子の膝なら柔らかくていい匂いがしていくらでも安らげるけど、男の膝に甘えてくるこの世界の女性の心境は本当によくわからない。
どうも子供の頃にパパから膝枕してもらった原体験がよみがえるらしいよ。アイリーンも神父さんにしてもらったのかね。
「親御さんがやっぱりドラコを返してって言ってくるなら、僕たちにはどうにもできないからなあ。あくまでもドラパパの意向で預かってるだけだからね」
「ま、そりゃそうだがな」
「でもせっかく仲良くなれたのに……」
僕の膝の上でアイリーンがまだうにゃうにゃと駄々をこねる。
この子随分ドラコに気を許してるんだなあ。まあ、そりゃお互い様か。
ドラコは二言目には僕に罵倒してくるのであっちからは嫌われてると思うけど、僕は割とドラコのこと気に入ってるよ。生意気なオスガキだと思うけど、僕からすれば男の子なんて反抗的な方が気概があってよろしいってなもんだ。この世界的にはどうかしらないけどね。
僕はアイリーンを持ち抱えると、膝の上に座らせて後ろからぎゅーっと抱きしめた。首筋の匂いを嗅ぐと、ふわっと落ち着く香りがする。どれだけお風呂に入れても変わらないので、元々この子の体臭って僕にとっていい香りなんだろうな。
アイリーンがもじもじと恥ずかしそうに身動きすると、小柄な体格の割にむっちりと肉のついた柔らかなお尻で僕の股間が圧迫される。やめてくれないか、僕をそうやって誘惑するのは! 僕はただこの子を落ち着かせたいだけなのに、生意気なケツ肉が僕をムラつかせる。くっそ……妊娠1か月目なのにもう2人目孕みたいのか? 望むところだぞ。
実は意図的なのか、アイリーンがちらちらと視線だけこちらに向けているのがわかった。誘ってるな?
「エロはやめろと言ってるだろサル! ちょっと隙を見せれば盛りやがって!」
すかさず制止してくるデアボリカ。
ちっ。
アイリーンの首筋から顔を離すと、アイリーンはイラッとした顔でデアボリカに視線を向けていた。
「邪魔なのはそっちだよ無駄乳眼鏡」
「無駄乳眼鏡!? おい、私は貴族だぞ! スラム育ちの平民の分際で私にそんな暴言を吐きおって……!」
「ふーんだ」
アイリーンはデアボリカに背を向けて、僕の首筋に額を擦りつけて甘えてくる。無駄ボリカがきゃんきゃんと吠え掛かってくるのを完全に無視してるね。
これ力関係どうなってんだろうね。
デアボリカにとってはアイリーンはホットテイスト家が支配する土地に住んでる平民なんだけど、その夫である僕はデアボリカの姉であるアミィさんの夫でもあるわけで。それでも確かに身分差は存在するから、アイリーンはデアボリカに敬意を払わないといけないはずなんだけど。
まあ、デボ子に敬意を払うなんてどだい不可能な話だけどな。
人格が人類最底辺だぞこいつ。あらゆる知的生命体から見下されるいわれがある。
ええと何の話をしてたんだっけ。
ああそう、ドラコのことだね。
「とりあえず今は様子を見るしかないな。家臣たちがドラコを閉じ込めるようなら、そのときはやむを得ない手段も取るかもしれないけど。それもドラコの意思を確認してからだね」
ドラコ本人がもうサウザンドリーブズに行きたくないというのなら、その意思を尊重すべきだろう。
「ドラパパの意向もそりゃあるけどさ。仮にも師匠となった身としては、最終的にはドラコがどうしたいかを一番優先させてやりたいな」
「ま、そうだな。俺もそれが一番だと思うぜ」
「うむ。あの年頃の子供だ、本来なら家族と過ごして当然だからな」
ウルスナとアミィさんが同意してくれたのを見て、アイリーンも不承不承僕の言葉に頷きを返した。
「……わかった。そりゃパパやママがいるなら、一緒にいたいよね」
アイリーンは良い子だなあ。
僕はよしよしとその頭を撫でて、目を細めた。
「しばらくはここに滞在することになるかな。みんなには付き合わせてしまって申し訳ないとは思うけど」
「水臭いこと言うなよユージーン。俺はお前が行きたいところなら、どこにだってついていくさ」
「そうだな。それにドラゴンの里など、行きたくてもそうそう行けるものではない。同僚へのいい土産話ができたと思って、観光でもしようじゃないか」
ウルスナとアミィさんは快い笑みを浮かべて、僕のわがままを許してくれる。
「仕方ないな、今回だけは許してやる! ウヒヒヒ! これでドラゴンどもにじっくりと商談ができる! 特産品をぼったくり価格で売りつけまくってやるぞ、ウッヒョーーーー!!」
お前には聞いてねえよデボ子。
そもそもドラゴンにサウザンドリーブズみたいなどこにでもある田舎町の特産品なんて売れるのかね。とてもお呼びじゃないような気がするんだけどな。
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同時刻、ドラゴンの宮殿の離宮では。
「あ、わ、せ、ろーーーー!」
離宮の主であるドラコの叫びが響き渡っていた。
「なんで会っちゃいけないのさ!」
「若様、我儘をおっしゃってはなりません」
帰郷するや否や雄士たちと引き離されたドラコ。
輿に乗せられてパレードで街を引き回されたり、宴席でも雄士から離れた席に座らされたりというところまではおとなしく従っていたが、その後に雄士のいる客室に遊びに行こうとしたのを止められたところで不満が爆発した。
「ボクの先生だぞ! ボクが会いたいときに会いに行って何が悪い!」
大臣はどうにも聞き分けのない子供を前に、困り顔を浮かべる。
「下等な人間風情を師と呼ぶなどもってのほかです。師がほしいなら、ドライグから選んで教育係を再度つけましょう」
「いらないよドライグの先生なんか!」
「ドライグにもっとも適した師はドライグです。当たり前のことではありませんか」
「……」
ドラコはじっと大臣の顔を睨みつけ、賢明にも一瞬躊躇ったが、それでも口にした。
「こんな山奥に引きこもってる連中に教わることなんてあるわけないだろ!」
「なんですって……?」
大臣の眉間に、ビキッと深い皺が走った。
「お前たちはサッカーを知っているのか! 剣術は! 詩作は! 何も知らないくせにプライドだけは高い田舎者の何がえらいもんか!」
「聞き捨てなりません。私たちドライグが、人間に劣るとおっしゃるのですか?」
「いいや、違う! ドライグは人間なんか比較にならないほど高等な、地上で最強の種族だよ!」
いくら人間に感化されようと、ドラゴンとしてそこは譲れないドラコだった。
そんな若様の言葉に、大臣はほっと胸を撫で下ろす。
「ですよね!」
「だけどあいつは人間の中でも別格なんだ! とっても賢いし、物知りだし、奥さん3人もいるスケベだし、絵も料理も上手だし、オスにしておくのがもったいないほどすごい人間なんだ! ボクはあいつから教わりたいんだよ!」
「ほう……?」
大臣は豊満な胸を揺らし、チロリと唇を舐めた。
ムワッと熟女フェロモン(加齢臭とも言う)を撒き散らす大臣に、ドラコは一瞬怪訝な目を向ける。
「大臣?」
「いえ、なんでもありません」
思い返したようにすぐに頭を振り、大臣はジロリとドラコの未成熟な肢体に視線を這わせた。
謎の悪寒にブルッと身を震わせるドラコに愛し気な目を向けながら、大臣はきっぱりと宣言する。
「ともかく、人間ごときに師事するなど認めません」
「パパの命令だぞ! お前はパパに逆らうっていうのか!?」
大臣は思わずハッと失笑した。
困ったら親を持ち出してくる世間知らずなガキの言葉に、ついつい鼻で笑ってしまうというものだ。
「黒王様が何をおっしゃろうと、所詮オスのたわごと。彼は族長の配偶者ではありますが、メスである私の方がずっと強いのですよ。ドライグの法とは力。力あるものが他者を意のままにする、それこそが古くからのドライグの掟です」
「いいのか、そんなこと言って。パパの悪口を言ってママが何て言うか……」
「ハクアだって我が子を人間の街に預けたいわけがありません。私が若様を里で育てるべきと進言すれば、必ず同意しますとも」
そう言って大臣はせせら笑った。
必ず自分の意が通るという確信がある。
何故なら彼女は力ある者がすべてを制するドラゴンにおいて2番目に強いメスだからだ。そして唯一彼女が敵わない族長のハクアは、なんというか頭が非常に残念であった。
動物的本能に非常に忠実というか、食べる、寝る、息子を愛でるということにしか興味がない。一言で言えばめちゃめちゃバカなのだ。
バカだが、ものすごく強い。ケンカすれば誰も勝てない。その上、始祖竜の直系である。族長と仰ぐことに異論のある者などいようはずもなかった。
そんな内心では見下しているバカに手も足も出ず、ナンバー2の地位に納まり続けることに大臣はどれだけ悔しい思いをしてきたことか。
しかし大臣には族長にはない武器があった。それが彼女が自慢する明晰な頭脳である。
愚かなハクアを言いくるめることなど、彼女にとっては造作もないこと。
力だってハクアにこそ勝てないが、メスの中で2番目に強い。
つまり知恵と力を兼ね備えた自分こそが、この群れの陰の支配者なのだ……!
族長の夫である黒王はオスながら王の名であだ名されるほどの知恵者だが、所詮はオス。
力で自分に及ばないのだから、何を主張しようと知ったことではない。
奴が何を言おうと、必ず自分の意見を通せるはずだ。
大臣はその余裕を顔に浮かべながら、憎きハクアと黒王の息子にうっとりとした視線を送る。
ああ、なんて可愛いらしい。
あのハクアが産んだとは思えないほど……いや、ハクアも見てくれだけは美人だから、その美貌を受け継いだ息子が可愛いのは当然なのだが。
絶対にこの子の卵は自分が産む。
黒王め、血の涙を流しながら息子が私のものになるさまを見るがいい。
私の求婚を断った男の孫を産む、それは何よりの復讐になることだろう。
それにつけても若様は早く成熟しないだろうか。
もちろんショタコン目線としては幼くあってくれた方がいいのだが、精通だけはしていてくれないと困る。
若様はまだ10歳ほど、普通のオスは12歳程度で精通すると聞くからまだ早いだろうが……。
ふふふ、若い方が嬉しいけどもうちょっと齢を重ねてくれないと困るし、その成長の過程を今か今かと待ち望みながら間近で見守れるこの至福よ。
黒王が若様をどことも知れぬ人間の街に預けたと聞いたときは、手あたり次第に人間の街を焼き払って探しにいこうかと思ったほどに絶望したが……。若様はまた私の腕の中に戻って来てくれた。もう二度と離さない……!
そんな決意を固めながら、大臣はチロリと唇を舐める。
≪説明しよう!
ショタを狙うフェロモン満載のBBAだからエロくて許されるが、我々の世界でいえば求婚を断られた女性の娘に家臣として近づいて初潮が来次第孕ませようと考えているロリコン親父である!
きもちわるい!≫
ドラコを閉じ込めている部屋を辞した大臣は、さてあの人間たちをどう処分したものかと思考を巡らせる。
若様から慕われる存在など自分以外には必要ない。しかもそれが下等な人間だなどと、考えるだけでドラゴンブレスが噴き出しそうだ。
今すぐにでも宮殿ごと焼き尽くしてしまいたいくらいだが、下手に手を出すと黒王が厄介だ。もちろん彼と戦って勝つ自信はあるが、そうなると族長が加勢してくる。
知恵者の自分は、もちろんそんな下手は打たない。
ここは寛大な心をもって怒りをぐっと我慢して、人間の街まで送り返してやればいい。黒王には厳重に監視をつけて、また勝手に若様を連れ出せないようにしておけばそれで終わりだ。
つまり何もせずに穏便に帰すというだけの話なのだが、いちいち寛大だのなんだのと理由をつけなければならないところがどうしようもなく尊大なドラゴンしぐさだった。
そんな企みを抱く大臣の元に、ひとりの部下が駆け寄ってくる。
警備兵を務めているピンクドラゴンであった。
「大臣、お耳に入れたいことが……!」
「なんだ? お前には若様が人間の街から持ち込んだ品の検査を申し付けてあったな」
「ははーっ。まさにその件でご報告したいことが……!」
土下座せんばかりに頭を下げてへりくだるピンクドラゴン。
雄士は種族全体がデボ子なのか?と、本人たちに知られたら憤怒のあまりこの世の果てまで追跡されそうなことを考えていたが、メスドラゴンは基本こんな感じである。
力がある者がすべてを制する種族。
それは言い換えれば、力がある上位者には従わなくてはならないということだ。
つまり力がある者が下位者に尊大に振る舞い、より強い者には這いつくばってへりくだるという文化なのである。
これを見て種族そのものがデボ子と評した雄士の感覚は間違ってはいないだろう。
「若様の荷物の中に、こんなものが……!」
ピンクドラゴンは恭しくひとつの箱を大臣に差し出す。
それはドラコが荷物の一番奥に隠していた、大事な宝物が収められた箱であった。
はて、なんだろう?
眉をひそめながら箱の中を検めた大臣は、驚愕に目を見開いた。
「な! なんという……!」
「ね? エロいでしょう……」
そこに描かれていたのは、天地のすべてを識るドラゴンの大臣をしてみたことがないほど卑猥な絵画であった。
丸くてどこか武骨で、とてつもなく扇情的なボディライン。
その巨体を四輪の四肢で支える健気な機構。
存在そのものがドラゴンの情欲に訴えかけてくるようなデザイン。
「わ、若様がこんなものを持っているなんて! けしからん……! 絶対に手の届かないところに取り上げなくては! いや……」
そこで大臣は気づく。
「これを大事に持っているということは……若様は既に精通を迎えている……!?」
BBAの唇から、じゅるりと涎がこぼれた。